有明海でしか釣れない幻の大物「ハゼクチ」。冬の夜間や上げ潮時が狙い目!シンプルなチョイ投げで、大物を狙う攻略法を詳しく解説します。
冬の寒さが厳しい中でも、多くの投げ釣りファンが熱心に狙う「ハゼクチ」。その魅力は、日本では有明海でしか見られない珍しい魚であり、50cmを超える大物に挑むスリルにあります。特に夜間や上げ潮時には、釣果が期待できる絶好のタイミング。岸近くの澱みをチョイ投げで狙うシンプルな釣り方ながら、仕掛けやポイント選びの工夫が求められます。この記事では、ハゼクチ釣りの基本的なタックルから効果的なポイント、攻略法まで、初心者にも分かりやすく解説します。大物ハゼクチを釣り上げるための秘訣を知り、一度はその挑戦に臨んでみませんか?
50cmを超えるハゼの正体
投げ釣りには、全日本サーフキャスティング連盟という組織が存在し、その大物賞の対象魚にハゼも含まれています。ハゼのサイズにはAランクからSランクまでが設定されており、25cm、27cm、35cm、40cm、そして50cmと続きます。50cmのマハゼは幻のような存在であり、もしそのサイズのマハゼを全て揃えようとするなら、どれだけの時間をかけても不可能と言っても過言ではありません。
記録の申請は魚拓を持ち込むことで行われますが、ハゼの種類の見分けは厳密には難しいことがあります。そのため、同じような種類の魚については慣例として対象魚として認められることもあります。そしてある日、ハゼクチの魚拓がハゼとして提出されたのです。その魚は明らかに30cmを超えており、マハゼでは到達できない大きさでしたが、その記録は受理されました。ハゼクチは30〜60cmまで成長する魚であり、これならばハゼのAランクからSランクまで全てのサイズを達成することが可能です。この出来事以降、全日本サーフキャスティング連盟の会員にとって、有明海のハゼクチは避けて通れない登竜門となりました。
その結果、地元の釣り人が釣りを控える厳寒期の2月になると、有明海の緑川では、関東や関西から訪れる釣り人たちが、泊まり込みで複数の投げ竿を並べる光景が見られるようになり、地元の風物詩として定着しました。
ハゼクチの生息地
ハゼクチはスズキ目ハゼ科に属する魚で、有明海を主な生息地としています。体長30cmを超える個体は珍しくなく、50cmを超えるものも見られます。日本記録では64cmに達しており、刺身としても美味しい魚として知られています。
九州北西部に位置する有明海は、日本最大の干潟であり、氷河期には中国大陸と地続きでした。そのため、当時は有明海も黄海、渤海、東シナ海から続く干潟の一部を形成しており、そこには独自の生物が多く生息していました。その後、海面が上昇して大陸と分断された後も、多くの大陸系の遺存種が有明海に残り、今でも特異な生態系を保っています。この地域には、ムツゴロウやエツなど、日本では有明海周辺でしか見られない生物が多く生息しており、ハゼクチもその一種です。
シーズンと釣り場
ハゼクチ釣りのベストシーズンは冬で、12月から3月にかけて行われます。特に1月末から2月中旬が最盛期とされ、この時期は産卵のために岸近くに寄ってくると考えられています。シーズンの前半には、ハゼクチは丸々と太っている一方、後半になると産卵後で痩せることが多いです。また、産卵に関連して2月中に1週間ほど姿を消す時期があるものの、そのタイミングは年によって異なるため、1週目が不調の年もあれば、2週目が不調の年もあります。
釣り場としては、有明海に注ぐ河川であれば、どこでもハゼクチを狙うチャンスがあります。日本記録のハゼクチが釣れたのは、熊本市内を流れる坪井川の河口で、規模の小さい河川です。最も知名度が高い釣り場は、熊本県の緑川です。有明海に注ぐ河川の中では、筑後川に次ぐ規模を誇る大河であり、特に大きな干満差によって発達した河口部は、川幅が500m以上にもなります。
干満差が大きいため、海水は上流にある堰まで運ばれ、堰の下ではヒラメやマゴチ、コノシロも釣ることができます。また、河川の中流まで干潟の泥が堆積しており、広範囲にわたる干潟が広がっています。それでも、ハゼクチ釣り場として有名なのは河口部のサヨンバネであり、上流の釣りポイントは浜戸川との合流点付近までが一般的です。ただし、必ずしもこれ以上上流では釣れないというわけではなく、単にポイントの開拓が進んでいないのがその一因と考えられています。
仕掛けとタックル
ハゼクチ釣りでは、特別な竿を用意する必要はなく、一般的な投げ竿で十分対応できます。飛距離を重視する必要もなく、また食い込みに特に気を使う必要もありません。25〜33号のキス用投げ竿を複数本用意すればよく、3〜5本が標準的です。岸からのポイントはそれほど遠くないため、投げ釣りセットやルアータックルでも狙うことが可能です。引きや飛距離はあまり重要ではないものの、強い流れに対応するため、ミチイトには細いPEラインやナイロンラインを使用することで、オモリをしっかりと固定しやすくなります。
ハゼクチ専用の仕掛けというものは特に存在せず、遊動式のテンビン(20〜35号)に1〜3本バリの仕掛けをセットするのが一般的です。ハリは丸セイゴの15号前後が適しており、ハリスは3号程度で十分です。
エサにはアオイソメが最適で、中型から小型のものを2匹房掛けにして使うのが一般的です。また、緩やかな流れの中でチョイ投げで釣れることが多いため、ルアータックルにワームを使って狙う人もいます。
ハゼクチ釣りにい使われるタックル
- 【ロッド】➡ポイントは近く、繊細なアタリを乗せる 釣 り で は な い の で 、 2 5 〜 3 3 号 程 度 の 一 般 的 な 投 げ 竿 を 用 意 す る 。 キ ス 用のものが適しているが、大物用でも 問 題 な い 。 1 本 で 探 りながら釣るより は、4本、5本と出したほうが効率はい い 。 手 持 ち の 竿 を 複 数 本 、 持 っ て い く。緩い流れを狙う場合には、海用の ルアータックルでも流用は可能です。
- 【リール】➡竿 と の バ ラ ン ス か ら 投 げ 釣 り 専 用 の リ ー ル を 用 意 す る 。 グ レ ー ド は 低いもので構わない。ド ラ グ の 有 無 は 気 に し なくてもよい。ただし、ス ズ キ や コ イ に 竿 を 持 っ て 行 か れ な い よ う 注 意 する必要です。
- 【ライン】➡分 厚 い 上 げ 潮 の 流 れ が 河 川 に 入 る の で 、 流 れ の 中 で 仕 掛 け を 止 め る 場 合 は 、 1 号 前 後 の 細 い P E ラ イ ン や 3 号 程 度 の ナ イ ロ ン ラ イ ン が適している。
- 【遊動式テンビン】➡ 20〜3 5 号のオモリを 用 意 す る 。 置 き 竿 の 釣 り で は 、 遊 動 式 テ ン ビ ン 仕 掛 け の ほ う が 食 い 込みはいい。ただし、ハ ゼクチはエサをくわえて 走る魚ではないので、 固 定 式 の テ ン ビ ン で も 釣りは可能です。
- 【竿掛け】➡竿 を 3本 以 上 出 す 場 合 に は 竿 掛 け を 用 意 し たほうが管理しやすぐ アタリを取りやすい。竿 を 不 意 の 大 物 に 持 つ ていかれないよう、水を 入 れ た バ ケ ツ を 掛 け て おくこと。2脚あると広 範囲を探りやすい。
投げ釣りの仕掛け
一般的なシロギス釣りよりは、やや太めのミチイト、 仕 掛 け を 用 意 す る 。 そ れ 以 外 は 、 一 般 的 な 投 げ 釣 り用のタックルを流用できます。
60cmまでのハゼクチを想定すると、幹イト5号の場合は長さ150cmのうち、砂ズリが25cmになる。砂ズリは 幹 仆 を 2 〜 3 本 撚 り 合 わ せ て 作 る 。 ハ リ ス は 長 さ が 5 c m に な る よ う に 、 8 の 字 結 び で 結 節 す る 。 2 本 バ リ 仕 掛けであれば、下から30cmほどのところに枝ハリスを結節する。ひとまわり太い仕掛けを用意してもよい。
エダスとスナズリの作り方
ハリの結び方
- ハリの結び方は何でも良いですが、夜間でも確実に結べるようにしておくことが大切。
- イラストは「外掛け結び」。
- ハリの先端を折り返し、ハリ軸に沿わせる。
- 端糸をハリ軸とハリスに巻き付ける。
- 5〜7回巻き付けるのが目安。
- 巻き終えたら、先端を最初に作った輪に通す。
- 強く引き締める。
- ハリスがハリ軸の内側にくるようにして完成。
エサはアオイソメ、二枚貝
- エサはアオイソメがよい。エサ取りはいないので、4 本の竿を用いて2まわりの潮を釣る場合で、150 〜200g程度が使用量の目安となります。
- 大 き い も の は 1 匹 掛 け 、 中 型 の も の は 2 匹 房 掛 け にします。2 匹掛けのほうがよく動くため目立ちやすく、ハゼクチの食いもいい。
岸ぎわの澱みをチョイ投げで狙う
ハゼクチ釣りを楽しむ遠征組の投げ釣り師にとって、50cmクラスのハゼクチを一生に5匹釣ることが目標となることが多いです。50cmの大物が釣れれば、次のターゲットに移行することが多いため、現在でもハゼクチの完全な攻略法は解明されているとは言い難いです。
上げ潮のタイミングが最も釣果が期待される時間帯とされていますが、満潮後の下げ潮直後を推奨する釣り師もいます。日中・夜間問わず釣りは可能で、遠征組は上げ潮に集中して釣ることが多く、夜間の方がサイズの良い傾向があります。
ポイントの選択肢としては、流心、流れのヨレ、カケアガリ、岸ぎわの澱み、船道のえぐれ、根回り(シモリ)、浚渫跡などが挙げられます。特にハゼクチが好むのは、岸ぎわの澱みと呼ばれるエリアです。これは、ハゼクチの生態に起因しており、彼らが岸に接近する理由は繁殖のためです。ハゼクチは巣穴を掘り、1月頃にはすでにその巣穴で生活を始めているため、巣穴の近くを狙うことが大切です。流れの速い河川で、ハゼクチが巣穴を掘れるほど柔らかい泥が堆積している干潟、つまり澱みを探すことが有効です。
ハゼクチはハゼ科の魚であり、強い流れを好むわけではなく、むしろ緩やかな流れを好む傾向があります。有明海では干満差が4mを超えることも珍しくなく、上げ潮・下げ潮のいずれでも流心の流れは強く、そこでエサを留めるのは困難です。
また、有明海に注ぐ河川の流れは速いため、30号程度のオモリでは流心に仕掛けを留めることは難しく、仕掛けはすぐに手前に流されてしまいます。カケアガリで仕掛けを留めることはできますが、その過程で海苔が仕掛けに絡み、エサが浮きやすくなります。
このような状況では、岸から50m以内のチョイ投げが最も有効です。岸ぎわの澱みは、泥質の底でオモリが埋まる感触があるほど柔らかく、数本の竿を並べてじっくりとアタリを待つのが基本となります。アタリは魚の大きさから想像するほど大きくはありませんが、食い込みは素直なので、ラインを送り込む必要はありません。
ハゼの王様ともいえるハゼクチは、日本では有明海でしか見ることができない貴重な魚です。投げ釣りファンなら一度は挑戦してみたいターゲットです。
ハゼクチの釣り方
- 足場からの距離で投げ分けず、ブレイクライン手前の澱みに仕掛けを投入する。
- 同じ筋に仕掛けが集中し、ラインが絡みやすい状況になることがある。
- これを防ぐためには、流れの下流側から順に仕掛けを投入し、できるだけ仕掛けの間隔を離すようにする。
- 竿掛けを2脚用意すると便利。
- 潮と水深によりポイントは前後するため、こまめな投げ返しが必要。
- ゆったりとした上げ潮が最も釣果が期待でき、流れが速すぎるとアタリが出にくい。
釣れるポイント
- 干満の差が大きい➡同じ場所、同じ日の写真ですが、3時間ほどで水深が上昇しています。このように多くの水が海から流れ込むため、上げ潮と下げ潮の潮流は非常に速くなります。川全体の流れも速いため、重めのオモリを用意することをおすすめします。
- 手前のよどみがポイント➡ハゼクチは柔らかい干潟の泥を好み、巣穴を作るのに適した底質は流心ではなく、岸寄りに見られます。このポイントでは川幅が約400mあり、河川に建つ構造物までの距離は約50mですが、ハゼクチの釣れる場所は足元から構造物の間に位置しています。
- 足場の水没に注意➡河口の護岸された足場などで釣りをしていると、潮が上がってくるとすぐに水没してしまうことがあります。3〜4本の竿を移動させる時間的な余裕を考慮しておく必要があります。満潮と干潮では、岸際の水位が全く異なるため、注意が必要です。
厳寒期の夜が最高の時合
九州とはいえ冬は寒く、特に熊本は外洋の暖流に面していないため、1〜2月の厳寒期には夜間の気温が零度近くまで下がることがあります。ハゼクチ釣りはこのような真冬の釣りですが、魚の活性が高まる夜の時間帯は、大物を狙う釣り人にとって見逃せないチャンスです。特に、上げ潮のタイミングは集中して釣りを行いたい重要な瞬間です。
昼間の釣りも侮れないハゼクチ
ハゼクチ釣りは夜間の釣果が目立つものの、必ずしも夜釣りだけに限られたものではありません。有明海に注ぐ河川は浅い干潟でも干満差が大きいため、年間を通じて水が茶色く濁っています。このため、日中でも夜と同様に煙幕効果が期待でき、十分に狙う価値があります。
美味しい食べ方
透明でしっかりとした身質はマハゼに似ており、同様の旨味と味わいがあります。ここでは、ハゼクチの食べ方についてご紹介します。
- 下処理: 新鮮なハゼクチを用意し、内臓を取り除きます。軽く塩水で洗い流し、余分な水分を拭き取ります。
- 調理法:
- 焼き: 塩を振ってそのまま焼くか、串に刺して炭火でじっくり焼きます。香ばしい風味が楽しめます。
- 揚げ: 衣をつけて揚げると、外はカリッと中はふっくらとした食感に仕上がります。
- 煮付け: 醤油、みりん、酒で煮付けると、味がしみ込んで美味しくなります。
- 盛り付け: お好みでレモンや大根おろしを添えると、さっぱりとした味わいになります。
- 楽しみ方: ご飯やお酒と一緒に食べると、より美味しく楽しめます。
ぜひお試しください!
※ハゼクチは鮮度落ちが早いので、現地で釣りたてを食べるのが最もおいしいです。
参考元:さかな・釣り検索。日本の魚釣り
まとめ
ハゼクチ釣りは、冬の上げ潮時が最も釣果が期待でき、特に夜間が有効です。ポイントは流心よりも岸寄りの澱みが狙い目で、50m以内のチョイ投げが効果的。仕掛けは下流側から順に投入し、ラインが絡まないように間隔を広げます。干満差が大きい有明海では潮の流れが速くなるため、釣り場の状況に応じて仕掛けをこまめに投げ返す必要があります。日本では有明海のみで釣れるハゼクチは、投げ釣りファンにとって挑戦すべきターゲットです。