ものはなぜ水に浮いたり沈んだりするのでしょうか。浮力と重さ、密度の関係を小中学生向けにやさしく解説。鉄の船や氷が浮く理由、海水で浮きやすいしくみ、家庭でできる簡単な実験も紹介します。
水に木を入れると浮くのに、石を入れると沈みます。それでは、大きくて重い鉄の船が海に浮かんでいるのはなぜでしょうか。「重いものは沈み、軽いものは浮く」と考えるだけでは説明できません。ものが水に浮いたり沈んだりする現象には、水から受ける「浮力」や、ものの重さ、密度が深く関係しています。この記事では、浮力が生まれるしくみから、船や氷が浮く理由、真水と海水で浮き方が違う理由まで、小中学生にも分かりやすく解説します。家庭でできる簡単な実験も紹介しますので、身近な「浮く・沈む」の不思議を一緒に確かめてみましょう。

ものはなぜ水に浮いたり沈んだりするの?
水の中にものを入れると、水面に浮くものもあれば、そのまま底まで沈んでしまうものもあります。
たとえば、木片や発泡スチロールは水に浮きやすいですが、石や金属のかたまりは沈みやすいですね。
「軽いものは浮いて、重いものは沈む」と思うかもしれません。しかし、実際にはものの重さだけで浮く・沈むが決まるわけではありません。
水の中では、ものを上向きに押す**浮力(ふりょく)**がはたらいているからです。
水に浮くものと沈むものを比べてみよう
まず、身近なものを水に入れたときの様子を考えてみましょう。
| もの | 水に入れたときの例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 木片 | 浮きやすい | 水より密度が小さい |
| 発泡スチロール | 浮きやすい | 軽く、内部に空気を多く含む |
| 氷 | 浮く | 液体の水より密度が小さい |
| 石 | 沈みやすい | 水より密度が大きい |
| 金属のかたまり | 沈みやすい | 多くは水より密度が大きい |
ここで注目したいのが、「重い=必ず沈む」ではないことです。
たとえば、大きな木材は小さな石より重い場合があります。それでも木材は浮き、石は沈むことがあります。
浮くか沈むかを考えるときには、単純な重さだけでなく、体積・密度・浮力なども関係しているのです。
ポイント
- 木や発泡スチロールは水に浮きやすい
- 石や金属のかたまりは沈みやすい
- 重さだけでは浮く・沈むを判断できない
- ものの密度と水の密度も重要
ものの重さだけでは浮く・沈むは決まらない
大きな船を思い浮かべてください。
船には大量の鉄が使われ、さらに人や荷物を載せています。それなのに、海の上に浮かんでいます。
一方、小さな鉄球を水に入れると沈んでしまいます。
この違いからも、
「重いもの=沈む」
「軽いもの=浮く」
という単純な関係ではないことが分かります。
船は中が空洞になっていて、船全体で考えると大きな体積があります。そのため、多くの水を押しのけることができ、船を支えるだけの浮力を受けられます。
詳しい船のしくみは後のH2-5で説明しますが、ここでは浮く・沈むには重さと浮力の関係が重要だと覚えておきましょう。
水の中ではものを押し上げる力がはたらく
ものを水の中に入れると、水から上向きの力を受けます。この力が浮力です。
たとえば、水の中で大きな石を持ち上げたとき、陸上で持つより少し軽く感じることがあります。
石そのものの質量が減ったわけではありません。水の中で石に上向きの浮力がはたらいているためです。
文部科学省の資料でも、水中では身体が押しのけた水に応じた浮力を受けることが説明されています。文部科学省
ものには主に、
- 下向き:重力
- 上向き:浮力
がはたらきます。
この2つの力の関係が、「浮く」「沈む」を理解する重要な手がかりになります。
浮く・沈むの違いを簡単な表で確認しよう
ここまでの内容を整理してみましょう。
| 状態 | 浮力と重力の関係 | ものの動き |
|---|---|---|
| 浮力が重力より大きい | 上向きの力が大きい | 上へ動く |
| 浮力と重力がつり合う | 上下の力が同じ | その位置で安定する |
| 浮力が重力より小さい | 下向きの力が大きい | 下へ沈む |
ただし、水面に浮いて静止している木片などでは、最終的に浮力と重力がつり合った状態になっています。
ここは「浮力が大きければずっと上昇する」と考えないように注意しましょう。
浮力とはどんな力なの?
浮力は、水の中にあるものを上向きに押す力です。
では、水はなぜものを上へ押すのでしょうか。
その理由を理解するために重要なのが水圧です。
水中では、ものの上側だけでなく、下側や横側からも水圧がかかっています。そして一般に、同じ液体では深い場所ほど水圧が大きくなります。文部科学省も、中学校理科で水圧と深さの関係、水圧と浮力の定性的な関係を扱っています。文部科学省
浮力は水の中でものを上向きに押す力
水中にある物体には、浮力がはたらきます。
身近なところでは、お風呂やプールでも体験できます。
湯船につかると体が少し軽く感じたり、プールで息を大きく吸うと体が浮きやすく感じたりしますね。これも浮力が関係しています。文部科学省
浮力の特徴を簡単に整理すると、
- 水中の物体には浮力がはたらく
- 浮力の向きは上向き
- ものが押しのけた水の量が関係する
- 水だけでなく、ほかの液体や空気などの流体でも浮力は生じる
となります。
水の深さによって圧力が変わる
水の中では水圧がはたらいています。
水圧とは、水によってものの表面に加わる圧力のことです。
水中では深くなるほど、その場所より上にある水の量が多くなります。そのため、同じ水の中では基本的に深い場所ほど水圧が大きくなります。
文部科学省では、ゴム膜を張った円筒を水中に沈める実験を例に、深いところほどゴム膜のへこみが大きくなることから、水圧と深さの関係を学ぶ方法を示しています。文部科学省
たとえばプールでも、深く潜ると耳に圧迫感を覚えることがあります。これも深さによって水圧が変化することと関係しています。
上下にかかる水圧の違いから浮力が生まれる
水中に直方体を沈めたところを想像してみましょう。
物体の上面より下面の方が深い場所にあります。
すると、
上面 → 下向きに押す水圧
下面 → 上向きに押す水圧
がはたらき、下面の方が深いため、水圧による力も大きくなります。
この上下の力の差によって、物体全体には上向きの力が生まれます。これが浮力です。中学校学習指導要領解説でも、直方体や円柱などの上面と下面にかかる水圧の差から、浮力を定性的に捉える方法が示されています。文部科学省
図で考えると次のイメージです。
↓ 上面にかかる力
┌────────┐
│ 物 体 │
└────────┘
↑↑↑
下面にかかる力
の方が大きい
↑
浮 力
なお、実際の水圧は上下だけではなく、物体のあらゆる方向からはたらいています。文部科学省
水に入った部分が大きいと浮力はどうなる?
浮力を考えるときにもう一つ重要なのが、物体がどれだけ水を押しのけたかです。
基本的には、水中に入っている部分の体積が増えて、押しのける水の量が増えるほど浮力も大きくなります。
たとえば、水面に浮かべた空のプラスチック容器に少しずつおもりを載せてみます。
おもりを載せると容器は少し深く沈みます。すると、水中に入る部分が増えて、より多くの水を押しのけるようになります。その結果、受ける浮力も大きくなり、新しい位置で重力とつり合います。
これは大きな船が荷物を積むと、水面より下に沈む部分が増えることと同じ考え方です。
覚えておきたいポイント
- 水中に入る体積が増える
- 押しのける水の量が増える
- 浮力が大きくなる
- 浮いて静止すると、浮力と重力がつり合う
この「押しのけた水」と浮力の関係は、後で船がなぜ浮くのかを考えるときにも重要になります。
ものの重さと浮力にはどんな関係があるの?
水の中にあるものには、上向きの浮力だけがはたらいているわけではありません。地球がものを引っ張る重力も、下向きにはたらいています。
ものが浮くか沈むかを理解するには、この「上向きの浮力」と「下向きの重力」の関係を考えることが大切です。
たとえば、水にボールを沈めて手を離すと、水面に向かって上がってくることがあります。一方、石を水中で手放すと底へ沈みます。この違いも、浮力と重力の関係から説明できます。
ものには下向きに重力がはたらいている
私たちの身の回りにあるものは、地球から引っ張られています。この力が重力です。
机の上に置いた鉛筆が勝手に空へ飛んでいかないことや、手からボールを離すと地面へ落ちることも、重力がはたらいているためです。
水中でも重力がなくなるわけではありません。水の中にあるものには、
- 下向きに重力
- 上向きに浮力
がはたらきます。
なお、日常では「重さ」と呼びますが、理科では力として考える場合、重力の大きさは**ニュートン(N)**という単位で表します。
重力と浮力の大きさを比べてみよう
水中にある物体がどちらへ動くのかを見るときは、重力と浮力を比べると分かりやすくなります。
| 浮力と重力の関係 | 物体の動き |
|---|---|
| 浮力 > 重力 | 上向きに動く |
| 浮力 = 重力 | 上下方向の力がつり合う |
| 浮力 < 重力 | 下向きに動く |
たとえば、水中に押し込んだ発泡スチロールから手を離すと、水面へ上がってきます。上昇している間は、浮力による上向きの力が重力より大きいからです。
反対に、水中で石から手を離すと沈んでいきます。石では、浮力だけでは重力を支えきれないためです。
ただし、実際に動いている物体には水の抵抗などもはたらきます。ここでは浮く・沈むの基本を理解するため、主に浮力と重力に注目して考えましょう。
浮力が重さを支えるとものは浮く
水面に木片を浮かべると、一部が水の中に入り、残りが水面より上に出た状態で止まります。
なぜ途中で止まるのでしょうか。
木片が水に入ると、その部分が水を押しのけます。水中に入る体積が増えるにつれて浮力も大きくなり、最終的に浮力と重力がつり合う位置で静止するからです。
つまり、水面に浮いて静止している物体では、
上向きの浮力 = 下向きの重力
という状態になっています。
身近な例には、
- 木片
- 発泡スチロール
- ボール
- 氷
- 船
などがあります。
大きな船についても基本的な考え方は同じです。船については後のH2-5で詳しく説明します。
浮力で支えきれないとものは沈む
では、石や鉄球はなぜ沈むのでしょうか。
水中では石や鉄球にも浮力がはたらいています。「沈むものには浮力がない」というわけではありません。
それでも沈むのは、受ける浮力より下向きの重力の方が大きいためです。
たとえば、
浮力 < 重力 → 下向きの力が勝つ → 沈む
という関係になります。
ここで重要なのは、「重いから沈む」とだけ考えないことです。大きくて重い船でも浮くため、浮く・沈むをさらに理解するには、次に説明する密度が重要になります。
密度を知ると浮く・沈むがもっと分かる
「重いものが沈むとは限らない」と聞くと、少し不思議に感じるかもしれません。
そこで登場するのが**密度(みつど)**です。
密度は、ものがどれくらいぎっしり詰まっているかを表す量です。同じ大きさのものでも、中身の詰まり方によって重さは違います。
浮く・沈むを考えるときには、物体の平均的な密度と水の密度を比べると理解しやすくなります。
密度とはものの大きさと重さの関係
密度は、簡単にいうと一定の体積の中にどれくらいの質量があるかを表したものです。
中学校理科では、次の関係で表します。
密度 = 質量 ÷ 体積
たとえば、同じ大きさの発泡スチロールと鉄のかたまりを持ってみると、鉄の方がずっと重く感じます。
これは、同じ体積でも鉄の方が質量が大きく、密度が大きいためです。
| 比べるもの | 大きさ | 重さの感じ方 | 密度 |
|---|---|---|---|
| 発泡スチロール | 同じ | 軽い | 小さい |
| 木 | 同じ | 比較的軽い | 比較的小さい |
| 鉄 | 同じ | 重い | 大きい |
密度は「重さ」だけでは分からなかった浮く・沈むの違いを考える重要な手がかりになります。
水より密度が小さいものは浮きやすい
物体全体の平均密度が水より小さい場合、その物体は水面に浮くことができます。
たとえば、木材や発泡スチロールなどです。
水面に浮いた物体は、必要な浮力が得られるところまで水中に沈み、浮力と重力がつり合ったところで止まります。
氷も代表的な例です。氷は水からできていますが、液体の水より密度が小さいため、水に浮きます。
水より密度が小さい → 浮きやすい
と覚えると分かりやすいでしょう。
ただし、木材などは種類や含まれる水分などによって密度が異なるため、すべてが同じ浮き方をするわけではありません。
水より密度が大きいものは沈みやすい
反対に、物体の平均密度が水より大きい場合、そのまま水に入れると沈むのが基本です。
たとえば、
- 石
- ガラス
- 鉄のかたまり
- 硬貨
などが身近な例です。
ただし、ここには大切な例外のように見えるものがあります。
鉄でできた船です。
鉄そのものは水より密度が大きいのに、鉄を使った船は水面に浮いています。
これは、船の内部に広い空洞があり、空気を含めた船全体の平均密度が小さくなることや、大きな体積の水を押しのけて十分な浮力を得られることが関係しています。
そのため、「鉄は必ず沈む」ではなく、
鉄のかたまりは沈むが、形を工夫すれば鉄を使った船も浮かせられる
と理解するのが適切です。
同じ大きさでも重さが違うとどうなる?
同じ大きさの2つの箱を想像してみましょう。
一方には軽い発泡素材、もう一方には鉄がぎっしり入っています。
体積が同じなら、水中に完全に沈めたときに押しのける水の体積も同じなので、同じ液体中では受ける浮力も同じになります。
しかし、質量が違えば重力の大きさが違います。
| 条件 | 軽い物体 | 重い物体 |
|---|---|---|
| 体積 | 同じ | 同じ |
| 完全に水中にあるときの浮力 | 同じ | 同じ |
| 重力 | 小さい | 大きい |
| 密度 | 小さい | 大きい |
| 浮き沈みの傾向 | 浮きやすい | 沈みやすい |
ここまでを整理すると、浮く・沈むを考えるときには、重さだけを見るのではなく、「体積」「密度」「浮力」「重力」を一緒に考えることが大切だと分かります。
鉄でできた船はなぜ水に浮くの?
鉄のかたまりを水に入れると沈むのに、鉄や鋼鉄を使った大きな船は海に浮かんでいます。不思議に感じますね。
この違いを理解するポイントは、船の形・全体の平均密度・押しのける水の量・浮力です。
船は鉄をそのまま大きなかたまりにしているのではありません。内部に広い空間をもつ形にすることで、大量の水を押しのけ、船全体を支えられるだけの浮力を得ています。
鉄のかたまりは水に沈む
鉄のかたまりをそのまま水に入れると、基本的には沈みます。
鉄は水より密度が大きいためです。同じ体積で比べると、鉄の方が水よりずっと質量が大きくなります。
そのため、鉄のかたまりが完全に水中に入った状態では、押しのけた水による浮力だけでは鉄にはたらく重力を支えきれません。
鉄のかたまりの場合
- 鉄は水より密度が大きい
- 水中では鉄にも浮力がはたらく
- それでも重力の方が大きい
- そのため水中を沈んでいく
ここで大切なのは、沈む鉄にも浮力ははたらいているということです。
船は中が空洞だから全体の密度が小さくなる
船にも鉄や鋼鉄が使われていますが、大きな違いはその形です。
船の中には、客室や貨物室、機械室などの空間があります。つまり、船は鉄だけがぎっしり詰まった大きなかたまりではありません。
空気を含んだ広い空間をもつことで、船全体の体積に対する質量、つまり船全体として考えた平均密度を小さくできます。
たとえば、同じ量の粘土でも、
- 小さく丸めると水に沈む
- 薄く広げて器や船のような形にすると浮かせられる場合がある
という実験ができます。
物質そのものが別のものに変わったわけではありません。形を変えることで、より多くの水を押しのけられるようになり、浮くことができるのです。
大きな船ほどたくさんの水を押しのける
船が水に浮くと、船体の一部が水面より下に沈みます。この部分が水を押しのけています。
浮力の大きさは、押しのけた液体の重さに等しいという関係があります。これは「アルキメデスの原理」と呼ばれます。
船が静かに浮いているときには、
船にはたらく重力 = 船が受ける浮力
となっています。
| 比べるポイント | 鉄のかたまり | 船 |
|---|---|---|
| 内部 | 鉄が詰まっている | 広い空間がある |
| 全体の体積 | 比較的小さい | 大きい |
| 全体の平均密度 | 水より大きい | 浮いている状態では水より小さい |
| 押しのけられる水 | 少ない | 多い |
| 結果 | 沈む | 浮く |
ただし、「船が大きければ必ず浮力が大きい」という意味ではありません。 実際に受ける浮力は、水中に入っている部分が押しのけた水の体積によって決まります。
荷物を載せすぎると船が沈みやすくなる理由
船に荷物を載せると、船全体の質量が増えて重力が大きくなります。
すると、それまでの浮力では重力とつり合わなくなるため、船体はもう少し深く水中へ沈みます。
深く沈むことで、
荷物が増える
↓
船が深く沈む
↓
押しのける水が増える
↓
浮力が大きくなる
↓
再び重力と浮力がつり合う
という変化が起こります。
しかし、船には安全に沈められる限界があります。荷物を載せすぎたり、水が船内に大量に入ったりすると危険です。
実際の船には、安全に航行できる喫水の限界を示す満載喫水線などが設けられています。
氷はなぜ水に浮くの?
氷も「浮力と密度」の関係を身近に観察できるものです。
コップに水と氷を入れると、氷は底へ沈まず、水面から一部を出した状態で浮きます。
氷も水も同じH₂Oからできています。それなのに氷が浮くのは、水が凍ったときの分子の並び方と密度の変化が関係しています。
水が凍ると体積が増える
液体の水を冷やして凍らせると、氷になります。
一般的な物質では、液体から固体になると粒子がより密に並ぶ場合が多いのですが、水には少し変わった性質があります。
水が氷になると、水分子は水素結合によって規則的な結晶構造をつくります。この構造には比較的すき間が多いため、同じ質量の水でも凍ると体積が増えます。
身近なところでは、
- 水を入れたペットボトルを凍らせると膨らむ
- 冬に水道管の中の水が凍ると破損することがある
- 岩の割れ目に入った水が凍結と融解を繰り返すと岩が崩れやすくなる
といった現象にも関係しています。
※水を凍らせる実験では、容器いっぱいまで水を入れたり、密閉したりしないようにしましょう。
氷は液体の水より密度が小さい
密度は、質量と体積の関係を表しています。
同じ質量でも体積が大きくなれば、密度は小さくなります。
水は凍ると体積が増えるため、普通の氷は液体の水より密度が小さくなります。そのため、水の中に入れると氷は浮きます。
整理すると、
水が凍る
→ 分子が結晶構造をつくる
→ 体積が増える
→ 密度が小さくなる
→ 水に浮く
という流れです。
この「水は凍ると体積が増える」という性質は、氷が浮く理由を理解するうえで非常に重要です。
氷が水面から少し出て浮く理由
氷をコップの水に浮かべると、氷全体が水の中に沈んでいるわけではありません。一部分が水面から出ています。
氷が水に入ると、水中にある部分が水を押しのけ、その量に応じた浮力を受けます。
そして、
氷にはたらく重力 = 水から受ける浮力
となるところで安定します。
氷は液体の水より密度が小さいので、氷全体を水中に沈めなくても、重力を支えるのに十分な浮力が得られるのです。
| 比較 | 液体の水 | 氷 |
|---|---|---|
| 主な物質 | H₂O | H₂O |
| 状態 | 液体 | 固体 |
| 分子の並び | 動きながら配置が変わる | 結晶構造をつくる |
| 同じ質量で比べた体積 | 小さい | 大きい |
| 密度 | 氷より大きい | 水より小さい |
| 水中での氷 | ― | 浮く |
海に浮かぶ氷山も同じしくみ
海に浮かぶ巨大な氷山も、基本的にはコップの水に浮かぶ氷と同じように浮力と重力のつり合いによって浮いています。
氷山は水面から出ている部分だけを見ると、それほど大きく感じないことがあります。しかし、実際にはかなりの部分が海面より下にあります。
氷が浮くしくみを簡単に整理すると、
- 氷の密度は液体の水より小さい
- 水中に入った部分が海水を押しのける
- 押しのけた海水によって浮力を受ける
- 浮力と氷山の重力がつり合う位置で浮く
となります。
なお、海水には塩分が含まれているため、真水とは密度が異なります。そのため、真水に浮かぶ氷と海水に浮かぶ氷では、浮き方にも違いがあります。
水が凍ると体積が増える理由や、雪と氷の違いについては、**「雪と氷は何が違うの?水が凍るしくみと結晶のひみつをやさしく解説」**で詳しく紹介しています。
水以外の液体でも浮力ははたらくの?
これまで水の中では、ものを上向きに押す浮力がはたらくことを説明してきました。
では、水以外の液体ではどうでしょうか。
実は、浮力は水だけに特別にはたらく力ではありません。油やアルコール、海水などの液体の中でも浮力ははたらきます。さらに、空気のような気体の中でも浮力は生じています。
ポイントになるのは、物体だけでなく、周りにある液体や気体の密度です。
浮力は水だけではなく液体の中ではたらく
ものを液体の中に入れると、そのものは周囲の液体を押しのけます。そして、押しのけた液体の重さに相当する浮力を受けます。
これは水だけでなく、さまざまな液体でも同じです。
たとえば、
- 真水
- 海水
- 食用油
- アルコール
などの中でも浮力は生じます。
ただし、同じ物体を同じ体積だけ沈めても、液体の密度が違えば受ける浮力も変わります。
密度が大きな液体ほど、同じ体積でも押しのけた液体の質量が大きくなるため、浮力も大きくなります。
海水では真水よりものが浮きやすい
海やプールで泳いだ経験がある人は、「海の方が体が浮きやすい」と感じることがあります。
これは、海水に塩分が含まれているためです。
一般的な海水は、真水より密度が大きくなっています。そのため、同じ体積を押しのけた場合、海水の方が大きな浮力を受けます。
| 比べるもの | 密度 | 同じ体積を沈めたときの浮力 |
|---|---|---|
| 真水 | 海水より小さい | 比較的小さい |
| 海水 | 真水より大きい | 比較的大きい |
つまり、
海水の密度が大きい → 同じ体積で受ける浮力が大きい → 真水より浮きやすい
という関係です。
ただし、人が実際にどの程度浮きやすいかは、体脂肪率、肺に入っている空気の量、姿勢などによっても変わります。
塩を水に溶かすと浮きやすくなるのはなぜ?
家庭でも、塩を使って浮力の違いを確かめることができます。
よく知られているのが卵を使った実験です。
普通の水に卵を入れると沈むことがあります。そこへ塩を少しずつ溶かしていくと、卵が浮き上がってくることがあります。
これは塩水の密度が大きくなるためです。
塩を加える
→ 水溶液の密度が大きくなる
→ 卵が受ける浮力が大きくなる
→ 卵が浮きやすくなる
という流れです。
ただし、卵の密度は卵ごとに多少異なるため、必要な塩の量も変わります。「塩を○杯入れれば必ず浮く」と決めつけず、少しずつ加えて観察するとよいでしょう。
空気の中でも浮力ははたらいている
浮力がはたらくのは液体だけではありません。空気のような気体の中でも浮力ははたらきます。
液体と気体をまとめて流体と呼びます。
分かりやすい例が、ヘリウムを入れた風船です。
風船は周囲の空気を押しのけています。ヘリウムを含めた風船全体の平均密度が周囲の空気より十分に小さく、空気から受ける浮力が風船全体にはたらく重力を上回れば、風船は上昇します。
熱気球も浮力を利用しています。内部の空気を温めると、周囲の空気より密度が小さくなり、条件が整えば上昇できます。
身近な浮力の例
- 水面に浮く木
- 海で浮く人の体
- 海に浮かぶ船
- ヘリウム風船
- 熱気球
浮力は「水の中だけの力」ではないことを覚えておきましょう。
身近なものを使って浮力を実験してみよう
浮力や密度について理解したら、実際に確かめてみるとさらに分かりやすくなります。
家庭にあるものを使えば、「なぜ浮くのか」「なぜ沈むのか」を観察できます。
大切なのは、いきなり実験するのではなく、最初に結果を予想してから確かめることです。
水に浮くもの・沈むものを予想してみよう
まず、透明な容器に水を入れ、身近なものを用意します。
たとえば、
- ペットボトルのキャップ
- 木片
- 消しゴム
- スプーン
- 小石
- 発泡スチロール
- プラスチック製のおもちゃ
などが使えます。
水に入れる前に、「浮く」「沈む」のどちらになるか予想してみましょう。
| もの | 予想 | 実験結果 | 気づいたこと |
|---|---|---|---|
| 木片 | 浮く | ||
| 小石 | 沈む | ||
| キャップ | 浮く | ||
| 消しゴム | ? | ||
| スプーン | ? |
実験後に予想と結果を比べることで、「重そうだから沈む」といった予想が本当に正しいのか確認できます。
ペットボトルを使って浮力を確かめよう
空のペットボトルを使うと、水中で浮力を感じることができます。
用意するもの
- 空の500mL程度のペットボトル
- キャップ
- 水を入れた大きめの容器
キャップをしっかり閉めた空のペットボトルを水中へゆっくり押してみましょう。
深く押し込むほど、「上へ戻ろうとする力」を手で感じるはずです。
手を離すとペットボトルは水面へ上がります。
これはペットボトル内部の空気を含めた全体の平均密度が水より小さく、水中では上向きの浮力が重力より大きくなるためです。
なお、ほぼ変形しないペットボトルを完全に水中へ沈めた後は、押しのける水の体積がほぼ一定なので、さらに深くしたからといって浮力そのものが大きく増え続けるわけではありません。
粘土の形を変えると浮くようになる?
同じ量の粘土でも、形によって浮き方を変えられる場合があります。
まず粘土を固い球のように丸めて、水に入れてみましょう。多くの場合は沈みます。
次に、同じ粘土を薄く広げ、おわんや船のような形にします。水が中へ入らないようにして、そっと水面へ置いてみましょう。
うまく作れば浮かせられることがあります。
なぜでしょうか。
船型にすると、粘土だけでなく内部の空間を含めた全体の体積が大きくなり、より多くの水を押しのけられるからです。
これは、鉄のかたまりは沈むのに、大きな船は浮くことと同じ考え方です。
ポイント
- 粘土そのものの質量は変わらない
- 形を変えると全体として占める体積が変わる
- 船型にすると多くの水を押しのけられる
- 十分な浮力を得られれば浮く
塩水と真水で浮き方を比べてみよう
次は、液体の密度によって浮き方が変わることを確かめます。
用意するもの
- 透明なコップ2個
- 水
- 食塩
- 卵2個、または同じ物体1個を順番に使用
- スプーン
片方を真水、もう片方を濃い塩水にします。
同じ物体をそれぞれに入れて、浮き方を比べてみましょう。
たとえば卵の場合、真水では沈んでも、十分に濃い塩水では浮くことがあります。
| 比較 | 真水 | 塩水 |
|---|---|---|
| 塩分 | ほぼなし | あり |
| 密度 | 小さい | 大きい |
| 同じ物体への浮力 | 比較的小さい | 比較的大きい |
| 物体 | 沈みやすい | 浮きやすくなる |
塩は一度に大量に入れず、少しずつ加えて変化を観察すると、浮き始める様子が分かりやすくなります。
実験結果を表にして比べてみよう
理科の実験では、結果を見るだけでなく、予想→実験→結果→考察の順番で整理することが大切です。
次のような表を作ってみましょう。
| 実験 | 予想 | 結果 | 分かったこと |
|---|---|---|---|
| 木片を水に入れる | 浮く | 浮いた | 水より平均密度が小さい |
| 石を水に入れる | 沈む | 沈んだ | 水より密度が大きい |
| 粘土を丸める | 沈む | 沈んだ | 形によって押しのける水の量が変わる |
| 粘土を船型にする | 浮く? | 船のしくみと比較できる | |
| 卵を真水に入れる | |||
| 卵を塩水に入れる | 液体の密度が関係する |
結果が予想と違っていても失敗ではありません。「なぜ予想と違ったのか」を考えることが、理科の学習では大切です。
実験するときの注意点
家庭で実験するときは、安全にも気をつけましょう。
- 水をこぼしてもよい場所で行う
- 電化製品やコンセントの近くでは実験しない
- ガラス容器より割れにくい透明な容器を優先する
- 重いものを高いところから水に落とさない
- 塩水や実験に使った水を飲まない
- 卵など実験に使った食品は、衛生面を考えて食べない
- 小さな子どもは大人と一緒に行う
- 実験後は水滴をきれいに拭き取る
特に水を使った実験では、床がぬれると滑ることがあります。実験が終わったら周囲も確認しましょう。
浮力と水についてよくある質問
ここまで、浮力・重力・密度の関係について見てきました。しかし、「重ければ必ず沈むの?」「深い場所では浮力も大きくなるの?」など、疑問に思うこともありますね。
ここでは、浮力について間違えやすいポイントを、身近な例とともに確認していきます。
重いものは必ず水に沈みますか?
いいえ、重いものが必ず水に沈むわけではありません。
分かりやすい例が、大型の船です。船は人や荷物をたくさん載せるため非常に重くなりますが、水面に浮いています。
浮く・沈むを考えるときは、重さだけではなく、
- 物体の体積
- 物体全体の平均密度
- 押しのける水の量
- 水から受ける浮力
- 物体にはたらく重力
などを考える必要があります。
船は内部に大きな空間がある形をしているため、たくさんの水を押しのけられます。その結果、船全体を支えるだけの浮力を得られるのです。
つまり、「重い=必ず沈む」ではないと覚えておきましょう。
軽いものは必ず水に浮きますか?
こちらも、必ず浮くとは限りません。
「軽い」という言葉だけでは、その物体の大きさや密度までは分からないからです。
たとえば、小さな金属片は数グラム程度しかなくても、水に入れると沈むことがあります。一方、大きな発泡スチロールはそれより重くても水面に浮きます。
重要なのは、物体全体の平均密度と水の密度の関係です。
基本的には、
物体の平均密度 < 水の密度 → 浮きやすい
物体の平均密度 > 水の密度 → 沈みやすい
と考えると分かりやすくなります。
「軽い・重い」だけではなく、大きさと重さの両方を見ることがポイントです。
大きなものほど浮力は大きくなりますか?
単純に「大きな物体だから浮力も大きい」とは限りません。
浮力を考えるうえで重要なのは、液体中で物体が押しのけている液体の体積です。
同じ液体の中なら、押しのける液体の体積が大きいほど、大きな浮力を受けます。
たとえば、大きな船は船体の一部を水中に沈めることで大量の水を押しのけています。そのため、非常に重い船体や荷物を支えられるほどの浮力を得られます。
反対に、物体そのものが大きくても、水中に入っている部分が小さければ、その物体全体の大きさだけから浮力を判断することはできません。
**「物体の大きさ」ではなく、「どれだけの液体を押しのけているか」**に注目しましょう。
水の深いところほど浮力は大きくなりますか?
これは少し注意が必要な疑問です。
水圧は一般に深い場所ほど大きくなります。しかし、水圧が大きくなるから、同じ物体の浮力も深くなるほど必ず大きくなる、というわけではありません。
水をほぼ圧縮されない液体として扱い、物体の体積も変わらないと考える基本的な場合、物体を完全に水中へ沈めた後は、深さが変わっても押しのける水の体積はほぼ同じです。そのため、浮力もほぼ同じです。
| 比べるもの | 深くなるとどうなる? |
|---|---|
| 水圧 | 大きくなる |
| 上面・下面にかかる圧力 | どちらも大きくなる |
| 圧力差による浮力 | 基本的にはほぼ変わらない |
| 押しのける水の体積 | 物体が変形しなければほぼ同じ |
つまり、「水圧」と「浮力」は同じものではないことが大切なポイントです。
ただし、気体を含んでいて水圧によって体積が変わる物体などでは、深さによって浮力が変化する場合があります。
人間の体はなぜ水に浮くのですか?
人間の体にも、水に入ると浮力がはたらきます。
人間の体には筋肉や骨だけでなく、脂肪や肺の中の空気なども含まれています。これらを合わせた体全体の平均密度と水の密度が近いため、条件によって体を浮かせることができます。
特に息を吸うと肺に空気が入り、体の体積が増えます。そのため、一般に息を吐いた状態より浮きやすくなります。
ただし、
- 体格
- 体脂肪の割合
- 肺に入っている空気
- 姿勢
- 水の密度
などによって浮き方には個人差があります。
なお、「人は浮くから溺れない」という意味ではありません。 水中では安全確保が最優先です。泳ぎに慣れていない場合は、必ず適切な監督や安全設備のある環境で行動しましょう。
海ではプールより体が浮きやすいのはなぜ?
一般的な海水には塩分が含まれているため、真水より密度が大きくなっています。
同じ体積を水中に入れた場合、密度の大きな液体ほど、押しのけた液体の重さが大きくなるため、受ける浮力も大きくなります。
そのため一般には、
真水より海水の方が体が浮きやすい
といえます。
ただし、プールの水質や海水の塩分濃度、人の体格、姿勢、呼吸などによって実際の浮き方は変わります。
ここまでの関係を整理すると、
塩分が多くなる
→ 水の密度が大きくなる
→ 同じ体積で受ける浮力が大きくなる
→ 浮きやすくなる
という流れになります。
浮力と重さの関係を知れば浮く・沈むが分かる
ものが水に浮いたり沈んだりする現象には、浮力・重力・密度・体積が関係しています。
単純に「重いから沈む」「軽いから浮く」と考えるのではなく、ものがどれだけの水を押しのけ、どれだけの浮力を受けているのかを考えることが大切です。
鉄のかたまりが沈むのに大きな船が浮くことや、氷が水面に浮くこと、海水では体が浮きやすくなることも、これまで学んだしくみから説明できます。
今日覚えておきたい重要ポイント3つ
この記事で特に覚えておきたいのは、次の3つです。
- 水中の物体には上向きの浮力がはたらく
- 浮く・沈むには、浮力と重力、密度の関係が重要
- 浮力の大きさには、押しのけた液体の量と液体の密度が関係する
特に、「重いものは必ず沈む」という考え方には注意しましょう。
大きな船が浮くように、物体全体の形や平均密度、押しのける水の量によって結果は変わります。
浮く・沈むのしくみ早見表
これまで学んだ内容を、簡単な表で整理してみましょう。
| 状態・条件 | 浮力と重力・密度の関係 | 具体例 |
|---|---|---|
| 水中で上昇する | 浮力が重力より大きい | 水中に押し込んだ発泡スチロール |
| 水面で浮いて静止する | 浮力と重力がつり合う | 木片・氷・船 |
| 沈む | 重力を浮力で支えきれない | 石・鉄球 |
| 水より平均密度が小さい | 浮きやすい | 木・氷など |
| 水より平均密度が大きい | 沈みやすい | 石・鉄のかたまりなど |
| 液体の密度が大きい | 同じ排水体積なら浮力が大きい | 真水より海水 |
この表を見ると、浮力と密度が別々の話ではなく、浮く・沈むという同じ現象を違う角度から説明していることが分かります。
浮力・水・重さの関係チェックリスト
最後に、この記事の内容を理解できたか確認してみましょう。
- □ 浮力がどの向きにはたらくか説明できる
- □ 重いものが必ず沈むわけではない理由が分かる
- □ 密度とは何か説明できる
- □ 鉄の船が水に浮く理由が分かる
- □ 氷が水に浮く理由が分かる
- □ 海水の方が真水より浮きやすい理由が分かる
- □ 水圧と浮力の違いを説明できる
- □ 形を変えると浮き方が変わる理由が分かる
すべてにチェックが付かなくても大丈夫です。身近な木片、氷、船などを見たときに、**「浮力・水・重さ・密度はどう関係しているのだろう?」**と考えてみることが、理科への理解を深める第一歩になります。
参考元:
- 文部科学省「中学校学習指導要領解説 理科編」
- 文部科学省「小学校学習指導要領解説 理科編」
- 国立教育政策研究所「理科に関する教育資料」
- 気象庁・海洋に関する基礎資料
本記事は、学校理科で扱われる浮力・重力・密度・水圧・アルキメデスの原理など、確立された科学的知識をもとに、小中学生向けに分かりやすく整理しています。
まとめ
ものが水に浮くか沈むかは、単純に重さだけで決まるわけではありません。水の中では、ものを上向きに押す「浮力」がはたらき、重力とのつり合いや密度によって浮き方が変わります。鉄でできた大きな船が浮くことや、氷が水に浮くことにも、このしくみが関係しています。また、海水では真水より浮きやすいなど、水の密度も重要です。身近なものを使った実験を通して、浮力・水・重さの関係を確かめてみましょう。

