ネギは、体をあたため疲労を回復する薬用植物として古くから栽培されています。もとは冬野菜ですが、いまは周年栽培されています。ネギには軟白部を育てる根深ネギと葉身部を育てる葉ネギがあります。この記事では根深ネギと葉ネギの栽培方法を解説します。
はじめに
ネギは、中国西部が原産で、欧米ではチャイブやリーキなどが育てられています。日本では奈良時代に渡ってきました。関東地方以北では根深ネギ(白ネギ、長ネギ)が、関西地方では葉ネギ(青ネギ)が広く栽培され、地方品種も種類が豊富です。
根深ネギ(白ネギ、長ネギ)、葉ネギ(青ネギ)の効能、食べ方はこちらをご覧ください
根深ネギについて
根深ネギは、土を盛り上げて日光に当てないようにする「土寄せ」の作業によって、おもに軟白部を30~40cmほど長く育てるものです。風味がよく、焼いたり鍋物にしたりして食べます。
葉ネギについて
葉ネギは、おもに青々とした葉身部を薬味として利用します。根深ネギのような「土寄せ」の作業はほどほどでよいので、家庭菜園にはこの葉ネギが向いています。
ネギは古くから咳や鼻水、のどの痛みに効くとされ、風邪をひいた時に、ネギをくるんだ手ぬぐいやガーゼを首に巻くという民間療法が伝わってきました。
土寄せについて
根深ネギについて
根深ネギは、人の手によって軟白部を長く育てることから、家庭菜園では上級者向きといってもいいかもしれません。生育適温は15~20℃前後で、耐寒性、耐暑性があります。花芽分化は苗の太さが5~6mm以上のとき、7℃程度の低温で起こります。こうなるとネギ坊主ができるため、春の彼岸ごろに種をまいて育苗、7月頃に畑に植え付け、秋から冬にかけて収穫するのが一般的です。植え付けから収穫までが長いので、作付けのプランニングには、周囲の作物の状況も考慮して場所を選ぶ必要があります。
根深ネギの栽培方法
【土作り】
ネギは酸性に弱いので早めに前作を片付け、石灰をまいてよく耕します。
【苗づくり】
<畝の長さ1m当たり>
横幅18cm、溝、深さ10cmで、この中に(完熟たい肥3握り、化成肥料大さじ3杯、油粕大さじ5杯)の肥料を入れ5~7cmの厚さに土を戻し、溝の底面をていねいにならし、全面に1cm間隔位に種をまいて1cm位土をかぶせます。
【列の長さ1m当たり➡化成肥料大さじ2杯】
- 葉が込み合わないよう2~3回間引きます
- 1ヶ月に1回追肥と中耕をします。
- 秋まき苗は春先にとう立ちするのでこのネギ坊主を摘み取ります。
- 径が1cm内外、少なくても鉛筆の太さがほしい時、下の枯葉を取り除き、植え替え(植え付けを)します。
【植え付け】
- 30cm位の植え溝を掘ります
- 90cm間隔で横に溝を掘ります。根の間隔は90cm間隔で・・・
- 根元が少し隠れる程度に1~2cm土をかけます。溝の中へ稲わらや乾草などを入れて防乾します。
【追肥】
追肥は肩の部分に肥料を施し、土と混ぜながら溝に落とします。
<畝の長さ1m当たり>化成肥料 大さじ3杯 油粕大さじ5杯 (各回共通)
- 1回目(追肥、土寄せ)
- 2回目(土寄せ)1回目の1ヶ月後
- 3回目(追肥、土寄せ)2回目の1ヶ月後
- 最終回(土寄せ)収穫の30~40日前
ポイント まずは体をつくり、そしてそれを軟白するということ。したがって、追肥の重点は生育の前半に、土寄せの重点は後半におく
【病害虫防除】
苗床や本畑で各種病害虫にやられやすいので、初期に発見して、遅れずに薬剤散布する。
- ベト病➡ネギや玉ネギに発生しやすい病害です。
- 赤さび病➡高温でも低温でも根強く発生します。
いずれもダコニール水和剤、ダイファー水和剤が有効です。
収穫
軟白部を傷めないよう注意してくわで土を掘り上げ、軟白部を出して手で抜き取ります。
畑の都合で全部抜き取る場合には、ほかの場所へ移し、葉鞘部に土をかけて貯蔵し、逐次利用しましょう
葉ネギについて
家庭菜園では、種まきから植え付迄の育苗期間がかかるので、苗を購入して植え付けるとよいでしょう。苗は、1cm以上の太さで、草丈は30cm程度でそろっているものを選びます。茎葉が多少傷んでいても、生育には問題はありません。
畑に苗を植える際は、根深ネギと異なり、石灰や肥料を施して土づくりをします。特に葉ネギは酸性を嫌うので、石灰を施して、酸性調整をしておくことがポイントです。畝には浅い溝を掘り、浅く植え付けます。分げつ部を土に埋めると成長が止まるので、深植えにはしません。
、種子から出た茎の根元から新しい茎が出てくることを「分げつ(ぶんげつ)」と言います。
出典: www.kubota.co.jp
根深ネギとは違って土寄せは株が倒れない程度にし、月に1回追肥と中耕を兼ねて行います。収穫は草丈が60~70cm位になる7月ごろから始めます。
春まきをしたネギが冬を越すととう立ち(抽だい)するので、ネギ坊主(花のつぼみのこと、花球ともいう)は早めに摘み取ります。
また、葉ネギの中でも若どりするものを小ネギ、または細ネギと呼んでいます。小ネギは葉の径が5mm程度、長さ50cm程度のものが一般的です。小ネギは葉ネギよりもさらにやわらかく食べやすく、おもに薬味として、そばやうどん、みそ汁などに利用されています。小ネギは夏まきで2ヶ月程度、春秋まきで3ヶ月程度と生育期間が短いので直まきします。
栽培のポイント
【根深ネギは石灰、肥料は使わず溝に植える】
根深ネギは、植え付けの際に石灰や肥料は不要です。畝の中央に深さ30cm、幅18cmの垂直な溝を掘ります。溝が生育の途中で崩れないように、壁に固めておき、片方に盛り土をして土手も作ります。
盛り土は南北畝の場合は西側に、東西畝の場合は北側に積み上げるのが基本ですが、畑の使い方によって調整しても構いません。
【根深ネギはワラを敷き根に空気を送る】
中央に掘った溝の壁に苗を5cm間隔で植え付けます。深植えにせず、根元に土を少しかえる程度にします。
根深ネギは、根が呼吸するために大量の酸素を必要とします。そのため、ワラなど敷いて根の回りにスキマ作り、空気を確保することが大切です。乾燥して空気一杯含んだワラは、植え付け直後の細い苗を支えるクッションの役割も果たします。
ワラ以外に、雑草の刈り草やトウモロコシの茎などを乾燥させたものを使っても、かまいません。
【根深ネギは土寄せによって軟白化させる】
本来は光に当てて緑の葉を伸ばすところを、光を当てずに軟白させるのが根深ネギの育て方の特徴です。成長に合わせて、土寄せの作業を行う事がポイントです。
1回目の土寄せは、植え付けから1ヶ月後、化成肥料をワラの上に30g/㎡まき、ワラが隠れる程度に土を薄く盛ります。
2回目の土寄せは植え付けから約2ヶ月後に行います。化成肥料を30g/㎡まいて、葉鞘と葉身の境目で、葉が分かれて広がり始めている分げつ部まで土を入れて溝を埋めます。この分げつ部を土に埋めると成長できずに溶けてしまうので、注意が必要。
【成長に合わせた土寄せで高い畝を作る】
3回目の土寄せは、植え付けの約3ヶ月後、分げつ部が土より伸びてきたころに行います。
今度は株の両側に化成肥料を30g/㎡まいて分げつ部迄土寄せします。この頃になると生育の適温期でもあり、急にネギの伸びがよくなるので、両側から株元に土を盛り上げるように畝を作ります。
最後となる4回目の土寄せは、植え付けから約4ヶ月後に行います。化成肥料は株の周囲に30g/㎡まいて、分げつ部迄土を盛り上げます。
この時、株の両側から土寄せを上げて台形の高い畝にし、崩れないように表土を軽く押し固めます。そして、最後の土寄せから30~40日で収穫します。
【葉ネギは酸度調整をして溝は掘らない】
葉ネギの場合は、植え付けの遅くとも2週間前に苦土石灰を120~150g/㎡まいて、よく土に混ぜ込んで深さ30cm位まで耕します。葉ネギは酸性土壌を嫌うので、この作業は不可欠です。
植え付け前に堆肥3Kg/㎡と化成肥料100g/㎡をまいてよく混ぜて耕します。高さ5cm、幅1mほどの畝を立て、条間を50cmとし、深さ10cmほどの2条の溝を掘ります。苗は溝に10cm間隔で、分げつ部を埋めないように浅植えします。
【葉ネギの土寄せはほどほどでよい】
植え付けから約1ヶ月後に化成肥料50g/㎡を株の周囲にまいて表面を軽く耕しながら、株元に土を寄せます。根深ネギのように軟白部を育てるわけではないので、株が倒れないように土を寄せる程度でかまいません。この時、分げつ部を埋めると成長しなくなるので注意しましょう。
以後、収穫を終えるまで月1回の割合で追肥、中耕、土寄せして管理します。
葉ネギのレシピ
Rakutenレシピです。
引用・参考元:家庭菜園大百科、野菜づくり虎の巻
まとめ
根深ネギはビギナー向きではありませんが、葉ネギは家庭菜園で手軽に栽培できます。葉ネギはプランターを使い、浅く溝を2列作り、その溝に種を2列条まきをします。込み合ったら徐々に間引き、追肥を行います。刈り取れば再び若い芽が2~3回出てきます。試してみて下さい。