相続登記のやり方完全ガイド|ケース別の必要書類と申請書の書き方をわかりやすく解説

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相続登記を自分でする方へ、相続人が1人、遺産分割、遺言、代襲相続、数次相続などパターン別の必要書類と申請書の書き方を初心者向けに解説。遺産分割協議書、不動産の表示、登録免許税、法務局への提出方法まで順番に紹介します。

  1. 相続登記とは?初めて手続きする人にもわかりやすく解説
    1. 相続登記とは亡くなった人の不動産名義を変更する手続き
    2. 相続登記が必要になるのはどんなとき?
    3. 相続登記の申請義務と期限を確認しよう
    4. 自分で申請する場合と司法書士に依頼する場合の違い
    5. まず「誰が相続人なのか」を確認することが重要
  2. 最初に確認しよう|あなたの相続登記はどのパターン?
    1. パターン①相続人が1人だけの場合
    2. パターン②複数の相続人が法定相続分どおりに相続する場合
    3. パターン③遺産分割協議で1人が不動産を相続する場合
    4. パターン④遺産分割協議で複数人が共有する場合
    5. パターン⑤遺言書に従って相続する場合
    6. パターン⑥相続人の中に亡くなっている人がいる場合【代襲相続】
    7. パターン⑦相続登記をしないまま次の相続が発生している場合【数次相続】
    8. パターン⑧相続放棄した人がいる場合
    9. 判断に迷ったときの確認方法
  3. 相続登記で基本的に必要になる書類
    1. 亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本
    2. 相続人の戸籍謄本
    3. 亡くなった人の住民票の除票または戸籍の附票
    4. 不動産を取得する人の住民票
    5. 固定資産評価証明書など不動産の評価額がわかる書類
    6. 登記事項証明書で土地・建物の内容を確認する
    7. 戸籍・住民票などはどこで取得できる?
    8. 原本を返してもらいたい場合はどうする?
  4. パターン①相続人が1人だけの場合の書き方と必要書類
    1. 相続人が本当に1人か戸籍で確認する
    2. 必要な書類一覧
    3. 登記申請書の書き方
    4. 「登記の目的」「原因」「相続人」には何を書く?
    5. 遺産分割協議書は必要?
    6. 記入例で確認しよう
  5. パターン②法定相続分どおりに複数人で相続する場合
    1. 法定相続分とは?
    2. 必要な書類一覧
    3. 登記申請書に相続人全員をどう書く?
    4. 持分の書き方
    5. 遺産分割協議書が不要になるケース
    6. 記入例で確認しよう
  6. パターン③遺産分割協議で1人が不動産を相続する場合
    1. 遺産分割協議とは?
    2. 誰が遺産分割協議に参加するの?
    3. 必要な書類一覧
    4. 遺産分割協議書の書き方
    5. 土地の所在・地番・地目・地積の書き方
    6. 建物の所在・家屋番号・種類・構造・床面積の書き方
    7. 実印を押す場所と印鑑証明書
    8. 登記申請書の書き方
    9. 記入例で確認しよう
  7. パターン④複数人が不動産を共有して相続する場合
    1. 共有名義で相続するとは?
    2. 必要な書類一覧
    3. 遺産分割協議書への持分の書き方
    4. 登記申請書への持分の書き方
    5. 共有名義にする前に知っておきたい注意点
    6. 記入例で確認しよう
  8. パターン⑤遺言書がある場合の相続登記
    1. まず遺言書の種類を確認する
    2. 公正証書遺言の場合
    3. 自筆証書遺言の場合
    4. 法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している場合
    5. 家庭裁判所の検認が必要になる場合
    6. 必要な書類一覧
    7. 登記申請書の書き方
    8. 記入例で確認しよう
  9. パターン⑥兄弟姉妹などが先に亡くなっている場合【代襲相続】
    1. 代襲相続とは?
    2. 亡くなった相続人の子が相続人になる場合
    3. 甥・姪が相続人になるのはどんな場合?
    4. 代襲相続人を確認するために必要な戸籍
    5. 遺産分割協議書には誰が署名・実印を押す?
    6. 印鑑証明書は誰のものが必要?
    7. 登記申請書の書き方
    8. 記入例で確認しよう
  10. パターン⑦相続登記をしないうちに次の相続が発生した場合【数次相続】
    1. 数次相続とは?
    2. 代襲相続との違い
    3. 必要になる戸籍を確認する
    4. 遺産分割協議書の作り方
    5. 登記申請を1回でできる場合とできない場合
    6. 複雑な場合は法務局や専門家に確認する
  11. パターン⑧相続放棄した人がいる場合
    1. 相続放棄すると相続関係はどう変わる?
    2. 必要な書類一覧
    3. 相続放棄した人は遺産分割協議に参加する?
    4. 登記申請書の書き方
    5. 代襲相続との違いに注意する
  12. 登記申請書を1項目ずつ書いてみよう
    1. 「登記の目的」の書き方
    2. 「原因」の年月日は何の日を書く?
    3. 「相続人」の住所・氏名の書き方
    4. 「被相続人」とは誰のこと?
    5. 「添付情報」の書き方
    6. 「申請年月日」の書き方
    7. 提出する法務局の書き方
    8. 「課税価格」の調べ方と書き方
    9. 「登録免許税」の計算方法
    10. 「不動産の表示」は登記簿のどこを写す?
  13. 土地・建物の「不動産の表示」の読み方と書き方
    1. 土地の「所在」と「地番」は住所と同じではない
    2. 「地目」とは?
    3. 「地積」の読み方|162・52なら162.52㎡
    4. 建物の「所在」と「家屋番号」の読み方
    5. 「種類」と「構造」の書き方
    6. 「床面積」の読み方|78・13なら78.13㎡
    7. 増築している建物はどの床面積を書く?
    8. 昔の面積と現在の面積がある場合はどちらを書く?
    9. 登記簿の受付番号などを書かないよう注意する
  14. 遺産分割協議書の作り方を記入例付きで解説
    1. 遺産分割協議書には何を書く?
    2. 被相続人の氏名・死亡日の書き方
    3. 誰がどの不動産を取得するか明記する
    4. 不動産の表示は登記簿どおりに記載する
    5. 相続人全員の住所・氏名を書く
    6. 実印を押印する
    7. 印鑑証明書を準備する
    8. 複数通作成する場合の考え方
    9. 書き間違えた場合の対処方法
  15. 相続関係説明図の作り方
    1. 相続関係説明図とは?
    2. 作成するメリット
    3. 亡くなった人をどのように記載する?
    4. 配偶者・子・代襲相続人の書き方
    5. 家系図形式の記入例
    6. 戸籍との内容が一致しているか確認する
  16. 登録免許税はいくら?初心者向けに計算方法を解説
    1. 相続登記の登録免許税とは?
    2. 固定資産評価額はどこを見る?
    3. 土地と建物がある場合の計算方法
    4. 1,000円未満・100円未満の端数処理
    5. 収入印紙はどこで購入する?
    6. 登録免許税の免税措置が利用できる場合
      1. 相続登記をしないまま相続人が亡くなった場合
      2. 不動産の価額が100万円以下の土地
  17. 完成した書類を法務局へ提出する方法
    1. どこの法務局へ提出する?
    2. 窓口へ持参する方法
    3. 郵送で申請する方法
    4. オンラインで申請する方法
    5. 戸籍などの原本還付を受ける方法
    6. 登記完了までの流れ
    7. 登記完了後に確認すること
  18. 自分で相続登記するときによくある間違い
    1. 「被相続人」を自分の名前だと思ってしまう
    2. 「原因」に申請日を書いてしまう
    3. 住所と地番を同じものだと思ってしまう
    4. 地積・床面積の小数部分を見落とす
    5. 増築前の古い床面積を書いてしまう
    6. 代襲相続人を見落としてしまう
    7. 相続人全員の署名・実印がそろっていない
    8. 必要な戸籍が途中で抜けている
  19. 相続登記についてよくある質問
    1. 相続登記は自分でもできますか?
    2. 高齢者でも自分で申請できますか?
    3. 戸籍謄本は何年前まで必要ですか?
    4. 出生から死亡までの戸籍はどうやって集めますか?
    5. 遺産分割協議書は自分で作れますか?
    6. 甥や姪にも相続権が発生することがありますか?
    7. 書類を書き間違えたら最初から作り直しですか?
    8. 法務局で申請書の書き方を相談できますか?
    9. どのような場合に司法書士へ相談した方がよいですか?
  20. 自分の相続パターンを確認してから登記書類を作成しよう
    1. まず確認したい重要ポイント3つ
      1. 誰が相続人なのか
      2. どの方法で相続するのか
      3. 不動産の登記内容を確認する
    2. 相続パターン別・必要書類早見表
    3. 法務局へ行く前の最終チェックリスト
    4. 自分で手続きするのが難しい場合の相談先
    5. まとめ

「相続登記を自分でやりたいけれど、書類の書き方が分からない」「被相続人とは誰?」「遺産分割協議書は必要?」と戸惑っていませんか。相続登記は、相続人が1人の場合だけでなく、兄弟姉妹の子が代襲相続人になる場合や、遺言書がある場合など、状況によって必要書類や申請方法が変わります。初めて手続きする方にとって、専門用語が多い登記書類は決して分かりやすいものではありません。この記事では、自分がどのパターンに当てはまるのかを確認しながら、必要書類、登記申請書や遺産分割協議書の書き方、提出までの流れを順番にわかりやすく解説します。

相続登記とは?初めて手続きする人にもわかりやすく解説

家族が亡くなり、土地や家などの不動産を相続すると、「相続登記」という手続きが必要になります。

しかし、初めて手続きをする方にとっては、「被相続人」「法定相続人」「登記原因証明情報」など、普段使わない言葉が多く、何から始めればよいのか分かりにくいものです。

最初から登記申請書を書こうとする必要はありません。

まずは、

  • 誰が亡くなったのか
  • 誰が相続人になるのか
  • 土地や建物は誰が相続するのか
  • 遺言書はあるのか
  • 遺産分割協議が必要なのか

という順番で確認していきましょう。

相続登記とは亡くなった人の不動産名義を変更する手続き

相続登記とは、土地や建物を所有していた方が亡くなったときに、不動産の登記名義を相続した人へ変更する手続きです。

例えば、母親名義の土地と住宅を長男が相続した場合、登記簿上の所有者を母親から長男へ変更します。

ここで覚えておきたい言葉が「被相続人」と「相続人」です。

言葉意味具体例
被相続人亡くなった人亡くなった母親
相続人財産を相続する権利がある人配偶者、子など
相続登記相続した不動産について登記する手続き母親名義の土地を相続した子の名義へ登記

「被相続人=不動産を受け取る人」ではありません。被相続人は亡くなった方です。

相続登記の対象になる代表的な不動産には、次のようなものがあります。

  • 宅地
  • 田・畑
  • 山林
  • 自宅
  • アパート
  • マンションなどの区分建物

預貯金や自動車などは、それぞれ別の相続手続きになります。

相続登記が必要になるのはどんなとき?

亡くなった方が土地や建物などの不動産を所有していて、それを相続した場合には相続登記が必要になります。

例えば、

父親が亡くなり、父親名義の自宅を長男が相続する

という場合です。

一方、「家族が亡くなった=必ず相続登記が必要」というわけではありません。亡くなった方が登記名義人となっている不動産があるかを確認する必要があります。

まず確認したいのは次の3点です。

  • 亡くなった方が土地や建物を所有していたか
  • 登記簿上の所有者が亡くなった方になっているか
  • 誰がその不動産を取得することになるのか

固定資産税の納税通知書や登記事項証明書などを確認すると、不動産を把握する手掛かりになります。

相続登記の申請義務と期限を確認しよう

2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。

原則として、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。

正当な理由なく申請義務を怠った場合は、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。

また、2024年4月1日より前に発生した相続であっても、相続登記が済んでいなければ義務化の対象です。制度開始前の相続については原則として2027年3月31日までの猶予期間が設けられています。

ケース原則となる期限
相続による不動産取得を知った知った日から3年以内
遺産分割が後から成立した遺産分割成立の日から3年以内
2024年4月1日より前の未登記相続原則2027年3月31日まで

遺産分割の話し合いがまとまらず、期限内に通常の相続登記を行うことが難しい場合には、「相続人申告登記」という制度もあります。

これは簡易に申請義務を履行するための制度ですが、不動産の所有権を最終的に誰が取得したかを登記する通常の相続登記とは異なります。後に遺産分割が成立した場合などには、改めて必要な登記を行うことになります。

自分で申請する場合と司法書士に依頼する場合の違い

相続登記は、必ず司法書士に依頼しなければならないわけではありません。相続人本人が必要書類を集め、登記申請書を作成して法務局へ申請することもできます。

違いを簡単に整理すると次のようになります。

比較自分で申請司法書士へ依頼
費用専門家への報酬を抑えられる司法書士報酬が必要
戸籍収集自分で行う依頼内容により代行可能
申請書作成自分で行う司法書士が対応
法務局とのやり取り自分で対応司法書士が対応
向いているケース比較的単純な相続相続関係や登記が複雑な場合

例えば、「母親が亡くなり、子ども1人だけが土地と住宅を相続する」という比較的単純なケースなら、自分で手続きを検討しやすいでしょう。

一方、

  • 相続人が多数いる
  • 何代にもわたって相続登記をしていない
  • 誰が相続人なのか判断できない
  • 戸籍が複雑になっている
  • 遺言の内容について判断が難しい
  • 不動産の権利関係が複雑

といった場合は、司法書士などの専門家への相談も検討しましょう。

「自分で全部やらなければならない」と考える必要はありません。

まず「誰が相続人なのか」を確認することが重要

相続登記で特に重要なのが、法定相続人を正しく確認することです。

「自分以外には相続する人はいないだろう」と思っていても、戸籍を調べると別の相続人がいることがあります。

例えば、母親に長男と長女の2人の子がいて、長女が母親より先に亡くなっていたとします。

長女に子どもがいる場合、その子が一定の場合に長女に代わって相続人になることがあります。これを「代襲相続」といいます。

そのため、

「兄弟姉妹はすでに亡くなっているから、自分だけが相続人」

と自己判断するのは避けましょう。

相続人を調べるためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本などを集め、家族関係を確認していきます。

最初に確認するポイント

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍を確認する
  • 配偶者がいるか確認する
  • 子が何人いるか確認する
  • 先に亡くなった子がいないか確認する
  • 亡くなった子に子どもがいるか確認する
  • 相続放棄などがないか確認する

ここを正しく確認してから、登記申請書や遺産分割協議書の作成へ進みましょう。

最初に確認しよう|あなたの相続登記はどのパターン?

相続登記を難しく感じる大きな理由の一つが、すべての人が同じ書類を提出するわけではないことです。

相続人の人数、遺産分割協議の有無、遺言書の有無、すでに亡くなっている相続人がいるかなどによって、必要書類や申請方法が変わります。

まずは次の表から、自分に近いケースを探してみましょう。

パターン主な状況特に確認すること
相続人が1人戸籍で本当に1人か確認
法定相続分で相続各相続人の法定相続分
協議で1人が取得遺産分割協議書
協議で複数人が共有各人の持分
遺言書がある遺言書の種類・内容
相続人が先に死亡代襲相続人
登記前に次の相続が発生数次相続
相続放棄した人がいる相続人の範囲の変化

パターン①相続人が1人だけの場合

戸籍を確認した結果、法定相続人が1人だけというケースです。

例えば、

「母親が亡くなり、配偶者はすでに死亡していて、子どもは1人だけ」

という場合が考えられます。

この場合、相続人同士で財産の分け方を話し合う必要がないため、通常は遺産分割協議書を作成する必要はありません。

ただし、「兄弟姉妹がすでに亡くなっているから自分1人」とは限りません。亡くなった兄弟姉妹などに子がいる場合には、相続関係によってはその子が代襲相続人になることがあります。

必ず戸籍から相続人を確定させましょう。

パターン②複数の相続人が法定相続分どおりに相続する場合

相続人が複数いて、法律で定められた法定相続分の割合で不動産を取得する方法です。

例えば、配偶者と子1人が法定相続人で、法定相続分に従って不動産を共有するケースなどがあります。

この場合は、登記申請書に各相続人の持分を記載します。

ポイントは、

  • 誰が法定相続人なのか
  • 法定相続分はいくらなのか
  • 登記する不動産は何か

を正確に確認することです。

法定相続分での相続登記と、次に説明する遺産分割協議による相続登記は区別して考えましょう。

パターン③遺産分割協議で1人が不動産を相続する場合

複数の相続人がいるものの、話し合いによって「この土地と建物はAさんが取得する」と決めるケースです。

例えば、

  • 相続人:長男・長女・次男
  • 自宅:長男が取得
  • 預貯金:長女・次男にも分ける

といった分け方です。

この場合、不動産について誰が取得するのかを明確にした遺産分割協議書が重要になります。

遺産分割協議には、原則として相続人全員が参加します。

遺産分割協議書を作成するときは、不動産を特定できるよう、登記事項証明書を確認しながら、

  • 所在
  • 地番
  • 地目
  • 地積
  • 家屋番号
  • 種類
  • 構造
  • 床面積

などを正確に記載しましょう。

パターン④遺産分割協議で複数人が共有する場合

遺産分割協議によって、1つの不動産を複数人で取得することもできます。

例えば、

「土地と住宅を兄と妹がそれぞれ2分の1ずつ取得する」

と決めるケースです。

この場合は、誰がどれだけの割合を取得するのか、持分を明確にします。

例えば、

  • 山田太郎 持分2分の1
  • 山田花子 持分2分の1

という形です。

共有名義にすると、将来その不動産を売却したり大きな変更をしたりする際に共有者との調整が必要になることがあります。

目先の登記だけでなく、将来の管理や処分についても考えて決めることが大切です。

パターン⑤遺言書に従って相続する場合

亡くなった方が遺言書を残している場合は、その内容を確認します。

ただし、遺言書には、

  • 公正証書遺言
  • 自筆証書遺言
  • 法務局で保管されている自筆証書遺言

などがあり、手続きが同じとは限りません。

例えば、自宅の机から自筆の遺言書が見つかった場合、すぐに開封して登記申請を進めればよいとは限りません。家庭裁判所での検認が必要になる自筆証書遺言もあります。

遺言書が見つかったら、まず種類と内容を確認してから手続きを進めましょう。

パターン⑥相続人の中に亡くなっている人がいる場合【代襲相続】

相続人になるはずだった人が被相続人より先に亡くなっている場合、その人の子などが一定の場合に代わって相続人になることがあります。

これが代襲相続です。

例えば、

母親に、

  • 長男
  • 長女

の2人の子がいたとします。

ところが、長女が母親より先に亡くなっており、長女に子どもが2人いた場合、その2人が長女に代わって相続人となることがあります。

そのため、「姉は亡くなっているから長男だけが相続人」とは限りません。

代襲相続では戸籍の確認範囲も広がるため、特に慎重に相続人を確認しましょう。

パターン⑦相続登記をしないまま次の相続が発生している場合【数次相続】

最初の相続について登記をしないうちに相続人の一人が亡くなり、さらに次の相続が発生している状態を「数次相続」と呼びます。

例えば、

祖父が死亡

父が相続したが登記をしなかった

その後、父も死亡

父の子が相続

というケースです。

代襲相続と似て見えますが、亡くなった順番が重要です。

代襲相続では、本来相続人になる人が被相続人より先に亡くなっているのに対し、数次相続では、最初の被相続人が亡くなった後に相続人が亡くなっています。

比較亡くなる順番の代表例
代襲相続子が死亡 → 親が死亡
数次相続親が死亡 → 相続人である子が死亡

数次相続は戸籍や遺産分割協議の関係が複雑になることがあります。判断が難しい場合は、法務局の手続案内や司法書士などへの相談を検討しましょう。

パターン⑧相続放棄した人がいる場合

相続放棄をした人がいる場合も注意が必要です。

家庭裁判所で相続放棄が受理されると、その人は法律上、初めから相続人ではなかったものとして扱われます。

そのため、相続放棄をした人を除いて相続関係を改めて確認する必要があります。

例えば、相続人がA・B・Cの3人で、Cが正式に相続放棄した場合、単純に「Cの持分をそのまま残す」という考え方ではありません。

  • 誰が相続放棄したのか
  • 家庭裁判所で正式な手続きをしたのか
  • 放棄後の相続人は誰になるのか
  • 法定相続分がどう変わるのか

を確認しましょう。

なお、「私は財産はいりません」と家族に伝えただけでは、家庭裁判所で行う法律上の相続放棄と同じではありません。

判断に迷ったときの確認方法

ここまで読んでも、

「自分がどのパターンなのか分からない」

という方もいるでしょう。

その場合は、無理に登記申請書を書き始めないことが大切です。

次の順番で整理してみましょう。

  1. 亡くなった方を確認する
    被相続人が誰なのかを確認します。
  2. 戸籍を集める
    被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本などを確認します。
  3. 相続人を書き出す
    配偶者、子、先に亡くなった子、その子どもなどの関係を整理します。
  4. 遺言書の有無を確認する
    遺言書があれば種類と内容を確認します。
  5. 不動産を確認する
    登記事項証明書などで、土地・建物の所在、地番、家屋番号などを確認します。
  6. 誰が不動産を取得するのか確認する
    法定相続、遺産分割、遺言など、どの方法によって取得するのかを整理します。
  7. 分からない場合は相談する
    法務局の登記手続案内を利用したり、複雑なケースでは司法書士などの専門家へ相談したりする方法があります。

相続登記では、最初の「誰が相続人なのか」という判断を間違えると、その後に作成する遺産分割協議書や登記申請書にも影響します。

急いで申請書を書くよりも、まず相続関係を正しく整理することが、結果的に手続きをスムーズに進める近道です。

相続登記で基本的に必要になる書類

相続登記を自分で行う場合、「何を用意すればよいのか」が最初の大きな疑問ではないでしょうか。

相続登記では、亡くなった方と相続人との関係を証明する戸籍、不動産を取得する人の住所を証明する書類、不動産の評価額を確認するための書類などを準備します。

ただし、遺産分割、遺言、代襲相続など、相続の状況によって追加書類が必要になることがあります。

まずは基本となる書類から確認していきましょう。

亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本

相続登記では、被相続人(亡くなった方)の相続人が誰なのかを確認しなければなりません。

そのため、原則として被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍などをそろえます。

例えば、母親が亡くなった場合、現在の戸籍だけを取得して終わりとは限りません。

結婚や転籍、戸籍制度の改製などによって戸籍が変わっていれば、以前の戸籍までさかのぼります。

【確認するポイント】

  • 出生から死亡まで戸籍がつながっているか
  • 結婚や転籍前の戸籍が抜けていないか
  • 子どもが何人いるか
  • 先に亡くなった子がいないか
  • 代襲相続人になる人がいないか

「古い戸籍の読み方が分からない」という場合は、無理に判断せず、市区町村役場や法務局などで確認しましょう。

相続人の戸籍謄本

被相続人だけでなく、相続人についても戸籍謄本または戸籍抄本などが必要になります。

法務局の案内では、相続人全員について、被相続人が死亡した日以後に発行された現在の戸籍を用意するよう案内されています。

例えば、母親が令和○年5月2日に亡くなった場合は、その死亡後に証明された相続人の戸籍を準備します。

ここで注意したいのが、代襲相続です。

母親より先に娘が亡くなっており、その娘に子どもがいる場合には、孫が代襲相続人となることがあります。その場合は、その相続関係を証明できる戸籍も必要になります。

亡くなった人の住民票の除票または戸籍の附票

被相続人については、住民票の除票なども準備します。

これは、戸籍に記載された被相続人と、登記簿に所有者として記録されている人物が同一人物であることを住所のつながりなどから確認するために使われます。

一般的には、

  • 被相続人の住民票の除票
  • 必要に応じて戸籍の附票

などを利用します。

住民票の除票が保存期間などの関係で取得できない場合には、戸籍の附票など別の書類が必要になることがあります。

また、登記簿上の住所と死亡時の住所が異なる場合は、住所の移り変わりを証明できるかを確認する必要があります。

不動産を取得する人の住民票

土地や建物を相続する人については、住所証明情報として住民票の写しなどを添付します。

例えば、相続人が3人いても、遺産分割協議によって長男だけが土地・建物を取得するのであれば、その登記に必要となる住所証明情報は不動産を取得する長男について準備するのが基本です。

住民票を取得するときは、マイナンバー(個人番号)が記載されていないものを取得しましょう。

なお、一定の場合には申請書に住民票コードを記載することで、住民票の写しの添付を省略できる場合もあります。

固定資産評価証明書など不動産の評価額がわかる書類

相続登記では「登録免許税」を計算します。

その計算の基礎になるのが、不動産の固定資産課税台帳に登録された価格です。

そのため、固定資産評価証明書など、申請する年度の不動産価格が確認できる書類を準備します。

例えば、

  • 土地 5,000,000円
  • 建物 3,000,000円

であれば、不動産の評価額を確認したうえで、登録免許税を計算します。

ここで注意したいのは、売買価格や購入したときの金額を使うわけではないということです。

なお、一定の要件を満たす土地については、相続登記の登録免許税が免税となる特例があります。申請時点の制度を確認してください。

登記事項証明書で土地・建物の内容を確認する

登記申請書の「不動産の表示」を書くときに重要になるのが登記事項証明書です。

土地であれば、

  • 所在
  • 地番
  • 地目
  • 地積

建物であれば、

  • 所在
  • 家屋番号
  • 種類
  • 構造
  • 床面積

などを確認できます。

例えば、土地の地積欄が「162」「52」のように整数部分と小数部分に分かれて表示されていれば、実際の地積は「162.52平方メートル」と読みます。

建物についても同様に、床面積が「78」「13」と表示されていれば「78.13平方メートル」です。

登記申請書に不動産を記載するときは、記憶や固定資産税の通知書だけに頼らず、登記事項証明書の現在の記録を確認しながら転記しましょう。

戸籍・住民票などはどこで取得できる?

必要書類によって取得する場所が異なります。

書類主な取得先
戸籍謄本・除籍謄本市区町村役場
戸籍の附票市区町村役場
住民票・住民票の除票市区町村役場
固定資産評価証明書不動産所在地の市区町村など
登記事項証明書法務局
印鑑証明書市区町村役場など

戸籍については、2024年3月から戸籍証明書等の広域交付制度が始まっており、本籍地以外の市区町村窓口でも一定の戸籍証明書を請求できるようになっています。

ただし、すべての戸籍関係書類が広域交付の対象になるわけではありません。取得できないものについては、本籍地の市区町村へ請求することになります。

原本を返してもらいたい場合はどうする?

相続登記のために集めた戸籍謄本などは、別の相続手続きでも使用することがあります。

例えば、

  • 銀行預金の相続
  • 証券会社での手続き
  • 自動車の名義変更
  • その他の相続手続き

などです。

そのため、一定の添付書類については、登記申請時に原本還付を請求することができます。

一般的には、原本還付を受けたい書類のコピーを作成し、そのコピーに原本と相違ない旨を記載して、必要な手続きを行います。

また、「相続関係説明図」を提出することで、一定の戸籍関係書類についてコピーを添付せず原本還付を受けられる場合もあります。

原本還付できない書類もありますので、「この書類は返してもらえるのか」と迷った場合は、提出前に管轄法務局へ確認すると安心です。

パターン①相続人が1人だけの場合の書き方と必要書類

ここからは、相続のパターンごとに具体的な手続きを見ていきます。

最初は、法定相続人が1人だけの場合です。

例えば、

「父親はすでに亡くなっており、母親が亡くなった。母親の子は自分1人だけで、ほかに相続人はいない」

というようなケースです。

相続人が本当に1人であれば、複数人で財産の分け方を話し合う必要がないため、比較的分かりやすい相続登記になります。

相続人が本当に1人か戸籍で確認する

ここで一番大切なのは、思い込みではなく戸籍で確認することです。

「兄弟は亡くなっているので、自分だけだろう」と考えていたところ、亡くなった兄弟姉妹の子が代襲相続人になるケースもあります。

そのため、

  • 配偶者はいるか
  • 子どもは何人いるか
  • 前婚などによる子はいないか
  • 養子はいないか
  • 先に亡くなった子はいないか
  • その子に子どもはいないか

などを戸籍から確認します。

「現在生きている家族」だけを見るのではなく、法律上の相続人が誰なのかを確認することが重要です。

必要な書類一覧

相続人が1人だけで、法定相続によって不動産を取得する基本的なケースでは、次のような書類を準備します。

書類主な目的
登記申請書法務局へ相続登記を申請する
被相続人の出生から死亡までの戸籍等相続人を確認する
相続人の現在の戸籍相続人であることを確認する
被相続人の住民票の除票等登記名義人とのつながりを確認する
不動産を取得する相続人の住民票新しい所有者の住所を証明する
固定資産評価証明書等課税価格・登録免許税を確認する
登記事項証明書不動産の表示などを確認する

相続関係によって追加書類が必要になることもあります。

「この表にあるものだけ集めれば、すべての相続で必ず足りる」という意味ではありませんので注意してください。

登記申請書の書き方

法務局では「所有権移転登記申請書(相続・法定相続)」の様式と記載例が公開されています。

基本的な構成は次のようになります。

【記入する主な項目】

  • 登記の目的
  • 原因
  • 相続人(被相続人の氏名を併記)
  • 相続人の住所・氏名
  • 氏名ふりがな等
  • 添付情報
  • 申請年月日
  • 管轄法務局
  • 課税価格
  • 登録免許税
  • 不動産の表示

特に注意したいのが、「原因の日付」と「申請年月日」です。

この2つは別の日付です。

例えば、

母親の死亡日:令和7年5月2日
法務局への申請日:令和8年9月10日

なら、

原因 令和7年5月2日相続

と記載し、申請年月日の欄には、

令和8年9月10日申請

と記載します。

「登記の目的」「原因」「相続人」には何を書く?

初心者が特に迷いやすい3項目を整理してみましょう。

項目基本的な記載内容
登記の目的所有権移転
原因被相続人の死亡年月日+「相続」
被相続人亡くなった人
相続人不動産を相続する人

例えば、母親「山田花子」が令和7年5月2日に亡くなり、長男「山田太郎」が単独で相続する場合は、概ね次のような形になります。

登記の目的 所有権移転

原   因 令和7年5月2日相続

相 続 人 (被相続人 山田花子)

      ○○県○○市○○町○番○号
      山田太郎

ここで間違いやすいのが「被相続人」です。

被相続人とは、財産を受け取る人ではなく、亡くなった人のことです。

また、「原因」の年月日には登記申請をする日ではなく、原則として被相続人が亡くなった日を書きます。

遺産分割協議書は必要?

法定相続人が本当に1人だけで、その人が相続するケースでは、通常、遺産分割協議書は必要ありません。

遺産分割協議とは、複数の共同相続人が「誰がどの財産を取得するのか」を話し合うことだからです。

相続人が1人しかいなければ、話し合う相手がいません。

ただし、

「自分以外の兄弟姉妹はすでに亡くなっている」

という理由だけで、相続人が1人だと判断してはいけません。

亡くなった子に子どもがいれば代襲相続が発生する場合があるためです。

遺産分割協議書が不要かどうかを判断する前に、戸籍で相続人を確定することが先と覚えておきましょう。

記入例で確認しよう

最後に、相続人1人の基本的なケースを簡単な記入例で確認してみます。

【例】

被相続人:山田花子
死亡日:令和7年5月2日
相続人:山田太郎
不動産:土地1筆・住宅1棟

登記申請書のイメージは次のとおりです。

登 記 申 請 書

登記の目的 所有権移転

原   因 令和7年5月2日相続

相 続 人 (被相続人 山田花子)

      ○○県○○市○○町○番○号
      山田太郎

添付情報
登記原因証明情報
住所証明情報

令和8年○月○日申請

○○法務局 御中

課税価格 金○○○○円

登録免許税 金○○○円

不動産の表示

【土地】

所 在 ○○市○○町
地 番 123番4
地 目 宅地
地 積 162.52平方メートル

【建物】

所 在 ○○市○○町123番地4
家屋番号 123番4
種 類 居宅
構 造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 78.13平方メートル
    2階 78.42平方メートル

※上記は書き方を理解するための架空の例です。実際に申請するときは、法務局の最新様式を使用し、登記事項証明書、戸籍、住民票などの内容を確認して記載してください。

相続登記では、一度にすべて理解しようとすると難しく感じます。

「相続人を確認する → 必要書類を集める → 登記事項証明書を確認する → 申請書を書く」

という順番で、一つずつ進めるのがポイントです。

パターン②法定相続分どおりに複数人で相続する場合

相続人が2人以上いる場合でも、必ず遺産分割協議をしなければならないわけではありません。

法律で定められている「法定相続分」の割合どおりに土地や建物を相続するのであれば、その割合で相続登記を行うことができます。

例えば、父親が亡くなり、相続人が母親と子ども2人だった場合、

  • 母親:2分の1
  • 長男:4分の1
  • 長女:4分の1

という法定相続分で土地や建物を共有する方法があります。

この場合は、法定相続分と異なる分け方を決めるための遺産分割協議書は、通常必要ありません。

法定相続分とは?

法定相続分とは、民法によって定められている相続割合のことです。

ただし、法定相続分は「必ずこの割合で遺産を分けなければならない」という意味ではありません。

相続人全員で遺産分割協議を行い、全員が合意すれば、法定相続分とは異なる分け方をすることもできます。

代表的な法定相続分は次のとおりです。

相続人法定相続分
配偶者だけ配偶者が全部
配偶者+子配偶者1/2、子全員で1/2
配偶者+父母配偶者2/3、父母全員で1/3
配偶者+兄弟姉妹配偶者3/4、兄弟姉妹全員で1/4

例えば、相続人が「妻・長男・長女」の3人の場合は、

妻 1/2
長男 1/4
長女 1/4

となります。

子どもに割り当てられる2分の1を、長男と長女の2人で均等に分けるためです。

なお、代襲相続、相続放棄などがある場合には割合の計算が変わることがありますので、戸籍を確認してから判断しましょう。

必要な書類一覧

法定相続分どおりに複数人で相続する基本的なケースでは、次のような書類を準備します。

書類主な目的
登記申請書法務局へ相続登記を申請する
被相続人の出生から死亡までの戸籍等法定相続人を確認する
相続人全員の戸籍相続人であることを確認する
被相続人の住民票の除票等登記名義人とのつながりを確認する
相続人の住民票等新しい所有者の住所を証明する
固定資産評価額が分かる書類課税価格・登録免許税を計算する
登記事項証明書土地・建物の現在の登記内容を確認する

法定相続分どおりに相続する場合には、通常、遺産分割協議書やそのための印鑑証明書は必要ありません。

ただし、相続関係や登記簿上の住所などによって追加書類が必要になることがあります。

登記申請書に相続人全員をどう書く?

法定相続分で複数人が不動産を相続する場合は、登記申請書に新しく所有者となる相続人と、その持分を書きます。

例えば、被相続人が山田一郎、相続人が妻・長男・長女の場合は、次のようなイメージです。

相続人 (被相続人 山田一郎)

持分2分の1
○○県○○市○○町○番○号
山田花子

持分4分の1
○○県○○市○○町○番○号
山田太郎

持分4分の1
○○県○○市○○町○番○号
山田春子

法定相続分による相続登記では、相続人全員が一緒に申請することもできます。

さらに、共同相続人のうち1人が、相続人全員のためにまとめて申請することも可能です。

ただし、ここには大切な注意点があります。

相続人1人が「自分の持分だけ」を先に相続登記することはできません。

例えば、妻・長男・長女の3人が法定相続人なら、長男が申請する場合でも、

妻1/2
長男1/4
長女1/4

という全員の法定相続分による登記を申請することになります。

また、相続人の1人だけが申請人となった場合、申請人にならなかった相続人には登記識別情報が通知されない点にも注意しましょう。

持分の書き方

複数人で土地や建物を相続するときは、それぞれの「持分」を書きます。

持分とは、その不動産について各相続人が持つ権利の割合です。

例えば、

父親が死亡

相続人は妻と子2人

というケースなら、

相続人持分
2分の1
長男4分の1
長女4分の1

となります。

注意したいのは、「土地を半分に切って所有する」という意味ではないことです。

例えば土地が200平方メートルだから、

妻100平方メートル
長男50平方メートル
長女50平方メートル

と登記するわけではありません。

1つの土地全体について、

妻 持分2分の1
長男 持分4分の1
長女 持分4分の1

という共有関係になります。

「面積」と「持分」を混同しないようにしましょう。

遺産分割協議書が不要になるケース

複数の相続人がいても、法定相続分どおりに相続登記するのであれば、通常は遺産分割協議書は必要ありません。

例えば、

「妻と子2人で、法律どおりの割合のまま自宅を共有する」

という場合です。

一方、

「自宅は長男だけが相続する」

「土地は妻、建物は長男が相続する」

「兄と妹で2分の1ずつにするが、法定相続分とは異なる」

といった場合は、相続人全員の話し合いによる遺産分割協議が必要になります。

簡単に整理すると次のようになります。

相続方法遺産分割協議書
法定相続分どおり通常不要
法定相続分と異なる割合必要
相続人1人だけが不動産を取得必要
話し合いで財産ごとに取得者を決定必要

記入例で確認しよう

それでは、法定相続分で3人が相続する簡単な例を見てみましょう。

【例】

被相続人:山田一郎
死亡日:令和7年5月2日

相続人:

妻 山田花子
長男 山田太郎
長女 山田春子

登記申請書のイメージは次のようになります。

登 記 申 請 書

登記の目的 所有権移転

原   因 令和7年5月2日相続

相 続 人 (被相続人 山田一郎)

持分2分の1
○○県○○市○○町○番○号
山田花子

持分4分の1
○○県○○市○○町○番○号
山田太郎

持分4分の1
○○県○○市○○町○番○号
山田春子

添付情報
登記原因証明情報
住所証明情報

令和8年○月○日申請

○○法務局 御中

課税価格 金○○○○円

登録免許税 金○○○円

不動産の表示
※登記事項証明書どおりに記載

実際には、申請する人や住民票コードの利用などによって記載方法が変わることがあります。最新の法務局の記載例と照らし合わせながら作成しましょう。

パターン③遺産分割協議で1人が不動産を相続する場合

相続人が複数いるものの、話し合いによって「土地と建物は1人が相続する」と決めるケースも多くあります。

例えば、

母親が死亡

相続人は長男・長女・次男の3人

話し合いの結果、自宅の土地・建物は長男が相続

というケースです。

このような場合には、相続人全員で遺産分割協議を行い、その結果を証明する遺産分割協議書を作成して相続登記を申請します。

遺産分割協議とは?

遺産分割協議とは、被相続人が残した財産を「誰が、何を取得するのか」について相続人同士で話し合うことです。

例えば、

  • 自宅の土地・建物は長男
  • 預貯金は長女と次男
  • 自動車は次男

というように決めることができます。

法定相続分とは違う分け方でも、相続人全員が合意すれば遺産分割を行うことができます。

不動産について遺産分割協議が成立したら、その内容を遺産分割協議書に記載し、相続登記の添付書類として使用します。

誰が遺産分割協議に参加するの?

原則として、遺産分割協議には法定相続人全員が参加します。

例えば、相続人が、

長男
長女
次男

の3人なら、3人全員で協議します。

「不動産を取得する長男だけで決める」ということはできません。

また、長女が被相続人より先に亡くなっていて、その子が代襲相続人になっている場合には、その代襲相続人も協議に参加する必要があります。

そのため、遺産分割協議書を作る前に、まず戸籍を集めて法定相続人を確定することが重要です。

特に確認したいこと

  • 配偶者がいるか
  • 子は何人いるか
  • 先に亡くなった子はいないか
  • 代襲相続人はいないか
  • 相続放棄をした人はいないか
  • 相続開始後に亡くなった相続人はいないか

必要な書類一覧

遺産分割協議によって1人が不動産を取得する一般的なケースでは、次の書類を準備します。

書類主な目的
登記申請書法務局への申請
被相続人の出生から死亡までの戸籍等相続人の確定
相続人の戸籍相続関係の証明
被相続人の住民票の除票等登記名義人とのつながりの確認
不動産取得者の住民票等新所有者の住所証明
遺産分割協議書誰が不動産を取得したかを証明
印鑑証明書遺産分割協議書の押印確認
固定資産評価額が分かる書類登録免許税の計算
登記事項証明書不動産の表示を確認

代襲相続や数次相続がある場合には、これ以外の戸籍などが必要になることがあります。

遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書には、「誰が、どの不動産を相続するのか」が分かるように記載します。

例えば、基本的な形は次のようになります。

遺 産 分 割 協 議 書

令和7年5月2日に死亡した山田一郎の遺産について、共同相続人である山田花子、山田太郎及び山田春子は、遺産分割の協議を行い、次のとおり合意した。

下記不動産は、山田太郎が相続する。

【土地】

所在 ○○市○○町
地番 123番4
地目 宅地
地積 162.52平方メートル

【建物】

所在 ○○市○○町123番地4
家屋番号 123番4
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積
1階 78.13平方メートル
2階 78.42平方メートル

以上の協議を証するため、本協議書を作成し、各相続人が記名し、実印を押印する。

令和○年○月○日

住所 ○○県○○市○○町○番○号
氏名 山田花子 印

住所 ○○県○○市○○町○番○号
氏名 山田太郎 印

住所 ○○県○○市○○町○番○号
氏名 山田春子 印

※実際の遺産分割協議書は、相続内容や財産によって記載方法が異なります。上記は不動産相続の書き方を理解するための簡略例です。

土地の所在・地番・地目・地積の書き方

土地については、登記事項証明書の「表題部」を確認します。

特に、

  • 所在
  • 地番
  • 地目
  • 地積

を正確に記載しましょう。

例えば、

所在 ○○市○○町
地番 123番4
地目 宅地
地積 162.52平方メートル

という形です。

ここで注意したいのは、住所と地番は同じとは限らないことです。

普段使っている住所を見ながら書くのではなく、登記事項証明書を見ながら転記してください。

また、登記簿の地積欄が、

162|52

のように表示されている場合は、原則として、

162.52平方メートル

と読みます。

右側の「52」を受付番号などと勘違いしないようにしましょう。

建物の所在・家屋番号・種類・構造・床面積の書き方

建物についても登記事項証明書の表題部を確認します。

主に確認するのは次の項目です。

  • 所在
  • 家屋番号
  • 種類
  • 構造
  • 床面積

例えば、

所在 ○○市○○町123番地4
家屋番号 123番4
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積
1階 89.13平方メートル
2階 88.42平方メートル

という形です。

増築している住宅では、昔の建築時の床面積と現在の登記簿上の床面積が違うこともあります。

その場合でも、

「昔は1階54平方メートルだったはず」

という記憶で書くのではなく、現在の登記事項証明書に記録されている床面積を確認することが重要です。

土地も建物も、遺産分割協議書と登記申請書で不動産を正確に特定できるようにしましょう。

実印を押す場所と印鑑証明書

遺産分割協議書では、相続人全員が印鑑登録された印鑑、いわゆる実印を使用します。

通常は、協議書の最後に、

住所
氏名

という欄を設け、氏名の横など所定の場所へ実印を押します。

例えば、

住所 ○○県○○市○○町○番○号
氏名 山田太郎 印

という形です。

法務局の2026年版ハンドブックでは、遺産分割協議書には相続人全員が印鑑証明書と同じ印を押すよう案内されています。

また、相続登記に添付する印鑑証明書については、一般的な「発行後3か月以内」という制限はありません。

登記申請の添付書類としては、遺産分割協議を行った相続人のうち、登記申請人となる相続人を除く方の印鑑証明書を添付する扱いが示されています。

ただし、協議書を金融機関などほかの相続手続でも使用する場合には、提出先によって必要条件が異なることがあります。

確認ポイント

  • 相続人全員が協議内容に合意している
  • 協議書には登録印(実印)を使用する
  • 印鑑証明書の印影と一致しているか確認する
  • 住所・氏名が印鑑証明書などと食い違っていないか確認する
  • 複数ページの場合は、ページの差し替え防止にも注意する

登記申請書の書き方

遺産分割協議によって1人が土地・建物を相続する場合は、登記申請書にはその不動産を取得する相続人を記載します。

例えば、

被相続人:山田一郎
死亡日:令和7年5月2日
不動産取得者:長男・山田太郎

の場合は、次のような形になります。

登記の目的 所有権移転

原因 令和7年5月2日相続

相続人 (被相続人 山田一郎)

○○県○○市○○町○番○号
山田太郎

ここで重要なのは、遺産分割協議書に署名・押印した全相続人の名前を、新しい所有者として登記申請書に並べるわけではないことです。

遺産分割協議によって山田太郎だけがその不動産を取得したのであれば、新しい所有者として登記されるのは山田太郎です。

一方、ほかの相続人が協議に参加したことは、遺産分割協議書や戸籍などによって証明します。

記入例で確認しよう

最後に、相続人3人のうち長男1人が自宅を取得するケースを整理してみます。

【相続関係】

被相続人:山田一郎
死亡日:令和7年5月2日

相続人:

妻 山田花子
長男 山田太郎
長女 山田春子

遺産分割協議の結果、

土地・建物は山田太郎が相続

すると決まりました。

【遺産分割協議書】

山田花子
山田太郎
山田春子

の3人全員が協議に参加し、協議書に実印を押します。

【登記申請書】

登 記 申 請 書

登記の目的 所有権移転

原   因 令和7年5月2日相続

相 続 人 (被相続人 山田一郎)

      ○○県○○市○○町○番○号
      山田太郎

添付情報
登記原因証明情報
住所証明情報

令和8年○月○日申請

○○法務局 御中

課税価格 金○○○○円

登録免許税 金○○○円

不動産の表示

【土地】

所在 ○○市○○町
地番 123番4
地目 宅地
地積 162.52平方メートル

【建物】

所在 ○○市○○町123番地4
家屋番号 123番4
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積
1階 89.13平方メートル
2階 88.42平方メートル

このケースで特に覚えておきたいのは、

「協議には相続人全員が参加する。しかし、登記申請書で新しい所有者として記載するのは、その不動産を取得する人」

という違いです。

法定相続分による登記と遺産分割による登記では、必要書類や登記申請書の内容が異なります。

最初に、

「法律どおりの割合で共有するのか」

それとも、

「話し合いによって特定の人が取得するのか」

をはっきりさせてから、必要書類を準備すると分かりやすくなります。

パターン④複数人が不動産を共有して相続する場合

相続した土地や建物は、必ず1人だけの名義にしなければならないわけではありません。

相続人同士の話し合いによって、

「兄と妹が2分の1ずつ相続する」

「3人でそれぞれ3分の1ずつ相続する」

というように、1つの不動産を複数人の共有名義にすることもできます。

ただし、共有名義にすると、将来その不動産を売却したり、利用方法を変更したりするときに共有者との調整が必要になることがあります。

そのため、登記の書き方だけでなく、将来の管理についても考えて決めることが大切です。

共有名義で相続するとは?

共有名義で相続するとは、1つの土地や建物について、複数の人がそれぞれ一定割合の所有権を持つことです。

例えば、母親が所有していた土地と住宅を、長男と長女が話し合いによって2分の1ずつ相続するとします。

この場合は、

長男 持分2分の1
長女 持分2分の1

として登記します。

ここで注意したいのは、「土地を物理的に半分ずつ分ける」という意味ではないことです。

例えば200平方メートルの土地を2人で2分の1ずつ共有した場合でも、

長男が東側100平方メートル
長女が西側100平方メートル

という意味にはなりません。

土地全体について、それぞれが2分の1の権利を持つことになります。

【共有名義の基本】

  • 1つの不動産を複数人で所有する
  • それぞれの権利割合を「持分」と呼ぶ
  • 持分は「2分の1」「3分の1」などの割合で表す
  • 面積を人数で分割して書くわけではない
  • 法定相続分と違う割合でも、相続人全員が合意すれば遺産分割で決めることができる

必要な書類一覧

遺産分割協議によって複数人が不動産を共有して相続する一般的なケースでは、次のような書類を準備します。

書類主な目的
登記申請書法務局へ相続登記を申請する
被相続人の出生から死亡までの戸籍等相続人を確認する
相続人の戸籍相続人であることを証明する
被相続人の住民票の除票等登記名義人とのつながりを確認する
不動産を取得する人の住民票等新しい所有者の住所を証明する
遺産分割協議書誰が何分の何を取得するか証明する
印鑑証明書遺産分割協議への合意を確認する
固定資産評価額が分かる書類登録免許税を計算する
登記事項証明書土地・建物の内容を確認する

例えば相続人が3人いて、そのうち兄と妹だけが不動産を取得する場合は、遺産分割協議には原則として相続人全員が参加します。

一方、登記後の所有者になるのは、不動産を取得すると決めた兄と妹です。

遺産分割協議書への持分の書き方

法定相続分とは異なる割合で共有する場合には、遺産分割協議書に「誰がどれだけ取得するのか」を明確に書きます。

例えば、長男と長女が自宅を2分の1ずつ取得する場合は、次のように記載できます。

下記不動産について、

山田太郎が持分2分の1を相続する。

山田花子が持分2分の1を相続する。

その下に対象となる不動産を記載します。

【土地】

所在 ○○市○○町
地番 123番4
地目 宅地
地積 162.52平方メートル

【建物】

所在 ○○市○○町123番地4
家屋番号 123番4
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積
1階 78.13平方メートル
2階 78.42平方メートル

例えば3人で、

長男 2分の1
長女 4分の1
次男 4分の1

と決めることもできます。

重要なのは、持分を合計すると「1」になるようにすることです。

2分の1+4分の1+4分の1=1

となるため、この例では不動産全体の所有割合が一致します。

登記申請書への持分の書き方

登記申請書にも、不動産を取得する人ごとの持分を書きます。

例えば長男と長女が2分の1ずつ相続する場合は、次のようなイメージです。

相続人 (被相続人 山田一郎)

持分2分の1
○○県○○市○○町○番○号
山田太郎

持分2分の1
○○県○○市○○町○番○号
山田花子

遺産分割協議書に、

山田太郎 2分の1
山田花子 2分の1

と書いたのであれば、登記申請書の持分も一致させます。

【確認ポイント】

  • 協議書と申請書で氏名が一致している
  • 持分が一致している
  • 持分の合計が1になる
  • 住所は住民票などで確認する
  • 不動産の表示は登記事項証明書を確認する

共有名義にする前に知っておきたい注意点

共有名義は便利な方法ですが、「とりあえず平等に共有しておこう」と安易に決めないことも大切です。

なぜなら、共有者が増えるほど、将来の不動産管理が複雑になりやすいからです。

例えば、兄と妹が自宅を2分の1ずつ共有したあと、兄が亡くなり、兄の持分をさらに3人の子が相続したとします。

すると共有者が増え、


兄の長男
兄の長女
兄の次男

という状態になる可能性があります。

世代を重ねるごとに共有者が増えていくと、売却や管理について全員の調整が必要になる場面が増えることがあります。

共有名義にする前には、次の点も考えておきましょう。

  • 誰が不動産を実際に使用するのか
  • 固定資産税を誰が負担するのか
  • 修繕費をどのように分担するのか
  • 将来売却する可能性があるか
  • 共有者が亡くなったときどうするか

「相続時には平等だから」という理由だけで決めず、将来の管理まで考えることが重要です。

記入例で確認しよう

【例】

被相続人:山田一郎
死亡日:令和7年5月2日

相続人:

妻 山田良子
長男 山田太郎
長女 山田花子

遺産分割協議の結果、

長男 持分2分の1
長女 持分2分の1

で土地と建物を相続すると決めたとします。

【遺産分割協議書のイメージ】

下記不動産は、

山田太郎が持分2分の1

山田花子が持分2分の1

をそれぞれ相続する。

【登記申請書のイメージ】

登記の目的 所有権移転

原因 令和7年5月2日相続

相続人 (被相続人 山田一郎)

持分2分の1
○○県○○市○○町○番○号
山田太郎

持分2分の1
○○県○○市○○町○番○号
山田花子

添付情報
登記原因証明情報
住所証明情報

令和8年○月○日申請

○○法務局 御中

課税価格 金○○○○円

登録免許税 金○○○円

不動産の表示
※登記事項証明書に記載されている内容を確認して記載

このように、遺産分割協議書で決めた持分と登記申請書の持分を一致させることがポイントです。

パターン⑤遺言書がある場合の相続登記

亡くなった方が遺言書を残していた場合には、まずその遺言書を確認します。

遺言書がある場合は、法定相続分や遺産分割協議より先に、その内容を確認することが重要です。

ただし、

「遺言書が見つかったから、そのまま法務局へ持って行けばよい」

とは限りません。

遺言書の種類によって、家庭裁判所での検認が必要なものと不要なものがあるからです。

まず遺言書の種類を確認する

代表的な遺言には次のようなものがあります。

遺言書主な特徴家庭裁判所の検認
公正証書遺言公証人が関与して作成不要
自宅等で保管した自筆証書遺言本人が自筆で作成原則必要
法務局で保管した自筆証書遺言法務局の保管制度を利用不要

ほかに秘密証書遺言という方式もありますが、一般の方が目にすることが多いのは、公正証書遺言と自筆証書遺言です。

遺言書が見つかったら、

  • 公証役場で作ったものか
  • 自分で書いたものか
  • 法務局に保管されていたものか
  • 封印されているか

を確認しましょう。

公正証書遺言の場合

公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言書です。

公正証書遺言については、家庭裁判所の検認は必要ありません。

例えば、

「長男に自宅の土地と建物を相続させる」

という内容の公正証書遺言があり、その内容に基づいて長男が相続登記を行う場合には、遺言書を登記原因を証明する書類として利用します。

公正証書遺言の場合には、一般的に次の点を確認します。

  • 遺言者が亡くなっていること
  • 遺言書に対象不動産が記載されていること
  • 誰に相続させるのかが確認できること
  • 不動産の登記内容と遺言書の内容が対応していること

遺言書に書かれた不動産の表示が古い場合などは、現在の登記事項証明書と照らし合わせて確認しましょう。

自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言は、遺言者本人が自分で作成する遺言書です。

例えば、自宅の机や金庫などから、

「自宅の土地及び建物を長男に相続させる」

と書かれた遺言書が見つかる場合があります。

自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、原則として家庭裁判所で「検認」を受けてから相続手続きを進めます。

また、封印されている遺言書を見つけた場合には、自分で勝手に開封せず、家庭裁判所での手続きを確認してください。

重要なのは、検認を受けたからといって、その遺言書が法律上有効だと裁判所が認めたことになるわけではないという点です。

検認は主に、遺言書の状態や内容を確認して偽造・変造を防ぐための手続きです。

法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している場合

自筆証書遺言でも、「自筆証書遺言書保管制度」を利用して法務局に保管されている場合があります。

この制度を利用していた場合は、家庭裁判所の検認は必要ありません。

相続開始後、相続人や受遺者などは法務局で「遺言書情報証明書」の交付を請求できます。

相続登記をするときは、この遺言書情報証明書を利用します。

この制度には、

  • 遺言書の紛失を防げる
  • 改ざんの心配を減らせる
  • 相続開始後の家庭裁判所での検認が不要
  • 法務局から一定の通知を受けられる仕組みがある

といった特徴があります。

「自筆で書いた遺言書=すべて検認が必要」と覚えるのではなく、法務局で保管されていたかどうかまで確認しましょう。

家庭裁判所の検認が必要になる場合

自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、原則として家庭裁判所の検認が必要です。

検認の申立ては、遺言書の保管者や、遺言書を発見した相続人などが行います。

申立先は、原則として遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

検認では、

  • 遺言書の形
  • 日付
  • 署名
  • 加除訂正
  • 封印の状態

などが確認されます。

また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いのもとで開封することになります。

【検認が不要な代表例】

  • 公正証書遺言
  • 法務局で保管されている自筆証書遺言

【検認が必要になる代表例】

  • 自宅で保管されていた自筆証書遺言
  • 法務局の保管制度を利用していない自筆証書遺言

なお、検認は遺言書の有効・無効を判断する裁判ではありません。

必要な書類一覧

遺言書によって法定相続人が不動産を相続する場合、一般的には次のような書類を準備します。

書類主な目的
登記申請書相続登記を申請する
遺言書誰が不動産を取得するか確認する
被相続人の死亡が確認できる戸籍等死亡の事実を証明する
不動産取得者の戸籍等遺言者との相続関係を確認する
被相続人の住民票の除票等登記名義人とのつながりを確認する
不動産取得者の住民票等新所有者の住所を証明する
固定資産評価額が分かる書類登録免許税の計算
登記事項証明書不動産の内容を確認する

自筆証書遺言の場合には、状況に応じて、

  • 検認済証明書付きの遺言書
  • 法務局保管の場合は遺言書情報証明書

などを使用します。

遺産分割協議による相続登記とは必要書類が異なり、遺言の内容によっては、被相続人の出生から死亡までの戸籍一式が必要とならないケースもあります。

ただし、遺言書の書き方や相続関係によって必要書類が変わるため、実際の申請前には法務局の最新の記載例を確認しましょう。

登記申請書の書き方

例えば、父親が、

「自宅の土地と建物を長男・山田太郎に相続させる」

という遺言を残していたとします。

被相続人:山田一郎
死亡日:令和7年5月2日
相続人:山田太郎

であれば、基本的なイメージは次のようになります。

登記の目的 所有権移転

原因 令和7年5月2日相続

相続人 (被相続人 山田一郎)

○○県○○市○○町○番○号
山田太郎

その後に、

添付情報
申請年月日
管轄法務局
課税価格
登録免許税
不動産の表示

などを記載します。

原因の日付には、原則として遺言書を作成した日ではなく、被相続人が亡くなった日を書きます。

また、不動産の表示は現在の登記事項証明書を確認しながら書きましょう。

記入例で確認しよう

【例】

父・山田一郎が令和7年5月2日に死亡。

公正証書遺言には、

「下記土地及び建物を長男山田太郎に相続させる」

と書かれていました。

【登記申請書のイメージ】

登 記 申 請 書

登記の目的 所有権移転

原   因 令和7年5月2日相続

相 続 人 (被相続人 山田一郎)

      ○○県○○市○○町○番○号
      山田太郎

添付情報
登記原因証明情報
住所証明情報

令和8年○月○日申請

○○法務局 御中

課税価格 金○○○○円

登録免許税 金○○○円

不動産の表示

【土地】

所在 ○○市○○町
地番 123番4
地目 宅地
地積 162.52平方メートル

【建物】

所在 ○○市○○町123番地4
家屋番号 123番4
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積
1階 78.13平方メートル
2階 78.42平方メートル

遺言書がある相続登記では、

「遺言書があるか」だけでなく、「どの種類の遺言書なのか」を確認する

ことが最初のポイントです。

公正証書遺言なら検認不要、自宅などで保管された自筆証書遺言なら原則検認が必要、法務局で保管された自筆証書遺言なら検認不要、と整理して覚えると分かりやすいでしょう。

なお、遺言書に「相続人ではない人へ不動産を与える」と書かれている場合は、「相続」ではなく「遺贈」の登記になることがあります。この場合は申請方法や必要書類が異なるため、別のケースとして確認する必要があります。

パターン⑥兄弟姉妹などが先に亡くなっている場合【代襲相続】

相続登記では、

「兄弟姉妹がすでに亡くなっているので、自分だけが相続人だろう」

と思っていたところ、戸籍を確認すると、亡くなった人の子どもが相続人になるケースがあります。

これが「代襲相続」です。

特に注意したいのは、誰から見て甥・姪なのかという点です。

例えば、母親が亡くなり、その母親の娘が先に亡くなっていた場合、娘の子どもは、母親から見れば「孫」です。一方、残っている兄弟姉妹から見れば「甥・姪」になります。

相続登記では、普段の呼び方ではなく、被相続人との続柄を基準に相続人を判断することが重要です。

代襲相続とは?

代襲相続とは、本来相続人になるはずだった人が被相続人より先に亡くなっている場合などに、その人の子などが代わって相続人になる制度です。

例えば、

母親

長男・長女

という家族で、長女が母親より先に亡くなっていたとします。

長女に子どもが2人いる場合には、その2人が長女に代わって相続人になることがあります。

図にすると次のようになります。

母親(被相続人)

├─ 長男 → 相続人

└─ 長女 → 母親より先に死亡

  ├─ 長女の子A → 代襲相続人

  └─ 長女の子B → 代襲相続人

この場合、

「長女が亡くなっているから長男だけが相続人」

とはなりません。

長女の子A・Bも相続人になります。

亡くなった相続人の子が相続人になる場合

被相続人の子が先に亡くなっている場合、その子の子ども、つまり被相続人から見た孫が代襲相続人になることがあります。

例えば、

祖母が死亡

長男は存命
長女は祖母より先に死亡

長女には子ども2人

という場合です。

相続人は、

  • 長男
  • 長女の子A
  • 長女の子B

となります。

仮に祖母の配偶者がすでに亡くなっており、長男と長女が本来2分の1ずつ相続する関係だった場合、長女の2分の1を、その子ども2人が分けます。

相続人相続分の例
長男2分の1
長女の子A4分の1
長女の子B4分の1

このように、代襲相続人は、原則として本来相続人になるはずだった人の相続分を引き継ぎ、その人数で分けることになります。

また、被相続人の子については、孫も先に亡くなっている場合に、一定の場合にはひ孫へ再代襲することがあります。

甥・姪が相続人になるのはどんな場合?

「甥・姪が相続人になる」という言い方には注意が必要です。

被相続人本人から見て甥・姪が相続人になるのは、主に兄弟姉妹が相続人となる第3順位のケースです。

一般的には、

被相続人に子や孫などの直系卑属がいない

父母・祖父母などの直系尊属もいない

兄弟姉妹が相続人になる

という順番です。

そこで、被相続人の兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっていると、その兄弟姉妹の子、つまり被相続人から見た甥・姪が代襲相続人になる場合があります。

例えば、

山田一郎(被相続人・子なし・父母死亡)

├─ 妹A → 存命

└─ 弟B → 一郎より先に死亡

  ├─ Bの長男 → 一郎の甥

  └─ Bの長女 → 一郎の姪

この場合、条件を満たせば妹Aと甥・姪が相続人になります。

なお、兄弟姉妹を通じた代襲相続は、原則として甥・姪までの一代限りです。

ここは「子から孫、ひ孫へ続く代襲相続」と違うため、混同しないようにしましょう。

代襲相続人を確認するために必要な戸籍

代襲相続では、通常の相続より戸籍が増えることがあります。

なぜなら、

「本来の相続人が先に亡くなっている」

ことと、

「その人の子が誰なのか」

の両方を証明する必要があるからです。

被相続人の子が先に亡くなっている一般的なケースでは、次のような戸籍を確認します。

確認する人戸籍で確認する内容
被相続人出生から死亡までの親族関係
先に亡くなった子出生から死亡までの身分関係
代襲相続人現在の戸籍など
その他の相続人現在の戸籍など

例えば、

母親

長女が先に死亡

長女の子2人が代襲相続

という場合、母親の戸籍だけでは足りないことがあります。

長女が死亡した事実や、長女の子どもが誰なのかを戸籍でつなげて証明します。

また、被相続人の兄弟姉妹が相続人になるケースでは、必要な戸籍がさらに多くなることがあります。

被相続人に子がいないことや、父母などがすでに亡くなっていることも証明しなければならないためです。

そのため、代襲相続で戸籍の範囲が分からなくなった場合は、法務局へ確認すると安心です。

遺産分割協議書には誰が署名・実印を押す?

遺産分割協議を行う場合は、代襲相続人を含めた現在の相続人全員が協議に参加します。

例えば、

母親が死亡

相続人:

  • 長男
  • 先に亡くなった長女の子A
  • 先に亡くなった長女の子B

というケースなら、

長男だけで遺産分割協議をすることはできません。

長男
長女の子A
長女の子B

の3人全員で話し合います。

遺産分割協議書には、原則として相続人全員が印鑑登録された印、つまり実印を押します。

例えば、

住所 ○○県○○市○○町○番○号
氏名 山田太郎 印

住所 ○○県○○市○○町○番○号
氏名 佐藤一郎 印

住所 ○○県○○市○○町○番○号
氏名 佐藤花子 印

という形です。

ここで大切なのは、すでに亡くなっている人の名前を書いて押印するのではないということです。

現在の相続人である代襲相続人が協議に参加します。

印鑑証明書は誰のものが必要?

遺産分割協議書を相続登記に使用する場合は、相続人全員が実印を押し、印鑑証明書によってその印を確認します。

法務局の2026年4月版ハンドブックでは、遺産分割協議書に相続人全員が印鑑証明書と同じ印を押すよう案内されています。

登記申請時の添付については、遺産分割協議を行った相続人のうち、登記申請人となる相続人を除く方の印鑑証明書を各1通添付する取扱いが示されています。

また、この印鑑証明書には、相続登記では「発行後3か月以内」といった期限はありません。

例えば、

長男
代襲相続人A
代襲相続人B

の3人で協議し、長男が不動産を取得して登記申請人になる場合には、少なくとも協議に参加した代襲相続人A・Bの印鑑証明書が登記申請上必要となります。

ただし、協議書を銀行など別の相続手続にも利用する場合、提出先が独自の発行期限を設けていることがあります。

そのため、実務上は相続人それぞれが印鑑証明書を準備しておくと手続きを進めやすいでしょう。

登記申請書の書き方

代襲相続がある場合でも、遺産分割協議によって1人が不動産を取得するのであれば、登記申請書ではその不動産を取得する相続人を記載します。

例えば、

被相続人:山田花子
死亡日:令和7年5月2日

法定相続人:

  • 長男 山田太郎
  • 亡くなった長女の子A
  • 亡くなった長女の子B

遺産分割協議の結果、

「土地と建物は長男・山田太郎が相続する」

と決まった場合です。

申請書の基本的な形は、

登記の目的 所有権移転

原因 令和7年5月2日相続

相続人 (被相続人 山田花子)

○○県○○市○○町○番○号
山田太郎

となります。

代襲相続人の名前を、新しい所有者として必ず全員書くわけではありません。

代襲相続人が協議に参加したことは、戸籍や遺産分割協議書などで確認されます。

記入例で確認しよう

具体例で整理してみましょう。

【家族関係】

母・山田花子 死亡

├─ 長男・山田太郎 存命

└─ 長女・山田春子 母より先に死亡

  ├─ 佐藤一郎

  └─ 佐藤恵子

この場合、

山田太郎
佐藤一郎
佐藤恵子

の3人が相続人になるケースがあります。

3人で遺産分割協議を行い、

「母名義の土地と建物は山田太郎が相続する」

と合意した場合は、3人が遺産分割協議書に実印を押します。

【遺産分割協議書のイメージ】

令和7年5月2日に死亡した山田花子の遺産について、共同相続人は協議の結果、下記不動産を山田太郎が相続することに合意した。

【土地】

所在 ○○市○○町
地番 123番4
地目 宅地
地積 162.52平方メートル

【建物】

所在 ○○市○○町123番地4
家屋番号 123番4
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積
1階 78.13平方メートル
2階 78.42平方メートル

住所 ○○県○○市……
山田太郎 印

住所 ○○県○○市……
佐藤一郎 印

住所 ○○県○○市……
佐藤恵子 印

【登記申請書】

登記の目的 所有権移転

原因 令和7年5月2日相続

相続人 (被相続人 山田花子)

○○県○○市○○町○番○号
山田太郎

このケースでは、佐藤一郎・佐藤恵子は山田太郎から見れば甥・姪でも、被相続人である山田花子から見れば孫です。

相続関係を考えるときは、必ず被相続人から見た続柄で整理しましょう。

パターン⑦相続登記をしないうちに次の相続が発生した場合【数次相続】

相続登記を長期間行わないままにしていると、最初の相続人が亡くなり、さらに次の相続が発生することがあります。

これを一般に「数次相続」といいます。

例えば、

祖父が亡くなった

父が相続人になった

祖父から父への相続登記をしないまま父も亡くなった

父の子が相続人になった

というケースです。

数次相続では、相続が2回、3回と重なるため、通常の相続登記より戸籍や遺産分割協議の確認範囲が広くなります。

数次相続とは?

数次相続とは、最初の相続について遺産分割や相続登記が完了しないうちに、その相続人が死亡して、次の相続が発生することです。

例えば、

祖父・山田一郎
令和2年死亡

相続人である父・山田太郎
令和7年死亡

父の子・山田次郎

という状態です。

祖父の土地がまだ祖父名義のままであれば、

「祖父の相続」

と、

「父の相続」

の両方を考える必要があります。

法務局でも、最初の相続登記が未了のうちに、その相続人が死亡して次の相続が始まったケースについて、数次相続用の登記申請書記載例を公開しています。

代襲相続との違い

代襲相続と数次相続は似ていますが、一番分かりやすい違いは亡くなった順番です。

種類死亡の順番基本的な考え方
代襲相続子などが先に死亡→被相続人が死亡子などに代わり、その子が相続
数次相続被相続人が死亡→相続人が死亡最初の相続後に次の相続が発生

例えば、

【代襲相続】

長女死亡

母死亡

長女の子が代襲相続人

【数次相続】

母死亡

長女が相続人になる

その後長女死亡

長女の相続人へ権利が引き継がれる

という違いです。

「母と娘のどちらが先に亡くなったのか」で、相続関係が変わります。

戸籍に記載されている死亡日を必ず確認しましょう。

必要になる戸籍を確認する

数次相続では、それぞれの相続について法定相続人を証明する必要があるため、戸籍が多くなりやすいのが特徴です。

例えば、

祖父



という2段階の相続なら、

【第1次相続】

祖父が亡くなったとき、誰が相続人だったか

【第2次相続】

父が亡くなったとき、誰が相続人になったか

をそれぞれ確認します。

主に次のような資料を確認します。

  • 最初の被相続人の出生から死亡までの戸籍等
  • 第1次相続の相続人を確認できる戸籍
  • その後亡くなった相続人の出生から死亡までの戸籍等
  • 第2次相続の相続人の戸籍
  • 被相続人の住民票の除票や戸籍の附票
  • 不動産取得者の住民票等

3代、4代と登記をしていない場合には、さらに戸籍が増えることがあります。

法務局も、何世代も相続登記をしていない数次相続では、相続人が増えて多くの書類が必要になるため、不明な場合は法務局や司法書士へ相談するよう案内しています。

遺産分割協議書の作り方

数次相続では、「最初の相続人」と「その後の相続人」の関係を正確に整理してから遺産分割協議書を作ることが重要です。

例えば、

祖父・山田一郎が死亡

相続人は長男・山田太郎と長女・山田花子

遺産分割前に山田太郎が死亡

山田太郎の相続人は妻と子

というケースです。

この場合、山田太郎本人はすでに亡くなっているため、山田太郎が署名・押印することはできません。

山田太郎が持っていた遺産分割上の地位を引き継いだ相続人が関係してきます。

ただし、数次相続の遺産分割協議書は、

  • 誰がいつ亡くなったか
  • 第1次相続の相続人は誰か
  • 第2次相続の相続人は誰か
  • 第1次相続について遺産分割が済んでいたか
  • それぞれの相続人がどの権利を引き継いだか

によって書き方が変わります。

そのため、通常の遺産分割協議書をそのまま流用するのではなく、相続関係図を先に作って整理すると分かりやすくなります。

登記申請を1回でできる場合とできない場合

数次相続だからといって、必ず登記申請が2回必要になるとは限りません。

条件によっては、最初の被相続人から最終的な相続人までを1件の申請で登記できる場合があります。

法務局の数次相続の記載例でも、

第1次相続

第2次相続

を1件の申請書に記載する例が示されています。

例えば、原因欄には、

令和2年3月21日 山田太郎相続
令和7年6月20日 相続

というように、複数の相続を記載する場合があります。

ただし、法務局は、最終の相続以外の相続について共同相続人が複数人権利を取得している場合には、1件の申請では登記できないと案内しています。

つまり、

「数次相続なら必ず1回でできる」

「必ず2回必要」

のどちらでもありません。

相続関係によって変わります。

【考え方の目安】

状況登記
中間の相続が単独相続になるなど一定条件を満たす1件で可能な場合あり
中間の相続で複数人が権利取得1件ではできない場合あり
何代も相続が重なっている個別確認が必要

この部分は専門的な判断になるため、自己判断だけで申請書を作らない方が安全です。

複雑な場合は法務局や専門家に確認する

数次相続は、自分で行う相続登記の中でも難易度が高いケースです。

特に、

  • 2世代以上相続登記をしていない
  • 相続人が多数いる
  • 途中で相続人が亡くなっている
  • 代襲相続も同時に発生している
  • 相続放棄をした人がいる
  • 遺産分割協議をしたか分からない
  • 古い戸籍が多数必要
  • 誰を協議書へ記載すればよいか分からない
  • 1件の申請で登記できるか判断できない

という場合は、法務局の登記手続案内や司法書士への相談を検討しましょう。

法務局では2026年4月現在、自分で登記申請をする方向けに、対面・電話・ウェブ会議による登記手続案内を用意しています。

数次相続では、いきなり登記申請書を書くよりも、

死亡した順番を確認する → 相続関係図を作る → 必要な戸籍を集める → 誰が現在の相続人なのか確定する → 登記方法を確認する

という順番で進めると、間違いを減らしやすくなります。

代襲相続と数次相続の違いで迷ったときは、まず「誰が先に亡くなったのか」を確認してください。

それだけでも、自分がどちらのパターンに当てはまるのかを判断しやすくなります。

パターン⑧相続放棄した人がいる場合

相続人の中に相続放棄をした人がいる場合は、ほかの相続人の範囲や法定相続分が変わることがあります。

例えば、父親が亡くなり、妻と子ども2人が相続人だったとします。そのうち子ども1人が家庭裁判所で正式に相続放棄すると、その人は法律上「初めから相続人ではなかった」ものとして扱われます。

そのため、相続登記をするときは、相続放棄をした人を除いたうえで、改めて「誰が相続人になるのか」を確認する必要があります。

相続放棄すると相続関係はどう変わる?

相続放棄は、家庭裁判所に申述して行う手続きです。

相続放棄が受理されると、その人はその相続について、初めから相続人ではなかったものとして扱われます。

例えば、

父親が死亡

相続人候補:

  • 長男
  • 長女

このうち長女が相続放棄した場合、長女はその相続について相続人から外れます。

重要なのは、相続放棄によって次の順位の相続人が新たに相続人になることがある点です。

例えば、被相続人に子どもが1人しかおらず、その子が相続放棄した場合、条件によっては父母など第2順位の相続人へ相続権が移ることがあります。

そのため、

「1人が放棄したから、残りの人だけで登記すればよい」

とすぐ判断せず、法定相続人をもう一度確認しましょう。

【相続放棄で確認すること】

  • 誰が相続放棄したのか
  • 家庭裁判所で正式に受理されているか
  • 放棄後に誰が法定相続人になるのか
  • 法定相続分がどう変わるのか
  • 次順位の相続人が発生していないか

必要な書類一覧

相続放棄をした人がいる状態で相続登記をする場合は、通常の相続登記の書類に加えて、相続放棄の事実を確認できる書類が必要になることがあります。

一般的な確認書類は次のとおりです。

書類主な目的
登記申請書相続登記の申請
被相続人の戸籍等法定相続人の確認
相続人の戸籍現在の相続人の確認
被相続人の住民票の除票等登記名義人とのつながりの確認
不動産取得者の住民票等新しい所有者の住所証明
相続放棄を証明する書類相続放棄の事実を確認
遺産分割協議書必要なケースで提出
印鑑証明書遺産分割協議を行った場合など
固定資産評価額が分かる書類登録免許税の計算
登記事項証明書不動産内容の確認

相続放棄を証明するためには、家庭裁判所から交付を受ける相続放棄申述受理証明書などを利用することがあります。

必要書類は相続関係によって変わるため、相続放棄者がいる場合は、申請前に管轄法務局へ確認すると安心です。

相続放棄した人は遺産分割協議に参加する?

家庭裁判所で正式に相続放棄が受理された人は、その相続について初めから相続人ではなかったものとして扱われます。

そのため、相続放棄した人は、通常、その後の遺産分割協議には参加しません。

例えば、

相続人候補:

  • 長男
  • 長女
  • 次男

このうち次男が正式に相続放棄した場合、相続放棄後に確定した相続人で遺産分割協議を行います。

ただし、

「私は土地はいらないから兄に任せる」

と言っただけでは、法律上の相続放棄ではありません。

この場合は相続人のままなので、遺産分割協議への参加が必要になります。

【違いを整理】

行為法律上の相続放棄?遺産分割協議
家庭裁判所で相続放棄が受理されたはい通常参加しない
口頭で「財産はいらない」と言ったいいえ参加が必要
遺産分割協議で財産を取得しないと合意したいいえ協議に参加

「財産をもらわないこと」と「相続放棄」は別物だと覚えておきましょう。

登記申請書の書き方

相続放棄した人がいる場合でも、登記申請書の基本的な書き方自体は大きく変わりません。

重要なのは、相続放棄後に確定した相続人を基準に書くことです。

例えば、

被相続人:山田一郎
死亡日:令和7年5月2日

本来の相続人候補:

  • 長男 山田太郎
  • 長女 山田花子

長女が相続放棄し、長男が単独相続人になったとします。

この場合の基本的なイメージは、

登記の目的 所有権移転

原因 令和7年5月2日相続

相続人 (被相続人 山田一郎)

○○県○○市○○町○番○号
山田太郎

となります。

相続放棄した山田花子を、新しい所有者として登記申請書に記載するわけではありません。

ただし、相続放棄によって次順位の相続人が発生するケースでは、単純に「残った1人が全部取得する」とは限りませんので注意してください。

代襲相続との違いに注意する

相続放棄と代襲相続は、特に間違えやすいところです。

大きな違いは次のとおりです。

ケース子どもが代わりに相続する?
本来の相続人が被相続人より先に死亡代襲相続する場合がある
本来の相続人が相続放棄その人の子は相続放棄を理由に代襲相続しない

例えば、

祖母

長男

長男の子

という家族関係だったとします。

長男が祖母より先に死亡していれば、長男の子が代襲相続人になる場合があります。

一方、

祖母が死亡

長男が相続放棄

という場合、長男の子が「長男が放棄したから代わりに相続する」ということにはなりません。

相続放棄では、その人自身が初めから相続人ではなかったものとして扱われますが、相続放棄を原因として代襲相続が発生するわけではありません。

ここは相続登記で非常に重要な違いです。

登記申請書を1項目ずつ書いてみよう

ここまで相続のパターンを確認してきましたが、いざ登記申請書を見ると、

「登記の目的って何?」

「原因には申請日を書くの?」

「被相続人は自分の名前?」

と迷う方も多いでしょう。

そこで、ここからは登記申請書を上から順番に見ながら、何を書くのかを一つずつ説明します。

基本的な相続登記の申請書には、次のような項目があります。

項目簡単な意味
登記の目的どんな登記をするか
原因なぜ名義が変わるのか
相続人新しく不動産を取得する人
被相続人亡くなった人
添付情報一緒に提出する証明情報
申請年月日法務局へ申請する日
法務局不動産を管轄する登記所
課税価格登録免許税の計算の基礎
登録免許税登記申請時に納める税金
不動産の表示土地・建物を特定する情報

「登記の目的」の書き方

相続によって不動産の所有者を変更する場合、基本的には、

登記の目的 所有権移転

と記載します。

これは、

「亡くなった人から相続人へ所有権を移す登記をします」

という意味です。

例えば、母親名義の土地を長男が相続する場合でも、

登記の目的 相続

とは書かず、

登記の目的 所有権移転

とするのが基本です。

なお、被相続人が不動産全部ではなく持分だけを所有していた場合などは、記載方法が変わることがあります。

「原因」の年月日は何の日を書く?

「原因」には、その登記が発生した理由と日付を書きます。

相続の場合は、

被相続人が亡くなった日

が基本です。

例えば、

母親の死亡日:令和7年5月2日

なら、

原因 令和7年5月2日相続

と記載します。

注意したいのは、法務局へ提出する日ではないことです。

例えば、

死亡日 令和7年5月2日
申請日 令和8年9月10日

なら、

原因 令和7年5月2日相続

申請年月日 令和8年9月10日申請

となります。

【覚え方】

  • 原因の日付=亡くなった日
  • 申請年月日=法務局へ申請する日

「相続人」の住所・氏名の書き方

「相続人」の欄には、不動産を取得する人の住所・氏名を書きます。

例えば、

相続人 (被相続人 山田花子)

○○県○○市○○町1番2号
山田太郎

という形です。

住所は、住民票などの住所証明情報を確認しながら書きましょう。

法定相続分で複数人が共有する場合には、それぞれの持分も記載します。

例えば、

持分2分の1
○○県○○市○○町1番2号
山田太郎

持分2分の1
○○県○○市○○町3番4号
山田花子

という形です。

「土地の面積」を書くのではなく、所有権の割合である「持分」を書く点に注意してください。

「被相続人」とは誰のこと?

「被相続人」は、相続財産を受け取る人ではありません。

亡くなった方のことです。

例えば、

母親・山田花子が死亡

長男・山田太郎が土地を相続

した場合、

被相続人 山田花子
相続人 山田太郎

となります。

言葉意味
被相続人亡くなった人
相続人財産を相続する人

「被」という文字が付いているので分かりにくいですが、

亡くなった人=被相続人

と覚えておけば大丈夫です。

「添付情報」の書き方

「添付情報」とは、登記申請書と一緒に提出する証明情報のことです。

法務局の記載例では、相続登記の場合、

登記原因証明情報
住所証明情報

などと記載します。

「登記原因証明情報」には、戸籍や遺産分割協議書、遺言書など、その相続が発生したことや取得者を証明する書類が含まれます。

「住所証明情報」は、新しく所有者になる人の住民票などです。

例えば、

添付情報

登記原因証明情報
住所証明情報

と記載します。

提出する戸籍を1通ずつ、

戸籍謄本1通
除籍謄本2通
住民票1通

のように細かく列挙する形式とは限りません。

法務局の最新記載例に合わせて書くのが安全です。

「申請年月日」の書き方

申請年月日は、実際に法務局へ登記申請をする年月日を書きます。

例えば、令和8年9月10日に申請する場合は、

令和8年9月10日申請

とします。

死亡年月日と混同しないようにしましょう。

例えば、

死亡日 令和7年5月2日
申請日 令和8年9月10日

なら、

原因 令和7年5月2日相続

令和8年9月10日申請

です。

郵送申請などの場合は日付の扱いを確認したいケースもあるため、迷った場合は提出先の法務局へ確認しましょう。

提出する法務局の書き方

相続登記は、どこの法務局でも自由に申請できるわけではありません。

対象となる不動産の所在地を管轄する法務局へ申請します。

例えば、

申請する土地・建物が鳥取県鳥取市にある

という場合は、その不動産所在地を管轄する法務局を確認します。

申請書には、

○○法務局 御中

などと記載します。

法務局の管轄は、不動産所在地から法務局ホームページで確認できます。

被相続人が住んでいた地域や、相続人が現在住んでいる地域で決まるのではありません。

不動産がどこにあるか

で決まると覚えておきましょう。

「課税価格」の調べ方と書き方

相続登記では、登録免許税を計算するために「課税価格」を確認します。

基本的には、市区町村の固定資産課税台帳に登録されている価格を使用します。

固定資産税の納税通知書に付いている課税明細書では、一般的に、

「価格」

または

「評価額」

などと表示されています。

注意したいのは、

固定資産税課税標準額ではなく、固定資産評価額を確認する

という点です。

例えば、

土地 5,123,456円
建物 3,234,567円

なら、同じ申請で登記する不動産の価格を合計します。

5,123,456円
+3,234,567円
=8,358,023円

課税価格については、法務局の案内に従い1,000円未満を切り捨てるため、

8,358,000円

となります。

ただし、登録免許税の免税措置が適用される場合など、通常と扱いが異なるケースがあります。

「登録免許税」の計算方法

相続による所有権移転登記の登録免許税は、原則として、

課税価格 × 0.4%

で計算します。

0.4%は数字にすると、

0.004

です。

例えば、課税価格が8,358,000円の場合、

8,358,000円 × 0.004
=33,432円

となります。

登録免許税額については、法令上の端数処理を行います。

通常は100円未満を切り捨てるため、

33,400円

となります。

計算の流れをまとめると、

固定資産評価額を確認

対象不動産を合計

課税価格の1,000円未満を切り捨て

0.4%を掛ける

税額の100円未満を切り捨て

という順番です。

【計算例】

項目金額
土地評価額5,123,456円
建物評価額3,234,567円
合計8,358,023円
課税価格8,358,000円
×0.4%33,432円
登録免許税33,400円

なお、2026年9月現在、一定の相続登記について登録免許税の免税措置があります。

例えば、一定の条件を満たす不動産価額100万円以下の土地については、2027年3月31日まで免税措置が設けられています。

免税措置を利用できるかどうかは、申請時点の法務局・国税庁の最新情報を確認しましょう。

「不動産の表示」は登記簿のどこを写す?

「不動産の表示」は、登記申請書の中でも特に間違いやすい部分です。

ここは、登記事項証明書の表題部を確認しながら書きます。

土地なら、

  • 所在
  • 地番
  • 地目
  • 地積

を確認します。

例えば、

所在 ○○市○○町
地番 123番4
地目 宅地
地積 162.52平方メートル

という形です。

建物なら、

  • 所在
  • 家屋番号
  • 種類
  • 構造
  • 床面積

を確認します。

例えば、

所在 ○○市○○町123番地4
家屋番号 123番4
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積
1階 89.13平方メートル
2階 88.42平方メートル

という形です。

注意したいのは、住所を見ながら書かないことです。

住所と「所在・地番」は同じとは限りません。

また、登記簿で地積が、

162|52

のように左右に分かれて表示されていれば、

162.52平方メートル

と読みます。

床面積も、

89|13

なら、

89.13平方メートル

です。

昔に増築した住宅の場合も、建築当時の記憶ではなく、現在の登記事項証明書に記載されている内容を確認してください。

最後に、初心者が特に間違いやすい項目をまとめます。

項目書く内容間違いやすい例
登記の目的所有権移転「相続」とだけ書く
原因死亡日+相続申請日を書く
被相続人亡くなった人相続する人を書く
相続人不動産取得者被相続人を書く
申請年月日提出する日死亡日を書く
法務局不動産所在地の管轄自宅近くの法務局を書く
課税価格固定資産評価額を基礎に計算課税標準額を使う
不動産の表示登記事項証明書を確認住所や記憶で書く

登記申請書は専門用語が多いため、最初は難しく見えます。

しかし、

「亡くなった人は誰か」
「誰が不動産を取得するのか」
「死亡日はいつか」
「不動産の登記内容はどうなっているか」

を一つずつ確認して当てはめていけば、内容を理解しやすくなります。

書き終えたら、法務局の最新の記載例と見比べながら、一項目ずつ確認してから提出しましょう。

土地・建物の「不動産の表示」の読み方と書き方

相続登記の申請書や遺産分割協議書には、「不動産の表示」を記載します。

初めて登記事項証明書を見ると、

「所在と住所は同じなの?」

「162・52は何の数字?」

「建物の床面積はどこを見ればよい?」

と迷うことがあります。

不動産の表示は、自分の記憶や固定資産税の通知書だけを見て書くのではなく、現在の登記事項証明書を確認しながら正確に記載することが基本です。

土地と建物では記載する項目が違うため、順番に確認していきましょう。

土地の「所在」と「地番」は住所と同じではない

土地の登記事項証明書では、表題部に「所在」と「地番」が記載されています。

例えば、

所在 ○○市○○町一丁目
地番 123番4

という形です。

ここで注意したいのは、普段郵便物などで使用している「住所」と、土地を特定する「地番」は必ずしも同じではないということです。

例えば、普段の住所が、

○○市○○町一丁目10番5号

であっても、登記されている土地の地番が、

123番4

ということがあります。

そのため、

「自宅の住所が10番5号だから、地番も10番5号だろう」

と推測して書いてはいけません。

【確認方法】

  • 登記事項証明書を用意する
  • 土地の表題部を見る
  • 「所在」を確認する
  • 「地番」を確認する
  • そのまま申請書や協議書へ転記する

住所と地番は別のものとして考えましょう。

「地目」とは?

「地目」とは、その土地の主な用途を表す登記上の区分です。

例えば、

  • 宅地
  • 山林
  • 雑種地

などがあります。

住宅が建っている土地なら「宅地」となっていることが多いですが、必ずしも見た目だけで判断できるとは限りません。

相続登記では、

「今は駐車場として使っているから雑種地だろう」

などと自分で判断して書くのではなく、登記事項証明書に現在記録されている地目を確認します。

例えば、

地目 宅地

と記載されていれば、そのまま、

地目 宅地

と書きます。

「地積」の読み方|162・52なら162.52㎡

地積とは、土地の面積のことです。

登記事項証明書では、数字が左右に分かれて表示されることがあります。

例えば、

162|52

のように表示されている場合は、

162.52平方メートル

と読みます。

「52」は受付番号や確認番号ではありません。

小数点以下の数字です。

同じように、

123|45

なら、

123.45平方メートル

となります。

【読み方の例】

登記簿の表示実際の面積
162・52162.52㎡
123・45123.45㎡
98・0098.00㎡

法務局の記載例でも「123・45平方メートル」のように表示されています。

数字を写すときは、小数部分を落とさないように注意しましょう。

建物の「所在」と「家屋番号」の読み方

建物にも「所在」と「家屋番号」があります。

例えば、

所在 ○○市○○町一丁目123番地4
家屋番号 123番4

という形です。

建物の「所在」は、その建物が建っている土地との関係を示します。

一方、「家屋番号」は登記上、その建物を特定するためにつけられている番号です。

家屋番号も、普段使用している住所の番地と完全に一致するとは限りません。

そのため、

  • 住所
  • 土地の地番
  • 建物の家屋番号

を混同しないようにしましょう。

【建物で確認する項目】

  • 所在
  • 家屋番号
  • 種類
  • 構造
  • 床面積

これらは登記事項証明書の表題部に記録されています。

「種類」と「構造」の書き方

建物の「種類」は、その建物が何に使われているかを示します。

例えば、

  • 居宅
  • 店舗
  • 事務所
  • 倉庫
  • 居宅・店舗

などがあります。

一般的な住宅なら、

種類 居宅

となっていることが多いでしょう。

「構造」は、建物の材料や屋根、階数などを表します。

例えば、

木造かわらぶき2階建

鉄骨造スレートぶき2階建

鉄筋コンクリート造陸屋根3階建

などです。

相続登記では、

「木造住宅だから木造2階建と書けばよい」

と簡略化せず、現在の登記事項証明書に記載されている構造をそのまま確認して書くことが大切です。

「床面積」の読み方|78・13なら78.13㎡

建物の床面積も、地積と同じように小数部分が分かれて表示されることがあります。

例えば、

1階 78|13
2階 78|42

と記録されていれば、

1階 78.13平方メートル
2階 78.42平方メートル

と読みます。

【読み方の例】

登記簿の表示実際の床面積
78・1378.13㎡
78・4278.42㎡
43・0043.00㎡

ここでも右側の数字を「受付番号」などと勘違いしないようにしましょう。

また、2階建てなら1階と2階をそれぞれ記載します。

増築している建物はどの床面積を書く?

住宅を建てたあとに増築している場合、

「建築したときの床面積」

と、

「現在の登記簿に記録されている床面積」

が違うことがあります。

例えば、建築当初は、

1階 54平方メートル
2階 52平方メートル

だった住宅を増築し、現在の登記事項証明書では、

1階 89.13平方メートル
2階 88.42平方メートル

となっている場合です。

相続登記の申請書には、原則として現在の登記事項証明書に記載されている床面積を確認して記載します。

昔の設計図や建築時の記憶を基準にしないようにしましょう。

ただし、実際には増築しているのに登記簿へ反映されていない場合は、建物表題変更登記など別の問題が生じることがあります。

その場合は、法務局や土地家屋調査士へ確認することをおすすめします。

昔の面積と現在の面積がある場合はどちらを書く?

登記事項証明書には、過去の変更履歴が記録されていることがあります。

例えば、

建築時
1階 54.00㎡
2階 52.00㎡

増築後
1階 89.13㎡
2階 88.42㎡

というように、新旧の情報が確認できることがあります。

相続登記で現在の不動産を表示するときは、現在有効な登記記録の内容を確認して記載します。

昔の面積を見つけたからといって、その数字を申請書に書くわけではありません。

【判断のポイント】

  • 過去の記録ではなく現在の記録を見る
  • 下線や抹消表示なども確認する
  • 現在有効な床面積を確認する
  • 分からなければ法務局へ確認する

特に古い住宅や増築歴がある住宅では、登記記録を慎重に確認しましょう。

登記簿の受付番号などを書かないよう注意する

登記事項証明書には、不動産の表示以外にも、

  • 原因及びその日付
  • 登記の日付
  • 受付年月日
  • 受付番号
  • 所有者
  • 抵当権などの権利関係

といった情報が記録されています。

しかし、相続登記申請書の「不動産の表示」に、登記簿に書かれている数字をすべて写すわけではありません。

基本的には、土地なら、

  • 所在
  • 地番
  • 地目
  • 地積

建物なら、

  • 所在
  • 家屋番号
  • 種類
  • 構造
  • 床面積

を確認します。

なお、法務局の申請書記載例では「不動産番号」を記載する方法も示されています。不動産番号を記載した場合には、一定の不動産表示の記載を省略できる取扱いがあります。

初心者の方は、法務局の記載例を確認しながら、一項目ずつ転記すると間違いを防ぎやすいでしょう。

遺産分割協議書の作り方を記入例付きで解説

相続人が複数いて、話し合いによって、

「自宅の土地と建物は長男が相続する」

などと決めた場合、その合意内容を証明するために遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書は決まった専用用紙でなければならないわけではありませんが、「誰が亡くなり、誰が、どの財産を取得するのか」が分かるように作成することが重要です。

法務局も遺産分割協議書の記載例を公開しています。

遺産分割協議書には何を書く?

不動産を含む遺産分割協議書では、主に次の内容を書きます。

  • 被相続人の氏名
  • 被相続人が亡くなった日
  • 共同相続人
  • 誰がどの財産を取得するか
  • 土地・建物の不動産表示
  • 協議を行った日
  • 相続人の住所・氏名
  • 実印

例えば、基本的な流れは次のようになります。

遺産分割協議書

令和7年5月2日に死亡した山田一郎の相続財産について、共同相続人である山田花子、山田太郎及び山田春子は、次のとおり遺産分割の協議を行った。

下記不動産は、山田太郎が相続する。

【土地】
所在 ○○市○○町一丁目
地番 123番4
地目 宅地
地積 162.52平方メートル

【建物】
所在 ○○市○○町一丁目123番地4
家屋番号 123番4
種類 居宅
構造 木造かわらぶき2階建
床面積
1階 78.13平方メートル
2階 78.42平方メートル

協議日

相続人の住所・氏名・実印

という形です。

被相続人の氏名・死亡日の書き方

最初に、

「誰の相続について話し合ったのか」

を明確にします。

例えば、

令和7年5月2日、山田一郎の死亡によって開始した相続について……

と記載します。

ここでの「令和7年5月2日」は、遺産分割協議をした日ではありません。

被相続人が亡くなった日です。

例えば、

死亡日 令和7年5月2日
協議日 令和8年8月20日

なら、死亡日は相続開始日として記載し、協議書の末尾などには実際の協議日を記載します。

誰がどの不動産を取得するか明記する

遺産分割協議書では、

「相続人全員で話し合いました」

と書くだけでは不十分です。

誰がどの財産を取得するのかを明確にします。

例えば、

相続財産のうち、下記不動産は山田太郎が相続する。

という形です。

共有で取得する場合なら、

山田太郎 持分2分の1
山田春子 持分2分の1

のように割合まで書きます。

【良い例】

下記土地及び建物は、山田太郎が相続する。

【分かりにくい例】

家については長男がもらう。

相続登記に使用する書類ですので、「家」ではなく、登記上の土地・建物が具体的に特定できるようにしましょう。

不動産の表示は登記簿どおりに記載する

遺産分割協議書に土地・建物を書くときも、登記事項証明書を確認します。

土地なら、

所在
地番
地目
地積

建物なら、

所在
家屋番号
種類
構造
床面積

を確認します。

例えば、

土地

所在 ○○市○○町一丁目
地番 123番4
地目 宅地
地積 162.52平方メートル

と記載します。

普段の住所や固定資産税通知書の表記だけを見て書くのではなく、登記簿上の不動産を正確に特定できる内容にしましょう。

相続人全員の住所・氏名を書く

遺産分割協議は、原則として相続人全員の合意によって成立します。

そのため、協議書の末尾には、協議に参加した相続人全員の住所・氏名を記載します。

例えば、

令和8年8月20日

住所 ○○県○○市○○町1番2号
氏名 山田花子 印

住所 ○○県○○市○○町3番4号
氏名 山田太郎 印

住所 ○○県○○市○○町5番6号
氏名 山田春子 印

という形です。

代襲相続人や数次相続がある場合には、誰が現在の遺産分割協議に参加する相続人なのかを戸籍で確認する必要があります。

実印を押印する

相続登記に使用する遺産分割協議書には、相続人全員が印鑑証明書と同じ印鑑、つまり実印を押します。

法務局の公式記載例でも、各相続人について「実印」と明示されています。

一般的には、

氏名 山田太郎 印

という部分に実印を押します。

【押印前のチェック】

  • 印鑑証明書の印影と同じ実印か
  • 印影がかすれていないか
  • 印影が途中で欠けていないか
  • 別の認印を押していないか

押印を失敗した場合に備えて、最初から予備の原本を作成する方法もあります。

印鑑証明書を準備する

法務局の2026年の案内では、遺産分割協議書には相続人全員が印鑑証明書と同じ実印を押すよう案内されています。

相続登記の申請時には、原則として、遺産分割協議をした相続人のうち登記申請人となる相続人を除く人の印鑑証明書を添付します。

また、この印鑑証明書には、相続登記では「作成後3か月以内」という制限はありません。

例えば、

相続人3人

山田太郎が不動産を取得して登記申請人

という場合は、ほかの協議参加者の印鑑証明書が登記申請上必要になります。

ただし、銀行や証券会社など別の相続手続では「発行後○か月以内」といった条件を設けている場合があります。

相続登記と金融機関の手続は分けて確認しましょう。

複数通作成する場合の考え方

遺産分割協議書は、複数通作成することもできます。

例えば相続人が3人なら、

3通作成

3人全員がそれぞれの原本に実印を押す

各相続人が1通ずつ保管

という方法があります。

法務局の記載例でも、

「本協議書を3通作成し、それぞれ署名・押印し、各自1通を保有する」

という形が示されています。

ただし、必ず相続人の人数と同じ通数を作らなければならないという意味ではありません。

法務局提出用、金融機関用、各相続人の保管用など、必要に応じて複数の原本を作る方法があります。

複数通を原本として使う場合には、各通すべてに必要な相続人の押印をそろえておくことが重要です。

書き間違えた場合の対処方法

遺産分割協議書を書き間違えた場合は、自己判断で修正液や修正テープを使用しないようにしましょう。

不動産の表示や氏名、持分など重要な部分に誤りがある場合は、新しい協議書を作り直して、相続人全員に改めて押印してもらう方法が最も分かりやすく安全です。

特に注意したい間違いは、

  • 被相続人の氏名
  • 死亡年月日
  • 相続人の氏名
  • 土地の地番
  • 地積
  • 家屋番号
  • 床面積
  • 取得する相続人
  • 持分

などです。

軽微な誤記を訂正する方法もありますが、訂正方法や押印の扱いで迷う場合には、管轄法務局へ確認しましょう。

【提出前チェックリスト】

□ 被相続人の氏名・死亡日を確認した
□ 相続人全員を確認した
□ 誰が不動産を取得するか明記した
□ 土地の所在・地番・地目・地積を確認した
□ 建物の所在・家屋番号・種類・構造・床面積を確認した
□ 相続人全員の住所・氏名を確認した
□ 必要な実印が押されている
□ 必要な印鑑証明書を準備した
□ 複数通作った場合は各原本の押印を確認した

最後に、簡単な完成イメージを確認しておきましょう。

【遺産分割協議書の基本例】

遺産分割協議書

令和7年5月2日、山田一郎の死亡によって開始した相続について、共同相続人である山田花子、山田太郎及び山田春子は、その相続財産について、次のとおり遺産分割の協議を行った。

相続財産のうち、下記の不動産は、山田太郎が相続する。

土地
所在 ○○市○○町一丁目
地番 123番4
地目 宅地
地積 162.52平方メートル

建物
所在 ○○市○○町一丁目123番地4
家屋番号 123番4
種類 居宅
構造 木造かわらぶき2階建
床面積
1階 78.13平方メートル
2階 78.42平方メートル

この協議を証するため、本協議書を3通作成し、それぞれ署名、押印の上、各自1通を保有する。

令和8年8月20日

住所 ○○県○○市……
山田花子 実印

住所 ○○県○○市……
山田太郎 実印

住所 ○○県○○市……
山田春子 実印

※上記は書き方を理解するための例です。実際には相続人の人数、遺産分割の内容、不動産の数などに合わせて作成してください。

相続関係説明図の作り方

相続登記では、亡くなった人と相続人との関係を分かりやすく整理した「相続関係説明図」を作成することがあります。

名前だけを見ると難しそうですが、簡単にいえば、

「誰が亡くなり、その人の相続人が誰なのかを家系図のようにまとめた書類」

です。

必ずしもすべての相続登記で作成しなければならない書類ではありませんが、戸籍が多い場合や代襲相続がある場合には、相続関係を整理するうえでも役立ちます。

相続関係説明図とは?

相続関係説明図とは、被相続人と相続人との親族関係を一覧で確認できるようにした図です。

例えば、

父親が死亡

妻・長男・長女が相続人

であれば、次のような関係を1枚の書類にまとめます。

被相続人 山田一郎

├─ 配偶者 山田花子

├─ 長男 山田太郎

└─ 長女 山田春子

戸籍謄本を何枚も順番に読まなくても、相続関係説明図を見ると、

  • 誰が被相続人か
  • 配偶者は誰か
  • 子は何人いるか
  • 誰が不動産を相続するのか
  • 代襲相続人がいるか

といった関係を把握しやすくなります。

作成するメリット

相続関係説明図には、主に2つのメリットがあります。

1つ目は、相続関係を自分で整理しやすくなることです。

例えば、兄弟姉妹や代襲相続人がいると、戸籍だけを見ていると誰が現在の相続人なのか分かりにくくなることがあります。

図にすると、関係を確認しやすくなります。

2つ目は、相続登記の申請時に相続関係説明図を戸籍類と一緒に提出することで、一定の戸籍について、登記の調査終了後に原本を返してもらえることです。

これを「原本還付」といいます。

【主なメリット】

  • 家族関係を一目で確認できる
  • 相続人の漏れを確認しやすい
  • 代襲相続の関係を整理しやすい
  • 法務局が相続関係を確認しやすくなる
  • 一定の戸籍について原本還付を受けやすくなる

ただし、相続関係説明図を作ればすべての添付書類が返却されるという意味ではありません。

原本還付の対象にならない書類もあるため、必要に応じて法務局へ確認しましょう。

亡くなった人をどのように記載する?

相続関係説明図では、亡くなった方を「被相続人」として記載します。

例えば、

被相続人 山田一郎

住所 ○○県○○市○○町1番2号
死亡 令和7年5月2日
(被相続人)山田一郎

というように記載します。

法務局の記載例でも、

  • 住所
  • 死亡年月日
  • 「被相続人」の表示
  • 氏名

などを記載する形が示されています。

【覚え方】

被相続人=亡くなった人

相続人=財産を相続する人

ここを逆にしないようにしましょう。

配偶者・子・代襲相続人の書き方

被相続人の横や下に、配偶者や子どもを線でつないでいきます。

例えば、

山田一郎(被相続人)
   │
   ├── 山田花子(配偶者)
   │
   ├── 山田太郎(長男)
   │
   └── 山田春子(長女)

という形です。

不動産を相続する人については、法務局の記載例では「(相続人)」などと表示します。

一方、遺産分割協議の結果、不動産を取得しない相続人については「分割」などと表示する記載例もあります。

代襲相続がある場合は、先に亡くなった人と、その子どもの関係が分かるようにします。

例えば、

山田花子(被相続人)

├─ 山田太郎(長男・相続人)

└─ 山田春子(長女・先に死亡)

  ├─ 佐藤一郎(代襲相続人)

  └─ 佐藤恵子(代襲相続人)

というように記載します。

死亡した長女を消してしまうのではなく、

「長女が存在していたこと」と「その長女が先に死亡したこと」

が分かるようにしておくことが大切です。

家系図形式の記入例

具体例を見てみましょう。

【ケース】

被相続人:山田花子
死亡日:令和7年5月2日

夫:すでに死亡

子ども:

  • 長男 山田太郎
  • 長女 山田春子

ただし、長女・山田春子は被相続人より先に死亡しており、子どもが2人います。

相続関係説明図は、次のようなイメージになります。

         山田一郎
          死亡
           │
           │
      山田花子(被相続人)
      令和7年5月2日死亡
           │
      ──────────
      │        │
   山田太郎     山田春子
   (相続人)     先に死亡
              │
           ───────
           │     │
        佐藤一郎   佐藤恵子
        (相続人)  (相続人)

遺産分割協議によって山田太郎だけが不動産を取得する場合には、山田太郎に「(相続人)」、不動産を取得しない人について「分割」などと表示する方法があります。

実際の作成では、法務局の最新記載例を確認しながら作ると安心です。

戸籍との内容が一致しているか確認する

相続関係説明図は、自分の記憶だけで作ってはいけません。

必ず戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍などと照らし合わせながら確認します。

特に次の項目を確認しましょう。

  • 被相続人の氏名
  • 死亡年月日
  • 配偶者
  • 子どもの人数
  • 子どもの氏名
  • 先に死亡した相続人
  • 代襲相続人
  • 再婚や養子縁組などの関係

例えば、

「長女は亡くなっているから書かなくてもよい」

と省略すると、その長女の子どもが代襲相続人になっていることを見落とす原因になります。

相続関係説明図を作ったら、最後に次の順番で確認すると分かりやすいでしょう。

戸籍を確認する

死亡した順番を確認する

現在の相続人を確認する

相続関係説明図へ記載する

もう一度戸籍と照合する

相続関係説明図は、単なる「家族のメモ」ではありません。

相続登記の内容を整理する重要な資料ですので、戸籍と一致しているか一人ずつ確認しましょう。

登録免許税はいくら?初心者向けに計算方法を解説

相続登記をするときには、原則として「登録免許税」という税金を納めます。

相続による所有権移転登記の登録免許税は、基本的には、

固定資産税評価額を基礎にした課税価格 × 0.4%

で計算します。

0.4%は、

1000分の4

または、

0.004

と同じ意味です。

ただし、一定の土地については免税措置が適用されることもあります。

相続登記の登録免許税とは?

登録免許税とは、不動産の所有権移転などの登記を受けるときに国へ納める税金です。

相続によって土地や建物の名義を変更する場合も、原則として登録免許税がかかります。

一般的な相続による所有権移転登記では、

不動産の価額 × 0.4%

で計算します。

例えば課税価格が500万円なら、

5,000,000円 × 0.004

=20,000円

となります。

なお、売買による登記などとは税率が異なるため、

「不動産登記なら全部0.4%」

という意味ではありません。

この記事では、相続登記の場合について説明しています。

固定資産評価額はどこを見る?

登録免許税を計算するときは、不動産の売買価格や購入価格を使うわけではありません。

基本的には、市区町村の固定資産課税台帳に登録されている価格を確認します。

毎年送られてくる固定資産税の課税明細書では、

「価格」

「評価額」

などと表示されていることが一般的です。

ここで注意したいのが、

「固定資産税課税標準額」と間違えないこと

です。

例えば課税明細書に、

評価額 5,234,567円
課税標準額 3,100,000円

と書かれている場合、登録免許税の基礎として確認するのは、基本的には「評価額」の方です。

【確認するところ】

表示登録免許税の計算
価格・評価額基本的にこちらを確認
固定資産税課税標準額通常これではない
固定資産税額使用しない
都市計画税額使用しない

課税明細書がない場合には、市区町村で固定資産評価額が確認できる証明書を取得する方法があります。

また、固定資産課税台帳に価格がない不動産については、登記所が認定した価額を使用する場合があるため、法務局へ確認してください。

土地と建物がある場合の計算方法

土地と建物を一緒に相続登記する場合には、対象となる不動産の評価額を合計して計算します。

例えば、

土地の評価額 5,123,456円

建物の評価額 3,234,567円

だったとします。

まず合計します。

5,123,456円
+3,234,567円
=8,358,023円

次に課税価格の端数処理をします。

1,000円未満を切り捨てるため、

8,358,023円

8,358,000円

となります。

そして0.4%を掛けます。

8,358,000円 × 0.004
=33,432円

最後に税額の100円未満を切り捨てます。

33,432円

33,400円

このケースの登録免許税は、

33,400円

となります。

【計算表】

項目金額
土地評価額5,123,456円
建物評価額3,234,567円
合計8,358,023円
1,000円未満切捨て後8,358,000円
×0.4%33,432円
100円未満切捨て後33,400円

1,000円未満・100円未満の端数処理

登録免許税では、課税価格と税額の両方に端数処理があります。

初心者の方は、ここを混同しないようにしましょう。

基本的な流れは、

課税価格では1,000円未満を切り捨てる

税率を掛ける

税額では100円未満を切り捨てる

です。

例えば、

固定資産評価額合計
8,358,023円

なら、

課税価格
8,358,000円

です。

次に、

8,358,000円 × 0.004
=33,432円

となり、

登録免許税
33,400円

となります。

なお、登録免許税額が1,000円未満になる場合には、原則として1,000円となる取扱いがあります。

【覚え方】

評価額

1,000円未満切捨て

0.4%を掛ける

100円未満切捨て

登録免許税

ただし、免税措置が適用される場合は、この通常計算とは異なります。

収入印紙はどこで購入する?

書面で相続登記を申請する場合は、登録免許税を収入印紙で納付する方法が一般的です。

収入印紙は主に、

  • 郵便局
  • 郵便切手類販売所
  • 印紙売りさばき所

などで購入できます。

法務局によっては庁舎内や近くに収入印紙を購入できる場所があることもありますが、すべての法務局で同じとは限らないため、事前に確認しておくと安心です。

例えば登録免許税が33,400円なら、合計33,400円になるように収入印紙を用意します。

収入印紙は、登記申請書へ直接貼るのではなく、通常は別の白紙の台紙に貼り、申請書と一緒につづります。

ここで重要なのは、

収入印紙そのものに自分で消印や割印をしないこと

です。

法務局が確認した後に処理します。

オンライン申請の場合には、インターネットバンキングやATMなどを利用して電子納付する方法もあります。

登録免許税の免税措置が利用できる場合

相続登記には、一定の条件を満たすと登録免許税がかからない免税措置があります。

2026年9月現在、代表的なものは次の2つです。

相続登記をしないまま相続人が亡くなった場合

例えば、

祖父が死亡

父が土地を相続

祖父から父への相続登記をしないまま父も死亡

という数次相続の場合です。

一定の条件を満たすと、祖父から父への相続登記部分について登録免許税が免除される場合があります。

不動産の価額が100万円以下の土地

相続による土地の所有権移転登記について、不動産の価額が100万円以下で一定の条件を満たす場合には、登録免許税が免除される制度があります。

この制度は2026年9月現在、全国の土地が対象となっており、適用期限は、

2027年3月31日まで

です。

ただし、ここで重要なのは、対象が「土地」であることです。

例えば、

土地評価額 80万円
建物評価額 300万円

の場合、

「土地が100万円以下だから全部免税」

という意味ではありません。

免税措置の対象となる土地部分と、建物の登録免許税を分けて確認する必要があります。

また、免税措置を受けるためには、登記申請書に免税の根拠となる法令の条項を記載する必要があります。

そのため、

「評価額が100万円以下だから、自動的に税金を0円にすればよい」

とは考えないようにしましょう。

【免税措置を確認するときのポイント】

  • 土地の評価額はいくらか
  • 建物と混同していないか
  • 数次相続に該当しないか
  • 申請日が適用期間内か
  • 申請書に必要な免税条項を書いているか

免税制度は期限や条件が改正されることがあります。

実際に登記申請をする際には、法務局の最新情報を確認してから登録免許税を計算しましょう。

完成した書類を法務局へ提出する方法

登記申請書、戸籍、遺産分割協議書などの準備が終わったら、いよいよ法務局へ相続登記を申請します。

提出方法には、

  • 法務局の窓口へ持参する
  • 郵送する
  • オンラインで申請する

という3つの方法があります。

初めて自分で相続登記をする方は、書類を提出する前に、

「提出先の法務局は合っているか」

「必要な書類が全部そろっているか」

「原本を返してもらう手続きをしているか」

まで確認しておきましょう。

どこの法務局へ提出する?

相続登記は、自分の家から一番近い法務局へ提出するわけではありません。

基本的には、**相続する不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)**へ申請します。

例えば、

亡くなった人の住所 東京都
相続人の住所    大阪府
相続する土地・建物 鳥取県鳥取市

という場合でも、提出先を決める基準は相続する不動産の所在地です。

つまり、

鳥取県鳥取市の不動産を管轄する法務局

へ申請します。

【提出先を決める基準】

確認するもの提出先を決める基準になる?
被相続人の住所×
相続人の住所×
本籍地×
不動産所在地

法務局には本局・支局・出張所などがあり、それぞれ管轄区域が決められています。

申請前に、法務局の公式ホームページで対象となる土地・建物の管轄登記所を確認しておきましょう。

窓口へ持参する方法

初めて自分で相続登記をする場合は、完成した書類を管轄法務局の不動産登記の申請窓口へ直接持参する方法があります。

一般的には、

  1. 登記申請書を作成する
  2. 添付書類をそろえる
  3. 登録免許税を準備する
  4. 管轄法務局へ持参する
  5. 不動産登記の申請窓口へ提出する

という流れです。

持参する書類の例は次のとおりです。

  • 登記申請書
  • 戸籍・除籍・改製原戸籍など
  • 住民票などの住所証明情報
  • 遺産分割協議書
  • 印鑑証明書
  • 相続関係説明図
  • 収入印紙を貼った用紙
  • その他、その相続に必要な書類

ただし、法務局の窓口へ書類を提出した時点で、その場ですべての内容を審査して「間違いありません」と確定するわけではありません。

受付後に登記官が内容を審査し、不備があれば「補正」が必要になることがあります。

そのため、提出後も法務局からの連絡を受けられるようにしておきましょう。

郵送で申請する方法

法務局が遠い場合は、郵送でも相続登記を申請できます。

郵送申請では、登記申請書と添付書類一式を管轄法務局へ送ります。

法務局の案内では、郵送する封筒の表面に、

「不動産登記申請書在中」

と記載し、書留郵便など、配達を確認できる方法で送付することが案内されています。

レターパックプラスを利用できる例も示されています。

【郵送時のチェック】

  • 管轄法務局の宛先を確認する
  • 「不動産登記申請書在中」と記載する
  • 登記申請書を入れる
  • 添付書類を入れる
  • 登録免許税の収入印紙を確認する
  • 原本還付の準備をする
  • 完了書類を郵送で受け取る場合は返信用封筒等を準備する

郵送の場合、書類に不備があれば法務局から補正の連絡が来ることがあります。

電話番号などの連絡先は、間違えないように記載しておきましょう。

また、郵送で登記完了証や還付される原本を受け取りたい場合は、返信用封筒と必要な郵送料を準備します。

登記識別情報通知書も郵送で受け取る場合は、本人限定受取郵便の取扱いになるため、通常の原本返送とは扱いが異なる点にも注意してください。

オンラインで申請する方法

相続登記はオンラインでも申請できます。

法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を利用し、申請用総合ソフトなどから申請情報を送信します。

ただし、

オンライン申請=紙の書類が一切不要

という意味ではありません。

戸籍や遺産分割協議書など、紙で作成された添付情報をオンライン送信できない場合には、オンライン申請後に原本を法務局へ持参または郵送する必要があります。

法務局の案内では、オンライン送信できない添付情報は、原則としてオンライン申請の受付日から所定の期間内に登記所へ届ける必要があります。

オンライン申請では、

申請情報を作成

オンライン送信

必要な紙の添付書類を提出

法務局で審査

必要なら補正

登記完了

という流れになります。

登記が完了すると、システム上に「手続終了」のお知らせが届き、電子公文書として登記完了証を取得できます。

オンライン申請は便利ですが、初めて相続登記をする方には操作や添付情報の扱いが少し難しく感じられることがあります。

パソコン操作に慣れていない場合は、窓口や郵送申請を選ぶ方法もあります。

戸籍などの原本還付を受ける方法

相続登記では、

  • 戸籍謄本
  • 除籍謄本
  • 遺産分割協議書
  • 印鑑証明書

など、ほかの相続手続でも使用したい書類があります。

一定の添付書類については、所定の手続きを行うことで、登記の審査後に原本を返してもらうことができます。

これを「原本還付」といいます。

一般的な原本還付では、

原本をコピーする

コピーに

「原本に相違ありません」

などと記載する

申請人が記名・押印する

コピーと原本を一緒に提出する

という方法があります。

ただし、戸籍については、相続関係説明図を提出することで、登記原因証明情報として提出した一定の戸籍についてコピーを作らずに原本還付を受けられる方法があります。

例えば、

被相続人の出生から死亡までの戸籍が8通ある

という場合、相続関係説明図を作成して提出すると、戸籍一式のコピーを1枚ずつ作成する負担を減らせます。

【注意点】

  • すべての添付書類が原本還付できるわけではない
  • 原本還付の方法は書類によって異なる
  • 戸籍は相続関係説明図を利用できる場合がある
  • 郵送返却を希望するときは返信方法も準備する

大切な原本を返してもらいたい場合は、提出前に原本還付の対象になるか確認しておきましょう。

登記完了までの流れ

相続登記は、書類を提出してすぐに名義変更が終わるわけではありません。

一般的には次の流れで進みます。

【相続登記の流れ】

必要書類を収集
  ↓
登記申請書を作成
  ↓
登録免許税を準備
  ↓
法務局へ申請
  ↓
登記官が審査
  ↓
不備があれば補正
  ↓
登記完了
  ↓
登記完了証・登記識別情報通知書などを受領

「補正」とは、申請内容に間違いや不足があった場合に修正することです。

例えば、

  • 戸籍が1通不足していた
  • 地番を間違えていた
  • 添付書類に不足があった
  • 申請書の記載に誤りがあった

といった場合です。

法務局から連絡があったときは、内容を確認して必要な修正を行います。

分からない場合には、どこを修正すればよいのか確認してから対応しましょう。

登記完了後に確認すること

登記が完了すると、登記完了証が交付されます。

また、相続登記によって新しく所有権を取得した人には、原則として「登記識別情報」が通知されます。

登記識別情報は、以前の「権利証」に相当する非常に重要な情報です。

将来、

  • 不動産を売却する
  • 不動産を贈与する
  • 抵当権を設定する

といった登記をするときに必要になることがあります。

そのため、紛失したり他人に見られたりしないよう厳重に保管しましょう。

登記完了後には、登記事項証明書を取得するなどして、新しい登記内容を確認しておくと安心です。

【確認したい項目】

  • 所有者の氏名
  • 所有者の住所
  • 共有の場合は持分
  • 土地の地番
  • 建物の家屋番号
  • 登記された内容に間違いがないか
  • 登記識別情報通知書を受け取ったか
  • 原本還付を求めた書類が返却されたか

特に登記識別情報通知書は再発行されないため、受領後は大切に保管してください。

自分で相続登記するときによくある間違い

相続登記は自分でも申請できますが、専門用語や戸籍の読み方、不動産の表示など、初めての方が間違えやすいポイントがあります。

小さな記載ミスなら補正で済むこともありますが、相続人そのものを間違えている場合は、遺産分割協議書から作り直さなければならないこともあります。

提出前に、次の項目をもう一度確認しておきましょう。

「被相続人」を自分の名前だと思ってしまう

「被相続人」という言葉は、初めて見ると分かりにくいものです。

被相続人とは、

亡くなった方

のことです。

例えば、

母・山田花子が死亡

長男・山田太郎が土地を相続

する場合は、

被相続人 山田花子
相続人   山田太郎

です。

逆に書かないようにしましょう。

言葉意味
被相続人亡くなった人
相続人財産を相続する人

「被相続人=自分」と思い込んでしまうと、申請書の重要部分が逆になってしまいます。

「原因」に申請日を書いてしまう

相続登記の「原因」欄の日付は、原則として被相続人が亡くなった日です。

例えば、

死亡日 令和7年5月2日
申請日 令和8年9月10日

の場合は、

原因 令和7年5月2日相続

とします。

「令和8年9月10日相続」と書くわけではありません。

【間違いやすい日付】

項目書く日
原因被相続人の死亡日
申請年月日登記を申請する日
遺産分割協議日実際に協議が成立した日

それぞれ役割が違いますので、混同しないようにしましょう。

住所と地番を同じものだと思ってしまう

住所と土地の地番は、同じとは限りません。

例えば住所が、

○○市○○町10番5号

でも、土地の登記上の地番が、

123番4

ということがあります。

相続登記の「不動産の表示」は、郵便物の住所を見て書くのではありません。

登記事項証明書の表題部を確認します。

土地なら、

  • 所在
  • 地番
  • 地目
  • 地積

建物なら、

  • 所在
  • 家屋番号
  • 種類
  • 構造
  • 床面積

を確認しましょう。

地積・床面積の小数部分を見落とす

登記事項証明書では、地積や床面積の整数部分と小数部分が欄の中で分かれて表示されることがあります。

例えば、

162|52

なら、

162.52平方メートル

です。

同じように、

78|13

なら、

78.13平方メートル

です。

右側に書かれている「52」や「13」を、

「受付番号だろう」

と思って省略しないようにしましょう。

【読み方】

表示面積
162・52162.52㎡
78・1378.13㎡
88・4288.42㎡

不動産の表示は、小数点以下まで正確に確認することが大切です。

増築前の古い床面積を書いてしまう

古い住宅では、建築後に増築していることがあります。

例えば、

建築時
1階 54.00㎡
2階 52.00㎡

だった建物が、増築後の現在の登記記録では、

1階 89.13㎡
2階 88.42㎡

となっているケースです。

この場合、現在の相続登記で不動産を表示するときは、現在有効な登記記録の内容を確認します。

昔の設計図や、

「家を建てたときは54㎡だった」

という記憶だけで書かないようにしましょう。

ただし、実際には増築済みなのに登記記録へ増築が反映されていない場合は、建物表題変更登記など別の手続が必要になる可能性があります。

その場合は、法務局や土地家屋調査士へ確認しましょう。

代襲相続人を見落としてしまう

相続人の確認は、相続登記で特に重要です。

例えば、母親に長男と長女がいたものの、長女が母親より先に亡くなっていたとします。

そこで、

「長女は亡くなっているから、長男だけが相続人」

と判断するのは危険です。

長女に子どもがいれば、その子が代襲相続人になる場合があります。

例えば、

母(被相続人)

├─ 長男 → 相続人

└─ 長女 → 母より先に死亡

  ├─ 長女の子A → 代襲相続人

  └─ 長女の子B → 代襲相続人

という形です。

この場合は、長男だけではなく、代襲相続人を含めて相続関係を確認します。

相続人を見落としたまま遺産分割協議書を作成すると、協議そのものをやり直す原因になることがあります。

戸籍は「誰が亡くなっているか」だけでなく、

その人に子どもがいるか

まで確認することが大切です。

相続人全員の署名・実印がそろっていない

遺産分割協議による相続登記では、現在の相続人全員が協議に参加して合意する必要があります。

遺産分割協議書には、相続人全員の住所・氏名を記載し、印鑑証明書と同じ実印を押します。

例えば相続人が、

  • 長男
  • 長女
  • 代襲相続人である孫

の3人なら、3人全員の合意が必要です。

「遠方に住んでいるから1人だけ押さなくてもよい」

ということにはなりません。

複数通の原本を作る場合も、それぞれを原本として使用するのであれば、必要な相続人の押印がそろっているか確認しましょう。

なお、「署名」という言葉が使われることがありますが、相続登記で特に重要なのは、協議書に相続人本人の住所・氏名を記載し、印鑑証明書と同じ実印を押して合意を確認できる状態にすることです。

必要な戸籍が途中で抜けている

相続登記では、

「死亡時の戸籍を1通取れば終わり」

とは限りません。

一般的な法定相続や遺産分割による相続登記では、被相続人について出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍などを確認し、相続人を特定します。

なぜ出生までさかのぼるのかというと、

  • 前の婚姻で子どもがいないか
  • 認知した子がいないか
  • 養子がいないか
  • 途中で戸籍が改製されていないか

などを確認する必要があるからです。

例えば、

現在戸籍

改製原戸籍

除籍謄本

さらに古い戸籍

というようにつながることがあります。

代襲相続がある場合は、先に亡くなった子についても、その死亡や子どもの存在を証明できる戸籍が必要になります。

【戸籍確認チェック】

□ 被相続人の出生までつながっている
□ 死亡までつながっている
□ 戸籍の間に空白期間がない
□ 相続人全員を確認した
□ 先に亡くなった子がいないか確認した
□ 代襲相続人を確認した
□ 必要に応じて除籍・改製原戸籍も取得した

最後に、法務局へ提出する前に次のように確認すると安心です。

確認項目チェック内容
被相続人亡くなった人の氏名になっているか
原因死亡日になっているか
相続人現在の正しい相続人か
不動産地番・家屋番号を確認したか
面積小数部分まで確認したか
増築現在の登記内容を使っているか
代襲相続該当者を見落としていないか
協議書必要な相続人全員が合意しているか
実印印鑑証明書と同じ印か
戸籍出生から死亡までつながっているか
提出先不動産所在地の管轄法務局か
原本還付必要な準備をしたか

相続登記では、書類を早く提出することよりも、相続人・不動産・戸籍の3点を正確に確認してから提出することが大切です。

分からない項目を推測で記入せず、法務局の最新の記載例と照らし合わせながら進めましょう。

相続登記についてよくある質問

相続登記は、初めて経験する方にとって分かりにくい言葉や書類が多い手続きです。

ここでは、

「自分でできるの?」

「戸籍はどこまで集めればよい?」

「甥や姪にも相続権がある?」

といった、相続登記でよくある疑問をまとめて解説します。

相続登記は自分でもできますか?

はい、相続登記は相続人本人が自分で申請できます。

必ず司法書士へ依頼しなければならない手続きではありません。

法務局でも、自分で登記申請をする方を対象として、

  • 登記申請書の作成方法
  • 必要な添付書類
  • 書類の収集方法
  • 申請手続きの進め方

などについて「登記手続案内」を行っています。

ただし、自分でできるかどうかは相続関係の複雑さによって変わります。

例えば、

【比較的整理しやすいケース】

  • 相続人が少ない
  • 相続人が全員分かっている
  • 遺産分割協議がまとまっている
  • 土地・建物の登記内容が分かりやすい
  • 戸籍が比較的簡単に集められる

一方、

  • 数次相続が発生している
  • 代襲相続人が多数いる
  • 相続人の所在が分からない
  • 遺産分割でもめている
  • 古い相続を何代も放置している

といった場合は難しくなります。

「自分でできるか分からない」という場合は、まず必要な戸籍と相続関係を整理し、難しい部分だけ法務局や司法書士へ相談する方法もあります。

高齢者でも自分で申請できますか?

年齢だけを理由に、自分で相続登記を申請できないということはありません。

大切なのは、

  • 書類の内容を確認できる
  • 必要な戸籍を集められる
  • 登記申請書を作成できる
  • 法務局との補正連絡などに対応できる

という点です。

パソコン操作が苦手な方でも、必ずオンライン申請を利用しなければならないわけではありません。

書面で登記申請書を作成して、

  • 法務局へ持参する
  • 郵送する

という方法も利用できます。

また、法務局の登記手続案内では、対面・電話・ウェブ会議による案内が用意されています。

特に初めての方は、完成した申請書や登記事項証明書、戸籍などを準備したうえで、対面による登記手続案内を利用すると内容を確認しながら説明を受けやすいでしょう。

「年齢が高いから自分ではできない」と考える必要はありませんが、書類の量が多かったり相続関係が複雑だったりする場合は、無理をせず司法書士への依頼も検討しましょう。

戸籍謄本は何年前まで必要ですか?

相続登記で必要な戸籍は、

「死亡の10年前まで」

「20年前まで」

のように年数で決まるものではありません。

一般的な法定相続や遺産分割による相続登記では、被相続人について、

出生から死亡まで連続した戸籍

を確認します。

例えば、被相続人が85歳で亡くなった場合でも、

死亡時の戸籍

改製前の戸籍

婚姻前の戸籍

さらに古い戸籍

出生時につながる戸籍

というようにさかのぼります。

なぜ出生まで確認するのかというと、

  • 前の婚姻による子
  • 認知した子
  • 養子
  • ほかの相続人

などがいないかを確認するためです。

したがって、

「何年前まで」ではなく「出生までつながっているか」

と考えると分かりやすいでしょう。

なお、遺言に基づく相続登記などでは必要となる戸籍の範囲が異なる場合があります。

出生から死亡までの戸籍はどうやって集めますか?

まず、亡くなった方の死亡時の戸籍を取得します。

その戸籍を見ると、

「○年○月○日○○戸籍から入籍」

「○○市から転籍」

「改製」

など、前の戸籍につながる情報が記載されています。

その情報を手掛かりに、古い戸籍へ順番にさかのぼります。

例えば、

現在の戸籍

平成改製原戸籍

転籍前の戸籍

婚姻前の戸籍

出生時の戸籍

という流れです。

2024年3月1日からは「戸籍証明書等の広域交付」が始まり、本籍地が遠方にある場合でも、一定の戸籍・除籍について最寄りの市区町村窓口からまとめて請求できるようになっています。

広域交付を利用できるのは、主に、

  • 本人
  • 配偶者
  • 父母・祖父母などの直系尊属
  • 子・孫などの直系卑属

です。

ただし、

  • 一部のコンピュータ化されていない戸籍
  • 個人事項証明書など
  • 兄弟姉妹の戸籍を広域交付で取得するケース

などは対象外となる場合があります。

特に兄弟姉妹や甥・姪が関係する相続では、広域交付だけですべての戸籍がそろわないことがあります。

遺産分割協議書は自分で作れますか?

はい、遺産分割協議書は相続人自身で作成できます。

決められた専用用紙を購入する必要はありません。

ただし、相続登記に使用する場合は、

  • 被相続人
  • 相続人
  • 相続財産
  • 誰が何を取得するのか
  • 不動産の表示
  • 相続人の住所・氏名
  • 実印

などが正しく確認できるように作成する必要があります。

例えば、

「家は長男が相続する」

だけではなく、

土地
所在 ○○市○○町
地番 123番4
地目 宅地
地積 162.52㎡

建物
所在 ○○市○○町123番地4
家屋番号 123番4
種類 居宅
構造 木造かわらぶき2階建
床面積 1階78.13㎡、2階78.42㎡

のように、登記上の不動産を特定できる内容にします。

遺産分割協議による相続登記では、相続人全員の合意が必要です。

甥や姪にも相続権が発生することがありますか?

はい、あります。

ただし「誰から見た甥・姪なのか」に注意しましょう。

例えば、被相続人に子がなく、父母などもすでに亡くなっていて兄弟姉妹が相続人になるケースで、その兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっているとします。

その場合、亡くなった兄弟姉妹の子、つまり被相続人から見た甥・姪が代襲相続人になる場合があります。

また、

母親

長女が母親より先に死亡

長女の子

という場合、長女の子は残っている長男から見れば甥・姪ですが、被相続人である母親から見ると「孫」です。

相続関係を判断するときは、

被相続人から見てどの続柄になるのか

を基準に確認しましょう。

書類を書き間違えたら最初から作り直しですか?

すべての間違いで、最初から作り直さなければならないわけではありません。

登記申請書の軽微な記載ミスなら、法務局から「補正」を求められ、訂正できることがあります。

一方、

  • 遺産分割協議書の不動産が間違っている
  • 相続人が抜けている
  • 取得者を間違えている
  • 重要な合意内容が違っている

といった場合は、遺産分割協議書の作り直しが必要になることがあります。

特に遺産分割協議書は相続人全員の合意を証明する重要な書類なので、修正液や修正テープで自己判断による修正をするのは避けましょう。

【判断の目安】

間違い対応の目安
申請書の軽微な記載ミス補正できる場合あり
地番・家屋番号など重要な誤記法務局へ確認
相続人を漏らした協議自体の確認が必要
協議内容を間違えた作り直しが必要な場合あり

迷った場合は、書き直す前に法務局へ確認しましょう。

法務局で申請書の書き方を相談できますか?

はい。

法務局では、自分で登記申請をする方を対象に「登記手続案内」を実施しています。

2026年現在、

  • 法務局窓口での対面
  • 電話
  • ウェブ会議

の方法があります。

登記手続案内は原則として事前予約制で、1回20分程度です。

申請書や手元の資料を一緒に確認しながら説明を受けたい場合は、対面やウェブ会議が分かりやすいでしょう。

ただし、法務局ができるのは登記手続についての案内です。

相続人同士の争いについて、

「誰に財産を渡した方がよいか」

「この遺産分割内容ならどちらが有利か」

といった法律相談や、当事者に代わって遺産分割協議書を作成するサービスではありません。

どのような場合に司法書士へ相談した方がよいですか?

相続関係が単純で、必要な戸籍や不動産も少ない場合は、自分で相続登記を進められることがあります。

一方、次のような場合は司法書士へ相談すると安心です。

  • 数次相続が発生している
  • 何代も相続登記をしていない
  • 代襲相続人が多数いる
  • 兄弟姉妹や甥・姪が多数関係している
  • 誰が法定相続人なのか判断できない
  • 必要な戸籍が分からない
  • 遺言書がある
  • 相続放棄をした人がいる
  • 不動産が複数の地域にある
  • 遺産分割協議書の作成が難しい
  • 申請書を何度確認しても不安が残る
  • 法務局から補正を求められたが対応方法が分からない

司法書士は、不動産登記の専門家として、相続登記の申請代理や戸籍収集、登記に必要な書類の作成などを取り扱っています。

自分ですべて行うことにこだわらず、

「ここまでは自分で整理したけれど、この先が分からない」

という段階で相談する方法もあります。

自分の相続パターンを確認してから登記書類を作成しよう

相続登記では、いきなり登記申請書を書き始めるのではなく、まず「誰が相続人なのか」を確認することが重要です。

相続人が1人なのか、遺産分割協議をするのか、代襲相続や数次相続があるのかによって、必要な戸籍や添付書類が変わります。

相続関係を戸籍で確認し、自分のケースに必要な書類をそろえてから申請書を作成すると、記載漏れや相続人の見落としを防ぎやすくなります。

まず確認したい重要ポイント3つ

相続登記をするときは、最初に次の3点を確認しましょう。

誰が相続人なのか

戸籍を確認して、

  • 配偶者
  • 父母
  • 兄弟姉妹
  • 甥・姪
  • 代襲相続人

など、現在の相続人を特定します。

「家族だから分かっている」と思わず、必ず戸籍を基準に確認しましょう。

どの方法で相続するのか

次に、

  • 1人で相続する
  • 法定相続分で共有する
  • 遺産分割協議で1人が取得する
  • 遺産分割協議で複数人が共有する
  • 遺言書に従う

など、どの方法になるのかを確認します。

不動産の登記内容を確認する

登記事項証明書で、

土地なら、

  • 所在
  • 地番
  • 地目
  • 地積

建物なら、

  • 所在
  • 家屋番号
  • 種類
  • 構造
  • 床面積

を確認します。

特に、地積や床面積の小数部分、増築後の現在の面積を見落とさないようにしましょう。

相続パターン別・必要書類早見表

相続登記で必要になる主な書類を、パターン別に整理すると次のようになります。

相続パターン主な追加・重要書類
相続人が1人戸籍一式、住所証明情報など
複数人が法定相続分で相続戸籍一式、各取得者の住所証明情報など
遺産分割で1人が取得遺産分割協議書、必要な印鑑証明書
遺産分割で共有遺産分割協議書、持分の確認、必要な印鑑証明書
遺言書がある遺言書、公正証書遺言・検認済遺言・遺言書情報証明書などケース別資料
代襲相続先に亡くなった相続人の戸籍、代襲者の戸籍など
数次相続第1次・第2次以降の相続関係を証明する戸籍など
相続放棄者がいる相続放棄を証明する書類など

共通して確認するものとして、

  • 登記申請書
  • 被相続人の戸籍等
  • 相続人の戸籍
  • 被相続人の住所を確認できる資料
  • 不動産取得者の住所証明情報
  • 固定資産評価額が分かる資料
  • 登記事項証明書などの不動産確認資料

があります。

ただし、すべてのケースで同じ書類を添付するわけではありません。

自分の相続パターンに合わせて法務局の最新チェックリストを確認しましょう。

法務局へ行く前の最終チェックリスト

書類が完成したら、提出前に次の項目を確認しましょう。

【相続人】

□ 被相続人を正しく確認した
□ 出生から死亡までの必要な戸籍を確認した
□ 相続人全員を確認した
□ 代襲相続人を見落としていない
□ 数次相続が発生していないか確認した
□ 相続放棄者の有無を確認した

【登記申請書】

□ 「登記の目的」を確認した
□ 「原因」に死亡日を書いた
□ 相続人の住所・氏名を確認した
□ 申請年月日を確認した
□ 管轄法務局を確認した
□ 課税価格を確認した
□ 登録免許税を計算した

【不動産】

□ 所在を確認した
□ 地番を確認した
□ 地目を確認した
□ 地積を小数部分まで確認した
□ 家屋番号を確認した
□ 種類・構造を確認した
□ 床面積を小数部分まで確認した
□ 増築後の現在の登記内容を確認した

【遺産分割】

□ 相続人全員の合意を確認した
□ 誰がどの不動産を取得するか明記した
□ 必要な実印が押されている
□ 必要な印鑑証明書を準備した
□ 不動産表示を登記記録と照合した

【提出】

□ 不動産所在地を管轄する法務局を確認した
□ 登録免許税を準備した
□ 原本還付を希望する書類を確認した
□ 相続関係説明図を確認した
□ 連絡先を正しく記入した
□ 郵送の場合は返信方法も準備した

このチェックリストを上から順番に確認すると、提出直前の見落としを減らすことができます。

自分で手続きするのが難しい場合の相談先

相続登記を自分で進めていて分からないことが出てきたら、一人で判断する必要はありません。

主な相談先は次のとおりです。

相談先主な相談内容
法務局登記申請書、添付書類、提出方法など
司法書士相続登記の申請代理、戸籍収集、登記関係書類の作成など
弁護士相続人同士の争い、遺産分割紛争など
市区町村戸籍・住民票・固定資産評価額に関する証明書など
家庭裁判所相続放棄、遺言書の検認など

法務局の登記手続案内は、2026年現在、対面・電話・ウェブ会議で利用でき、原則として完全予約制です。

相続登記の手順そのものが分からない場合は法務局、相続登記を代わりに進めてもらいたい場合は司法書士、相続人同士で争いがある場合は弁護士というように、相談内容によって窓口を使い分けるとよいでしょう。

相続登記は専門用語が多く、初めて見る書類も少なくありません。

しかし、

①相続人を確認する
②相続パターンを確認する
③必要書類をそろえる
④登記申請書を作る
⑤提出前にもう一度確認する

という順番で進めれば、内容を整理しやすくなります。

相続人や必要書類が分からないまま推測で申請するのではなく、判断に迷ったところは法務局や専門家へ確認しながら、正確に手続きを進めましょう。

本記事は、2026年9月1日時点の法務省・法務局・裁判所などの公的情報を確認して作成しています。制度や必要書類は変更される場合があるため、申請前に最新情報をご確認ください。

参考元:

  • 法務省・法務局「相続登記・遺贈の登記手続」
  • 法務省「相続登記の申請義務化について」
  • 裁判所「相続放棄・遺言書の検認」
  • 日本司法書士会連合会「相続登記相談」

まとめ

相続登記は、相続人が1人の場合、遺産分割協議を行う場合、遺言書がある場合、代襲相続や数次相続が発生している場合など、状況によって申請書の書き方や必要書類が異なります。まずは戸籍を確認して「誰が相続人になるのか」を正しく把握することが大切です。そのうえで、自分がどの相続パターンに当てはまるのかを確認し、必要な書類を一つずつ準備しましょう。分からない部分を曖昧なまま記入せず、必要に応じて法務局や司法書士などへ確認することも大切です。

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