犬の慢性腎臓病の初期症状とは?水をよく飲む、尿量が増えるなどの変化から、原因、検査、IRISステージ、治療法、食事・水分管理、自宅でのケア、受診の目安まで飼い主さん向けに分かりやすく解説します。
「最近、水を飲む量が増えた」「おしっこの回数が多くなった」「少し痩せてきた」――そんな愛犬の変化が気になっていませんか?犬の慢性腎臓病は、初期には分かりやすい症状が出ないこともあり、気づかないうちに腎機能が低下している場合があります。特に中高齢犬では、日頃の観察と定期的な健康診断が大切です。この記事では、犬の慢性腎臓病の初期症状から原因、危険なサイン、検査、IRISによるステージ、治療法、食事・水分管理、自宅でできるケアまで、飼い主さんに知っておいてほしいポイントを分かりやすく解説します。

犬の腎臓病・慢性腎臓病とは?
犬の腎臓病とは、腎臓の構造や働きに異常が起こる病気の総称です。その中でも慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)は、腎臓の異常が長期間続く病気で、特に中高齢の犬では注意したい病気の一つです。
腎臓は「尿を作る臓器」というイメージが強いかもしれませんが、体内の老廃物を排出したり、水分や電解質のバランスを調整したりするなど、生命を維持するための重要な役割を担っています。
慢性腎臓病は初期に目立った症状がないこともあるため、日頃の観察と定期的な血液検査・尿検査による早期発見が大切です。
犬の腎臓はどのような働きをしている?
犬の腎臓は背中側の腹腔内に左右1つずつあり、血液をろ過して尿を作っています。
しかし、腎臓の役割はそれだけではありません。
主な働きを整理すると次のようになります。
| 腎臓の働き | 役割 |
|---|---|
| 老廃物の排出 | 血液中の不要な物質を尿として排出する |
| 水分量の調節 | 体内に必要な水分を保つ |
| 電解質の調節 | ナトリウムやカリウムなどのバランスを整える |
| 酸塩基平衡の調節 | 体内の酸・アルカリのバランスを保つ |
| 血圧の調節 | 血圧調節に関係する仕組みに関与する |
| 赤血球産生への関与 | 赤血球を作るために必要なホルモンに関与する |
つまり腎臓は、体内環境を一定に保つための調整役ともいえる臓器です。
そのため、腎機能が大きく低下すると、老廃物の蓄積だけでなく、脱水、電解質異常、貧血、高血圧などさまざまな問題につながることがあります。慢性腎臓病では血圧やタンパク尿なども重要な評価項目になります。
犬の腎臓病とはどのような病気?
「腎臓病」は一つの病名ではなく、腎臓に起こるさまざまな病気をまとめた呼び方です。
例えば、
- 慢性腎臓病
- 急性腎障害
- 腎盂腎炎などの感染症
- 先天性・遺伝性の腎疾患
- 糸球体に関係する病気
などがあります。
病気によって、原因・進行速度・症状・治療方法は異なります。
例えば「水をたくさん飲むようになった」という症状があっても、それだけで慢性腎臓病とは判断できません。糖尿病やホルモンの病気などでも飲水量が増えることがあるため、血液検査や尿検査などを組み合わせて原因を調べます。
慢性腎臓病とは?
慢性腎臓病は、腎臓の構造または機能の異常が長期間続いている状態です。
一般的には、腎臓の異常が3か月以上持続していることなどが診断上の重要な基準になります。
慢性腎臓病では、一度失われた腎機能を完全に元の状態へ戻すことが難しい場合が多いため、
早期発見 → 現在の状態を評価 → 適切な食事・治療 → 定期検査
という長期的な管理が重要になります。
ただし、
「慢性腎臓病と診断された=すぐに重症になる」
という意味ではありません。
病気の進行速度には個体差があり、早い段階で見つかって長期間安定して生活できる犬もいます。
慢性腎臓病では、血清クレアチニンやSDMA、尿検査、タンパク尿、血圧など複数の情報を使って腎臓の状態を評価します。日本獣医腎泌尿器学会誌でも、CKDの評価にクレアチニン、SDMA、BUN、尿検査などが取り上げられています。
急性腎障害との違い
慢性腎臓病と混同しやすいものに**急性腎障害(AKI:Acute Kidney Injury)**があります。
大きな違いは、腎臓に起こる変化の時間的な経過です。
| 比較項目 | 慢性腎臓病(CKD) | 急性腎障害(AKI) |
|---|---|---|
| 経過 | 長期間にわたる | 比較的短期間に起こる |
| 症状 | 初期は目立たない場合がある | 急激な体調悪化がみられることがある |
| 腎機能 | 慢性的に低下する | 短期間で低下する |
| 回復 | 失われた機能の回復が難しい場合が多い | 原因や重症度によって回復する可能性がある |
| 対応 | 長期的な管理が中心 | 迅速な診断・治療が重要 |
日本獣医腎泌尿器学会誌では、急性腎障害を腎実質の急性損傷によって腎機能が短期間に変化する病態として説明しており、重症化することもあるため早期の病態把握と治療介入が重視されています。
ただし、CKDとAKIは完全に無関係ではありません。
慢性腎臓病の犬で急激に腎機能が悪化することもあるため、「もともと腎臓病だから今回の体調不良もいつものこと」と自己判断しないことが大切です。
慢性腎臓病は徐々に進行することがある
慢性腎臓病では、腎機能が少しずつ低下していくことがあります。
腎臓にはある程度の機能的な余裕があるため、初期には明らかな症状が現れない場合があります。
その後、腎臓の尿を濃くする能力が低下してくると、
尿が薄くなる
↓
尿量が増える
↓
失った水分を補うため飲水量が増える
といった変化がみられることがあります。
さらに病気が進行すると、食欲低下、体重減少、脱水、嘔吐、元気消失などがみられることがあります。
慢性腎臓病で大切な考え方
- 初期には症状が目立たない場合がある
- 症状だけでは腎機能の状態を判断できない
- 血液検査だけでなく尿検査も重要
- タンパク尿や血圧なども評価する
- 定期検査によって変化を追うことが大切
日本獣医腎泌尿器学会が発行する専門誌でも、犬猫の腎・泌尿器疾患について診断や管理に関する研究・ガイドラインが継続的に扱われています。
犬の慢性腎臓病で見られる初期症状
犬の慢性腎臓病で特に気をつけたいのが、初期には飼い主さんが気づきにくいことがある点です。
「元気だから腎臓は大丈夫」とは限りません。
その中で比較的気づきやすい変化の一つが、多飲多尿です。
多飲多尿とは、
- 水を飲む量が増える「多飲」
- 尿の量が増える「多尿」
がみられる状態をいいます。
例えば、「最近、水の器が空になるのが早い」「トイレの回数が増えた」「ペットシーツの尿の範囲が以前より広くなった」といった変化が早期発見のきっかけになる場合があります。
水を飲む量が増える
慢性腎臓病では、腎臓の尿を濃縮する能力が低下し、薄い尿を多く排泄するようになることがあります。
尿として失われる水分が増えるため、それを補うように水を飲む量が増えてきます。
飼い主さんから見ると、
- 水を飲みに行く回数が増えた
- 水の器が以前より早く空になる
- 夜中にも水を飲むようになった
- 散歩後以外にも頻繁に水を飲む
といった変化として気づくことがあります。
ただし、暑い日や運動後、食事内容などによって飲水量が増えることもあります。また、糖尿病や内分泌疾患などでも多飲がみられるため、水をたくさん飲む=慢性腎臓病とは限りません。
気になる場合は数日間の飲水量を記録して、動物病院で相談するとよいでしょう。
重要なのは、水を飲みすぎているように見えても、自己判断で飲み水を制限しないことです。
尿の量や回数が増える
飲水量の増加と一緒に気づきやすいのが、尿量の増加です。
例えば、
- ペットシーツを交換する回数が増えた
- 1回の尿量が多くなった
- 夜間にも排尿するようになった
- 散歩中の排尿回数が変わった
- 今までなかった粗相をするようになった
などです。
ただし、ここで注意したいのは、排尿回数が多いことと尿量が多いことは同じではないという点です。
膀胱炎などでは、少量の尿を何度もする「頻尿」がみられることがあります。
一方、慢性腎臓病で問題になる多尿は、一般に1日に作られる尿そのものが増える状態です。
そのため、回数だけでなく「1回にどのくらい出ているか」「ペットシーツの濡れ方が変わったか」なども観察するとよいでしょう。
食欲が少しずつ低下する
慢性腎臓病では、進行に伴って食欲が低下することがあります。
初めのうちは、
「まったく食べない」
という状態ではなく、
- 食べ始めるまで時間がかかる
- 好きだったフードを残す
- 朝だけ食べない
- おやつは食べるが主食を残す
といった小さな変化から始まることもあります。
ただし、食欲低下は胃腸疾患、歯科疾患、感染症など多くの病気で起こります。
食欲だけで腎臓病と判断せず、飲水量・尿量・体重・元気などほかの変化も一緒に確認することが大切です。
体重が減ってくる
「ちゃんと食べていると思っていたのに、抱っこしたら軽くなった」という変化も注意したいポイントです。
慢性腎臓病が進行すると、食欲低下などによって体重や筋肉量が減少することがあります。
特に長毛犬では見た目だけでは痩せたことに気づきにくいため、定期的に体重を測ると変化を把握しやすくなります。
家庭で確認したいこと
- 月ごとに体重を記録する
- 背骨や腰骨が以前より目立っていないか確認する
- 太ももの筋肉が落ちていないか観察する
- 食事量も一緒に記録する
高齢犬では「年齢のせいで痩せた」と思ってしまうことがありますが、意図しない体重減少が続く場合は動物病院へ相談しましょう。
元気がなくなり疲れやすくなる
慢性腎臓病では、以前より元気がなくなったり、疲れやすくなったりする場合があります。
例えば、
- 散歩の途中で立ち止まるようになった
- 寝ている時間が増えた
- おもちゃで遊ばなくなった
- 家族が帰宅しても以前ほど反応しない
- 散歩へ行きたがらなくなった
といった変化です。
ただし、こうした症状は関節疾患や心臓病などでもみられます。
特に中高齢犬では「年だから仕方がない」と考えがちですが、行動の変化が病気のサインになっている可能性もあるため注意しましょう。
初期には目立った症状がないこともある
慢性腎臓病で特に覚えておきたいのが、初期には飼い主さんが気づくほどの症状がない場合があることです。
そのため、
「水をよく飲むようになってから検査すればよい」
とは限りません。
健康診断で血液検査や尿検査を受けたことをきっかけに、腎臓の異常が疑われることもあります。
特に中高齢になった犬では、健康そうに見えていても定期的な健康診断について獣医師と相談しておくとよいでしょう。
初期に確認したい変化の早見表
| 観察項目 | 気づきたい変化 |
|---|---|
| 飲水 | 水を飲む量・回数が増えた |
| 尿 | 量が増えた、薄くなったように感じる |
| 食欲 | 食べ残しが増えた |
| 体重 | 少しずつ減っている |
| 筋肉 | 背中や足の筋肉が落ちてきた |
| 元気 | 遊びや散歩への反応が低下した |
| 睡眠 | 寝ている時間が増えた |
多飲多尿に気づいたら
飲水量が増える
↓
尿量も増えていないか確認する
↓
食欲・体重・元気も確認する
↓
数日間の変化を記録する
↓
気になる変化が続けば動物病院へ相談する
スマートフォンに「1日に飲んだ水の量」「食事量」「体重」「排尿の変化」を記録しておくと、診察時に獣医師へ状況を伝えやすくなります。
なお、急にぐったりした、繰り返し吐く、食事や水をほとんど取れない、尿が極端に少ない・出ないなどの場合は、単なる初期症状として様子を見続けず、早めの受診が必要です。
慢性腎臓病が進行したときに見られる症状
犬の慢性腎臓病は、初期には多飲多尿など比較的気づきにくい変化だけの場合があります。しかし、腎機能の低下が進むと、老廃物を十分に排出できなくなったり、水分や電解質のバランスを保ちにくくなったりして、さまざまな症状が現れることがあります。
特に、食欲不振、嘔吐、体重減少、脱水、元気消失などが続く場合は、「年齢のせい」と考えず、動物病院へ相談することが大切です。
なお、症状の現れ方や進行速度には個体差があります。症状だけから慢性腎臓病のステージを判断することはできません。
進行時にみられる主な症状
| 症状 | 飼い主さんが気づきやすい変化 |
|---|---|
| 食欲不振 | 食事を残す・好きなものも食べない |
| 嘔吐・下痢 | 吐く回数が増える・便がゆるくなる |
| 体重・筋肉減少 | 痩せる・背骨や腰骨が目立つ |
| 脱水 | 元気低下・口の中が乾いているなど |
| 口臭 | 以前とは異なる強いにおい |
| 貧血 | 元気がない・疲れやすい・粘膜が白っぽい |
| 尿毒症 | 食欲不振、嘔吐、元気消失など全身症状 |
食欲不振が目立つようになる
慢性腎臓病が進行すると、食欲が低下することがあります。
腎機能が低下すると、体内に老廃物が蓄積するほか、吐き気や胃腸症状などが生じ、食事を取りにくくなる場合があります。
例えば、
- 今まで食べていたフードを残す
- 食器の前まで行くが食べない
- 好きなおやつしか食べなくなる
- 食べる量が日ごとに減っている
- 食べ物のにおいを嗅いで離れる
といった変化がみられることがあります。
食欲が落ちると体重や筋肉量の減少にもつながるため、「少し食べているから大丈夫」と長期間様子を見ないことが大切です。
食事量を記録しておくと、診察時にも役立ちます。
嘔吐や下痢が見られることがある
慢性腎臓病が進行した犬では、吐き気や嘔吐、下痢などの消化器症状がみられる場合があります。
例えば、
「朝になると吐くことが増えた」
「食べてもすぐ吐いてしまう」
「食欲低下と一緒に下痢もしている」
といった変化です。
ただし、嘔吐や下痢は胃腸炎、膵炎、異物誤飲、感染症など多くの病気でも起こります。
したがって、
嘔吐=腎臓病の悪化
と自己判断することはできません。
特に何度も吐いて水分を保てない状態では、脱水によってさらに体調が悪化する可能性があるため、早めに動物病院へ相談しましょう。
体重や筋肉量が減少する
慢性腎臓病では、食欲低下や栄養状態の悪化などに伴って、体重や筋肉量が減少することがあります。
特に中高齢犬では、
「年を取ったから痩せただけだろう」
と思ってしまうことがあります。
しかし、意図していない体重減少は病気の重要なサインになる場合があります。
家庭では、
- 定期的に体重を測る
- 背骨や腰骨が目立っていないか確認する
- 太ももの筋肉が細くなっていないか見る
- 食事量も一緒に記録する
といった方法で変化を確認するとよいでしょう。
体重だけでなく筋肉量にも注目することがポイントです。
脱水が起こることがある
慢性腎臓病では、腎臓の尿を濃縮する能力が低下し、多くの水分を尿として失うことがあります。
そのため、水をたくさん飲んでいても、状態によっては脱水を起こすことがあります。
さらに、
多尿+食欲低下+嘔吐・下痢
が重なると、水分を十分に補えなくなり、脱水が悪化する可能性があります。
脱水が疑われる場合は自己判断で大量の水を無理に飲ませるのではなく、動物病院で状態を確認してもらいましょう。必要に応じて輸液などによる水分・電解質の補給が行われます。
また、慢性腎臓病の犬では、飲み水を自己判断で制限しないことが重要です。
口臭が強くなることがある
慢性腎臓病が進行すると、口臭が強くなる犬もいます。
腎機能が大きく低下し、尿毒症が進んだ状態では、アンモニアのような特徴的な口臭を感じる場合があります。また、口腔内に炎症や潰瘍が生じることもあります。
ただし、犬の口臭で圧倒的に多い原因の一つは歯周病などの口腔疾患です。
そのため、
「口が臭う=腎臓病」
とは判断できません。
口臭が急に強くなり、同時に食欲不振、嘔吐、元気低下などがみられる場合は、動物病院で相談しましょう。
貧血によって元気がなくなることがある
腎臓には、赤血球を作るよう骨髄に働きかけるエリスロポエチンというホルモンの産生に関わる重要な役割があります。
慢性腎臓病が進行するとエリスロポエチンの産生が低下し、腎性貧血が起こる場合があります。
貧血が進むと、
- 元気がない
- 疲れやすい
- 散歩を嫌がる
- 寝ている時間が増える
- 歯ぐきなどの粘膜が白っぽく見える
といった変化がみられることがあります。
ただし、貧血には出血、免疫疾患、腫瘍などさまざまな原因があります。血液検査などによって原因を調べる必要があります。
進行すると尿毒症による症状が現れることがある
腎機能が大きく低下すると、本来尿として排出される老廃物などが体内に蓄積し、尿毒症と呼ばれる状態になることがあります。
尿毒症では、
- 強い食欲不振
- 吐き気・嘔吐
- 元気消失
- 脱水
- 体重減少
- 口臭や口腔内の異常
- 重症では神経症状
など、全身にさまざまな問題が現れる可能性があります。
ここまで進行すると家庭での食事管理だけで対応することは難しく、獣医師による治療が必要です。
慢性腎臓病の変化をイメージすると
初期:症状がほとんどないこともある
↓
多飲・多尿
↓
食欲低下・体重減少・元気低下
↓
嘔吐・脱水・貧血など
↓
重度になると尿毒症などの全身症状
ただし、すべての犬がこの順番で進行するわけではありません。症状の種類や強さだけでステージを自己判断しないことが重要です。
すぐに動物病院を受診したい危険なサイン
慢性腎臓病は長期間かけて進行する病気ですが、慢性腎臓病だから体調も必ずゆっくり悪くなるとは限りません。
もともと慢性腎臓病がある犬でも、脱水、感染症、ほかの病気などをきっかけとして、短期間で腎機能や全身状態が悪化する場合があります。
特に次のような症状がみられる場合は、次回の定期診察まで待たず、動物病院へ連絡しましょう。
| 危険なサイン | 考えたい対応 |
|---|---|
| ほとんど食べない・飲めない | 早めに動物病院へ相談 |
| 嘔吐を繰り返す | 脱水に注意し受診 |
| ぐったりして動かない | 速やかに受診 |
| 尿が極端に少ない・出ない | 緊急性を考えて受診 |
| けいれん・意識異常 | 緊急受診 |
| 治療中に急変 | 担当獣医師へ速やかに連絡 |
ほとんど食べない・水も飲めない
慢性腎臓病の犬がほとんど食べられず、水も飲めない状態になった場合は注意が必要です。
水分を摂取できない状態が続くと脱水が進み、全身状態や腎機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
特に、
- 丸一日近くほとんど口にしない
- 水のところまで行っても飲まない
- 飲んでも吐いてしまう
- ぐったりしている
などの場合は、早めに動物病院へ連絡してください。
受診の緊急度は犬の状態や持病によって異なるため、「○時間なら絶対に大丈夫」と一律に判断しないことが大切です。
嘔吐を繰り返している
1回だけ吐いて、その後元気や食欲が戻るケースもありますが、慢性腎臓病の犬が短時間に何度も嘔吐する場合は注意が必要です。
嘔吐が続くと、
水分を失う
↓
脱水が進む
↓
食事や薬も取れなくなる
↓
全身状態がさらに悪化する
という悪循環になる可能性があります。
特に水まで吐いてしまう、血液のようなものが混じる、ぐったりしている場合は、早急に獣医師へ相談しましょう。
ぐったりして動かない
「いつもより元気がない」という程度ではなく、
- 呼びかけへの反応が弱い
- 立ち上がろうとしない
- 散歩や食事にも反応しない
- 横になったままほとんど動かない
といった状態は注意が必要です。
慢性腎臓病の悪化だけでなく、脱水、貧血、電解質異常、低血圧、感染症などさまざまな問題が隠れている可能性があります。
「腎臓病だから元気がないのは仕方ない」と考えず、普段と明らかに違う元気消失があれば受診してください。
尿がほとんど出ない・まったく出ない
これは特に注意したい症状です。
慢性腎臓病では多尿がみられることがありますが、状態によっては**尿量が著しく減少する「乏尿」や、ほとんど尿が作られない「無尿」**になることがあります。
また、尿が出ない原因は腎臓だけとは限りません。尿路閉塞などでも排尿できなくなるため、緊急性があります。
例えば、
- 長時間尿が確認できない
- 排尿姿勢をとるのに出ない
- 少量しか出ない
- 苦しそうに何度も排尿姿勢をとる
といった場合は、様子を見続けず動物病院へ連絡してください。
特に「何度も排尿姿勢をとるのに尿が出ない」という場合は、腎臓病の症状だと決めつけないことが重要です。
けいれんや意識の異常が見られる
重度の尿毒症や電解質異常、高血圧などに関連して、神経症状がみられる場合があります。
- けいれんする
- 意識がもうろうとしている
- 呼びかけへの反応がおかしい
- 突然倒れる
- いつもと明らかに違う異常行動をする
こうした症状があれば、緊急性が高い可能性があります。
自宅で原因を調べようとせず、できるだけ速やかに動物病院へ連絡してください。
慢性腎臓病の治療中に急激に体調が悪化した
慢性腎臓病で定期的に通院している犬でも、急に体調が悪化することがあります。
例えば昨日まで食べていたのに、
「今日はまったく食べない」
「何度も吐いている」
「急にぐったりした」
「尿の量が急に変わった」
という場合です。
慢性腎臓病の犬では、腎臓以外の病気や脱水、感染症などが重なっている可能性もあります。
また、治療中の犬では薬や食事、飲水量、最近の検査結果などの情報が診断に役立つことがあります。
受診するときは、
- いつから症状が出たか
- 食べた量
- 飲水量
- 嘔吐の回数
- 尿の量や回数
- 現在使用している薬
- 療法食の種類
- 最近の体重変化
などを獣医師へ伝えましょう。
迷ったときの判断ポイント
いつもの愛犬と明らかに違う
↓
食べられる・飲める・尿が出るか確認
↓
嘔吐・ぐったり・神経症状などがないか確認
↓
異常が強い、または急激なら動物病院へ連絡
慢性腎臓病では「定期通院しているから次回まで待てばよい」とは限りません。急激な変化があれば、予定されている診察日を待たず相談することが大切です。
覚えておきたいポイント
- 慢性腎臓病が進行すると食欲不振・嘔吐・体重減少などがみられることがある
- 腎性貧血や尿毒症などの合併症が起こる場合がある
- 嘔吐が続くと脱水が悪化する可能性がある
- 尿が出ない場合は腎臓病以外に尿路閉塞なども考える必要がある
- けいれんや意識異常は緊急性の高いサインになり得る
- 慢性腎臓病の治療中でも急激に悪化することがある
- 症状だけからステージや原因を自己判断しない
犬が慢性腎臓病になる主な原因
犬の慢性腎臓病(CKD)は、一つの原因だけで起こる病気ではありません。 加齢に伴う変化、腎臓の炎症や感染、先天性・遺伝性疾患、尿路の異常、ほかの病気の影響など、さまざまな要因が関係します。
また、実際には「なぜ慢性腎臓病になったのか」を完全に特定できないケースもあります。そのため、原因探しだけでなく、現在どの程度腎機能が残っているのか、タンパク尿や高血圧がないか、病気がどの程度進行しているのかを評価することが重要です。
慢性腎臓病の主な原因・関連要因
| 原因・関連要因 | 腎臓への影響 | ポイント |
|---|---|---|
| 加齢 | 腎機能や腎組織が変化する | 高齢だけが原因とは限らない |
| 炎症・感染 | 腎臓組織に障害を起こす | 腎盂腎炎など |
| 先天性・遺伝性疾患 | 生まれつき腎臓に異常がある | 若齢で発症する場合も |
| 尿路異常 | 尿の流れを妨げるなど | 結石・閉塞など |
| ほかの病気 | 腎臓へ二次的な障害を起こす | 全身疾患との関連もある |
| 原因不明 | 原因を特定できない | 珍しくない |
加齢に伴う腎機能の低下
慢性腎臓病は、中高齢犬で見つかることが多い病気です。
年齢を重ねるにつれて、腎臓の組織や働きにも変化が起こりやすくなるため、加齢は慢性腎臓病の重要なリスク要因の一つと考えられます。
ただし、
「高齢になれば必ず慢性腎臓病になる」
という意味ではありません。
また、
「高齢だから腎機能が悪くても仕方がない」
と考えるのも適切ではありません。
例えば、12歳の犬で水を飲む量が増え、体重が減ってきた場合、それを単なる老化と判断せず、血液検査や尿検査を受けることが大切です。
中高齢犬で確認したい変化
- 水を飲む量が増えた
- 尿量が増えた
- 食欲が落ちた
- 体重が減った
- 元気がなくなった
こうした変化があれば、年齢のせいと決めつけず獣医師へ相談しましょう。
腎臓の炎症や感染
腎臓に炎症や感染が起こることも、腎障害の原因になります。
代表的なものの一つが腎盂腎炎です。
細菌が尿路から腎臓へ上行して感染すると、腎臓に炎症を起こすことがあります。国内の獣医学文献でも、上行性細菌感染による慢性腎盂腎炎が報告されています。
腎盂腎炎では、
- 発熱
- 元気消失
- 食欲不振
- 多飲多尿
- 排尿異常
などがみられることがありますが、症状がはっきりしない場合もあります。
感染や炎症が長く続けば、腎組織に障害が残り、慢性的な腎機能低下につながる可能性があります。
先天性・遺伝性の腎疾患
一部の犬では、生まれつき腎臓に異常がある先天性疾患や、遺伝的な腎疾患がみられることがあります。
その場合、中高齢になる前から腎機能異常が見つかることもあります。
例えば、
- 腎異形成
- 遺伝性腎症
- 一部の嚢胞性腎疾患
- 尿細管機能に関係する遺伝性疾患
などがあります。
ただし、遺伝性疾患の種類や発症しやすい犬種は疾患ごとに異なります。
また、特定の犬種だからといって必ず腎臓病になるわけではありません。
そのため、
「若い犬=慢性腎臓病ではない」
とは考えないようにしましょう。
尿路の異常が腎臓に影響することがある
尿は、
腎臓 → 尿管 → 膀胱 → 尿道
という経路で体外へ排出されます。
この途中で尿路結石や閉塞などが起こると、尿の流れが妨げられ、腎臓に負担がかかることがあります。
例えば、
- 尿管結石
- 尿路閉塞
- 尿路感染
- 尿の逆流
- 長期間続く排尿障害
などです。
国内の獣医学資料でも、尿路結石や遺伝性のシスチン尿など、尿路疾患と腎・泌尿器系の異常について解説されています。
特に、
排尿姿勢をとるのに尿が出ない
という場合は緊急性がある可能性があります。
ほかの病気が腎臓に影響する場合もある
腎臓そのものの病気だけでなく、全身の病気によって腎臓が二次的に障害されることもあります。
例えば、
- 高血圧
- 免疫系の病気
- 感染症
- 心臓や循環器の病気
- 一部の内分泌疾患
- 重い脱水や循環不全
などが関係する場合があります。
犬糸状虫症では免疫複合体による糸球体障害が報告されており、腎臓が全身疾患の影響を受ける一例です。
そのため、慢性腎臓病の診断では腎臓だけを見るのではなく、血圧や全身状態、ほかの持病なども含めて評価することが重要です。
原因を特定できないこともある
慢性腎臓病の犬では、検査を行っても元の原因をはっきり特定できない場合があります。
これは珍しいことではありません。
慢性腎臓病が発見された時点では、すでに長期間の腎組織変化が起こっており、最初の原因が分からなくなっていることもあります。
その場合は、
原因が分からない
=
治療できない
という意味ではありません。
むしろ重要なのは、
- 現在の腎機能
- 血圧
- タンパク尿
- 脱水
- 食欲・体重
- 電解質
- 貧血
などを確認し、残っている腎機能をできるだけ維持することです。
慢性腎臓病になりやすい犬・年齢
慢性腎臓病はどの犬にも起こる可能性がありますが、中高齢犬で見つかる機会が増える傾向があります。
一方で、先天性・遺伝性の腎疾患では若い犬で発症することもあります。
そのため、
「高齢犬だけの病気」
と考えないことが大切です。
年齢と慢性腎臓病の考え方
| 犬の状態 | 注意したいポイント |
|---|---|
| 中高齢犬 | 慢性腎臓病の発見機会が増える |
| 若齢犬 | 先天性・遺伝性疾患の可能性 |
| 好発犬種 | 遺伝性疾患がある場合も |
| 症状なし | 健康診断で異常が見つかることも |
中高齢犬では慢性腎臓病に注意する
慢性腎臓病は、中高齢犬で特に注意したい病気です。
初期には目立った症状がないこともあるため、飼い主さんが気づいたときには、ある程度腎機能が低下している場合もあります。
そのため、中高齢になった犬では、
- 血液検査
- 尿検査
- 血圧測定
- 体重測定
などを含む定期的な健康診断について獣医師と相談するとよいでしょう。
特に血液検査だけでなく、尿検査も一緒に行うことが重要です。
若い犬でも腎臓病になることがある
慢性腎臓病というと高齢犬の病気と思われがちですが、若い犬でも発症することがあります。
特に、
- 腎異形成
- 先天性腎疾患
- 遺伝性腎症
- 感染症
- 尿路異常
などがある場合は、比較的若い年齢で腎機能の異常が見つかることがあります。
例えば、若い犬なのに、
水を大量に飲む
+
尿量が多い
+
体重が増えない
といった変化が続く場合は、年齢だけで腎臓病を否定せず、動物病院で相談しましょう。
遺伝性・先天性腎疾患が知られている犬種もある
犬では、一部の犬種で特定の遺伝性・先天性腎疾患が知られています。
ただし、ここで大切なのは、
「犬種=慢性腎臓病」
と考えないことです。
遺伝性腎疾患は病気ごとに原因遺伝子や発症年齢、進行の仕方が異なります。
また、同じ犬種でも発症しない犬も多くいます。
そのため、犬種情報は、
診断を決めるものではなく、注意して観察するための参考情報
として考えるのが適切です。
犬種だけで慢性腎臓病を判断できない
慢性腎臓病の診断で重要なのは、犬種や年齢だけではありません。
例えば、
10歳だから腎臓病
特定犬種だから腎臓病
という判断はできません。
診断では、
- 症状
- 血液検査
- 尿検査
- 血圧
- タンパク尿
- 超音波検査
- 病歴
などを組み合わせて評価します。
特に慢性腎臓病では、腎臓の異常が持続していることを確認することも重要です。
健康診断による早期発見が大切
慢性腎臓病では、症状が出る前の段階から検査で異常が見つかることがあります。
そのため、健康診断は早期発見につながる大切な機会です。
健康診断で確認したい項目
| 検査 | 主に確認すること |
|---|---|
| 血液検査 | クレアチニン・BUN・SDMAなど |
| 尿検査 | 尿比重・タンパク尿など |
| 血圧測定 | 高血圧の有無 |
| 画像検査 | 腎臓の大きさ・形など |
| 体重・筋肉量 | 慢性的な変化 |
特に「血液検査が正常だったから腎臓は完全に大丈夫」とは限りません。
血液検査、尿検査、血圧などを組み合わせて判断することが重要です。
犬の年齢と腎臓病を考える流れ
中高齢になった
↓
定期的な健康診断
↓
血液・尿・血圧などを確認
↓
異常があれば追加検査
↓
慢性腎臓病かどうかを評価
↓
必要に応じて継続的に管理
若い犬でも多飲多尿や体重減少などがあれば、この流れとは関係なく早めに受診してください。
覚えておきたいポイント
- 慢性腎臓病には複数の原因がある
- 加齢はリスク要因の一つだが、年齢だけが原因ではない
- 腎盂腎炎などの感染・炎症が腎障害につながることがある
- 先天性・遺伝性疾患では若い犬でも発症する
- 尿路の異常が腎臓へ影響する場合がある
- 全身疾患が二次的に腎臓を障害することもある
- 原因を特定できない慢性腎臓病もある
- 犬種や年齢だけで診断することはできない
- 中高齢犬では血液検査と尿検査を含む定期健診が大切
慢性腎臓病と似た症状が出る病気
犬の慢性腎臓病では、水をたくさん飲む、尿量が増える、食欲が落ちる、体重が減る、元気がなくなるなどの症状が見られることがあります。
しかし、これらの症状は慢性腎臓病だけに特有のものではありません。糖尿病やクッシング症候群、肝臓病、尿路感染症、子宮蓄膿症などでも、多飲多尿が見られることがあります。犬の副腎皮質機能亢進症では多飲多尿が代表的な臨床症状の一つとして報告されています。
そのため、「水をよく飲むようになった=腎臓病」と自己判断するのではなく、血液検査や尿検査などを行い、原因を調べることが大切です。
多飲多尿が見られる主な病気の早見表
| 病気 | 主に見られることがある症状 | 確認に使われる主な検査 |
|---|---|---|
| 慢性腎臓病 | 多飲多尿、食欲低下、体重減少など | 血液・尿・血圧・画像検査 |
| 糖尿病 | 多飲多尿、多食、体重減少など | 血糖値・尿糖など |
| クッシング症候群 | 多飲多尿、多食、パンティングなど | 血液検査・ホルモン検査など |
| 肝臓病 | 食欲低下、嘔吐、多飲多尿など | 血液・画像検査など |
| 尿路感染症 | 頻尿、排尿異常、血尿など | 尿検査・尿培養など |
| 子宮蓄膿症 | 元気低下、食欲不振、多飲多尿など | 血液・超音波検査など |
糖尿病
犬の糖尿病でも、水をたくさん飲み、尿の量が増えることがあります。
糖尿病では血糖値が高くなることで、尿中へブドウ糖が排出されます。尿中の糖が水分を引き込むため尿量が増え、その失った水分を補うために飲水量も増えるという仕組みです。
代表的には、
- 水をよく飲む
- 尿量が増える
- 食欲が増えることがある
- 食べているのに体重が減る
- 元気が低下する
などがみられます。国内の獣医学文献でも、犬の糖尿病では多飲多尿、多食、体重減少などが症状として挙げられています。
例えば、
「水を飲む量が増えて、食欲もあるのに最近痩せてきた」
という場合、慢性腎臓病だけでなく糖尿病も考える必要があります。
血糖値や尿糖などを調べて区別します。
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
クッシング症候群は、コルチゾールという副腎皮質ホルモンが過剰になる病気です。
犬では、
- 多飲多尿
- 食欲の増加
- パンティングが増える
- お腹が膨らんで見える
- 筋肉量が減る
- 皮膚が薄くなる
- 左右対称の脱毛
などが見られることがあります。国内の犬の副腎皮質機能亢進症の報告でも、多飲多尿、嗜眠、パンティング、腹囲膨満、両側対称性脱毛などが主要な臨床症状として記載されています。
慢性腎臓病と共通するのは特に多飲多尿です。
ただし、クッシング症候群では食欲が増えることがある一方、慢性腎臓病が進行すると食欲が低下することがあります。
症状だけでは判断できないため、血液検査やホルモン検査などを行います。
肝臓病
肝臓病でも、病気の種類や程度によっては、
- 食欲低下
- 元気消失
- 嘔吐
- 体重減少
- 多飲多尿
など、慢性腎臓病と似た症状が見られることがあります。
さらに肝臓病では、
- 黄疸
- 腹水
- 神経症状
などが現れる場合もあります。
ただし、肝臓病も非常に幅広く、血液検査で肝酵素が高いだけで病名を確定できるわけではありません。
血液検査や腹部超音波検査などを組み合わせて評価します。
尿路感染症
尿路感染症は、膀胱や尿道などの尿路に細菌感染が起こる病気です。
犬では、
- 排尿回数が増える
- 少量ずつ何度も尿をする
- 血尿
- 排尿時に痛がる
- 尿のにおいが変わる
などが見られることがあります。
ここで大切なのは、「尿の回数が増えた」と「尿量そのものが増えた」は違うという点です。
慢性腎臓病では尿量そのものが増える「多尿」がみられることがありますが、膀胱炎などでは1回の尿量が少ない「頻尿」になることがあります。
尿路感染症の診断では、尿試験紙、尿比重、尿沈渣などの尿検査が重要で、必要に応じて尿培養も行われます。日本獣医腎泌尿器学会誌に掲載された診療指針でも、尿路感染症では尿検査を行い、糖尿などの併存疾患も確認することが推奨されています。
子宮蓄膿症などでも多飲多尿が見られることがある
避妊していない雌犬では、子宮蓄膿症にも注意が必要です。
子宮蓄膿症は、子宮内に細菌感染などによって膿がたまる病気で、特に中高齢の未避妊犬で問題になります。
症状としては、
- 多飲多尿
- 食欲低下
- 元気消失
- 嘔吐
- 発熱
- お腹が膨らむ
- 外陰部から膿のような分泌物が出る
などが見られる場合があります。
ただし、子宮の出口が閉じているタイプでは、外陰部から分泌物が出ないこともあります。
そのため、
「水をよく飲むだけだから腎臓病だろう」
と決めつけるのは危険です。
特に未避妊の雌犬で、発情後に元気や食欲が落ち、多飲多尿がみられる場合は早めに動物病院へ相談しましょう。国内でも犬の子宮蓄膿症について多数の臨床例が報告されています。
水をよく飲むだけで腎臓病と自己判断しない
多飲多尿は慢性腎臓病を疑う重要なきっかけになりますが、多飲多尿だけで病名を決めることはできません。
考えられる病気には、
- 慢性腎臓病
- 糖尿病
- クッシング症候群
- 肝臓病
- 尿路疾患
- 子宮蓄膿症
- その他の内分泌・代謝疾患
などがあります。
また、
- 暑い時期
- 運動量
- 食事内容
- 薬の使用
などによって飲水量が変化する場合もあります。
多飲多尿に気づいたときの流れ
水を飲む量が増えた
↓
尿量・排尿回数も確認する
↓
食欲・体重・元気なども確認する
↓
数日間記録する
↓
明らかな変化が続けば動物病院へ相談
↓
血液検査・尿検査などで原因を調べる
大切なのは、水を自己判断で減らさないことです。
動物病院で行われる検査と診断
犬の慢性腎臓病は、血液検査の一つの数値だけで診断する病気ではありません。
動物病院では、問診や身体検査に加えて、
- 血液検査
- 尿検査
- 血圧測定
- 超音波検査
- 必要に応じてレントゲン検査
などを組み合わせ、腎臓の構造や機能、異常が慢性的に続いているかなどを総合的に評価します。
慢性腎臓病の評価では、クレアチニン、SDMA、尿比重、尿タンパク/クレアチニン比(UPC)、血圧など複数の指標が使用されています。国内の日本獣医腎泌尿器学会誌に掲載された犬の腎機能評価でも、BUN、クレアチニン、SDMA、尿比重、UPC、血圧を組み合わせて評価しています。
慢性腎臓病で行われる主な検査
| 検査 | 主に確認するもの | ポイント |
|---|---|---|
| 問診 | 飲水・尿量・食欲・体重 | 家庭での変化を把握 |
| 血液検査 | クレアチニン・BUN・SDMAなど | 腎機能の評価 |
| 尿検査 | 尿比重・タンパク・沈渣など | 尿濃縮能などを確認 |
| UPC | 尿中タンパク量 | タンパク尿を評価 |
| 血圧測定 | 高血圧の有無 | CKDの管理に重要 |
| 超音波検査 | 腎臓の大きさ・形・内部構造 | 構造的異常を確認 |
| レントゲン | 腎臓や尿路など | 結石などの確認に役立つ場合 |
問診で飲水量・尿量・食欲などを確認する
慢性腎臓病の診察では、飼い主さんから聞く情報が非常に重要です。
獣医師からは例えば、
- 水を飲む量は増えたか
- 尿量・排尿回数は変わったか
- 食欲はあるか
- 体重が減っていないか
- 嘔吐していないか
- 元気はあるか
- 現在飲んでいる薬
- 過去の病気
などを聞かれることがあります。
例えば、
「以前は水の器を1日1回交換していましたが、最近は夕方までに空になります」
という情報は、「水をよく飲みます」だけより具体的です。
受診前に記録しておきたいこと
| 項目 | 記録例 |
|---|---|
| 飲水量 | 1日○mL程度 |
| 尿 | ペットシーツ○枚、量が増えた |
| 食事 | 普段の7割程度 |
| 体重 | 先月より○kg減少 |
| 嘔吐 | 3日間で2回 |
| 薬 | 薬名・投与回数 |
可能なら普段使用している薬やサプリメントも伝えましょう。
血液検査で腎機能を調べる
血液検査では、主に腎機能の低下を示す可能性がある項目を確認します。
代表的なのが、
- クレアチニン(CRE)
- BUN(血中尿素窒素)
- SDMA
などです。国内の犬の腎機能評価でも、これらの項目に尿検査などを加えてCKDの評価が行われています。
クレアチニン
筋肉の代謝によって生じる物質で、主に腎臓から排出されます。
腎機能が低下すると血液中の濃度が上昇することがあります。
ただし、クレアチニンは、
- 筋肉量
- 脱水状態
- 個体差
などの影響を受けます。
そのため、クレアチニンだけで慢性腎臓病を診断しないことが重要です。
BUN
BUNはタンパク質代謝によって生じる尿素窒素の量を示します。
腎機能低下で上昇することがありますが、食事や脱水などの影響を受けるため、単独では診断できません。
SDMA
SDMAも糸球体濾過機能の評価に用いられる指標です。
クレアチニンとは性質が異なるため、複数の情報の一つとして使用します。
大切なのは「一つの値」ではなく組み合わせ
クレアチニンだけ高い
↓
慢性腎臓病確定
とはなりません。
血液検査だけでなく、尿比重、タンパク尿、血圧、画像検査、症状などを合わせて判断します。
尿検査で尿の濃さやタンパク質などを調べる
慢性腎臓病の診断では、尿検査が非常に重要です。
腎臓は尿を作る臓器なので、尿を調べることで腎臓の働きについて多くの情報を得られます。
主に、
- 尿比重
- タンパク質
- 糖
- 潜血
- 尿沈渣
- 細菌
- 結晶
などを確認します。
尿比重
尿比重は、尿がどの程度濃縮されているかを見る指標です。
慢性腎臓病では、腎臓の尿を濃くする能力が低下し、薄い尿が持続する場合があります。
国内の犬のCKD評価でも、尿比重をクレアチニン、SDMA、UPC、血圧などと組み合わせて評価しています。
タンパク尿
尿にタンパク質がどのくらい出ているかも重要です。
必要に応じて**尿タンパク/クレアチニン比(UPC)**を測定して、タンパク尿の程度を評価します。
ただし、尿路感染症や炎症がある場合にも尿タンパクが増えることがあるため、尿沈渣などと合わせて判断します。
血圧測定を行うことがある
慢性腎臓病の犬では、高血圧を伴う場合があります。
高血圧は腎臓にさらに負担をかけるだけでなく、
- 目
- 脳
- 心臓
- 血管
などにも影響する可能性があります。
そのためCKDでは血圧も重要な管理項目です。国内でIRIS分類を用いた犬の腎機能評価でも、収縮期血圧が評価されています。
ただし、犬は動物病院で緊張すると血圧が高くなることもあります。
そのため、落ち着いた環境で複数回測定するなどして評価します。
超音波検査やレントゲン検査で腎臓を確認する
血液や尿だけでなく、腎臓の形や大きさを確認する画像検査が行われることもあります。
超音波検査
腹部超音波では、
- 腎臓の大きさ
- 左右差
- 内部構造
- 腎盂の拡張
- 結石
- 腫瘤
- 尿管や膀胱の異常
などを確認します。
尿路感染症の診断管理に関する日本獣医腎泌尿器学会誌の資料でも、超音波検査は尿石や腫瘤などの尿路異常を確認する機会として扱われています。
レントゲン検査
レントゲン検査では、
- 腎臓の大きさ・輪郭
- 尿路結石
- その他の腹部異常
などを確認するために利用されることがあります。
すべての慢性腎臓病の犬に画像検査が必要というわけではなく、症状や血液・尿検査の結果によって選択されます。
複数の検査結果から総合的に診断する
慢性腎臓病の診断で最も大切なのが、一つの検査値に頼らないことです。
例えば、
クレアチニンが高い
だけでは、脱水などの影響も考える必要があります。
反対に、クレアチニンが基準範囲内であっても、
- 尿濃縮能の低下
- SDMAの変化
- タンパク尿
- 画像上の腎臓異常
などが確認される場合があります。国内の症例報告でも、クレアチニン、SDMA、尿比重、UPC、血圧などを組み合わせてIRISステージを評価しています。
慢性腎臓病を調べる基本的な流れ
多飲多尿・体重減少などに気づく
↓
問診・身体検査
↓
血液検査
↓
尿検査
↓
血圧測定
↓
必要に応じて超音波・レントゲン
↓
異常が持続しているか確認
↓
慢性腎臓病を診断・ステージ評価
そのため、
「クレアチニンが正常だから腎臓病ではない」
「SDMAが高かったから慢性腎臓病だ」
と検査結果を一つだけ見て自己判断しないことが大切です。
次の**H2-9「犬の慢性腎臓病のステージと進行」**では、こうした検査結果を使って行われるIRISのステージ分類について詳しく説明します。
覚えておきたいポイント
- 多飲多尿は慢性腎臓病だけの症状ではない
- 糖尿病やクッシング症候群などでも多飲多尿が起こる
- 尿路感染症では頻尿と多尿を区別することが大切
- 未避妊の雌犬では子宮蓄膿症にも注意する
- CKDでは血液検査と尿検査を組み合わせて評価する
- クレアチニン・BUN・SDMAは一つの数値だけで判断しない
- 尿比重やタンパク尿も重要
- 血圧測定や画像検査が必要になる場合がある
- 最終的な診断やステージ評価は獣医師が総合的に行う
犬の慢性腎臓病のステージと進行
犬の慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の働きがどの程度低下しているかによって、IRIS(International Renal Interest Society)のステージ1~4に分類されます。IRISでは、慢性腎臓病と診断された犬について、安定した状態でのクレアチニンやSDMAなどを用いてステージを評価し、さらにタンパク尿と血圧によるサブステージ評価を行います。
ただし、ここで最も大切なのは、飼い主さんが血液検査の数値だけを見てステージを自己判断しないことです。脱水や筋肉量などの影響も受けるため、血液検査・尿検査・血圧・症状などを総合して獣医師が判断します。国内の犬の腎機能評価でも、水和状態を補正したうえで、クレアチニン・SDMA・UPC・血圧などを組み合わせてIRIS分類を行っています。
IRISステージの早見表
| ステージ | おおまかな状態 | 主な管理の考え方 |
|---|---|---|
| ステージ1 | 腎臓の異常はあるが腎機能低下が軽い段階 | 原因検索・経過観察 |
| ステージ2 | 軽度の腎機能低下 | 食事や合併症管理を検討 |
| ステージ3 | 中等度の腎機能低下 | 症状・脱水・高血圧などを積極的に管理 |
| ステージ4 | 重度の腎機能低下 | 尿毒症症状などを含めた集中的な管理 |
※実際のステージ判定は獣医師が行います。
IRISによる慢性腎臓病のステージ分類
IRIS分類は、慢性腎臓病の重症度を共通の基準で整理し、治療や経過観察に役立てるための分類です。
ステージ分類では、基本的にクレアチニンとSDMAを参考にします。IRISは、できれば両方を用い、安定した状態で評価することを推奨しています。
その後、
- 尿タンパク/クレアチニン比(UPC)
- 血圧
によってサブステージを評価します。
つまり、
CKDを診断
↓
クレアチニン・SDMAでステージ評価
↓
UPCでタンパク尿を評価
↓
血圧を評価
↓
治療方針を検討
という流れです。
ステージ1|腎臓の異常が確認される初期段階
ステージ1は、血液中のクレアチニンが大きく上昇していなくても、腎臓に何らかの異常が確認される段階です。
例えば、
- SDMAが持続的に高い
- 尿を十分に濃縮できない
- タンパク尿がある
- 腎臓の形に異常がある
- 血圧が高い
などが手がかりになることがあります。国内の犬の症例でも、低比重尿や血圧などを含めてIRISステージ1と評価した例があります。
この段階では、目立った症状がない犬もいます。
だからこそ、健康診断による早期発見が重要になります。
ステージ2|軽度の腎機能低下がみられる段階
ステージ2では、腎機能の低下がより明確になりますが、症状が軽い犬やほとんど症状がない犬もいます。
例えば、
- 多飲多尿
- 食欲が少し落ちる
- 体重が少し減る
などがみられる場合があります。
この段階では、腎機能の状態だけでなく、
- タンパク尿
- 血圧
- リン
- 体重
- 食欲
などを確認しながら管理します。
特に食事療法については、このあとのH2-11で詳しく説明します。
ステージ3|中等度の腎機能低下がみられる段階
ステージ3では、腎機能低下が中等度まで進み、症状が目立ちやすくなる犬もいます。
例えば、
- 食欲低下
- 嘔吐
- 体重減少
- 脱水
- 元気消失
- 貧血
などです。
ただし、同じステージ3でも症状の強さには個体差があります。
そのため、
「ステージ3=必ず重い症状がある」
とは限りません。
獣医師は、腎機能の数値だけでなく、体調、血圧、UPC、リン、カリウム、貧血なども確認して治療内容を調整します。IRISでもステージに加えてタンパク尿・血圧によるサブステージ評価を重視しています。
ステージ4|重度の腎機能低下がみられる段階
ステージ4では、腎機能が大きく低下し、尿毒症による症状が現れる可能性が高くなる段階です。
例えば、
- 強い食欲不振
- 嘔吐
- 体重減少
- 脱水
- 元気消失
- 貧血
- 口腔内の異常
- 神経症状
などがみられることがあります。
この段階では、腎臓病そのものだけでなく、生活の質(QOL)をできるだけ保つことも治療の大切な目的になります。
水分管理、食事、吐き気の管理、貧血や電解質異常など、犬の状態に応じた治療を組み合わせます。
尿タンパクや血圧も治療方針の判断材料になる
IRIS分類では、ステージ1~4だけではなく、タンパク尿と血圧によるサブステージ分類も重要です。
タンパク尿
尿タンパク/クレアチニン比(UPC)を使って、尿中にタンパク質がどの程度出ているかを評価します。
タンパク尿が持続している場合は、腎臓病の進行や治療方針を考えるうえで重要な情報になります。
血圧
慢性腎臓病では高血圧を伴うことがあります。
高血圧は、
- 腎臓
- 目
- 脳
- 心臓
などに影響する可能性があるため、必要に応じて治療します。
ステージ評価のイメージ
慢性腎臓病を診断
↓
クレアチニン・SDMAでステージ1~4を評価
↓
UPCでタンパク尿を確認
↓
血圧を確認
↓
症状・食欲・体重・電解質なども確認
↓
治療方針を決定
つまり、「クレアチニン○○だからステージ○」だけで完結するものではないと考えておくとよいでしょう。
犬の慢性腎臓病の治療法
慢性腎臓病の治療では、失われた腎機能を完全に元に戻すことよりも、残っている腎機能をできるだけ維持し、症状や合併症を管理することが中心になります。
治療内容はIRISステージだけでなく、
- 食欲
- 脱水
- タンパク尿
- 高血圧
- リン
- カリウム
- 貧血
- 嘔吐
などによって変わります。IRISも、ステージとサブステージに応じた個別管理を推奨しています。
主な治療の早見表
| 問題 | 主な対応 |
|---|---|
| 脱水 | 水分補給・輸液 |
| 高血圧 | 血圧を下げる治療 |
| タンパク尿 | 尿タンパクを減らす治療 |
| 食欲低下・吐き気 | 制吐・食欲管理など |
| 高リン血症 | 食事療法やリン管理 |
| 貧血 | 状態に応じた治療 |
| 栄養低下 | 食事内容・摂取量を調整 |
失われた腎機能を元に戻すことが難しい場合が多い
慢性腎臓病では、一度大きく失われた腎機能を完全に元の状態へ戻すことは難しい場合が多いです。
しかし、
「元に戻らない=治療する意味がない」
ということではありません。
治療の目的は、
- 腎臓への負担を減らす
- 脱水を防ぐ
- 食欲を維持する
- タンパク尿や高血圧を管理する
- 尿毒症の症状を軽減する
- 病気の進行をできるだけ抑える
- 生活の質を保つ
ことです。
慢性腎臓病は、長く付き合いながら管理していく病気と考えると分かりやすいでしょう。
病気のステージや症状に合わせて治療する
慢性腎臓病の治療は、すべての犬に同じではありません。
例えば、
ステージ1~2で症状が少ない犬
→ 食事・血圧・タンパク尿などを中心に管理
ステージ3~4で症状が強い犬
→ 水分管理、吐き気、食欲、電解質、貧血なども含めて治療
といったように、状態によって重点が変わります。
IRISのガイドラインも、CKDをステージ分類したうえで個々の問題に応じて治療を調整する考え方を採用しています。
脱水があれば水分補給を行う
慢性腎臓病では、多尿によって水分を失いやすく、脱水を起こすことがあります。
脱水がある場合には、状態に応じて、
- 飲水の確保
- 食事からの水分摂取
- 皮下輸液
- 静脈内輸液
などが検討されます。
ただし、すべての慢性腎臓病の犬に毎日点滴が必要というわけではありません。
輸液量が多すぎれば別の負担になる可能性もあるため、犬の脱水状態、心臓病の有無、尿量などを確認して獣医師が判断します。
特に自宅で皮下輸液を行う場合は、必ず動物病院で具体的な方法と量を指導してもらいましょう。
高血圧やタンパク尿に対する治療
慢性腎臓病では、高血圧やタンパク尿が病気の進行に関係する重要な問題になります。
高血圧
血圧が高い状態が続くと、腎臓だけでなく目や脳などにも障害を起こす可能性があります。
そのため、持続的な高血圧が確認された場合は、血圧を下げる薬が使用されることがあります。
タンパク尿
尿中にタンパク質が過剰に漏れている場合は、それを減らすための治療が行われることがあります。
ただし、尿路感染症などでもタンパク尿がみられる場合があるため、原因を確認してから治療します。
IRISがUPCと血圧によるサブステージ分類を設けているのも、この2つがCKD管理で重要だからです。
吐き気や食欲低下などの症状を抑える治療
慢性腎臓病が進行すると、吐き気や食欲低下が問題になることがあります。
食べられない状態が続くと、
摂取カロリー不足
↓
体重・筋肉量減少
↓
体力低下
につながります。
そのため、状態に応じて、
- 吐き気を抑える治療
- 嘔吐を抑える治療
- 食欲を改善するための治療
- 胃腸症状への対応
- 栄養管理
などを行います。
大切なのは、
「腎臓病用療法食を食べないから、そのまま何も食べさせない」
という状況を長く続けないことです。
食欲が低下した場合は、食事内容も含めて獣医師へ相談しましょう。
定期検査を受けながら治療内容を調整する
慢性腎臓病は進行する可能性があるため、治療を始めた後も定期検査が必要です。
主に、
- クレアチニン
- BUN
- SDMA
- リン
- カリウム
- 貧血
- 尿比重
- UPC
- 血圧
- 体重・筋肉量
などを確認します。
長期管理の流れ
慢性腎臓病を診断
↓
IRISステージ・サブステージを評価
↓
食事・水分・薬などを調整
↓
家庭で食欲・水・尿・体重を観察
↓
定期的に血液・尿・血圧を再評価
↓
病状に合わせて治療内容を変更
慢性腎臓病では、一度決めた治療をずっと同じ内容で続けるとは限りません。
検査値や体調の変化を見ながら、獣医師と相談して治療を調整していきます。
覚えておきたいポイント
- IRISではCKDをステージ1~4に分類する
- ステージ判定にはクレアチニンやSDMAなどを用いる
- 安定した状態で評価することが重要
- タンパク尿と血圧でもサブステージ評価を行う
- 数値だけを見て飼い主さんがステージを自己判断しない
- 慢性腎臓病では失った腎機能の完全な回復が難しい場合が多い
- 治療では残った腎機能の維持と症状・合併症の管理を目指す
- 脱水、高血圧、タンパク尿、食欲低下などを個別に治療する
- 定期検査を行い、病状に合わせて治療を調整する
慢性腎臓病の犬の食事管理
犬の慢性腎臓病では、食事管理が治療の大切な柱の一つになります。特にリンの摂取量、タンパク質の量と質、ナトリウム、摂取カロリーなどを病気のステージや検査結果に合わせて調整することが重要です。
ただし、「腎臓病ならとにかくタンパク質を減らす」「塩分をできるだけゼロにする」といった自己流の食事制限はおすすめできません。必要以上の制限によって、かえって食欲低下や筋肉量減少につながることがあります。
国内の獣医栄養学の資料でも、慢性腎臓病の食事療法ではリン制限が重要であり、タンパク質やナトリウムは病期や状態を考慮して管理することが示されています。
慢性腎臓病の食事管理早見表
| 管理項目 | 基本的な考え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| リン | 過剰摂取を避ける | ステージや血中リン濃度に応じて調整 |
| タンパク質 | 適切な量と質を確保 | 自己判断で極端に減らさない |
| ナトリウム | 過剰摂取を避ける | 極端な制限は自己判断しない |
| カロリー | 必要量を確保する | 体重・筋肉量減少に注意 |
| 水分 | 十分に摂取できる環境にする | 飲み水を制限しない |
| 療法食 | 病状に合うものを選ぶ | 獣医師と相談 |
腎臓病では食事管理が重要
慢性腎臓病では、腎臓の働きが低下すると、リンや老廃物などを十分に排出しにくくなります。
そのため食事療法では、
- 腎臓への負担を軽減する
- リン・カルシウム代謝の異常を抑える
- 尿毒症の症状を軽減する
- 十分な栄養を確保する
- 体重や筋肉量を維持する
ことを目指します。
国内の獣医栄養学文献でも、慢性腎臓病に対する食事療法には複数の目的があり、特にリン制限は重要な管理項目とされています。
ただし、すべての慢性腎臓病の犬に、診断されたその日から同じ療法食が必要になるわけではありません。病期や検査値、食欲などを見ながら判断します。
リンの摂取量に注意する
慢性腎臓病の食事管理で特に重要なのがリンの管理です。
腎機能が低下すると、体内からリンを十分に排泄しにくくなります。血液中のリンが高くなると、カルシウム・リン代謝に異常が起こり、腎性二次性上皮小体機能亢進症などにつながることがあります。
国内の獣医栄養学文献では、慢性腎臓病の食事療法でリン制限の有用性が特に重視されているとされています。
リン管理の考え方
腎機能が低下
↓
リンを排出しにくくなる
↓
血中リンが上昇することがある
↓
食事中のリンを調整
↓
必要に応じてリン吸着剤なども検討
食事だけで血中リンを十分に管理できない場合は、獣医師の判断でリン吸着剤が使われることもあります。
ただし、市販フードや食材のリン量を見て飼い主さんが独自に極端な制限をするのではなく、血液検査のリン値やIRISステージなどをもとに獣医師へ相談してください。
タンパク質は自己判断で極端に制限しない
「腎臓病ならタンパク質を減らしたほうがよい」と聞いたことがある方もいるかもしれません。
確かに、タンパク質を適切に調整することで、尿毒症に関係する窒素性老廃物の負担を減らす目的があります。
しかし、
タンパク質を減らせば減らすほどよい
というわけではありません。
過度に制限すると、
- 筋肉量が減る
- 体重が落ちる
- 体力が低下する
- 栄養状態が悪化する
可能性があります。
国内の獣医栄養学文献でも、低タンパク食の効果についてはリン制限ほど一貫したエビデンスがあるわけではなく、病期や栄養状態を考慮する必要があるとされています。
特に高齢犬や痩せている犬では、必要なタンパク質とカロリーを確保しながら腎臓に配慮することが大切です。
ナトリウムなどにも配慮する
慢性腎臓病用の療法食では、ナトリウム量にも配慮されています。
ただし、ナトリウムについては、「できるだけ少なくすればよい」と単純には言えません。
国内の獣医学文献では、犬猫の腎臓病に伴う高血圧に対するナトリウム制限の有効性は明確でない部分もあり、実際の高血圧管理では薬物治療が中心になる場合があります。
そのため、
- 人間用の加工食品
- 塩分の多いおやつ
- ハム・ソーセージ類
- 味付けした肉や魚
などを安易に与えるのは避けつつ、獣医師の指導なしに極端な減塩食へ変更しないことが大切です。
十分なカロリーと栄養を確保する
慢性腎臓病では、食欲低下や吐き気によって食事量が減ることがあります。
その結果、
食事量低下
↓
摂取カロリー不足
↓
体重・筋肉量低下
↓
体力・生活の質が低下
という悪循環になることがあります。
そのため、療法食の成分だけを見るのではなく、実際にどれだけ食べられているかも非常に重要です。
家庭で確認したいこと
- 1日の食事量
- 食べ残し
- 体重
- 筋肉量
- 食欲
- 嘔吐・吐き気
- 好んで食べるフード
慢性腎臓病では、栄養状態の維持・改善も治療目標の一つです。
腎臓病用療法食は獣医師と相談して選ぶ
腎臓病用療法食は、
- リン
- タンパク質
- ナトリウム
- 脂肪酸
- カロリー
などを腎臓病に配慮して調整した食事です。
ただし、療法食にもさまざまな製品があり、慢性腎臓病のすべてのステージに同じものが最適とは限りません。国内の獣医栄養学文献でも、腎臓病療法食はすべての病期で一律に必要というわけではないと説明されています。
そのため、
血液検査・尿検査・IRISステージ・食欲・体重
↓
獣医師と相談
↓
愛犬に合った療法食を選ぶ
という流れが基本です。
市販の「腎臓ケア」と書かれたフードと、獣医師の診療を前提とした療法食は同じとは限らないため、購入前に確認しましょう。
食べないときは無理に療法食だけにこだわらない
慢性腎臓病の犬では、療法食を嫌がって食べなくなることがあります。
そんなとき、
「腎臓病だから、この療法食以外は絶対に食べさせてはいけない」
と考えて、長時間何も食べない状態を続けるのは望ましくありません。
特に食欲低下が続いている犬では、まず十分なカロリーを確保することが重要になる場合があります。
例えば、
- フードを少し温める
- ウェットタイプを検討する
- 食感や香りの違う療法食を試す
- 少量ずつ複数回に分ける
- 吐き気がないか獣医師に確認する
などを検討できます。
ただし、自己判断で人間の食べ物や高リン・高塩分の食品を大量に与えるのではなく、「何なら食べられるか」を獣医師へ相談するのが安全です。
慢性腎臓病の犬に自宅でできるケア
慢性腎臓病は、動物病院での治療だけでなく、家庭での水分管理・食事・体重・排尿状態の観察が長期管理にとても重要です。
特に慢性腎臓病では、多尿によって水分を失いやすいため、水をいつでも飲める環境を整えることが基本です。
自宅で毎日の変化を記録しておけば、病気の進行や体調悪化を早く見つける助けにもなります。
自宅ケア早見表
| 観察・管理項目 | 家庭でできること |
|---|---|
| 水分 | 新鮮な水をいつでも用意 |
| 飲水量 | 普段との変化を記録 |
| 尿 | 量・回数・色などを観察 |
| 食欲 | 毎日の摂取量を記録 |
| 体重 | 定期的に測定 |
| 薬 | 指示どおり投与 |
| 療法食 | 獣医師と相談して継続 |
| 通院 | 血液・尿・血圧などを定期確認 |
いつでも新鮮な水を飲めるようにする
慢性腎臓病の犬では、飲み水を制限しないことが非常に重要です。
腎臓の尿濃縮能力が低下すると、尿として多くの水分を失うため、それを補うために飲水量が増えます。
ここで、
「水を飲みすぎるから少なくしよう」
と水を制限すると、脱水を悪化させる可能性があります。
水を飲みやすくする工夫
- 水の器を複数置く
- いつでも新鮮な水に交換する
- 愛犬が普段いる場所の近くにも水を置く
- 高齢犬では歩かなくても飲める場所に置く
- 獣医師と相談してウェットフードなどからも水分を補う
水分摂取は腎臓病管理の基本なので、自己判断による飲水制限は避けましょう。
飲水量と尿の変化を観察する
慢性腎臓病では、多飲多尿の変化が病状を確認する手がかりになります。
例えば、
- 水を飲む量がさらに増えた
- 急に水を飲まなくなった
- 尿量が増えた
- 尿が急に減った
- 尿が出ない
- 排尿回数が変わった
などを観察します。
家庭での記録例
| 日付 | 飲水量 | 尿 | 食欲 | 元気 |
|---|---|---|---|---|
| 8/1 | ○mL | 普段通り | 完食 | ○ |
| 8/2 | ○mL | 少し多い | 8割 | ○ |
| 8/3 | ○mL | 普段より少ない | 半分 | △ |
特に尿がほとんど出ない・まったく出ない場合は、定期診察まで待たず動物病院へ相談してください。
食欲・体重・元気を記録する
慢性腎臓病の進行を家庭で観察するうえで、
食欲+体重+元気
の3つは非常に分かりやすい指標です。
例えば、
- 食事量が少しずつ減る
- 1か月で体重が落ちる
- 筋肉が減ってきた
- 寝ている時間が増えた
- 散歩へ行きたがらない
といった変化です。
一つだけでは判断できなくても、
食欲低下+体重減少+元気低下
が重なっている場合は、病状の変化を疑う材料になります。
定期診察で「最近どうですか?」と聞かれたときにも、記録があれば具体的に伝えられます。
薬や療法食は獣医師の指示に従う
慢性腎臓病では、
- 高血圧
- タンパク尿
- 高リン血症
- 吐き気
- 貧血
などに対して薬や食事療法が行われることがあります。
症状が落ち着いたからといって、
薬を勝手に中止する
療法食を急に普通食へ戻す
サプリメントだけに変更する
といったことは避けましょう。
また、食べない場合も、ただ療法食を続けるのではなく獣医師に相談して調整することが重要です。
脱水の兆候や体調変化に注意する
慢性腎臓病の犬は、多尿や嘔吐、食欲低下などによって脱水しやすくなる場合があります。
注意したいのは、
- 水を飲めない
- 嘔吐が続く
- 食欲がない
- ぐったりしている
- 尿量が大きく変化した
などです。
「皮膚をつまんで戻る速度」だけで脱水を正確に判断するのは難しく、特に高齢犬では皮膚の弾力が低下していることもあります。
気になる変化がある場合は、家庭だけで判断せず動物病院へ相談しましょう。
定期的な通院と検査を続ける
慢性腎臓病は、症状が落ち着いていても定期的な再評価が必要な病気です。
定期検査では、
- クレアチニン
- BUN
- SDMA
- リン
- カリウム
- 貧血
- 尿比重
- UPC
- 血圧
- 体重・筋肉量
などを確認します。
自宅管理と動物病院の連携
家庭で毎日観察
↓
水・尿・食欲・体重を記録
↓
定期診察で獣医師へ伝える
↓
血液・尿・血圧などを確認
↓
必要に応じて食事・薬・水分管理を調整
↓
再び家庭で観察
この繰り返しが、慢性腎臓病の長期管理では重要です。
自宅ケアチェックリスト
- □ 新鮮な水をいつでも飲める
- □ 水を自己判断で制限していない
- □ 飲水量を確認している
- □ 尿量・排尿回数を観察している
- □ 食事量を確認している
- □ 定期的に体重を測っている
- □ 筋肉量の減少にも注意している
- □ 処方薬を指示どおり与えている
- □ 療法食について獣医師と相談している
- □ 嘔吐や元気低下を見逃していない
- □ 定期検査を継続している
慢性腎臓病を悪化させないための管理
犬の慢性腎臓病は、生活管理だけで完全に予防したり、進行を必ず止めたりできる病気ではありません。大切なのは、残っている腎機能をできるだけ維持し、脱水・高血圧・タンパク尿・栄養不良などの合併症を早く見つけて管理することです。
そのためには、定期的な血液検査や尿検査だけでなく、血圧、食欲、体重、筋肉量、飲水量なども含めて経過を見ていく必要があります。国内の獣医学資料でも、慢性腎臓病ではクレアチニンやSDMAだけでなく、UPC、血圧などを組み合わせて評価することが重視されています。
悪化を防ぐために確認したい項目
| 管理項目 | 確認すること | 目的 |
|---|---|---|
| 血液検査 | クレアチニン・BUN・SDMA・リンなど | 腎機能や合併症を確認 |
| 尿検査 | 尿比重・タンパク尿など | 腎臓や尿路の状態を確認 |
| 血圧 | 高血圧の有無 | 腎臓や全身への負担を確認 |
| 水分 | 飲水量・脱水 | 水分不足を防ぐ |
| 体重・筋肉 | 減少していないか | 栄養状態を維持 |
| 食事 | 療法食・食事量 | 腎臓に配慮しながら栄養を確保 |
| 薬 | 正しく投与できているか | 合併症や症状を管理 |
定期的な血液検査・尿検査を受ける
慢性腎臓病では、一度診断された後も定期的な血液検査と尿検査が重要です。
血液検査では、
- クレアチニン
- BUN
- SDMA
- リン
- カリウム
- 貧血の有無
などを確認します。
一方、尿検査では、
- 尿比重
- タンパク質
- 尿沈渣
- 必要に応じてUPC
などを調べます。
例えば、「前回とクレアチニンは大きく変わっていないけれど、タンパク尿が増えてきた」という場合もあります。逆に、食欲や元気に変化がなくても検査値が変化していることがあります。
そのため、症状がない=進行していないとは限りません。
定期的な検査によって、小さな変化を早めに見つけることが大切です。
血圧や尿タンパクも確認する
慢性腎臓病では、高血圧やタンパク尿も重要な管理項目です。
タンパク尿が持続すると腎臓への負担が増える可能性があります。また、高血圧が続くと腎臓だけでなく、目や脳などの臓器にも影響することがあります。
そのため、
血液検査だけ
ではなく、
尿タンパク+血圧
もあわせて確認することが重要です。
国内の犬の腎機能評価でも、IRIS分類に基づきUPCや血圧を組み合わせて評価しています。
ただし、一度だけ血圧が高かったから高血圧と決めるわけではありません。動物病院での緊張などでも血圧は上がるため、状況に応じて複数回測定することがあります。
脱水を防ぐ
慢性腎臓病の犬では、腎臓の尿濃縮能力が低下し、多尿によって水分を失いやすくなることがあります。
そのため、脱水を防ぐことは重要です。
家庭では、
- 新鮮な水をいつでも飲めるようにする
- 水の器を複数置く
- 飲水量の変化を記録する
- ウェットフードなどから水分を取る方法を相談する
といった工夫ができます。
重要なのは、「水をたくさん飲むから減らそう」と自己判断で飲水を制限しないことです。
状態によっては皮下輸液などが必要になる場合もありますが、輸液量や頻度は犬ごとに異なります。慢性腎疾患の皮下輸液についても、過剰な水分やナトリウム投与に注意して管理する必要があることが国内文献で解説されています。
適正体重と筋肉量を維持する
慢性腎臓病の犬では、体重だけでなく筋肉量の減少にも注意が必要です。
病気が進行すると、
- 食欲が落ちる
- 必要なカロリーを取れない
- タンパク質や筋肉が失われる
- 体重が減る
ということがあります。
そのため、
- 定期的に体重を測る
- 背骨や腰骨が目立っていないか確認する
- 太ももの筋肉が落ちていないか見る
- 食事量も記録する
とよいでしょう。
腎臓病だからといって、極端にタンパク質を減らして筋肉まで落としてしまうのは望ましくありません。 国内の栄養学文献でも、初期腎臓病ではタンパク質を極端に下げない療法食の考え方も広がっています。
腎臓に配慮した食事を続ける
慢性腎臓病では、長期的な食事管理が重要です。
特に、
- リン
- タンパク質
- ナトリウム
- カロリー
- 水分
などを病期に合わせて調整します。
国内のペット栄養学文献でも、慢性腎臓病の食事療法ではリン・タンパク質・ナトリウムなどの管理が扱われており、食事療法が病状管理に重要とされています。
特にリン管理は重要で、病気が進行して食事だけで血中リンを十分にコントロールできない場合は、リン吸着剤などが検討されることもあります。
ただし、
「腎臓病だからこれだけ食べさせれば大丈夫」
という一つの正解があるわけではありません。
ステージ、血中リン、食欲、体重、ほかの病気などに応じて獣医師と相談しましょう。
薬を自己判断で中止・変更しない
慢性腎臓病では、高血圧やタンパク尿、吐き気、高リン血症などに対して薬を使用する場合があります。
体調がよくなったからといって、
- 薬を突然やめる
- 投与回数を減らす
- 飲ませる量を変更する
- サプリメントだけに置き換える
といったことは避けましょう。
逆に、検査値が悪くなったからといって飼い主さん自身の判断で薬を増量することも適切ではありません。
薬の効果と副作用を確認しながら、獣医師が調整することが大切です。
体調の変化があれば早めに獣医師へ相談する
慢性腎臓病の犬でも、体調が急に悪化することがあります。
特に、
- 食欲が急に落ちた
- 嘔吐が続く
- 水を飲まなくなった
- 尿量が急に減った
- ぐったりしている
- 急激に体重が減った
といった変化には注意しましょう。
長期管理の基本
定期検査
↓
食事・水分・薬を調整
↓
家庭で体調を観察
↓
変化があれば早めに相談
↓
再検査で状態を確認
慢性腎臓病では、この繰り返しが大切です。
犬の慢性腎臓病に関するよくある質問
慢性腎臓病と診断されると、「治るの?」「水は飲ませていいの?」「療法食を食べないときはどうすればいい?」など、さまざまな疑問が出てくると思います。
慢性腎臓病は、IRISステージ、タンパク尿、血圧、食欲、体重、治療への反応などによって経過が異なる病気です。
ここでは飼い主さんが特に気になりやすい疑問をまとめます。
よくある質問早見表
| 質問 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 治る? | 失われた腎機能の回復は難しい場合が多い |
| 水を飲むのはなぜ? | 尿を濃くする力が低下するため |
| 水を飲ませていい? | 原則として制限しない |
| 食べてはいけないものは? | 高リン・高塩分などに注意 |
| 療法食を食べない | 長く食べない状態を避けて相談 |
| 点滴は一生? | 状態によって異なる |
| 散歩できる? | 体調に合わせて調整 |
| 長生きできる? | ステージや合併症などで大きく異なる |
犬の慢性腎臓病は治りますか?
慢性腎臓病では、一度大きく失われた腎機能を完全に元通りにすることは難しい場合が多いです。
ただし、
治らない=何もできない
ということではありません。
治療では、
- 残っている腎機能を維持する
- 脱水を防ぐ
- 高血圧やタンパク尿を管理する
- 食欲や吐き気を管理する
- リンなどを調整する
- 栄養状態を維持する
ことを目指します。
食事療法などによって症状の緩和や病期の進行を遅らせることが期待されるとする国内獣医栄養学資料もあります。
腎臓病になると水をたくさん飲むのはなぜですか?
慢性腎臓病では、腎臓が尿を濃くする能力を失っていくことがあります。
すると、
薄い尿が多く出る
↓
体から水分が失われる
↓
失った水分を補うために水を飲む量が増える
という流れになります。
このため、慢性腎臓病の初期から多飲多尿がみられる場合があります。
慢性腎臓病の犬に水をたくさん飲ませても大丈夫ですか?
基本的には、新鮮な水をいつでも自由に飲めるようにしてください。
慢性腎臓病の犬では多尿によって水分を失いやすいため、飲水制限を行うと脱水につながる可能性があります。
そのため、
「水を飲みすぎだから器を片づけよう」
という対応は避けましょう。
ただし、心臓病など別の病気が併存している犬では水分・輸液管理が複雑になることがあります。その場合は担当獣医師の指示を優先してください。
腎臓病の犬に食べさせてはいけないものはありますか?
「これを一口食べたら危険」という食品一覧よりも、慢性腎臓病では食事全体の栄養バランスを見ることが重要です。
一般的には、
- リンの多い食品を大量に与える
- 塩分の多い加工食品を与える
- 高タンパクの食品を自己判断で大量に追加する
- 人間用の味付け食品を与える
といったことは避けた方がよいでしょう。
特にリン制限は、慢性腎臓病の食事管理で重要な項目の一つです。国内文献でも、過剰なリン摂取とCKD進行の関係や、リン制限の重要性が解説されています。
ただし、病期によって必要な食事内容は異なるため、「○○は絶対禁止」と一律に決めない方が適切です。
療法食を食べてくれない場合はどうすればよいですか?
療法食を食べない場合は、何日も食べない状態を続けるより、早めに獣医師へ相談してください。
例えば、
- ウェットタイプを試す
- フードを少し温める
- 別の腎臓病用療法食を試す
- 少量ずつ複数回与える
- 吐き気や口腔内の異常がないか確認する
などの方法を検討できます。
重要なのは、
「療法食を食べないから何も食べさせない」
としないことです。
慢性腎臓病では栄養状態や筋肉量の維持も重要です。手作り食についても、栄養バランスを整えることは難しいため、自己流ではなく獣医師や栄養管理に詳しい専門家への相談が安心です。
点滴はずっと続ける必要がありますか?
すべての慢性腎臓病の犬が一生点滴を続けるわけではありません。
必要性は、
- IRISステージ
- 脱水状態
- 飲水量
- 尿量
- 食欲
- 全身状態
- 心臓などほかの病気
によって異なります。
状態によっては皮下輸液を家庭で行うこともありますが、輸液量や頻度は犬によって異なります。過剰な輸液も問題になる可能性があるため、量や頻度を自己判断で変更しないことが重要です。国内でも慢性腎疾患での皮下輸液について、電解質や水分の過不足を考慮した管理が解説されています。
慢性腎臓病の犬は散歩できますか?
状態が安定していれば、無理のない範囲で散歩できる犬もいます。
適度な活動は、
- 筋肉量維持
- 体重管理
- 気分転換
- 生活の質の維持
にも役立ちます。
ただし、
- 貧血が強い
- 脱水している
- 食欲がない
- ぐったりしている
- 嘔吐している
などの場合は無理に運動させないでください。
「毎日○分」と一律に決めるより、愛犬のステージや体調に合わせて獣医師に相談しましょう。
慢性腎臓病の犬は長生きできますか?
慢性腎臓病と診断されても、余命を「あと○年」と一律に示すことはできません。
予後には、
- IRISステージ
- 腎機能低下の進行速度
- タンパク尿
- 血圧
- リン
- 貧血
- 食欲
- 体重・筋肉量
- 治療への反応
- ほかの病気
など、さまざまな要素が関係します。
例えば、同じ「慢性腎臓病」という診断でも、
| 犬A | 犬B |
|---|---|
| 早期ステージ | 進行したステージ |
| 食欲・体重が安定 | 食欲低下・体重減少あり |
| タンパク尿なし | 強いタンパク尿あり |
| 血圧安定 | 高血圧あり |
| ほかの持病なし | 複数の持病あり |
では、経過が同じとは限りません。
そのため、インターネット上の「平均寿命○年」という数字を愛犬にそのまま当てはめるのはおすすめできません。
現在のIRISステージや検査値の推移、食欲、体重、合併症などを把握している担当獣医師に、愛犬自身の見通しを確認することが最も大切です。
慢性腎臓病を長期管理するためのチェックリスト
- □ 定期的に血液検査を受けている
- □ 尿検査も受けている
- □ 血圧を必要に応じて確認している
- □ タンパク尿を確認している
- □ 新鮮な水をいつでも飲めるようにしている
- □ 飲水量・尿量を観察している
- □ 体重と筋肉量を確認している
- □ 食事量を記録している
- □ 療法食について獣医師と相談している
- □ 処方薬を自己判断で変更していない
- □ 食欲低下・嘔吐・元気低下を見逃していない
- □ 急激な変化があれば予定の診察日を待たず相談している
覚えておきたいポイント
- 慢性腎臓病は生活管理だけで完全に予防・停止できる病気ではない
- 血液・尿・血圧などを定期的に確認する
- 脱水を避け、飲水を自己判断で制限しない
- 体重だけでなく筋肉量にも注意する
- 腎臓に配慮した食事を継続する
- 療法食を食べない状態を放置しない
- 点滴の必要性・頻度は犬ごとに異なる
- 散歩は体調に合わせて調整する
- 余命をステージだけから一律に判断しない
慢性腎臓病は早期発見と継続的な管理が大切
犬の慢性腎臓病は、腎臓の機能が徐々に低下していく病気です。一度失われた腎機能を完全に元へ戻すことは難しい場合が多いため、できるだけ早く異常に気づき、残っている腎機能を維持しながら長期的に管理していくことが大切です。
特に「水を飲む量が増えた」「尿量が増えた」「食欲が落ちた」「体重が減ってきた」といった変化は、飼い主さんが家庭で気づける重要なサインです。
慢性腎臓病と診断された後も、IRISステージだけを見るのではなく、血液検査、尿検査、血圧、タンパク尿、食欲、体重などを継続して確認し、愛犬の状態に合わせた治療や食事管理を続けていきましょう。
今日覚えておきたい重要ポイント3つ
この記事で特に覚えておきたいポイントは、次の3つです。
- ① 多飲多尿は慢性腎臓病の重要なサイン
水を飲む量や尿量が以前より増えていないか、日頃から確認しましょう。ただし、糖尿病やクッシング症候群などでも多飲多尿は起こるため、症状だけで腎臓病と判断しないことが大切です。 - ② 早期発見には血液検査だけでなく尿検査も重要
クレアチニン、BUN、SDMAなどに加えて、尿比重、タンパク尿、血圧などを組み合わせて腎臓の状態を評価します。 - ③ 診断後は食事・水分・薬・定期検査による継続管理が大切
腎臓病用療法食や水分管理などを取り入れながら、体調や検査結果に合わせて治療内容を調整していきます。
特に中高齢犬では、目立った症状がなくても健康診断で腎臓の異常が見つかることがあります。元気だから大丈夫と考えず、定期的な健康チェックを続けることが早期発見につながります。
慢性腎臓病の症状・原因・治療法早見表
慢性腎臓病について、これまで解説してきた内容を簡単に整理しておきましょう。
| 項目 | 主な内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 初期症状 | 多飲、多尿、食欲低下、体重減少など | 初期には目立たない場合もある |
| 進行時の症状 | 食欲不振、嘔吐、脱水、体重・筋肉量減少など | 尿毒症症状が現れることもある |
| 主な原因・背景 | 加齢、腎疾患、感染、先天性・遺伝性疾患など | 原因不明の場合もある |
| 検査 | 血液、尿、血圧、超音波検査など | 複数の検査から総合判断 |
| ステージ | IRISステージ1~4 | 獣医師が安定した状態で評価 |
| 食事管理 | リンなどを調整した食事 | 極端な自己流制限は避ける |
| 水分管理 | 自由に新鮮な水を飲める環境 | 自己判断で飲水制限しない |
| 治療 | 食事療法、水分管理、合併症への薬物治療など | 状態に応じて内容が異なる |
| 長期管理 | 血液・尿・血圧などの定期検査 | 変化に応じて治療を調整 |
慢性腎臓病では、「この治療をすればすべての犬が同じように改善する」というものではありません。
IRISステージだけでなく、タンパク尿、高血圧、リン、貧血、食欲、体重、ほかの持病なども確認しながら、その犬に合った管理を行います。
すぐに動物病院を受診する目安チェックリスト
慢性腎臓病では、ゆっくり進行するだけでなく、治療中に体調が急激に悪化することもあります。
次のような症状がある場合は、定期診察の日まで待たず、早めに動物病院へ連絡・受診しましょう。
緊急性を考えたいチェックリスト
- □ ほとんど食事を取れない
- □ 水も飲めない
- □ 嘔吐を繰り返している
- □ ぐったりして動こうとしない
- □ 尿量が急激に減った
- □ 尿がまったく出ない
- □ けいれんが起きた
- □ 意識や反応がおかしい
- □ 呼吸状態がおかしい
- □ 治療中なのに急激に体調が悪化した
特に、尿がまったく出ない、意識がおかしい、けいれんがある、ぐったりして反応が悪いといった場合には、緊急性の高い状態が含まれます。
「腎臓病だからいつもの症状だろう」と様子を見続けず、かかりつけの動物病院へ連絡してください。
愛犬の腎臓を守る日常管理チェックリスト
慢性腎臓病そのものを日常生活だけで完全に防げるとは限りません。しかし、早期発見や進行管理、脱水や栄養不良などへの対策として、家庭でできることはあります。
毎日の生活で確認したいこと
- □ 新鮮な水をいつでも飲めるようにしている
- □ 水を自己判断で制限していない
- □ 飲水量の変化を確認している
- □ 尿量・排尿回数を観察している
- □ 毎日の食事量を確認している
- □ 定期的に体重を測っている
- □ 筋肉量が減っていないか確認している
- □ 腎臓に配慮した食事について獣医師と相談している
- □ 処方された薬を指示どおり与えている
- □ 薬を自己判断で中止・増減していない
- □ 定期的に血液検査・尿検査を受けている
- □ 必要に応じて血圧やタンパク尿も確認している
- □ 食欲・嘔吐・元気などの変化を記録している
- □ 体調がおかしいときは早めに動物病院へ相談している
例えば、カレンダーやスマートフォンに**「食事量・飲水量・体重・尿・薬・元気」**を簡単に記録しておくと、診察時に愛犬の変化を獣医師へ伝えやすくなります。
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慢性腎臓病について理解したあとは、症状が似ている病気や、中高齢犬で注意したい病気についても知っておくと安心です。
愛犬の病気|僧帽弁閉鎖不全症の初期症状・原因・治療法を詳しく解説
慢性腎臓病と心臓病はどちらも中高齢犬で注意したい病気です。また、腎臓病と心臓病を併発している場合には、水分や薬の管理についてより慎重な判断が必要になることがあります。
愛犬の病気|椎間板ヘルニアの初期症状・原因・治療法を詳しく解説
犬の健康管理では、腎臓病以外にも重大な病気を早期発見することが大切です。
**「愛犬の病気?フィラリアの初期症状と予防法をわかりやすく解説」**では、フィラリア症の症状や予防について詳しく紹介しています。
終りに
犬の慢性腎臓病は、初期には目立った症状がないこともありますが、多飲多尿、食欲低下、体重減少などが早期発見の手がかりになります。一度低下した腎機能を完全に元へ戻すことは難しい場合が多いため、血液・尿・血圧などの定期検査に加え、食事、水分、体重、薬を継続して管理することが大切です。愛犬の小さな変化を日頃から観察し、気になる症状があれば早めに獣医師へ相談しましょう。
参考元:
- 日本獣医腎泌尿器学会(犬猫の腎疾患・検査・管理に関する専門情報)
- 日本ペット栄養学会(慢性腎臓病の食事管理・リンやタンパク質管理)
- J-STAGE掲載の獣医学・獣医栄養学に関する学術論文・総説
※慢性腎臓病の進行度や治療、食事管理は犬によって異なるため、検査値だけで判断せず、獣医師による診断・定期検査を基本とします。
まとめ
犬の慢性腎臓病は、腎臓の働きが徐々に低下していく病気で、初期には目立った症状がないこともあります。水を飲む量や尿量が増える、食欲が落ちる、体重が減るなどの変化は早期発見の手がかりです。進行度は血液検査や尿検査、血圧測定などをもとに評価し、状態に応じて食事療法や水分管理、薬による治療を行います。愛犬の小さな変化を見逃さず、定期検査と適切な治療・自宅管理を継続することが大切です。



