終活で介護について何を決めればいい?在宅介護や施設、介護サービス、費用、認知症への備え、医療・療養の希望など、元気なうちに家族と話しておきたいことを初心者向けに分かりやすく解説します。
「介護が必要になったら自宅で暮らしたい」「家族にはできるだけ負担をかけたくない」と考えていても、その希望を家族に伝えていない方は少なくありません。介護は突然必要になることもあるため、元気なうちに準備しておくことが大切です。終活では、介護を受ける場所や介護サービスだけでなく、費用、認知症への備え、医療・療養の希望なども家族と話し合っておきましょう。この記事では、終活で介護について何を決めておけばよいのか、家族と話しておきたい内容や介護保険の基本まで、初心者にも分かりやすく解説します。

終活で介護について考えておく必要がある理由
終活というと、財産整理や遺言書、葬儀、お墓などを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、これからの生活を考えるうえでは、介護について元気なうちから考えておくことも大切です。
介護が必要になったときには、
- どこで暮らしたいのか
- 誰に支えてもらいたいのか
- どのような介護サービスを利用したいのか
- 介護費用をどうするのか
- 認知症になった場合はどうしてほしいのか
- 医療や療養についてどのような希望があるのか
など、本人や家族が考えなければならないことがたくさんあります。
すべてを今すぐ決める必要はありません。まずは「自分ならどうしたいだろう」と考え、家族と少しずつ話し合っておきましょう。
介護は突然必要になることがある
今は元気に生活していても、将来いつ介護が必要になるかを正確に予測することはできません。
例えば、
- 転倒して骨折した
- 病気で入院した
- 体力が低下した
- 日常生活の動作が難しくなった
- 認知機能が低下した
といったことをきっかけに、家族の手助けや介護サービスが必要になる場合があります。
昨日まで一人で買い物や料理をしていた人でも、入院などをきっかけに退院後の生活を見直さなければならないこともあります。
その段階になって初めて、
「自宅で生活を続けられるだろうか」
「誰が介護するのだろう」
「どこへ相談すればよいのだろう」
と考えると、本人だけでなく家族も戸惑ってしまいます。
だからこそ、元気なうちから「もし介護が必要になったら」と考えておくことが大切です。
元気なうちなら自分の希望を伝えられる
終活で介護について考える大きな理由の一つが、自分の希望を自分の言葉で伝えられることです。
例えば、
- できるだけ自宅で暮らしたい
- 家族だけに介護を任せたくない
- 必要になれば介護施設への入居も考えたい
- デイサービスなども利用したい
- 自宅で生活できなくなった場合の希望を伝えておきたい
など、人によって考え方は異なります。
こうした希望を家族が知らなければ、介護が必要になったときに家族が本人の気持ちを推測しながら判断することになります。
また、本人の考えは年齢や健康状態、家族の状況によって変わることもあります。
そのため、「一度決めたら変更できない」と考えず、元気なうちから希望を伝え、必要に応じて話し直すことが大切です。
家族だけで介護方法を決める負担を減らせる
本人の希望が分からないまま介護が必要になると、家族がさまざまな判断を求められる場合があります。
例えば、
「自宅へ戻った方がいいのか」
「介護施設を探した方がいいのか」
「本人はどこで暮らしたいと思っているのか」
と家族だけで悩むことになるかもしれません。
元気なうちに本人が、
「できれば自宅で暮らしたい。ただし家族の負担が大きくなるなら、介護サービスや施設も利用したい」
と伝えておけば、家族が選択肢を考えるときの手がかりになります。
大切なのは、細かな介護方法をすべて決めておくことではありません。
本人が何を大切にしているのかを家族と共有しておくことが重要です。
介護する家族の生活にも影響する
介護について考えるときは、本人の希望だけではなく、介護を支える家族の生活も考える必要があります。
家族には、
- 仕事
- 子育て
- 家事
- 自分自身の健康
- 配偶者との生活
- 遠距離での移動
など、それぞれの事情があります。
例えば、「長男に介護してもらう」と本人が考えていても、長男が遠方で働いていれば、毎日の介護は難しいかもしれません。
その場合は、
- 家族ができること
- 介護サービスに任せること
- 通院の付き添い
- 買い物の支援
- 手続きや連絡
- 費用面での協力
などを分けて考える方法があります。
「家族だから介護して当然」と決めつけず、本人と家族の双方が無理をしすぎない方法を考えることが大切です。
介護には費用や住まいの問題も関係する
介護は「誰に世話をしてもらうか」だけの問題ではありません。
生活する場所やお金についても考える必要があります。
例えば、
- 自宅で介護サービスを利用する
- 手すりなどを設置して自宅を改修する
- 福祉用具を利用する
- 高齢者向け住宅へ住み替える
- 介護施設へ入居する
など、状況によってさまざまな選択肢があります。
また、介護サービスの自己負担や施設の利用料、日常生活費など、お金も必要になります。
そのため終活では、介護方法だけではなく、
「どこで暮らすか」「どのくらいのお金を準備できるか」
という点も一緒に考えておきましょう。
具体的な費用は、要介護状態や利用するサービス、施設、所得などによって異なるため、「介護には必ず○○万円必要」と一律に考えないことも重要です。
終活で介護を考えることは「もしもの準備」
終活で介護について考えると、「まだ元気なのに介護のことを考えるのは早い」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、介護について考えることは、将来を悲観することではありません。
例えば、
「もし一人で生活するのが難しくなったら、どうしたいか」
を家族と話しておくだけでも立派な準備です。
厚生労働省では、もしものときに希望する医療やケアについて前もって考え、家族や医療・ケア関係者などと繰り返し話し合い、共有する取り組みを「人生会議(ACP)」として案内しています。
終活で介護を考える場合も同じように、最初から一つの答えを決めるのではなく、
考える → 家族と話す → 状況が変わったら見直す
という流れを意識するとよいでしょう。
終活で介護について考える主な理由
| 考えておくこと | 理由 |
|---|---|
| 介護方法 | 本人の希望を家族に伝えるため |
| 介護する人 | 家族ができることや負担を確認するため |
| 住む場所 | 在宅介護・施設などの選択肢を考えるため |
| お金 | 介護サービスや生活に必要な費用に備えるため |
| 医療 | 治療や療養について希望を考えるため |
| 緊急時 | 本人の希望を踏まえて家族が判断しやすくするため |
終活で介護について決めておきたいこと一覧
終活で介護について考えるとき、「何から決めればいいのだろう」と迷うかもしれません。
最初から細かな内容まで決定する必要はありません。
まずは、
「誰に」「どこで」「どのように」介護してもらいたいか
という大きな希望から考えてみましょう。
さらに、介護費用、認知症、医療、緊急連絡先などについても整理しておくと、家族と話し合いやすくなります。
誰に介護してもらいたいか
まず考えたいのが、介護が必要になった場合に誰に支えてもらいたいかです。
例えば、
- 配偶者
- 子ども
- 兄弟姉妹
- 介護サービスのスタッフ
- 家族と介護サービスの両方
などが考えられます。
ただし、「長女に介護してもらう」というように本人だけで決めるのではなく、相手の仕事や家庭、健康状態なども考える必要があります。
おすすめなのは、
「家族にお願いしたいこと」と「専門職や介護サービスに任せたいこと」を分けて考えることです。
例えば、日常的な身体介護は介護サービスを利用し、家族には通院時の付き添いや連絡をお願いするといった方法も考えられます。
自宅で暮らし続けたいか
住み慣れた自宅でできるだけ長く暮らしたいという希望を持つ方もいるでしょう。
その場合は、希望だけでなく、
- 玄関や室内に段差がないか
- 階段を使う必要があるか
- トイレや浴室を安全に使えるか
- 家族の支援を受けられるか
- 訪問介護などを利用できるか
といった生活環境も確認しておく必要があります。
例えば、2階に寝室がある場合、身体状況が変化すると階段の上り下りが難しくなる可能性があります。
「自宅で暮らしたい」という希望とともに、どのような状態までなら自宅生活を続けたいかも少しずつ考えてみましょう。
介護施設への入居を希望するか
自宅での生活が難しくなった場合、介護施設などへ入居する選択肢があります。
終活では、
- 自宅生活が難しくなったら施設を検討してよい
- 家族の負担が大きくなる前に施設を考えたい
- できるだけ自宅で暮らしたい
- 夫婦で暮らせる住まいを探したい
など、自分の考えを家族に伝えておくとよいでしょう。
介護施設には複数の種類があり、入居条件やサービス内容、費用なども異なります。
そのため、今の段階で特定の施設まで決める必要はありません。
まずは、施設への入居を選択肢として考えられるかどうかを家族と共有するところから始めましょう。
利用したい介護サービスを考える
在宅介護では、家族だけですべてを行う必要はありません。
状況に応じて、
- 訪問介護
- 訪問看護
- デイサービス
- ショートステイ
- 福祉用具
- 住宅改修
などを利用できる場合があります。
例えば、
「家族に毎日来てもらうのではなく、利用できる介護サービスを積極的に使いたい」
という希望も家族に伝えておけます。
実際に利用できるサービスは、本人の状態や要介護認定、地域などによって異なります。
終活の段階では細かなサービスまで決めるというより、家族だけで抱え込まず、公的な介護サービスや専門職の支援を利用する考えがあるかを話しておくとよいでしょう。
介護費用をどのように準備するか
介護について考えるときは、お金の準備も欠かせません。
まず、
- 預貯金
- 年金収入
- 保険
- その他の収入や資産
などを確認し、介護が必要になった場合にどのようなお金を利用できるか整理しておきましょう。
例えば、
「介護に必要なお金は、まず自分の預貯金から支払ってほしい」
という希望があるなら、家族に伝えておくと分かりやすくなります。
ただし、実際の介護費用は在宅か施設か、利用するサービス、本人の状態などによって大きく変わります。
終活の段階では、正確な金額を決めることよりも、介護に利用できる財産を把握しておくことから始めましょう。
認知症になった場合にどうしてほしいか
認知症などによって判断能力が低下すると、自分の希望を十分に伝えられなくなる場合があります。
元気なうちに、
- できるだけ自宅で暮らしたい
- 一人暮らしが難しくなったら施設も検討してほしい
- お金の管理について家族と相談しておきたい
- 大切な書類の保管場所を伝えておきたい
といった希望を話しておくことが大切です。
ただし、「認知症になったら必ず○○する」と細かく固定する必要はありません。
本人の状態や家族の状況、利用できるサービスなどは変化します。
自分が大切にしたい生活や考え方を伝えておくことを優先しましょう。
医療や療養について希望を伝える
介護が必要になる時期には、医療や療養についての判断が必要になることもあります。
例えば、
- どこで療養したいか
- どのような生活を大切にしたいか
- 誰と一緒に過ごしたいか
- 医療について誰と相談してほしいか
などです。
こうした希望は、家族だけでなく、必要に応じて医師や看護師などの医療・ケア関係者と共有することも大切です。
また、気持ちは健康状態や生活環境によって変わることがあります。
一度決めた内容に縛られず、その時々の気持ちを家族などと繰り返し話し合うことを意識しましょう。
緊急時の連絡先を決めておく
急な入院や体調悪化などに備えて、緊急時の連絡先も整理しておきましょう。
例えば、
- 配偶者
- 子ども
- 兄弟姉妹
- 親族
- かかりつけ医
- その他の信頼できる人
などです。
紙やエンディングノートなどに、
| 項目 | 記入する内容 |
|---|---|
| 氏名 | 山田○○ |
| 続柄 | 長男など |
| 電話番号 | 連絡できる番号 |
| 優先順位 | 1番・2番など |
| 備考 | 遠方在住・平日日中は連絡困難など |
という形でまとめておくと分かりやすくなります。
電話番号を変更した場合などは、そのままにせず定期的に更新しましょう。
介護準備チェックリスト
終活で介護について考えるときは、次の項目から少しずつ確認してみましょう。
- □ 介護を受けたい場所について考えた
- □ 家族にお願いしたいことを考えた
- □ 利用したい介護サービスについて調べた
- □ 介護施設への入居について希望を考えた
- □ 介護に利用できるお金を確認した
- □ 認知症になった場合の希望を考えた
- □ 医療・療養について希望を考えた
- □ 緊急時の連絡先をまとめた
すべてに今すぐチェックを付ける必要はありません。
例えば最初は、**「自宅で暮らしたいか」「施設も選択肢にできるか」**という2点を家族と話すだけでも構いません。
終活で介護について考える目的は、未来を細かく決めてしまうことではなく、本人が大切にしたいことを家族と共有し、もしものときに話し合える土台を作っておくことです。
介護を受ける場所について考える
終活で介護について考えるとき、重要になるのが**「介護が必要になったら、どこで暮らしたいか」**ということです。
住み慣れた自宅で生活を続けたい方もいれば、家族の近くへ引っ越したい方、必要な介護を受けられる施設への入居を考える方もいるでしょう。
主な選択肢としては、
- 自宅で暮らす
- 子どもなど家族と同居する
- 介護施設へ入居する
- 高齢者向け住宅へ住み替える
などがあります。
ただし、元気なときに希望していた生活が、身体状況や認知機能、家族の事情などによって難しくなることもあります。
そのため、「絶対に自宅」と一つに決めてしまうのではなく、第1希望と、それが難しくなった場合の第2希望まで考えておくことがおすすめです。
自宅で介護を受ける「在宅介護」
在宅介護とは、住み慣れた自宅で生活を続けながら、家族の支援や介護サービスなどを利用して暮らす方法です。
厚生労働省も、可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられるよう、医療・介護・生活支援などを一体的に提供する「地域包括ケアシステム」を推進しています。
在宅介護を希望する場合は、気持ちだけでなく自宅の環境も確認しておきましょう。
例えば、
- 玄関や廊下に大きな段差がないか
- 階段を使わず生活できるか
- トイレや浴室を安全に利用できるか
- 車いすなどを使えるスペースがあるか
- 家族の支援を受けられるか
- 訪問介護などのサービスを利用できるか
といった点です。
例えば現在2階を寝室にしている場合でも、将来階段の上り下りが難しくなれば、1階へ寝室を移す方法も考えられます。
終活では、
「できるだけ自宅で暮らしたい。ただし、一人での生活が難しくなったら施設も考えてほしい」
というように、条件を含めて家族に希望を伝えておくとよいでしょう。
家族と同居して介護を受ける場合
子どもなどの家族と同居しながら介護を受ける方法もあります。
家族が近くにいるため、
- 体調の変化に気づきやすい
- 買い物を手伝ってもらえる
- 通院に付き添ってもらえる
- 緊急時に対応してもらいやすい
といった面があります。
しかし、本人が「子どもと暮らしたい」と希望しても、必ず実現できるとは限りません。
家族側にも、
- 仕事
- 子育て
- 住宅事情
- 配偶者との生活
- 健康状態
などがあります。
例えば、長女夫婦の家に同居したいと思っていても、部屋数や仕事の状況によっては難しい場合があります。
本人だけで決めず、
「もし一人暮らしが難しくなったら、一緒に暮らすことは可能だろうか」
と早めに話し合っておきましょう。
介護施設へ入居する場合
自宅での生活が難しくなった場合には、介護施設への入居も選択肢になります。
介護施設といっても一種類ではありません。
例えば、
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護付き有料老人ホーム
- 認知症グループホーム
などがあり、それぞれ役割や対象者、入居条件、費用などが異なります。
そのため終活の段階で、
「○○施設に必ず入居する」
と具体的な施設まで決める必要はありません。
まずは、
- 自宅生活が難しくなったら施設を検討してよい
- 家族の介護負担が大きくなる前に施設を検討したい
- できる限り自宅で暮らしてから施設を考えたい
など、自分の基本的な希望を伝えておきましょう。
実際に施設を選ぶ段階では、本人の要介護状態や認知症の有無、必要な医療、費用、入居条件などを確認する必要があります。
高齢者向け住宅を利用する選択肢もある
介護施設だけでなく、高齢者向け住宅へ住み替えるという選択肢もあります。
代表的なものの一つが「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」です。
サービス付き高齢者向け住宅は、バリアフリーなど一定の基準を満たし、少なくとも安否確認と生活相談サービスが提供される高齢者向け住宅です。
ただし、ここで注意したいのは、
「サービス付き高齢者向け住宅=すべての介護サービスが付いている住宅」ではない
ということです。
介護・医療・生活支援サービスの内容は住宅によって異なります。
そのため検討するときは、
- どのような介護サービスを受けられるか
- 医療機関との連携はあるか
- 夜間の対応はどうなっているか
- 月々どのくらい費用がかかるか
- 要介護状態が重くなっても住み続けられるか
などを確認することが大切です。
「施設に入るほどではないけれど、一人暮らしには不安がある」という場合にも、選択肢の一つとして情報を集めておくとよいでしょう。
元気なときと介護が必要になったときで希望は変わる
終活で介護場所について考えるときは、今決めた希望が将来も同じとは限らないことを理解しておきましょう。
例えば元気なときは、
「最後まで絶対に自宅で暮らしたい」
と思っていても、身体状況が変化すると、
「夜間も介護してもらえる場所の方が安心」
と思うようになるかもしれません。
反対に、介護サービスや住宅改修を利用することで、予想していたより長く自宅で生活できる場合もあります。
介護についての希望は、
- 健康状態
- 要介護状態
- 認知機能
- 家族の状況
- 住環境
- 経済状況
などによって変化します。
終活では、一度決めた希望を定期的に見直すことも準備の一つです。
「絶対に自宅」と決めつけず複数の選択肢を考える
介護を受ける場所については、最初から一つに限定しない方が家族も対応しやすくなります。
例えば、次のように段階的に考える方法があります。
第1希望:
できるだけ自宅で介護サービスを利用しながら暮らす
第2希望:
一人暮らしが難しくなったら高齢者向け住宅を検討する
第3希望:
常時介護が必要になったら介護施設を検討する
このように複数の選択肢を考えておけば、状況が変化しても本人の考えを尊重しながら家族が対応しやすくなります。
大切なのは「どこで暮らすか」だけではありません。
「どのような生活を送りたいか」まで家族と共有することが重要です。
介護を受ける場所の比較表
| 場所 | 特徴 | 考えておきたいこと |
|---|---|---|
| 自宅 | 住み慣れた環境で生活できる | 家族の負担・住宅環境・利用できるサービス |
| 家族宅 | 家族の近くで生活できる | 同居できる住宅環境や家族の生活 |
| 介護施設 | 必要な介護を受けやすい | 入居条件・サービス内容・費用 |
| 高齢者向け住宅 | 住まいに生活支援などを組み合わせられる | 提供されるサービス・費用・将来の介護対応 |
この表は一般的な特徴を整理したものです。実際のサービスや入居条件は施設・住宅によって異なるため、利用するときは個別に確認しましょう。
家族に介護をお願いするときに話しておきたいこと
終活で介護について考えるとき、本人の希望だけでなく、介護する家族の生活についても考えることが大切です。
「長男が近くにいるから長男に任せよう」
「娘だから介護してくれるだろう」
と本人だけで決めてしまうと、家族に大きな負担がかかる可能性があります。
家族には仕事や子育て、健康、家庭生活があります。
そのため、
家族にお願いすること・介護サービスに任せること・自分のお金で準備すること
を分けて考えてみましょう。
「家族が介護して当然」と考えない
家族だからといって、すべての介護を引き受けられるとは限りません。
例えば、子どもが近所に住んでいても、
- フルタイムで働いている
- 子育てをしている
- 自分自身に持病がある
- 配偶者の親も介護している
といった事情があるかもしれません。
介護には、食事や着替えなどの身体的な支援だけでなく、
- 通院
- 買い物
- 介護サービスとの連絡
- 行政手続き
- 金銭管理
- 緊急時の対応
なども関係します。
本人は、
「できる範囲で助けてもらいたいけれど、家族だけで無理をしないでほしい」
という考えも伝えておくとよいでしょう。
誰が中心になって介護するか話し合う
介護が必要になったとき、家族の中で主に連絡や調整をする人を決めておくと、話が進みやすくなることがあります。
例えば、
- 長男:ケアマネジャーなどとの連絡
- 長女:通院の付き添い
- 次男:費用や行政手続きの確認
というように分担できます。
ただし、「中心になる人=すべての介護をする人」ではありません。
中心になる人に負担が集中しないよう、他の家族もできることを分担しましょう。
また、本人の健康状態や家族の仕事などは変化するため、役割分担も固定せず見直すことが大切です。
兄弟姉妹で役割を分担する
兄弟姉妹がいる場合は、一人だけに介護負担を集中させない方法を考えましょう。
例えば、
| 家族 | 担当することの例 |
|---|---|
| 長男 | ケアマネジャーや施設との連絡 |
| 長女 | 通院の付き添い |
| 次男 | 行政手続きなど |
| 本人 | できることは自分で行う |
| 介護サービス | 日常的な介護・生活支援など |
必ず均等に分ける必要はありません。
遠方に住んでいる人と近くに住んでいる人では、できることが異なります。
重要なのは、「誰が何をできるか」を家族で確認することです。
遠方に住む家族ができることを考える
遠方に住んでいるからといって、介護に関われないわけではありません。
例えば、
- 定期的に電話する
- 必要な情報を調べる
- 書類や手続きの確認をする
- 帰省したときに通院へ付き添う
- 近くに住む家族の相談相手になる
など、離れていてもできることがあります。
例えば、長男が親の近くに住み、長女が県外に住んでいる場合、
長男が日常的な連絡、長女が情報収集や帰省時の付き添い
という分担も考えられます。
「近くに住んでいる人だけが介護をする」と決めず、それぞれができる形を考えましょう。
仕事と介護を両立できるか確認する
働いている家族が介護を担う場合は、仕事との両立も重要です。
介護はいつ始まるか予測しにくく、期間や必要な支援も人によって異なります。厚生労働省も、介護に直面してすぐに仕事を辞めるのではなく、介護休業などの両立支援制度や介護サービスを活用しながら働き続けることを案内しています。
家族が働いている場合は、
- 勤務先にどのような制度があるか
- 介護休業を利用できるか
- 介護休暇などを利用できるか
- 短時間勤務などの制度があるか
- 在宅勤務などを利用できるか
を確認しておくとよいでしょう。
ただし、勤務先や雇用状況によって利用できる制度や条件が異なる場合があります。
本人も、
「介護のために仕事を辞めてほしい」
と最初から考えるのではなく、仕事と介護を両立できる方法を家族と一緒に探すことが大切です。
家族だけで抱え込まない方法を考える
介護は家族だけで行うものとは限りません。
必要に応じて、
- ケアマネジャー
- 地域包括支援センター
- 訪問介護
- デイサービス
- ショートステイ
- 訪問看護
- 福祉用具
など、専門職や介護サービスの力を借りる方法があります。
例えば、
平日はデイサービスを利用し、家族は休日に買い物や通院を手伝う
という形も考えられます。
家族が疲れ切ってから助けを求めるのではなく、早い段階から利用できる制度やサービスを調べておきましょう。
終活で大切なのは、
「誰か一人に介護を任せる計画」ではなく、「本人・家族・専門職・介護サービスで支える方法を考えておくこと」
です。
家族で考えておきたい介護の役割分担
長男が近くに住んでいるからといって、すべてを長男に任せる必要はありません。
例えば、次のように分ける方法があります。
- 通院の付き添い:近くに住む家族
- 買い物:家族+必要に応じて生活支援サービス
- 介護サービスとの連絡:中心となる家族
- 行政などの手続き:手続きしやすい家族
- 費用についての確認:本人を含め家族で話し合う
- 定期的な連絡:遠方の家族も参加
役割分担は一度決めて終わりではありません。
本人の要介護状態や家族の仕事、健康状態などが変わったときには、**「今の分担で無理がないか」**を改めて話し合いましょう。
終活で知っておきたい介護保険の基本
終活で介護について考えるなら、介護保険の基本的な仕組みも知っておきましょう。
介護が必要になったからといって、自分や家族だけですべてを抱える必要はありません。介護保険を利用することで、訪問介護やデイサービス、福祉用具、施設サービスなど、本人の状態に応じたさまざまなサービスを利用できます。
ただし、介護保険サービスを利用するには、原則として市区町村へ申請し、要介護・要支援認定を受けるなどの手続きが必要です。
終活の段階では制度を細かく覚えるより、
- どこへ相談するのか
- 要介護認定とは何か
- 認定後は誰に相談するのか
- どのような流れでサービスを利用するのか
といった基本を知っておけば十分です。
介護保険とはどのような制度?
介護保険は、高齢者などの介護を社会全体で支えるための公的な社会保険制度です。
40歳以上の人が被保険者となり、年齢によって大きく次の2つに分けられます。
| 区分 | 対象者 | 介護サービスを利用できる主な条件 |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 65歳以上 | 要介護・要支援状態と認定された場合 |
| 第2号被保険者 | 40~64歳の医療保険加入者 | 特定疾病が原因で要介護・要支援状態になった場合 |
つまり、「40歳になれば誰でも同じ条件で介護サービスを利用できる」というわけではありません。
例えば70歳の方が転倒などをきっかけに日常生活で介護が必要になった場合、市区町村へ要介護認定を申請し、認定結果などに応じて介護保険サービスの利用を検討します。
終活では、**「介護が必要になったら、まず介護保険について市区町村などへ相談する」**と覚えておくとよいでしょう。
要介護認定とは?
要介護認定とは、その人にどの程度の介護サービスが必要なのかを判定する仕組みです。
単純に病名や病気の重さだけで決まるものではありません。
市区町村へ申請すると、認定調査員による本人の心身の状態などの調査が行われ、主治医の意見書なども踏まえて審査・判定されます。
主な流れは、
- 市区町村へ申請する
- 認定調査を受ける
- 主治医意見書が作成される
- 審査・判定が行われる
- 認定結果が通知される
となります。
例えば、同じ病気の人でも、一人で食事や着替えができる人と、日常生活のさまざまな場面で介助が必要な人では、介護の必要度が異なる場合があります。
そのため、「病気が重い=必ず要介護度が高い」とは限らない点も知っておきましょう。
要支援と要介護の違い
要介護・要支援認定は、
- 要支援1
- 要支援2
- 要介護1
- 要介護2
- 要介護3
- 要介護4
- 要介護5
の7段階に分かれています。
簡単に整理すると、要支援は介護予防や生活機能の維持・改善のための支援が必要な状態、要介護は日常生活で介護が必要な状態と考えると分かりやすいでしょう。
| 区分 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 要支援1・2 | 日常生活の一部に支援が必要で、介護予防などが重要 |
| 要介護1~5 | 日常生活で介護が必要 |
| 要介護度が高くなる | 一般に必要とされる介護の程度が大きくなる |
ただし、「要介護2なら必ず○○ができない」というように、要介護度だけで本人の状態を一律に判断することはできません。
認定された区分によって、介護保険で利用できるサービスの範囲や支給限度額などが異なります。
終活では細かな判定基準を覚える必要はありませんが、要支援1・2と要介護1~5があることは覚えておきましょう。
介護サービスを利用するまでの基本的な流れ
介護保険サービスを利用するときは、基本的に次のような流れで進みます。
介護サービス利用までの流れ
① 市区町村へ要介護・要支援認定を申請
↓
② 認定調査・主治医意見書
↓
③ 審査・判定
↓
④ 要支援・要介護などの認定結果
↓
⑤ ケアプランなどを作成
↓
⑥ 介護サービスを利用
例えば、「最近、一人で入浴するのが難しくなってきた」という場合、まず住んでいる市区町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターなどへ相談します。
要介護・要支援認定を受けた後は、本人の状態や希望などを踏まえてケアプランなどを作り、必要な介護サービスへつなげていきます。
なお、認定を受けていない人でも、市区町村によって利用できるサービスや活動がある場合があります。
そのため、「認定を受けられるか分からないから相談しない」のではなく、困った段階で市区町村や地域包括支援センターへ相談することが大切です。
ケアマネジャーは何をしてくれる?
介護保険を利用するときによく耳にするのが、**ケアマネジャー(介護支援専門員)**です。
ケアマネジャーは、本人や家族の希望、心身の状態、生活環境などを確認しながら、必要な介護サービスを利用できるよう支援する専門職です。
例えば、
- 本人や家族から希望を聞く
- ケアプランを作成する
- 必要な介護サービスを検討する
- サービス事業者などと連絡・調整する
- サービス利用後の状況を確認する
といった支援を行います。
例えば本人が、
「できるだけ自宅で暮らしたいけれど、入浴と買い物が難しくなってきた」
と相談した場合、本人の状態や希望を確認しながら、利用できるサービスなどを一緒に考えていきます。
介護サービスを本人や家族だけで一から調べ、すべて手配するのは大変です。
そのため、介護生活を支える相談・調整役としてケアマネジャーの存在を知っておくと安心です。
なお、要介護1~5の方が在宅サービスを利用する場合は、一般に居宅介護支援事業者のケアマネジャーがケアプラン作成を支援します。要支援1・2の場合は、地域包括支援センターの担当職員または居宅介護支援事業者のケアマネジャーが介護予防ケアプランを作成します。
地域包括支援センターに相談できること
「介護について、そもそも誰に相談したらよいか分からない」というときに覚えておきたいのが、地域包括支援センターです。
地域包括支援センターは、高齢者の暮らしを地域で支えるための総合的な相談窓口です。
例えば、
- 最近、親の生活が心配になってきた
- 介護保険の申請方法が分からない
- どのような介護サービスがあるのか知りたい
- 認知症について相談したい
- 高齢者の生活や権利擁護について相談したい
- 家族の介護負担について相談したい
といった場合に相談できます。
例えば、離れて暮らす親について、
「最近、同じ話を何度もするようになった。買い物にも行けなくなってきたようで心配」
という場合でも、介護が必要かどうかを家族だけで判断するのではなく、まず地域包括支援センターなどへ相談する方法があります。
終活では、親や自分の住んでいる地域の地域包括支援センターがどこにあるのか確認しておくだけでも、将来の備えになります。
介護保険で最低限覚えておきたいこと
| 項目 | 覚えておきたいポイント |
|---|---|
| 介護保険 | 介護を社会全体で支える公的な制度 |
| 要介護認定 | 介護サービスの必要度などを判定する |
| 認定区分 | 要支援1・2、要介護1~5 |
| 申請先 | 市区町村の介護保険担当窓口など |
| ケアマネジャー | ケアプラン作成やサービス調整などを支援 |
| 地域包括支援センター | 高齢者の暮らしや介護について相談できる地域の窓口 |
終活の段階で、介護保険制度の細かな内容をすべて覚える必要はありません。
まずは、
「介護が心配になったら、市区町村や地域包括支援センターへ相談する」
という入口を覚えておくことが大切です。介護が必要になったときに、本人や家族だけで悩まず、専門職や公的制度につながりやすくなります。
※介護保険制度の内容、利用条件などは改正されることがあります。実際に申請・利用するときは、厚生労働省やお住まいの市区町村の最新情報をご確認ください。
在宅介護ではどのようなサービスを利用できる?
「介護が必要になっても、できるだけ住み慣れた自宅で暮らしたい」と考える方も多いでしょう。
在宅介護というと、家族が付きっきりで介護するイメージを持つかもしれません。しかし、介護保険には自宅での生活を支えるさまざまなサービスがあります。
代表的なものには、
- 訪問介護
- 訪問看護
- デイサービス
- ショートステイ
- 福祉用具の貸与・購入
- 住宅改修
などがあります。
本人の要介護状態や生活環境、家族の状況などに応じて、必要なサービスを組み合わせて利用することもできます。
終活では、「家族だけに介護を任せる」のではなく、利用できる介護サービスを活用しながら自宅で暮らす方法があることを知っておきましょう。
訪問介護
訪問介護は、ホームヘルパーなどが利用者の自宅を訪問し、日常生活を支援するサービスです。
主に、
- 食事や入浴、排せつなどの身体介護
- 掃除や洗濯、調理などの生活援助
- 日常生活を送るために必要な支援
などが行われます。
例えば、一人で入浴することが難しくなった場合に入浴を介助してもらったり、身体状況などによって家事が難しい場合に必要な生活援助を受けたりすることが考えられます。
ただし、訪問介護では「何でも家事をお願いできる」わけではありません。介護保険の対象となる支援には範囲があり、本人の生活援助に直接関係しない家族分の家事などは対象にならない場合があります。
終活で、
「自宅で暮らしたいが、家族だけに介護を任せたくない」
と考えている場合には、訪問介護などを利用する方法も家族と話しておくとよいでしょう。
訪問看護
訪問看護は、看護師などが自宅を訪問し、主治医の指示に基づいて療養上の世話や診療の補助などを行うサービスです。
例えば、
- 健康状態の確認
- 血圧や体温などの確認
- 療養上の世話
- 医療処置
- 薬についての確認や助言
- 本人や家族への療養上の相談・支援
などが行われます。
例えば、退院後も自宅で療養を続ける場合、必要に応じて訪問看護を利用しながら生活することがあります。
訪問介護と訪問看護は名前が似ていますが、役割は異なります。
訪問介護は日常生活の介護や生活援助など、訪問看護は看護師などによる療養上の世話や診療の補助など
と考えると分かりやすいでしょう。
利用する制度や本人の状態によって、介護保険ではなく医療保険が適用される場合もあるため、実際の利用時には主治医やケアマネジャーなどへ確認しましょう。
デイサービス(通所介護)
デイサービス(通所介護)は、自宅で暮らしている人が施設へ日帰りで通い、必要な介護や機能訓練などを受けるサービスです。
一般的には、
- 食事
- 入浴
- 日常生活上の支援
- 機能訓練
- 他の利用者との交流
などが行われます。
例えば、週に数回デイサービスを利用することで、本人が自宅以外で人と交流する機会を持てるほか、その時間に家族が仕事や用事を済ませることもできます。
そのためデイサービスは、本人の在宅生活を支えるだけでなく、介護する家族の負担軽減にもつながるサービスの一つです。
なお、施設によって提供されるサービスや利用時間などは異なります。
ショートステイ(短期入所)
ショートステイは、介護施設などに短期間宿泊し、食事、入浴、排せつなどの日常生活上の支援や必要な介護を受けるサービスです。
例えば、
- 介護する家族が数日間家を空ける
- 家族が体調を崩した
- 冠婚葬祭などで介護が難しい
- 家族が休息する時間を確保したい
といった場合に利用されることがあります。
例えば、普段は娘が自宅で親の介護をしていても、娘が入院することになれば、一時的にショートステイを利用する方法があります。
介護を長く続けるためには、介護する側が休むことも大切です。
ショートステイは、本人の在宅生活を続けながら家族の介護負担を調整する選択肢として知っておくとよいでしょう。
福祉用具の貸与・購入
介護保険では、本人の自立した生活や介護する人の負担軽減などを目的として、一定の福祉用具を貸与または購入できる仕組みがあります。
貸与の対象となる代表的な福祉用具には、
- 車いす
- 特殊寝台(介護ベッド)
- 手すり
- スロープ
- 歩行器
- 歩行補助つえ
などがあります。
一方、入浴や排せつなどに使用する一定の用具は「特定福祉用具販売」の対象となります。
例えば、
- 腰掛便座
- 入浴補助用具
- 簡易浴槽
などです。
また、2024年4月からは、固定用スロープ、歩行器の一部、歩行補助つえの一部について、貸与と販売を選択できる制度も導入されています。
ただし、要介護度によって原則として介護保険の給付対象にならない福祉用具もあります。
そのため、「介護保険なら好きな福祉用具を何でも借りられる」と考えず、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員などと相談して本人に合ったものを選びましょう。
住宅改修
自宅で安全に生活するために、住宅を改修する方法もあります。
介護保険で対象となる主な住宅改修には、
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 滑りにくい床材などへの変更
- 引き戸などへの扉の取り替え
- 洋式便器などへの便器の取り替え
などがあります。
例えば、
玄関から廊下まで手すりを取り付ける
浴室入口の段差を解消する
といった改修によって、本人が自宅で移動しやすくなり、転倒などの危険を減らすことにもつながります。
注意したいのは、介護保険を利用した住宅改修では、原則として工事を始める前に市区町村への申請が必要になることです。
「先に工事をして、あとから介護保険を申請すればよい」と自己判断せず、ケアマネジャーや市区町村などへ事前に相談しましょう。
終活で自宅での介護を希望する場合は、現在の住宅について、
- 玄関に段差がある
- 廊下やトイレに手すりがない
- 浴室が滑りやすい
- 寝室が2階にある
など、将来生活しにくくなりそうな場所を確認しておくことも大切です。
複数のサービスを組み合わせることもできる
在宅介護では、一つのサービスだけを利用するとは限りません。
本人の状態や生活環境、家族の介護負担などを考えながら、複数のサービスを組み合わせることがあります。
例えば、
月曜日:デイサービス
火曜日:訪問介護
水曜日:自宅で家族と過ごす
木曜日:訪問看護
金曜日:デイサービス
という利用方法も考えられます。
さらに、家族が数日間介護できないときにはショートステイを利用するなど、状況に合わせて調整する方法があります。
ただし、利用できるサービスの種類や回数などは、要介護度、本人の状態、ケアプラン、地域のサービス提供状況などによって異なります。
「家族ができない部分を介護サービスで補う」という考え方だけでなく、
本人・家族・専門職・介護サービスが協力して生活を支える
という考え方を持つとよいでしょう。
主な在宅介護サービス早見表
| サービス | 主な内容 | 利用例 |
|---|---|---|
| 訪問介護 | 自宅で身体介護・生活援助など | 入浴や日常生活の支援 |
| 訪問看護 | 看護師などが自宅を訪問 | 健康状態の確認・療養上の支援 |
| デイサービス | 日帰りで介護などを受ける | 食事・入浴・機能訓練など |
| ショートステイ | 短期間施設へ宿泊する | 家族が介護できないときなど |
| 福祉用具 | 車いす・介護ベッドなど | 移動や起き上がりを支援 |
| 住宅改修 | 手すり設置・段差解消など | 自宅を安全に移動しやすくする |
在宅介護を希望する場合でも、家族がすべての介護を担う必要はありません。
終活では、「自宅で暮らしたい」という希望と一緒に、「必要になったら介護サービスを利用したい」という考えも家族に伝えておくことが大切です。
※介護保険で利用できるサービスや給付条件は、要介護・要支援認定、本人の状態などによって異なります。また、制度改正が行われる場合があるため、実際に利用するときは市区町村やケアマネジャーなどに最新情報をご確認ください。
介護施設について終活で考えておきたいこと
終活で介護について考えるときは、自宅での生活が難しくなった場合に備えて、介護施設や高齢者向け住宅についても知っておくことが大切です。
「介護施設」とひとまとめにされることがありますが、実際には施設によって役割や対象者、入居条件、受けられるサービス、費用などが異なります。
代表的なものには、
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護付き有料老人ホーム
- 認知症グループホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
などがあります。
終活の段階で一つの施設に決める必要はありません。
まずは、**「自宅で暮らせなくなったら、どのような住まい方を希望するのか」**を家族と話しておきましょう。
介護施設にはさまざまな種類がある
施設を選ぶときに最初に知っておきたいのが、施設によって目的が違うことです。
例えば、長期的な生活を支える施設もあれば、在宅復帰を目指してリハビリテーションなどを行う施設もあります。
また、
- 要介護度
- 認知症の有無
- 医療的なケアの必要性
- 本人の生活状況
- 施設の空き状況
- 費用
などによっても選択肢は変わります。
「有名だから」「料金が安いから」だけで選ぶのではなく、本人に必要な介護と施設の役割が合っているかを確認することが大切です。
特別養護老人ホームとは?
特別養護老人ホームは「特養」と呼ばれることもあり、常時介護が必要で、自宅での生活が難しい方などが生活する介護保険施設です。
食事、入浴、排せつなどの日常生活上の介護や健康管理などを受けながら生活します。
新規入所は原則として要介護3~5の方が対象となり、要介護1・2の方でも、やむを得ない事情がある場合には特例的に入所が認められることがあります。
例えば、
「一人暮らしを続けることが難しく、日常生活で継続的な介護が必要になった」
といった場合に検討される施設の一つです。
ただし、申し込めばすぐに入所できるとは限りません。地域や施設の状況などによって待機期間が生じる場合があります。
介護老人保健施設とは?
介護老人保健施設は「老健」と呼ばれ、病状が安定した要介護者に対して、在宅復帰を目指したリハビリテーションや必要な医療・介護などを提供する施設です。
例えば、
「入院治療は終わったけれど、すぐに自宅で生活するのは不安」
という場合に、リハビリテーションなどを行いながら自宅へ戻る準備をするケースがあります。
主な特徴は、
- 医師や看護職員などが配置されている
- リハビリテーションを受けられる
- 日常生活上の介護を受けられる
- 在宅復帰・在宅療養支援を目指す
といった点です。
そのため、特別養護老人ホームと同じような「長期間暮らすための施設」と考えないことが大切です。
介護付き有料老人ホームとは?
介護付き有料老人ホームは、介護保険の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた有料老人ホームです。
施設で生活しながら、
- 食事や入浴などの日常生活上の支援
- 介護
- 機能訓練
- 療養上の支援
などを受けられます。
例えば、
「一人暮らしが不安になってきたので、介護を受けられる住まいへ移りたい」
という場合の選択肢になります。
ただし、有料老人ホームには「介護付き」のほか「住宅型」などもあり、介護保険サービスの利用方法が異なります。
また、入居時費用や月額利用料、サービス内容などは施設によって大きく異なります。
施設名だけではなく、契約内容や介護体制まで確認することが重要です。
認知症グループホームとは?
認知症グループホームは、正式には「認知症対応型共同生活介護」といい、認知症のある方が少人数で共同生活を送りながら介護や日常生活上の支援を受けるサービスです。
家庭的な環境の中で、
- 食事
- 掃除
- 洗濯
- 日常生活上の支援
- 必要な介護
などを受けながら生活します。
地域密着型サービスのため、原則としてその事業所がある市区町村の住民が利用する仕組みです。
また、認知症の診断や要支援・要介護認定など一定の利用条件があります。
「認知症になったら誰でもすぐ入れる施設」というわけではないため、実際に検討するときは市区町村や施設へ確認しましょう。
サービス付き高齢者向け住宅とは?
サービス付き高齢者向け住宅は、一般に「サ高住」と呼ばれる高齢者向けの住宅です。
一定のバリアフリー構造などの基準があり、入居者には少なくとも、
- 安否確認
- 生活相談
のサービスが提供されます。
ここで注意したいのが、
サービス付き高齢者向け住宅=介護施設ではない
という点です。
介護や食事、医療との連携など、安否確認・生活相談以外のサービス内容は住宅によって異なります。
中には介護保険の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている住宅もあります。
そのため、将来の住まいとして検討するときは、
- 介護が必要になっても住み続けられるか
- どのような介護サービスを利用できるか
- 夜間の対応はどうなっているか
- 医療機関との連携はあるか
- 毎月必要な費用はいくらか
まで確認しましょう。
施設を選ぶときは費用だけで決めない
介護施設を選ぶとき、費用はもちろん重要です。
しかし、安さだけで決めてしまうと、本人が必要としているサービスと合わない可能性があります。
確認しておきたいのは、
- 入居条件
- 月額費用
- 入居時に必要な費用
- 介護・看護体制
- 医療機関との連携
- 食事
- 居室
- 入浴設備
- 認知症への対応
- 看取りへの対応
- 家族が面会しやすい場所か
などです。
例えば、月額料金が比較的低くても、自宅から遠く離れていれば、家族が面会するための時間や交通費が増えることがあります。
本人が安心して暮らせることと、家族が無理なく関われることの両方を考えて選びましょう。
見学して生活環境を確認する
候補となる施設が見つかったら、パンフレットやホームページだけで判断せず、可能であれば実際に見学しましょう。
見学するときは、
- 職員の対応や雰囲気
- 居室の広さ
- 食堂や共有スペース
- トイレ・浴室
- 清掃状況
- 食事
- 他の入居者の生活の様子
- 夜間の職員体制
- 緊急時の対応
- 医療機関との連携
などを確認します。
さらに、
「要介護度が上がった場合も住み続けられますか?」
「認知症が進んだ場合はどうなりますか?」
「月額料金以外に必要な費用はありますか?」
など、将来を想定した質問もしておきましょう。
主な高齢者施設・住まい比較表
| 種類 | 主な対象・役割 | 主な特徴 | 費用を考えるポイント |
|---|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 原則要介護3以上など | 長期的な生活・介護を支援 | 介護サービス費、居住費、食費など |
| 介護老人保健施設 | 要介護者 | 在宅復帰を目指しリハビリなどを提供 | サービス費、居住費、食費など |
| 介護付き有料老人ホーム | 施設の入居条件による | 施設で介護サービスを受けながら生活 | 入居時費用、月額費用、介護サービス費など |
| 認知症グループホーム | 認知症があり一定の条件を満たす方 | 少人数で共同生活 | 家賃、食費、介護サービス費など |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 主に高齢者 | 安否確認・生活相談がある高齢者向け住宅 | 家賃、共益費、サービス費、介護費など |
※対象者、入居条件、サービス内容、費用は施設・住宅によって異なります。実際に検討するときは個別に確認してください。
終活で介護費用について考えておく
介護について終活で準備するときは、**「介護に必要なお金をどうするか」**も家族と話しておきたい重要な項目です。
介護費用は、在宅介護か施設介護か、要介護度、利用するサービス、所得、住んでいる地域などによって変わります。
そのため、
「老後の介護には必ず○○万円必要」
と一つの金額だけを目標にするより、
何にお金がかかるのかを把握し、自分の収入や財産でどこまで対応できるか
を確認しておくことが大切です。
介護にはどのようなお金がかかる?
介護が始まると、介護サービスの利用料だけではなく、さまざまな費用が発生する可能性があります。
例えば、
- 介護保険サービスの自己負担
- 食費
- 住居費
- おむつなどの日用品
- 福祉用具
- 住宅改修
- 医療費
- 施設へ支払う費用
- 通院などの交通費
などです。
例えば自宅で暮らす場合でも、手すりを取り付けたり、介護ベッドを利用したりすることがあります。
施設へ入居する場合は、介護サービス費とは別に居住費や食費、日常生活費などが必要になる場合があります。
介護費用を考えるときは、介護サービス料金だけを見ないことがポイントです。
在宅介護と施設介護では費用が異なる
介護費用は、生活する場所によっても大きく変わります。
在宅介護では、
- 訪問介護
- デイサービス
- 訪問看護
- ショートステイ
- 福祉用具
- 住宅改修
など、必要なサービスを組み合わせます。
一方、施設介護では、
- 介護サービス費
- 居住費
- 食費
- 日常生活費
- 施設独自のサービス費用
などが必要になることがあります。
ただし、
「在宅介護なら必ず安い」「施設介護なら必ず高い」
とは言い切れません。
利用するサービスの量や住宅改修、家族の状況、施設の料金などによって総額は変わります。
介護保険サービスにも自己負担がある
介護保険サービスを利用しても、すべて無料になるわけではありません。
介護保険の対象となるサービス費については、原則1割を利用者が負担し、一定以上の所得がある方は2割または3割負担となります。
さらに施設を利用する場合には、介護保険サービスの自己負担とは別に、
- 居住費
- 食費
- 日常生活費
などが必要になることがあります。
一方、介護サービス費の自己負担が一定の上限を超えた場合には、「高額介護サービス費」によって負担が軽減される仕組みもあります。
所得などによって条件が異なるため、実際に介護が必要になったときは市区町村やケアマネジャーなどへ確認しましょう。
住宅改修や福祉用具にかかる費用を考える
自宅で介護を受ける場合には、住宅改修や福祉用具が必要になることがあります。
例えば、
- 廊下へ手すりを設置する
- 浴室の段差を解消する
- 車いすを利用する
- 介護ベッドを利用する
- 歩行器を利用する
などです。
一定の条件を満たせば介護保険の給付対象となるものがありますが、すべての工事や福祉用具が対象になるわけではありません。
また、住宅改修は原則として工事前の申請が必要です。
そのため、介護が始まってから慌てて工事を依頼するのではなく、ケアマネジャーや市区町村などへ相談して進めましょう。
預貯金や年金などから支払えるか確認する
終活で介護費用を考えるときは、まず自分のお金を整理します。
確認しておきたいのは、
- 預貯金
- 年金
- 生命保険
- 不動産
- その他の資産
- 毎月の生活費
- 借入金などの負債
です。
例えば、
年金収入の範囲で毎月どの程度まで介護費用を支払えるか
を確認し、不足する場合は預貯金などからどの程度補えるか考えます。
介護費用だけを別に考えるのではなく、食費、光熱費、税金、医療費など通常の生活費も含めて確認することが大切です。
介護費用に備えるためにも、現在の預貯金や不動産、生命保険などの財産を把握しておくことが大切です。詳しくは、「終活で財産整理は何をする?預貯金・不動産・保険のまとめ方を解説」で紹介しています。
家族が費用を負担する場合も話し合っておく
本人の年金や預貯金だけでは介護費用をまかなえず、家族が支援するケースも考えられます。
しかし、
「子どもが払ってくれるだろう」
と本人だけで決めてはいけません。
家族にも、
- 住宅ローン
- 子どもの教育費
- 自分たちの老後資金
- 毎月の生活費
などがあります。
家族の援助が必要になりそうな場合は、
誰が・どの程度・どのような形で負担できるのか
を話し合うことが大切です。
また、家族が直接お金を出す以外にも、利用できる公的制度がないか、市区町村などへ相談しましょう。
介護費用専用の資金を分けておく方法もある
預貯金に余裕がある場合は、将来の介護に使うお金を自分の中で分けて管理する方法もあります。
例えば、
- 日常生活に使うお金
- 医療に備えるお金
- 介護に備えるお金
- 葬儀などに備えるお金
というように目的別に考えておく方法です。
必ず別の銀行口座を作らなければならないわけではありません。
家計簿や財産一覧表などで、
「このうち○○円程度は将来の介護資金として残しておこう」
と分かるようにしておくだけでも管理しやすくなります。
ただし、将来認知症などで本人による預貯金の管理が難しくなる可能性もあります。
「お金を準備すること」と同時に、将来誰がどのように財産管理を支えるのかについても考えておきましょう。
終活で確認しておきたい介護費用一覧
| 費用 | 主な内容 | 確認しておきたいこと |
|---|---|---|
| 介護サービス費 | 訪問・通所・施設サービスなど | 自己負担割合 |
| 住居費 | 自宅維持費・施設の居住費など | 毎月継続して払えるか |
| 食費 | 自宅・施設での食事 | 施設では別途負担の場合あり |
| 福祉用具 | 車いす・介護ベッドなど | 保険給付の対象か |
| 住宅改修 | 手すり・段差解消など | 事前申請・対象工事を確認 |
| 医療費 | 診察・薬など | 介護費とは別に考える |
| 日常生活費 | 衣類・理美容・日用品など | 月々の生活費に含めて考える |
介護費用は「平均○○万円」という数字だけで準備するよりも、自分の場合はどのような生活を希望し、何にお金が必要になりそうかを考えることが重要です。
元気なうちに預貯金や年金、財産を整理し、家族とも介護費用について話しておけば、実際に介護が必要になったときの判断もしやすくなります。
※介護保険の自己負担割合、給付内容、負担軽減制度などは変更される場合があります。実際にサービスを利用するときは、厚生労働省や市区町村などの最新情報をご確認ください。
認知症になった場合に備えて終活で考えておくこと
終活では、将来認知症などによって判断能力が低下した場合に備えて、自分の希望や財産管理について元気なうちから考えておくことも大切です。
認知症になったからといって、すぐに自分で何も決められなくなるわけではありません。認知症の状態や進行には個人差があり、本人の意思をできる限り確認し、尊重しながら支援することが基本です。
その一方で、症状が進行すると、
- 預貯金などの管理
- 契約や各種手続き
- 介護サービスの選択
- 住む場所の判断
- 医療や療養についての意思表示
などが難しくなる場合があります。
そのため終活では、**「認知症になったらどうするか」だけではなく、「自分で十分に判断できる今、何を準備しておくか」**という視点が重要です。
認知症になると自分の希望を伝えることが難しくなる場合がある
認知症が進行すると、物事を理解したり、自分の考えを整理して伝えたりすることが難しくなる場合があります。
例えば家族から、
「自宅で暮らしたい?」
「施設へ移ることをどう思う?」
と聞かれても、自分の希望を十分に説明できなくなる可能性があります。
そこで元気なうちに、
- できるだけ自宅で暮らしたい
- 家族だけに介護を任せたくない
- 一人暮らしが難しくなったら施設も検討してほしい
- できるだけ家族の近くで暮らしたい
- 大切にしている生活習慣を続けたい
など、自分の考えを家族と話しておきましょう。
ただし、過去に話した内容だけで本人の意思を決めつけないことも大切です。
認知症になった後も、本人の表情や言葉などを含め、その時点での意思をできる限り確認しながら支援することが重要です。
財産や通帳の管理方法を考えておく
認知症などによって判断能力が低下すると、預貯金や財産を自分で適切に管理することが難しくなる場合があります。
終活では、まず自分が持っている財産を整理しておきましょう。
例えば、
- 銀行名・支店名
- 預貯金口座
- 定期預金
- 不動産
- 株式などの金融資産
- 生命保険
- 借入金
- 毎月の主な支払い
などを一覧にしておくと、将来の確認に役立ちます。
ただし、通帳・印鑑・キャッシュカード・暗証番号を一か所にまとめて誰でも見られる状態にするのはおすすめできません。
財産一覧と、実物の通帳や重要書類などは安全性を考えて管理しましょう。
また、家族だからといって本人の預貯金を自由に使えるとは限りません。将来の財産管理に不安がある場合は、成年後見制度なども含めて専門家へ相談する方法があります。
重要書類の保管場所を家族に伝える
介護や入院などが必要になったとき、家族が重要書類を探さなければならないことがあります。
例えば、
- 健康保険関係の書類
- 介護保険関係の書類
- 年金関係の書類
- 生命保険証券
- 不動産関係書類
- 遺言書に関する情報
- お薬手帳
- かかりつけ医の情報
などです。
すべての書類を家族へ渡しておく必要はありません。
「重要書類は自宅の○○に保管している」
というように、信頼できる家族へ保管場所を伝えておくだけでも、緊急時に探し回る負担を減らせます。
定期的に書類を確認し、古くなった情報は更新しておきましょう。
認知症になった場合の介護場所について話しておく
認知症になった場合にどこで生活したいのかについても、元気なうちに家族と話しておきましょう。
例えば、
第1希望:できる限り自宅で生活する
第2希望:一人暮らしが難しくなったら家族の近くへ住む
第3希望:常時介護が必要になったら施設を検討する
というように複数の選択肢を考えておく方法があります。
認知症になったからといって、必ず施設へ入居しなければならないわけではありません。
本人の状態や住環境、家族の状況、利用できる介護サービスなどによって適切な生活場所は変わります。
そのため、「絶対に自宅」「絶対に施設」と決めつけるより、本人がどのような生活を大切にしたいのかを家族と共有しておくことが重要です。
成年後見制度について知っておく
成年後見制度は、認知症などによって判断能力が十分でない方について、財産管理や契約などを法律面・生活面から支援する制度です。
大きく分けると、
- 法定後見制度
- 任意後見制度
があります。
法定後見制度では、本人の判断能力が不十分になった後に、本人、配偶者、四親等内の親族などが家庭裁判所へ申立てを行い、家庭裁判所が成年後見人等を選任します。
本人の判断能力の程度などに応じて、
- 後見
- 保佐
- 補助
の3つの類型があります。
成年後見人等は、本人の財産管理や必要な契約などを支援します。
ただし、認知症になったら必ず成年後見制度を利用しなければならないわけではありません。
本人の判断能力や必要な支援によって利用を検討する制度だと理解しておきましょう。
任意後見制度という選択肢もある
任意後見制度は、本人の判断能力が十分なうちに、将来自分の判断能力が不十分になった場合に備えて、支援してもらう人やお願いする内容をあらかじめ決めておく制度です。
例えば、
「将来、自分で財産管理や契約が難しくなったら、信頼できる人に支援してもらいたい」
という希望がある場合に検討できます。
任意後見契約は、公証人が作成する公正証書によって締結します。
ただし、契約した直後から任意後見が始まるわけではありません。
本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から任意後見契約の効力が生じます。
そのため、任意後見制度を検討する場合は、制度の仕組みを十分理解したうえで、公証役場や専門家などへ相談するとよいでしょう。
判断能力が十分なうちに準備することが大切
認知症への備えは、認知症になってから始めるのではなく、自分で考えて意思を伝えられるうちに始めることがポイントです。
例えば、
- 財産を整理する
- 重要書類の場所を確認する
- 介護場所について家族と話す
- 医療や療養の希望を伝える
- 財産管理の方法を考える
- 必要なら任意後見制度について調べる
といった準備ができます。
ただし、すべてを一度に決める必要はありません。
まずは家族に、
「もし認知症になったら、できるだけ自分の希望を聞きながら一緒に考えてほしい」
と伝えることから始めてもよいでしょう。
認知症に備えて終活で確認したいこと
| 項目 | 確認しておきたいこと |
|---|---|
| 生活 | どこで、どのように暮らしたいか |
| 介護 | 家族・介護サービスについての希望 |
| 財産 | 預貯金・不動産・保険などを把握する |
| 書類 | 重要書類の保管場所を整理する |
| 医療 | 治療・療養について希望を考える |
| 成年後見 | 制度の基本を知っておく |
| 任意後見 | 判断能力が十分なうちに検討する |
| 家族 | 自分が大切にしていることを伝える |
介護と医療について家族と話しておきたいこと
介護が必要になる時期には、医療について家族が判断を求められることもあります。
特に、急な入院や病状の変化によって本人が十分に意思を伝えられなくなった場合、家族が、
「本人はどのような治療を希望していたのだろう」
「どこで療養したかったのだろう」
と悩むことがあります。
終活では、治療方法を細かく決めておくことだけが目的ではありません。
自分が大切にしたいことや、どのように暮らしたいかを家族や信頼できる人と共有しておくことが重要です。
持病や服用している薬を整理しておく
急な体調不良や入院に備えて、現在の健康状態や薬について整理しておきましょう。
例えば、
- 持病
- 現在治療している病気
- 服用している薬
- 薬のアレルギーなど
- かかりつけ医
- 通院している医療機関
などです。
薬については、お薬手帳を最新の状態にしておくと確認しやすくなります。
例えば救急搬送された場合でも、家族が服用している薬を把握していれば、医療機関へ情報を伝えやすくなります。
ただし、薬の中止や変更は本人や家族だけで判断せず、医師・薬剤師などに相談してください。
かかりつけ医や医療機関を家族に伝える
家族には、普段どこの医療機関へ通っているのかも伝えておきましょう。
まとめておきたい情報として、
| 項目 | 記録例 |
|---|---|
| かかりつけ医 | ○○医院 |
| 診療科 | 内科 |
| 電話番号 | 医療機関の連絡先 |
| 通院中の病気 | 高血圧など |
| 薬 | お薬手帳で確認 |
| その他の医療機関 | 眼科・歯科など |
などがあります。
複数の医療機関へ通院している場合は、一覧にしておくと家族にも分かりやすくなります。
入院した場合の連絡先を決める
急に入院することになった場合に備えて、誰へ連絡してほしいのか決めておきましょう。
例えば、
第1連絡先:配偶者
第2連絡先:長男
第3連絡先:長女
というように優先順位を付けておく方法があります。
あわせて、
- 氏名
- 続柄
- 電話番号
- 住所
- 連絡しやすい時間帯
などをまとめておくと便利です。
電話番号や家族の状況は変わるため、年に一度など定期的に見直しましょう。
治療や療養について自分の希望を考える
終活では、「どの治療を受けるか」だけでなく、自分がどのような生活を大切にしたいかを考えてみましょう。
例えば、
- できるだけ自宅で療養したい
- 家族と過ごせる時間を大切にしたい
- 苦痛をできるだけ和らげてほしい
- 自宅療養が難しければ医療機関なども検討したい
- 医療について家族と一緒に説明を聞きたい
などです。
実際の治療は、病状や医学的な判断、本人の意思などを踏まえ、医療・ケアチームと話し合いながら決めていきます。
終活の段階で将来の治療内容をすべて決める必要はありません。
**「自分は何を大切にしたいのか」**を伝えておくことが、将来の話し合いの手がかりになります。
人生の最終段階の医療・ケアについて話し合う
厚生労働省では、本人が大切にしていることや望んでいる生き方、もしものときに希望する医療・ケアについて前もって考え、家族や信頼できる人、医療・ケアチームなどと話し合う取り組みを**「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」**として普及しています。
例えば、
「できるだけ自宅で過ごしたい」
「家族と一緒に過ごす時間を大切にしたい」
「自分で意思を伝えられなくなったら、この人に自分の考えを伝えてほしい」
など、自分の価値観や希望について話しておきます。
大切なのは、単に書類へ「希望する・希望しない」と記入することではありません。
本人・家族など・医療や介護の専門職が話し合いながら、その時点で本人にとって望ましい医療・ケアを考えるプロセスが重要です。
希望は一度決めたら終わりではなく見直してよい
医療や介護についての希望は、一度決めたら変更してはいけないものではありません。
例えば、元気なときには、
「何があっても自宅で過ごしたい」
と思っていても、病気になってから、
「医療を受けやすい場所の方が安心だ」
と考えが変わることがあります。
反対に、入院生活を経験して、
「できるだけ自宅で家族と過ごしたい」
という気持ちが強くなることもあります。
厚生労働省のガイドラインでも、本人の意思は心身の状態などによって変化する可能性があるため、繰り返し話し合うことが重要とされています。
そのため、
考える → 家族などと話す → 記録する → 状況が変わったらもう一度話す
という流れで進めましょう。
介護・医療について家族と共有しておきたいこと
| 項目 | 家族と共有しておきたい内容 |
|---|---|
| 健康 | 持病・現在の健康状態 |
| 薬 | 服用している薬・お薬手帳 |
| 医療機関 | かかりつけ医・通院先 |
| 緊急時 | 家族などの連絡先 |
| 療養 | どこで、どのように過ごしたいか |
| 医療・ケア | 自分が大切にしたいことや希望 |
| 意思表示 | 自分で伝えられない場合に備えた考え |
| 見直し | 健康状態や気持ちの変化に合わせて再確認 |
介護や医療について話すことは、「最期を決めてしまうこと」ではありません。
これからどのように生きたいのか、自分が大切にしていることを周囲と共有することです。
元気なうちから少しずつ話しておけば、将来本人が意思を伝えることが難しくなった場合にも、家族や医療・介護の専門職が本人の考えを理解するための大切な手がかりになります。
介護についてエンディングノートに書いておきたいこと
介護について自分なりの希望を考えていても、家族に伝わっていなければ、いざというときに確認できません。
そこで役立つのがエンディングノートです。
介護について家族に伝えておきたい希望は、エンディングノートにまとめておくと確認しやすくなります。書き方については、「エンディングノートとは?書き方と必要な項目を初心者向けに解説」も参考にしてください。
エンディングノートには、例えば、
- 介護を受けたい場所
- 利用したい介護サービス
- 家族にお願いしたいこと
- 介護費用についての考え
- 認知症になった場合の希望
- 医療や療養についての希望
- 緊急連絡先
などを書いておくとよいでしょう。
ただし、エンディングノートに一度書いた内容を「絶対に変更できない希望」と考える必要はありません。
健康状態や家族の生活環境、気持ちの変化などに合わせて、定期的に見直していきましょう。
介護を受けたい場所
まず書いておきたいのが、介護が必要になったときにどこで生活したいかという希望です。
例えば、
- できる限り自宅で暮らしたい
- 訪問介護などを利用しながら自宅で生活したい
- 一人暮らしが難しくなったら家族の近くへ移りたい
- 家族の負担が大きくなったら施設を検討したい
などがあります。
「絶対に自宅」と一つに限定するのではなく、
第1希望:できるだけ自宅
第2希望:自宅生活が難しくなったら高齢者向け住宅
第3希望:常時介護が必要になったら介護施設
というように、状況に応じた複数の希望を書いておく方法もあります。
将来どのような介護が必要になるかは予測できないため、柔軟性を持たせておくと家族も判断しやすくなります。
希望する介護サービス
在宅介護を希望する場合は、「家族に介護してほしい」と書くだけではなく、介護保険サービスをどのように利用したいかも考えておきましょう。
例えば、
- 訪問介護を利用したい
- 必要なら訪問看護を利用したい
- デイサービスを利用して外出や交流を続けたい
- 家族が休めるようショートステイも利用したい
- 必要になったら福祉用具を利用したい
などです。
実際に利用できるサービスは、本人の要介護状態や認定区分、地域のサービス提供状況などによって異なります。
そのため、
「必要になったら介護サービスを積極的に利用し、家族だけに負担をかけないでほしい」
という基本的な考えを書いておくだけでも役立ちます。
介護をお願いしたい人
介護については、「誰に支えてもらいたいか」も書いておきましょう。
ただし、
「長男に介護してもらう」
と本人だけで決めてしまうのは避けた方がよいでしょう。
家族にも仕事や家庭、健康状態などがあります。
例えば、
- 長男にはケアマネジャーなどとの連絡をお願いしたい
- 長女には可能な範囲で通院の付き添いをお願いしたい
- 日常的な身体介護は介護サービスを利用したい
- 家族だけで難しい場合は施設も検討してほしい
というように、お願いしたいことを具体的に書くと分かりやすくなります。
そして、書く前または書いた後には本人だけで決めず、家族にも相談しておきましょう。
介護費用についての希望
介護には、介護サービスの自己負担だけでなく、医療費、生活費、福祉用具、住宅改修、施設費用などが必要になる場合があります。
そこで、
- 年金から支払う
- 預貯金を介護費用に使ってよい
- 介護のために確保している資金がある
- 家族へ過度な経済的負担をかけたくない
- 施設を選ぶ場合は支払いを継続できる範囲で検討してほしい
など、自分の考えを書いておくとよいでしょう。
例えば、
「介護が必要になったら、まず自分の年金と預貯金を介護費用に使ってください。子どもにはできるだけ経済的な負担をかけたくありません」
という書き方もできます。
ただし、将来必要になる介護費用は予測できません。
具体的な金額だけを決めるより、自分のお金をどのような考え方で使ってほしいかを家族と共有することが大切です。
認知症になった場合の希望
認知症などによって判断能力が低下すると、自分の希望を十分に伝えることが難しくなる場合があります。
元気なうちに、
- できるだけ自宅で暮らしたい
- 一人暮らしが危険になったら施設も検討してほしい
- 家族だけで無理に介護しないでほしい
- 自分の財産は自分の生活や介護のために使ってほしい
- 大切にしている生活習慣をできる限り続けたい
などを書いておきましょう。
ただし、過去に書かれた内容だけで、その後の本人の意思を決めつけるものではありません。
本人がその時点で意思を示せる場合には、現在の本人の気持ちをできる限り確認しながら考えることが大切です。
医療・療養についての希望
介護と医療は密接に関係しています。
エンディングノートには、
- かかりつけ医
- 通院している医療機関
- 持病
- 服用している薬
- 希望する療養場所
- 医療・ケアについて大切にしたいこと
- 自分で意思を伝えられない場合に相談してほしい人
などを書いておくとよいでしょう。
例えば、
「できる限り自宅で家族と過ごしたい。ただし、自宅での療養が難しい場合は、医師や家族と相談して決めてほしい」
という書き方もできます。
将来の病状や治療内容をすべて予測することはできません。
細かな治療方法だけを決めるより、**「自分は何を大切にしたいのか」**を書いておくことも重要です。
緊急連絡先
急な入院や介護が必要になった場合に備えて、緊急連絡先もまとめておきましょう。
例えば、次のように整理します。
| 優先順位 | 氏名 | 続柄・関係 | 電話番号 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 第1連絡先 | ○○○○ | 配偶者 | ○○○-○○○○-○○○○ | 同居 |
| 第2連絡先 | ○○○○ | 長男 | ○○○-○○○○-○○○○ | 市内在住 |
| 第3連絡先 | ○○○○ | 長女 | ○○○-○○○○-○○○○ | 県外在住 |
家族以外にも必要に応じて、
- かかりつけ医
- 医療機関
- ケアマネジャー
- 介護事業所
などの連絡先をまとめておくと便利です。
電話番号や担当者は変わることがあるため、定期的に更新しましょう。
定期的に内容を見直す
エンディングノートは、一度書いたら完成というものではありません。
例えば、
- 健康状態が変わった
- 配偶者が亡くなった
- 子どもが遠方へ転居した
- 介護サービスを利用し始めた
- 介護施設への考え方が変わった
- 医療・療養についての希望が変わった
といった場合には、内容を見直しましょう。
「毎年誕生日に確認する」「年末に見直す」など、確認する時期を決めておく方法もあります。
エンディングノートに書いておきたい介護項目チェック表
| 項目 | 書いておきたい内容 |
|---|---|
| 介護場所 | 自宅・家族宅・施設など |
| 介護サービス | 訪問・通所・短期入所などへの希望 |
| 家族 | 誰に何を相談・依頼したいか |
| 費用 | 年金・預貯金などをどう使うか |
| 認知症 | 生活場所・財産管理などの希望 |
| 医療・療養 | 大切にしたいこと・希望する療養場所など |
| 緊急時 | 家族・医療機関などの連絡先 |
| 更新 | 内容を確認した年月日 |
エンディングノートは、本人の希望を家族へ伝えるための便利な手段です。
ただし、「書いたから家族に説明しなくてもよい」というものではありません。
書いた内容について家族と話し合い、どこに保管しているかまで伝えておきましょう。
終活で介護について家族と話し合う方法
介護について考えていても、「家族にどう切り出したらいいのか分からない」という方もいるでしょう。
最初から、
「将来は誰が介護する?」
という話をすると、家族も重く感じてしまうかもしれません。
まずは、
「もし将来介護が必要になったら、自分はどう暮らしたいか」
という本人の希望から話し始めると自然です。
大切なのは、一度の話し合いですべてを決定することではありません。
本人と家族がそれぞれの考えや事情を伝えながら、少しずつ方向性を共有していきましょう。
元気なうちに少しずつ話し始める
介護についての話し合いは、介護が必要になってから始めるより、元気なうちから少しずつ始める方が落ち着いて考えられます。
例えば、
- 友人が介護施設へ入居した
- テレビで介護について取り上げていた
- エンディングノートを書き始めた
- 介護保険について調べた
といった機会をきっかけにしてもよいでしょう。
例えば、
「最近、終活について考えているんだけど、もし介護が必要になったときのことも少し話しておきたい」
と切り出せば、比較的自然に話を始められます。
「介護してほしい」ではなく「どうしたいか」を伝える
家族との話し合いでは、
「あなたに介護してほしい」
と最初から役割を決めるより、
「自分はどう暮らしたいのか」
を伝えることから始めましょう。
例えば、
「もし介護が必要になったら、できれば自宅で暮らしたいと思っている。でも家族だけに負担をかけたくないから、介護サービスも利用したい」
という伝え方です。
この言い方なら、
- 本人は自宅を希望している
- 家族だけに介護を任せるつもりではない
- 介護サービスを利用する考えがある
という3つの考えを家族に伝えられます。
「誰が介護するか」から始めるのではなく、本人が大切にしたい生活を共有することから始めるのがポイントです。
家族の希望や事情も聞く
介護について話し合うときは、本人が希望を伝えるだけで終わらせないことも大切です。
家族にも、
- 仕事
- 子育て
- 自分自身の健康
- 配偶者との生活
- 住んでいる場所
- 経済的な事情
があります。
例えば本人が、
「できれば自宅で介護してほしい」
と希望していても、子ども全員が遠方に住んでいる場合には、家族だけで支えることが難しいかもしれません。
そこで、
「私はこうしたいと思っているけれど、みんなはどう思う?」
と家族の考えも聞きましょう。
本人の希望と家族の事情をすり合わせながら、訪問介護やデイサービス、施設なども含めて現実的な方法を考えることが重要です。
一度ですべて決める必要はない
介護については、将来の状況を完全に予測することはできません。
そのため、
- どこの施設に入るか
- 誰が何曜日に介護するか
- 介護費用がいくら必要か
といった細かなことまで、元気なうちにすべて決める必要はありません。
まずは、
- できるだけ自宅で暮らしたいか
- 施設への入居も選択肢にできるか
- 家族だけで無理をしてほしくないか
- 介護サービスを利用したいか
- どのような生活を大切にしたいか
といった基本的な考え方を共有するだけでも十分な第一歩になります。
話し合った内容をメモに残す
家族と話し合った内容は、簡単でもよいので記録しておきましょう。
例えば、
2026年9月15日
- できるだけ自宅で生活したい
- 訪問介護やデイサービスの利用は問題ない
- 家族だけで介護できなくなったら施設も検討する
- 介護費用には本人の年金・預貯金を使う
- 状況が変わったら再度家族で相談する
という程度でも構いません。
話した日付を記録しておけば、いつの時点での希望なのかも分かります。
その内容をエンディングノートに整理しておくのもよいでしょう。
状況が変わったら家族でもう一度話し合う
介護についての希望は、一度話したら終わりではありません。
本人の気持ちも家族の状況も変化します。
例えば、
- 本人の健康状態が変わった
- 要介護認定を受けた
- 配偶者が介護できなくなった
- 子どもの仕事が変わった
- 家族が遠方へ転居した
- 介護サービスを利用し始めた
- 自宅での生活が難しくなってきた
といったときは、改めて話し合いましょう。
厚生労働省が推進する「人生会議(ACP)」でも、本人が大切にしたいことや望む医療・ケアなどについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと共有し、気持ちの変化に応じて繰り返し話し合うことが大切とされています。
家族と介護について話し合う流れ
| 順番 | 話し合うこと | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 本人の希望 | どのように暮らしたいか |
| 2 | 家族の事情 | 仕事・住居・健康など |
| 3 | 介護サービス | 家族だけで抱え込まない方法 |
| 4 | 介護費用 | 本人のお金をどう使うか |
| 5 | 医療・療養 | 大切にしたいことを共有する |
| 6 | 記録 | エンディングノートなどへ残す |
| 7 | 見直し | 状況や気持ちが変わったら再度話す |
介護について家族と話す目的は、将来のことをすべて決めてしまうことではありません。
「自分はどのように暮らしたいのか」「家族はどこまで支援できるのか」「介護サービスをどのように利用するのか」を少しずつ共有しておくことが大切です。
元気なうちから話し合いを重ねておけば、実際に介護が必要になったときにも、本人と家族が一から悩む負担を減らし、その時点の状況に合わせてより納得できる選択をしやすくなります。
終活で介護の準備をするときの注意点
終活で介護について準備しておけば、将来介護が必要になったときに、本人や家族が判断しやすくなります。
ただし、「自宅で介護してほしい」「長男に任せたい」など、本人の希望だけで決めてしまうと、実際に介護が始まったときに家族が対応できないことがあります。
介護の準備では、
- 本人の希望
- 家族の生活や仕事
- 介護サービス
- 介護費用
- 住まい
- 認知症への備え
- 医療・療養
を総合的に考えることが大切です。
また、将来の健康状態や家族の状況を完全に予測することはできません。**「今すべてを決める」のではなく、「基本的な希望を共有し、状況が変わったら見直す」**という考え方で進めましょう。
家族だけで介護すると決めつけない
「介護は家族がするもの」と最初から決めつけないことが大切です。
家族だけで介護しようとすると、
- 食事や入浴などの介助
- 通院の付き添い
- 買い物
- 夜間の対応
- 介護サービスとの連絡
- 行政手続き
など、多くの負担が家族にかかる可能性があります。
介護保険には、訪問介護、デイサービス、ショートステイなど、在宅生活を支えるさまざまなサービスがあります。
例えば、
「できるだけ自宅で暮らしたい。ただし、家族だけで無理をせず、必要な介護サービスを利用してほしい」
という希望を伝えておけば、本人の希望と家族への配慮を両立しやすくなります。
介護する人を一人に集中させない
家族の中で親の近くに住んでいる人がいると、その人に介護負担が集中してしまうことがあります。
例えば長男が親の近くに住んでいる場合でも、
「近くに住んでいるから、長男が全部やればよい」
と考えるのは避けましょう。
家族それぞれができることを分担する方法があります。
| 役割 | 分担例 |
|---|---|
| 日常的な連絡 | 近くに住む家族 |
| 通院 | 都合のつく家族 |
| 情報収集 | 遠方に住む家族 |
| 行政手続き | 手続きしやすい家族 |
| 身体介護など | 必要に応じて介護サービス |
| 家族間の連絡 | 兄弟姉妹で共有 |
全員が同じ量を担当する必要はありません。
「一人に全部任せない」ことを基本に、それぞれができる方法を考えることがポイントです。
働く家族についても、仕事を辞めることを前提とせず、介護サービスや勤務先の両立支援制度などを確認しましょう。
本人の希望だけでなく家族の事情も考える
終活では本人の希望を伝えることが大切ですが、家族にも生活があります。
例えば、
- 仕事
- 子育て
- 配偶者との生活
- 自分自身の健康
- 住居
- 経済状況
などです。
本人が「最後まで自宅で介護してほしい」と希望しても、家族が遠方に住んでいたり、仕事を続けていたりすれば難しい場合があります。
そこで、
「私はできれば自宅で暮らしたいと思っているけれど、みんなはどこまでできそう?」
と家族の考えも聞いてみましょう。
本人の希望を一方的に押し付けるのではなく、本人と家族の双方が無理をしない方法を探すことが重要です。
介護費用を家族任せにしない
介護費用についても、
「足りなくなったら子どもに払ってもらえばいい」
と考えないようにしましょう。
介護には、
- 介護サービスの自己負担
- 医療費
- 食費
- 住居費
- 福祉用具
- 住宅改修
- 施設費用
- 日用品
など、さまざまなお金が必要になる可能性があります。
終活では、
自分の年金+預貯金+その他の財産でどの程度対応できるのか
を確認しておきます。
不足する可能性がある場合も、家族だけで判断するのではなく、利用できる公的な負担軽減制度などについて市区町村へ相談しましょう。
施設や介護サービスの情報を早めに集める
介護が必要になってから初めて施設やサービスを探すと、本人も家族も短期間で多くの判断をしなければならない場合があります。
元気なうちに、
- 自宅周辺にどのような介護サービスがあるか
- 地域包括支援センターはどこにあるか
- どのような介護施設があるか
- 高齢者向け住宅にはどのような種類があるか
などを調べておくとよいでしょう。
ただし、現在調べた施設に将来必ず入居できるとは限りません。
入居条件、空室、料金、サービス内容などは変わる可能性があるため、終活では**「候補や選択肢を知っておく」程度でも十分**です。
認知症になる前から準備を始める
認知症への備えも、本人の判断能力が十分なうちから始めることが重要です。
例えば、
- 財産を一覧にする
- 重要書類を整理する
- 介護場所について希望を伝える
- 医療や療養について考える
- 信頼できる家族などと話す
- 必要に応じて成年後見制度や任意後見制度について調べる
などがあります。
ただし、「認知症になったら本人には何も決められない」と考えるのは適切ではありません。
認知症になった後も、その時点での本人の意思や気持ちをできる限り確認しながら支援することが大切です。
終活で行う準備は、将来本人の意思を無視するためではなく、本人が大切にしてきたことを周囲が理解するための手がかりを残すことだと考えましょう。
介護・医療の希望は定期的に見直す
介護や医療についての希望は、一度決めたら変更できないものではありません。
例えば60代では、
「絶対に自宅で暮らしたい」
と思っていても、80代になって身体状況が変化すると、
「介護や医療を受けやすい施設の方が安心」
と思うようになることもあります。
そのため、
考える → 家族などと話す → 記録する → 定期的に見直す
という流れで進めましょう。
厚生労働省が推進している「人生会議(ACP)」でも、本人の気持ちは変化することがあるため、その都度、何度でも繰り返し話し合うことが大切とされています。
終活で介護を準備するときの注意点チェック表
| 注意点 | 確認すること |
|---|---|
| 家族だけで介護しない | 介護サービスも選択肢にする |
| 一人に集中させない | 家族・専門職などで役割を分ける |
| 家族の事情 | 仕事・健康・住居なども確認する |
| 介護費用 | 本人の年金・預貯金などを把握する |
| 施設・サービス | 元気なうちから情報を集める |
| 認知症 | 判断能力が十分なうちから準備する |
| 医療・介護の希望 | 状況に合わせて定期的に見直す |
終活と介護についてよくある質問
ここでは、終活で介護について考え始めた方が疑問に感じやすいことをまとめます。
介護は本人の健康状態や家族構成、住環境、経済状況などによって適切な準備が異なります。
「すべての人に共通する正解がある」と考えず、本人と家族に合った方法を考えることが大切です。
介護の準備は何歳から始めればいいですか?
「○歳から始めなければならない」という決まりはありません。
介護は年齢だけでなく、病気やけがなどをきっかけに必要になる場合もあるため、元気で自分の希望を伝えられるうちから少しずつ考えるのがおすすめです。
例えば60代であれば、
- 自分はどこで暮らしたいか
- 預貯金や年金はどの程度あるか
- 家族へ何をお願いしたいか
を確認するところから始めてもよいでしょう。
年齢そのものより、**「元気な今が始めどき」**と考えると分かりやすいでしょう。
まだ元気でも介護について考える必要がありますか?
元気なときだからこそ考えておく意味があります。
介護が必要になってからでは、本人が体調を崩していたり、家族が急いでサービスや施設を探さなければならなかったりすることがあります。
元気なうちなら、
- 自分の希望を考える
- 家族と話す
- 介護サービスを調べる
- 財産を整理する
- エンディングノートへ記録する
といった準備を自分のペースで進められます。
すべてを決める必要はありません。まずは**「もし介護が必要になったら、どう暮らしたいか」**を考えるだけでも第一歩です。
親と介護についてどう話せばいいですか?
いきなり、
「介護が必要になったらどうする?」
と聞くと、親が身構えてしまう場合があります。
例えば、
「最近、介護についての記事を読んだんだけど、お父さんとお母さんは将来どんな暮らしをしたい?」
というように、普段の会話から始める方法があります。
ポイントは、
- 最初から結論を求めない
- 親の話を聞く
- 自宅か施設かを無理に決めない
- お金の話だけにしない
- 一度で終わらせず何度か話す
ことです。
「介護を誰がするか」より、**「本人がどんな生活を望んでいるか」**から話すと進めやすくなります。
自宅介護と施設介護はどちらがいいですか?
どちらが一律に良いとは言えません。
自宅介護には住み慣れた環境で生活できる良さがあります。一方、必要な介護量や住宅環境によっては、施設の方が本人も家族も安心して生活できる場合があります。
比較するときは、
| 自宅介護で確認 | 施設介護で確認 |
|---|---|
| 自宅の安全性 | 入居条件 |
| 利用できるサービス | 介護・看護体制 |
| 家族の支援 | 医療との連携 |
| 住宅改修 | 居室・生活環境 |
| 毎月の費用 | 入居時・月々の費用 |
などを確認しましょう。
本人の希望・要介護状態・家族の事情・費用・住環境を総合的に考えることが大切です。
介護費用はいくら準備すればいいですか?
介護費用について「一人○○万円あれば十分」と決めることはできません。
必要な金額は、
- 在宅介護か施設介護か
- 要介護度
- 利用するサービス
- 介護期間
- 所得
- 住居
- 医療費
などによって大きく変わるためです。
そのため、平均額だけを目標にするより、
毎月の年金収入 − 生活費 − 介護に使える金額
を確認し、不足分を預貯金などでどの程度補えるか考える方法が現実的です。
終活では「介護費用はいくら必要か」だけではなく、自分がどのような介護生活を希望するのかとセットで考えましょう。
介護保険は何歳から利用できますか?
介護保険の被保険者は年齢によって大きく2つに分かれます。
65歳以上の方は第1号被保険者で、要介護・要支援認定を受けた場合に介護保険サービスを利用できます。
一方、40~64歳の医療保険加入者は第2号被保険者で、介護保険法で定められた特定疾病が原因で要介護・要支援状態になった場合にサービスの対象となります。
つまり、
「40歳になれば、原因を問わず誰でも介護保険サービスを利用できる」わけではありません。
実際に介護が必要になった場合は、市区町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターなどへ相談しましょう。
家族が介護できない場合はどうすればいいですか?
家族が介護できないからといって、家族だけで解決する必要はありません。
例えば、
- 訪問介護
- デイサービス
- ショートステイ
- 訪問看護
- 福祉用具
- 介護施設
など、本人の状態に応じてさまざまな選択肢があります。
まずは地域包括支援センターや市区町村などへ相談し、利用できる制度や介護サービスを確認しましょう。
「家族が介護できない=介護する人がいない」ではありません。
専門職や介護サービスを利用しながら生活を支える方法を考えることができます。
認知症になる前に準備しておくことはありますか?
あります。
特に、
- 財産を整理する
- 重要書類の保管場所を確認する
- 介護場所について家族と話す
- 医療・療養について希望を伝える
- 緊急連絡先をまとめる
- 必要に応じて任意後見制度などを調べる
といった準備が考えられます。
ただし、認知症への備えは「家族が全部決められるようにしておくこと」ではありません。
本人の意思や価値観を家族が理解できるようにしておくことが重要です。
介護の希望はエンディングノートに書けば十分ですか?
エンディングノートへ書くだけで終わらせない方がよいでしょう。
エンディングノートは本人の希望を整理して家族へ伝えるのに役立ちますが、書いた内容を家族が知らなければ、必要なときに確認できません。
おすすめなのは、
①自分で考える
↓
②家族などと話し合う
↓
③エンディングノートなどへ記録する
↓
④保管場所を伝える
↓
⑤定期的に見直す
という流れです。
また、エンディングノートは一般に、遺言書のように財産の相続方法などについて法的効力を持たせるための書類ではありません。
介護や医療についても、ノートだけですべてが自動的に決まるものではないため、家族や必要に応じて医療・介護の専門職と話し合っておくことが大切です。
終活と介護のFAQ早見表
| 疑問 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 何歳から準備する? | 年齢より元気なうちに始める |
| 元気でも必要? | 希望を伝えられるうちの準備が大切 |
| 親との話し方は? | 「どう暮らしたいか」から聞く |
| 自宅と施設どちら? | 本人・家族・状態・費用などで判断 |
| 介護費用はいくら? | 一律の必要額はない |
| 介護保険は何歳から? | 65歳以上と40~64歳では利用条件が異なる |
| 家族が介護できない | 公的制度や介護サービスを活用する |
| 認知症への備え | 財産・生活・医療などの希望を整理する |
| ノートだけで十分? | 家族との話し合い・共有・見直しも必要 |
終活で介護について準備する目的は、将来の生活を細かく決めてしまうことではありません。
**「自分はどのように暮らしたいか」「家族にはどこまでお願いしたいか」「専門職や介護サービスをどう活用したいか」**という基本的な考えを共有しておくことが重要です。
本人と家族の状況は変化します。今決めた内容に縛られず、そのときの状況や本人の気持ちに合わせて見直していきましょう。
終活では元気なうちに介護の希望を家族と話しておこう
終活で介護について考えるときは、介護が必要になってからではなく、元気で自分の希望を伝えられるうちに準備しておくことが大切です。
介護を受ける場所や利用したい介護サービスだけでなく、介護費用、認知症への備え、医療・療養についても少しずつ考えておきましょう。
ただし、将来のことをすべて決める必要はありません。
本人の希望と家族の事情を確認しながら、
考える → 家族と話す → 記録する → 状況が変わったら見直す
という流れで進めることがポイントです。
今日覚えておきたい重要ポイント3つ
この記事で特に覚えておきたいのは、次の3つです。
- 介護が必要になる前に本人の希望を考えておく
- 在宅・施設・費用・認知症・医療について家族と話す
- 一度決めて終わりではなく、状況に合わせて見直す
例えば、
「できるだけ自宅で暮らしたい。でも家族だけに介護を任せたくないので、必要になったら訪問介護やデイサービスなども利用したい」
と伝えておくだけでも、本人がどのような生活を望んでいるのか家族が理解しやすくなります。
大切なのは、「誰に介護してもらうか」だけを決めるのではなく、「自分はどのように暮らしたいのか」を家族と共有することです。
終活で考えておきたい介護準備早見表
介護について何から準備すればよいか迷ったら、次の表を参考に一つずつ確認してみましょう。
| 項目 | 考えておきたいこと |
|---|---|
| 介護場所 | 自宅・家族宅・施設など |
| 介護する人 | 家族・介護サービスなど |
| 介護サービス | 訪問・通所・短期入所など |
| 費用 | 預貯金・年金など |
| 認知症 | 財産管理・生活・介護の希望 |
| 医療 | 治療・療養についての希望 |
| 家族 | 役割や負担について話し合う |
| 記録 | エンディングノートなどに残す |
この中でも、最初に考えやすいのは**「どこで暮らしたいか」**です。
例えば、
第1希望:できるだけ自宅で暮らす
第2希望:一人暮らしが難しくなったら高齢者向け住宅などを検討する
第3希望:常時介護が必要になったら介護施設も検討する
というように複数の選択肢を考えておけば、将来の状況に合わせて判断しやすくなります。
また、「自宅で暮らしたい」という希望があっても、家族だけで介護する必要はありません。訪問介護、訪問看護、デイサービス、ショートステイ、福祉用具などを組み合わせながら在宅生活を支える方法があります。
家族と話しておきたい介護チェックリスト
終活で介護についてどこまで準備できているか、次のチェックリストで確認してみましょう。
- □ 介護を受けたい場所を考えた
- □ 家族に希望を伝えた
- □ 家族ができることを確認した
- □ 介護サービスについて調べた
- □ 介護施設について調べた
- □ 介護費用を確認した
- □ 認知症への備えを考えた
- □ 医療・療養の希望を考えた
- □ 緊急連絡先を整理した
- □ エンディングノートなどに記録した
- □ 定期的に希望を見直している
すべてにチェックが付かなくても問題ありません。
例えば最初は、
「介護を受けたい場所を考える」
「家族に自分の希望を伝える」
という2項目から始めてもよいでしょう。
その後、預貯金や年金を確認したり、地域の介護サービスや施設を調べたりしながら、少しずつ準備を進めます。
そして、エンディングノートなどに記録した後も、健康状態や家族の生活環境が変わったときには内容を見直しましょう。
終活で介護について考えることは、将来の不安をすべてなくすためではありません。
参考元:
- 厚生労働省「人生会議(ACP)」
- 厚生労働省「介護保険制度・介護サービス」
- 厚生労働省「認知症施策・意思決定支援」
- 裁判所「成年後見制度・任意後見制度」
介護・医療・認知症への備えについて、公的機関の最新情報を基に確認しているため、信頼性は高い内容です。制度は変更される場合があるため、利用時は最新情報をご確認ください。
まとめ
終活で介護について考えるときは、介護が必要になってからではなく、元気なうちに自分の希望を整理して家族と話し合っておくことが大切です。在宅介護や施設への入居、利用したい介護サービス、費用、認知症への備え、医療・療養などについて少しずつ考えておきましょう。すべてを一度に決める必要はありません。本人の希望だけでなく家族の生活や負担にも配慮し、状況の変化に合わせて定期的に見直すことが、将来の安心につながります。

