夏から秋にかけて、堤防周りには小魚が多く集まり、それを捕食するためにマゴチなどのフィッシュイーターが集まってきます。ここでは、活きエサを使った「泳がせ釣り」を解説します。
堤防からの泳がせ釣りは、一般的に船からの釣りが主流と思われがちですが、実は堤防からでも大物のマゴチやヒラメを狙う絶好のポイントが潜んでいます。この記事では、堤防周りで活きエサを使ってマゴチやヒラメを釣るための効果的なタックル選びや、エサの動きを最大限に活かす誘い方、そして釣り上げた魚を鮮度良く保つコツまでを詳しく解説します。初心者から経験者まで、誰でも実践できるポイント探しの方法や、釣果を左右する繊細なテクニックを紹介しています。釣りの楽しみをさらに深めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
竿抜けスポットを直撃
活きた小魚を使った「泳がせ釣り」といえば、一般的には「船からの釣り」というイメージが強いですが、活きエサが手に入る地域では堤防からの泳がせ釣りも盛んに行われています。堤防近くでも小魚がいれば、それを狙ってマゴチやヒラメなどのフィッシュイーターが集まってくるのです。こうした魚たちは、活きエサやルアーを使わなければほとんど釣れないため、釣り人が集まる堤防でも泳がせ釣りを行う人が少ない場合、その場所は手つかずの好ポイントとなります。
この状況を理解し、長年にわたり堤防での泳がせ釣りを極めてきたのが東京湾西部の横浜エリアの釣り人たちです。彼らは、単にエサを投げ込んで待つだけでは満足せず、ハゼをエサにして自ら積極的に竿を動かし、ポイントを探り、食い付きの悪いマゴチを掛ける高度な釣法を確立しました。
この釣法は、外洋部ではヒラメ、東北エリアでは大型アイナメやハタ類を狙う際にも応用され、マゴチに留まらず様々な魚種に対応できることが証明されています。
現在、この釣りは横浜〜川崎エリアに広く定着しており、ハイシーズンになると釣具店にはマゴチ用のハゼエサが並び、夏から秋にかけて湾奥部の堤防では多くの釣り人がこの釣りを楽しんでいます。
2タイプのタックル特性
この釣りにおいてタックルを選ぶ際に最も重視したいのは、微妙なアタリを捉える感度と、積極的な誘いを可能にする操作性です。使用する仕掛けはシンプルなので、どんな竿でも釣りは可能ですが、ターゲットであるマゴチの前アタリは非常に繊細で、これを捉えられないと、せっかくのアタリも針に掛けるのが難しくなります。特に堤防近くのポイントは、潮の流れが緩やかなため、船での釣りよりもアタリが小さいことが一般的です。この傾向は、堤防に居着くヒラメにも共通しています。したがって、タックルの感度が高ければ高いほど、釣果が向上するのは間違いありません。
例えば、クロダイ用の前打ち竿や、2号のエギにも対応するライトクラスのエギングロッドが挙げられます。これらは非常に感度が高く、アタリを弾かない柔軟な穂先を持っているのが特徴です。どちらも長さは2.7mで、手持ちの竿としてはやや長めですが、この程度のリーチがないと、ポイントまで距離がある場合に微調整が難しく、アタリに応じてエサを送り込むストロークも確保しにくくなります。この長さは、どの場所でも絶好のポイントとなる堤防基礎部のケーソンのキワを狙うのにも適しています。
リールとの組み合わせによって、広範囲を手返しよく探れるのがエギングロッド、軽量で感度が良いのが前打ち竿です。状況に応じて、近距離で繊細なアタリが続くときには前打ち竿、広い範囲を探るときにはエギングロッドを選ぶのが基本となります。
リールに巻くラインとしては、スピニングリールにはPEライン1号、太鼓リールにはフロロライン2号が基本です。これ以上太いラインを使うと感度が低下するだけでなく、食いが悪いときに軽いオモリを使用しにくくなります。誘いの幅を微調整するために、どちらのラインでも視認性に優れた目印が入ったものを使用することをお勧めします。
また、エギングロッドは8号前後のオモリを十分に投げられるため、ポイントの堤防でエサとなるシロギスやハゼが釣れる場合には、エサ釣り用のタックルとしても活躍します。この場合も、タックルの感度が高いことで針ごと呑まれることを防ぎ、良いエサを手に入れることができます。
【泳がせ釣りのタックル】
クロダイ用の前打ち竿(右)やティップが柔らかいライトクラスのエギングロッド(左)を使用します。前打ち竿は感度が高く、微妙なアタリをしっかり捉えることができ、エギングロッドは機動力に優れ、広範囲を効率的に探ることができます。それぞれの特徴を活かして、状況に応じた最適な釣りを楽しむことが可能です。
【泳がせ釣りの仕掛け】
堤防から20m以内のポイントが多いですが、誘いと食い込みのストロークを確保するために、2.7mとやや長めの竿を使用します。仕掛けは3タイプあり、底を取れる範囲でできるだけ軽いオモリを使うのが基本です。メインとなる仕掛けは直結式か遊動式で、投げ釣り式は20m以上の遠いポイントや流れが強い場所で使用します。ハリのサイズは、使用するエサの大きさに合わせて選びます。
【リールとミチイトのセレクト】
スピニング=PE
スピニングリールを使用するエギングロッドには、1メートルごとにメーターマークが入ったジギング用のPEライン1号を使用します。単色のラインよりも視認性が高く、誘いの幅をメーターマークで簡単に確認できるため、非常に便利です。また、エギング用のPEラインにも、使いやすいものが揃っています。
タイコリール=フロロ
前打ち用のクロダイ竿には、50cmと1mごとに目印が入っている専用のフロロライン2号を使用します。このラインは初期伸度が低いため、極小ガイドを備えた前打ち竿と組み合わせることで、PEラインを上回る感度を発揮し、微妙な居食いのアタリもしっかりと捉えることができます。
仕掛けの使い分け
仕掛けの使い分けこの釣りの仕掛けは、ハリス、オモリ、ハリにエサとなるハゼなどの小魚を付けるというシンプルな構造ですが、それだけに各パーツの選択が非常に重要です。ハリはチヌバリをメインに、エサのサイズに合わせて適切な大きさを使い分け、エサが弱るのを可能な限り防ぎます。
オモリの使い分けも、釣果を左右する重要なポイントです。一般的には1~3号の中通しオモリ式の仕掛けが多く使用されていますが、ポイントの水深が4m以内の場合、可能な限り5Bまたは6Bのガン玉オモリを使った直結式で攻めるのがおすすめです。軽いオモリを使うことで、誘い上げた直後にエサが着底するまでの軌道が緩やかになり、これがアピールとなってアタリの数が増えるためです。
ハリスには投げ釣り用の0.6号のビニールチューブを通し、その上からガン玉を固定することで、オモリからハリまでの距離を自由に調整できるため、仕掛けの微調整が容易になります。風が強いときや水深が深い場合には中通し式のオモリを使用しますが、この場合でも着底を感じ取れる最小限の重さを選ぶことが大切です。投げ釣り式は、3号の中通しオモリでも仕掛けが安定しないポイントで使用しますが、この場合、オモリの重さに比例して食い込みが悪くなるため、ハリスを長めに取ります。さらに、小型のスネークテンビンなどを使い、仕掛けの絡みを防ぐことも考慮しましょう。
ハリスの基本は3号で、この太さでも魚の食い込みに影響はありません。ケーソンのキワを狙う場合、根ズレを考慮して4号を使うのも良い選択です。また、ハリスの銘柄については、結節強度が安定しているソフト系のフロロカーボンを選ぶと、現場での補修が簡単で便利です。
仕掛けのパーツ類
【ハリの使い分け】
下は、ヒネリのない細軸のチヌバリ3、4、5号。エサの大きさによってサイズを使 い分ける。10cm弱の理想のエサなら4号、6cm前後のエサやモエビには3号、 大型のハゼやザリガニには5 号というのが目安だ。エサのストックが少ないとき や食い込みが悪いときは、エサが弱りにくく軽い、上のマスバリ9号を使う。
【オモリの種類】
5B、6Bのガン玉オモリは、ハリスに0.6号のビニールチューブを通して可動式で固定します。1〜3号の中通しオモリは、ゴム管付きのものをサルカンを使って遊動式に設定します。大きなオモリを使用する際は、ハリスを長めに取る必要があるため、スネークテンビンと組み合わせると効果的です。
【ハリスは太めでOK】
フィッシュイーターはハリスの太さをあまり気にしないため、3号で十分対応可能です。根が荒いポイントやケーソンのキワを攻める際には、根ズレ対策も兼ねて4号のハリスを使うのも良いでしょう。また、ハリスは結節強度が出しやすいソフト系のものを選ぶことをお勧めします。
活きエサ釣りの仕掛けとストック用具
【軽量な片テンビン】
マゴチやヒラメが釣れる堤防では、チョイ投げでハゼやピンギスが釣れることが多くあります。そこで、軽量で感度の良い片テンビンと8〜10号くらいのオモリを用意しておき、エサを現地で調達するのも一つの方法です。釣りたてのエサは活きが良く、それだけアタリも多くなるため、釣果が期待できます。
【早掛け系の仕掛け】
エサ釣り用の仕掛けには、7号程度のハリが付いた船釣り用のシロギス仕掛けを使用します。エサを呑まれないことが理想であり、最も呑まれにくい「早掛け系」のハリを使った仕掛けがベストです。もしエサが呑まれてしまった場合、ハリスを切ることになるので、1日分として8〜10組は準備しておくと安心です。
【活かしバケツ大】
ハゼエサとして1日分に必要な量は、10cm未満のものを30尾以上用意します。そのため、20リットルのコマセバケツを改造し、エアポンプを取り付けて使用するのがおすすめです。特に白いバケツを使用すると、ハゼの体色が明るくなり、アタリが多くなる効果も期待できます。
【携帯用活きエサ入れ】
広い堤防を探り歩く際には、ストック用バケツとは別に携帯用の活きエサ入れがあると便利です。こちらにもエアポンプを必ず使用しましょう。写真のサイズであれば、5尾以内を収納可能です。クーラータイプのものは水温が上がりにくく、エサが弱りにくいのがメリットです。
ポイントは想像以上に近い
マゴチやヒラメは船から狙うイメージが強いため、堤防から釣る際もついつい遠くを狙いたくなりがちです。しかし、実際には堤防自体が流れの変化を作り出す一種の魚礁となっており、近場を丹念に探る方が良い結果につながることが多いのです。これは、エサとなるキスやハゼのような遊泳力の弱い10cm未満の小型魚が堤防近くに多く生息していることと関係しています。特にマゴチは、ヒラメほど鋭い歯がないため、元気が良く大きなエサでは捕らえても逃げられてしまうことが多く、小型のエサが多い場所に集まりやすい傾向があります。
このため、釣りのシーズンも、こうした小魚が豊富に釣れる夏から秋に集中しています。また、泳がせ釣りで実績のあるポイントは、軽いオモリでチョイ投げをすれば、ピンギスやハゼが釣れてくる場所が多いです。エサはあらかじめ用意しておくのが理想ですが、時々チョイ投げをしてキスやハゼを釣ってみると、小型が釣れる場所を見つけることができるため、ポイントサーチとエサの確保を同時に行うことができます。
ポイントの目安としては、堤防先端、船道、湾曲部、沈み根などが挙げられます。ただし、マゴチやヒラメのような底層性のフィッシュイーターは、青物やシーバスのポイントのような強い流れの効く場所よりも、流れが緩やかな場所に多く生息しています。特にマゴチはヒラメよりも流れが緩い場所を好むため、直線的な堤防では、堤防の直下にあたるケーソンのキワで連続して釣れることも珍しくありません。意外なポイントとしては、港の奥にある大きな魚市場の排水口周辺も狙い目です。水揚げが多い市場では、選別された魚が廃棄されることがあり、それを食べにマゴチやヒラメが港内に居着いているケースも少なくありません。
なお、船での釣りではマゴチやヒラメは潮回りの大きな日が良いとされていますが、堤防周りではどの潮回りでもさほど活性の違いは感じられないという経験もあります。むしろ、マゴチはエサの位置が数センチ違うだけでも食いつかないことがあるため、流れの緩やかな潮回りの小さい日の方が、細かく丹念に探ることができ、多く釣れるケースが多いのです。このように、堤防からの泳がせ釣りでは、近場を丁寧に探ることがポイントを見つける最短の方法です。どんな場所でも、「ポイントは案外近い」ということを覚えておくと良いでしょう。
ポイントの選び方
堤防周りでマゴチやヒラメが狙えるポイントは、エサとなる小型のキスやハゼが溜まりやすい海底や、流れの変化がある場所が多いです。マゴチやヒラメは、体色を変えて海底の砂や根に同化し、エサが通るのをじっと待ち伏せしています。エサを自分で用意していくのも良いですが、チョイ投げでキスやハゼが釣れる場所を探すと、その周辺が好ポイントになることが多く、元気なエサを手に入れることもできるため、一石二鳥です。
また、マゴチやヒラメは、エサさえあれば極端に水深の浅い場所にもいる魚です。ですので、やみくもに遠投するよりも、近場を丹念に探る方が良い結果につながります。堤防から20m以内、時には堤防直下に獲物が潜んでいることもあるので、近場のポイントをしっかりと探ってみることをお勧めします。
ポイントの例
- 船道や港の出口➡エサが集まりやすく、必ずカケアガリ(急な地形変化)があるため、その斜面はもちろん、堤防先端部の直下に反転流が生じやすいです。この反転流の周辺も狙い目となるポイントです。
- 護岸直下のケーソン➡堤防の基礎を守るために設置された1〜2m四方のブロックが入っている場合、そのキワは絶好のポイントとなります。特に、潮が当たる時間帯には必ず狙いたい場所です。
- ヘッドランドのキワ➡流れの強い外海に多く見られるヘッドランドでは、先端部よりも、流れが巻き込んでエサが溜まりやすい堤防の中間部が有望なポイントです。また、キワにも魚が多く集まるのが特徴です。
活きエサの種類と特性
この釣りで使用する活きエサは、大きく分けてハゼやピンギス(小型のキス)などの小魚系と、ザリガニやモエビなどのエビ系があります。その中でも、最も使いやすく、アタリが多いのは「ハゼ」です。ハゼは釣りシーズンである夏から秋にかけて当歳魚が成長するため、10cm未満の手頃なサイズを確保しやすいことが利点です。また、ハリに付けた際の耐久性が高く、マゴチに一度食いつかれてもまだ生きているほどタフであることも大きな理由です。さらに、誘いを入れて海底からエサを持ち上げた際に「ブルブル〜」と独特な暴れ方をするため、これが大きなアピールとなるのもハゼエサのメリットです。横浜〜川崎の釣具店では、シーズン中に1尾30円前後で購入できるのも魅力的です。「エサのアピール=活きの良さ」を考慮しても、1日分のエサとして30尾以上を用意しておけば、現場でエサを釣る手間も省けるでしょう。
同じ小魚系では、現場で釣ったピンギスもよく使われます。ピンギスはハゼに比べて水中での動きが速く、アピール度は高いですが、耐久力はハゼほどではありません。また、動きが速くウロコが硬いため、アタリがあってもエサが自力でマゴチの口から逃げ出してしまうこともあります。さらに、現場で釣る以外に入手方法がない点も、ハゼエサに比べると大きな難点です。このほか、現場で釣れるメゴチもエサとして使えますが、効果はハゼに比べて一段劣ります。
ハゼの入手が難しい場合に安定したエサとして使用されるのがザリガニです。ザリガニは淡水生物ですが非常にタフで、尾掛けにして海中に投入してもかなりの時間生き続けます。海底を歩かせて誘い上げると尾を動かしてアピールするため、ザリガニを好んで使う釣り人も少なくありません。さらに、小魚系のエサに比べてフグやイカなどのエサ取りにやられにくいという利点もあります。
小型のマゴチが多いときに有効なのがモエビです。できるだけ小さなハリを使い、エサを弱らせないようにすれば、誘い上げた際に水中で「ピン!」と跳ね、これが良い誘いとなってアタリが出ます。また、メバルやカサゴ、フッコなどのゲストが釣れることもうれしいポイントです。ただし、モエビはエサの耐久性が最も低いため、1日分として50尾ほどは用意しておく必要があります。
ハゼエサの装餌は「アゴ掛け」が基本
1)ハゼは10cm未満のものが食い込みの良い理想的なサイズです。ストック用のバケツの中で、簡単に捕まえられないほど元気の良いものを選んで使うと、より効果的です。
2)親指と人差し指でハゼの頭を挟んで目を隠すと、おとなしくなります。アゴ掛けの場合は、下アゴの先端から素早くハリ先を入れ、カエシを上アゴまで抜いて止めます。
3)アゴ掛けは上下のアゴにハリが通っているため、エサだけを抜かれて食い逃げされることが少ない、最も安定した装餌法です。
その他のエサと装餌法
【小魚系=ロ掛け】
小魚系のエサでは、上アゴのみにハリを掛けるロ掛けも多用されます。アゴ掛けに比べてエサが弱りにくいという利点がありますが、若干エサが抜かれやすいという欠点もあります。
【ザリガニ=尻掛け】
ザリガニも水中で活かして使用します。尾羽の1節下からハリ先を入れて尻掛けにし、海底で写真のように安定して歩くようにセットして使います。この方法で、ザリガニが自然な動きをするため、魚に対して効果的なアピールが可能です。
【モエビ=尾掛け】
小型のマゴチが多いポイントでは、モエビも有効です。モエビは、誘いを入れたときに水中で跳ねるように、尾の先端から2節ほど浅く尾掛けにします。この方法で、モエビが自然に跳ねる動きをするため、魚へのアピール力が高まります。
投入から誘いまでの手順
この釣法で狙うマゴチやヒラメは、中層を泳ぐフィッシュイーターとは異なり、自分から長い距離を泳いでエサを取ることはほとんどありません。スズキや青物であれば、自分の後ろや横を通る小魚に反転して食いつくこともありますが、マゴチやヒラメは体の構造上、上方または斜め前方の至近距離に近寄ってきたエサに対して、短距離ダッシュで飛びつくように捕食します。特にマゴチは、「プロダクティブゾーン」と呼ばれるエサに反応する範囲が非常に狭い魚であることを頭に入れてアプローチすることが重要です。この射程距離は魚体の大きさに比例しますが、大型のマゴチでもせいぜい前方50cm程度とされています。したがって、この釣法のように海底をセンチ単位で探ることが、複数の竿を投げ込んでおく釣法よりも圧倒的に有利になります。
まず、ポイントにアンダースローで静かにエサを投入します。水深が浅い場合、マゴチが着水から沈下中にエサを見ていることが多く、着底直後にアタリが出ることも珍しくありません。サミングでオモリとエサを離して落とし、アタリに即応できるように張らず緩めずエサを沈めていきます。
仕掛けが着底したら、エサを見つけたマゴチがにじり寄っている可能性があるため、食わせの間として20秒以上は静止させます。周辺にマゴチがいれば、元気なハゼエサなら必ず怖がって暴れるので、その際にはさらに待ち時間を延ばします。
誘いは潮の速さにもよりますが、オモリを海底から30〜50cmほど静かに持ち上げます。どのエサでも海底から離れる際に暴れるため、これが大きなアピールとなります。活性が高い場合、この瞬間にアタリが出ることも珍しくありません。エサを持ち上げたら、そのまま竿を止めておくと、暴れたエサが静かに半円を描きながらゆっくりと沈んでいきます。こうした「カーブフォール」は、エサが同じ重さであれば最もゆっくり沈めることができ、オモリが軽いほど仕掛けの動きが自然になるため有利です。着底したら再び食わせの間を取り、これを繰り返してポイントを細かく探っていきます。
オモリが重い投げ釣り式で釣る際も、このイメージを持ちながら誘いを入れ、海底でエサを引きずるのではなく、カーブフォールを意識して誘います。ただし、オモリが重いとエサが弱りやすくなるため、誘いの間は5分以上と長めに取るのが良いでしょう。2本の竿を使い、置き竿にしながら交互に誘うぐらいでも十分です。
潮の流れによって誘いを入れた際のハリスの角度が変わり、エサが海底から持ち上がる角度や高さが微妙に変わります。基本的には、誘いを入れたときにエサが海底から20cm前後のレンジで動くのが理想的です。エサが高く上がり過ぎると、魚の食い気が高まってもエサがプロダクティブゾーンの外に出てしまい、アタリが出ないことがあります。逆に、エサが低過ぎると、ただ引きずるだけになり、アピールが不足してしまいます。竿の操作自体は単純ですが、状況に応じて最適な誘い幅を見極めた人だけがアタリを得られるのは、このメカニズムがあるからです。このため、ミチイトには視認性が高く、マーキング付きのものが有利です。水面近くのミチイトのマーキングを目安に、当日の誘い幅と食わせの間を探っていきましょう。
投入と誘いの手順
1)オモリを穂先から50cmまで巻き上げ、スピニングタックルの場合はベールを返し、タイコリールの場合は、写真のようにポイントまでの距離分のミチイトをあらかじめ引き出して、投入の準備を行います。この準備をしっかり行うことで、スムーズなキャスティングが可能となります。
2)エサを振り子のように動かして、アンダースローで静かにポイントまで投入します。飛行中の仕掛けを目で追いながら、サミングを使ってエサとオモリが離れて静かに着水するように調整します。これにより、エサが自然に着水し、魚に違和感を与えずに狙ったポイントに投入できます。
3)エサが着水したら、ミチイトを張らず緩めずの状態で静かにエサを沈めていきます。この時点で、魚がエサを見ていることも少なくありません。着底直後のアタリを見逃さないように、ミチイトの張り具合に注意しましょう。細かな変化を感じ取れるように集中し、エサが海底に到達するまでの動きをしっかりと見守ることが大切です。
4)オモリが着底したら、周辺にいるマゴチが寄ってくるのを待つために、20秒ほど食わせの間を取ります。周辺にマゴチがいると、着底したハゼエサが暴れ始めます。その場合は、さらに食わせの間を長く取ると良いでしょう。この時間をしっかりと確保することで、マゴチがエサにしっかりと食いつくタイミングを逃さず、より確実に釣果を上げることができます。
5)誘いは、潮の速さに合わせてオモリを30〜50cm持ち上げます。このとき、ハゼが暴れて周辺のマゴチに大きくアピールします。誘いを入れた後は、そのまま竿を止め、エサをゆっくりと着底させます。こうすることで、エサが自然に沈んでいき、マゴチに対して効果的にアピールすることができます。
6)最適な誘いをつかむために、ミチイトの目印を使って誘い幅を確認しながら釣ります。誘い幅が大き過ぎても小さ過ぎても逆効果になりかねません。些細な違いに見えるかもしれませんが、適切なパターンをつかんだ人とそうでない人では、大きな差が生まれます。誘いの繊細な調整が、釣果を左右する重要なポイントとなります。
最適な誘い方を見つけるための工夫
狭い堤防で同じようなポイントを狙っていても、アタリが頻繁に出る人と出ない人がはっきりと分かれます。仕掛けがシンプルで、やることも単純なだけに、アタリが出ないと「運が悪かった」と感じがちですが、実際には何かが違っているからこそアタリが出ないのです。特に、流れが緩い堤防周りでは、マゴチやヒラメのエサをくわえた前アタリが非常に繊細で分かりにくいことがあります。マゴチの場合、エサをくわえても歯形が残らないため、アタリを見逃してしまうことも少なくありません。ハゼのウロコが擦れたように禿げていないか、定期的にチェックすることが重要です。
アタリは、誘い上げたときやオモリが着底寸前のときに「ゴッゴッ」と大きく出ることがありますが、仕掛けを止めているときは、より微妙で重くなるようなアタリや「コッ」と小さく当たって動かないこともあります。こうした微妙なアタリを見逃していると、なかなか釣果は上がりません。微妙なアタリを逃してしまう人は、竿を強く握り過ぎていることが多いです。指に乗せた竿が落ちない程度のソフトなグリップにすることで、感度が高まり、微妙なアタリも捉えやすくなります。
また、日によってアタリが出やすいエサの動きが異なるため、ハリスの長さも調整してみる価値があります。ハリスが短いと活きエサが抵抗して大きく動きますが、長いと動きが緩やかになります。基準は50cmですが、アタリがなければ10cm単位で長さを変えて、ヒットパターンを探ることが有効です。エサの大きさもさまざまなので、活きの良い大きなエサは短いハリスで大きく動かし、弱りやすい小さなエサは長めのハリスでエサの寿命を延ばすと良いでしょう。
さらに、マゴチやヒラメは海底のエサが数センチ違う位置にあるだけでアタリが出ないこともあります。そのため、他の釣り人よりも細かく探る人だけがアタリを得られるのです。実績のある場所で粘ることも一つの手ですが、同時に足を使って広範囲を探ることも必要です。一度探った場所でも、それで全て探りきれたわけではないため、時間をおいて再度入り直すことで、潮が変わって魚が寄っていることがあります。狭い堤防では、1日でしらみつぶしに探り、2〜4周するつもりで釣り歩くことを心がけましょう。
誘いとエサの水中での動き
オモリを30〜50cm持ち上げると、ハリスの長さに応じてエサは海底から20cm以内の範囲で浮上します。このとき、ハゼは「ブルブル」と大きく暴れ、それがマゴチの捕食スイッチを入れるきっかけになります。マゴチの活性が高ければ、緩やかに半円を描いて沈んでいく活きエサに狙いを定めて飛びついてきます。しかし、目の前にエサがあっても、マゴチが食い付くまでには少し間が空くことがあるので、着底後は必ず20秒ほどの食わせの間を取りましょう。
また、周辺にマゴチがいる場合、元気なハゼなら仕掛けが海底にあっても暴れることがあります。このときは、食わせの間をさらに長く取り、次の誘いを小さくして移動距離を抑えると、誘った瞬間にアタリが出ることが多くなります。この繊細な調整が、アタリを逃さず釣果につながるポイントです。
アタリを引き出すコツ
- 歩いて広く探る➡細かく探ることは重要ですが、実績のある場所に固執せず、時には大きくポイントを変えることも大切です。誘いを入れながら、横移動で堤防を歩いて広範囲を探るのも良い方法です。これにより、魚の動きに合わせて効率的にポイントを見つけることができます。
- 竿は軽く握る➡マゴチのアタリは非常に微妙で、竿を強く握っていると見逃してしまうことがあります。できるだけ竿を軽く握ることで、微妙なアタリを感じ取りやすくし、アタリを逃さないようにしましょう。
- ハリス長を変える➡ハリスが短ければエサは大きく動き、長くすれば動きが緩やかになります。基準は50cmですが、10cm単位でハリスの長さを調整し、その日のアタリパターンを探ってみましょう。
聞き上げて食い込ませる
マゴチやヒラメは、エサを一気に食い込むことは非常に稀で、いったん捕らえたエサをゆっくりと飲み込むのが一般的です。そのため、アタリを感じたら静かに竿のテンションを抜いて送り込みに入ります。このとき、慌てて竿先を下げてしまうとミチイトが緩み過ぎ、逆にオモリが動いてしまい、これが原因で魚がエサを離してしまうことがあります。竿は曲がっていなくても、オモリから竿先までのミチイトがたるんでいない「ゼロテンション」の状態をキープしながら、竿先をゆっくり下げることが大切です。オモリが底に着いていれば、魚が引っ張った分だけ送り込むのがセオリーです。
そのまま待っていても次のアタリが出ない場合は、「居食い」していることが多いため、食い込みを促すために静かに竿で聞き上げます。このとき、アタリが「ゴツゴツ!」といった打撃的なものであれば、まだエサを飲み込む途中なので、もう一度送り込んで、確実な食い込みを待ちます。活性が低いときには、この動作を数回繰り返して、ようやくハリまで食い込むケースも少なくありません。
完全にハリまで食い込むと、魚はその違和感から逃れようと「グイグイ」という重いアタリと引き込みを見せます。このとき、竿を立てながら素早くリールを4〜5回巻きつつアワセを入れます。竿だけでアワセを入れるよりも、この方法の方が竿とミチイトの角度を90度にキープでき、竿全体の反発力が効いて強いアワセが可能です。
マゴチやヒラメがハリに掛かると、激しく頭を振って叩くような引きとともに底に向かって走りますが、できるだけ竿でためて浮かせ、竿の角度をキープしながらリールで巻き上げてさらに浮かせます。ポンピングはミチイトが緩んでバラシの原因になるので厳禁です。魚が水面まで浮かせたら、足場が低ければ一気に抜き上げましょう。ためらって水面で魚を暴れさせると、かえってバレやすくなります。ハリが貫通していれば、マゴチやヒラメの口は硬いため、まずバレることはありません。タモを使う場合も、できるだけ一気にすくい取るのがコツです。
また、マゴチは狭い範囲に群れていることが多いので、一尾釣れた場所はさらに細かく探ってみると連続して釣れることが多くあります。
アタリから取り込むまでの流れ
- 魚がエサをくわえた前アタリには、打撃的なものから「モワッ」と何となく重く感じるだけのものまで、さまざまな種類があります。例えば、誘い上げた直後に「コッコッ」と小さなアタリが出ることもあります。
- 前アタリを感じたら、静かに竿先を下げて送り込みに入ります。このとき、竿先を下げても魚が食い込む動きを感じ取れるように、必ず竿先が曲がらない程度にミチイトを張っておくことが大切です。これにより、魚がエサをしっかりと飲み込むまでの動きを逃さず捉えることができます。
- そのままアタリが大きくならない場合は、送り込んだ幅だけ静かに竿先を持ち上げて、仕掛けを張ることで食い込みを促します。このとき、アタリが打撃的である場合は、再度送り込んでやると、より確実に魚がエサを飲み込むチャンスが高まります。
- ハリまで食い込むと、「グングン」とアタリが重く感じられるようになります。このタイミングで、リールを巻きながらしっかり竿を立ててアワせます。その後は竿で魚の動きを抑えつつ、竿の角度を保ったままゴリ巻きで水面まで魚を浮かせます。
- 足場が低ければ、魚が反転する隙を与えず、そのまま一気に抜き上げます。マゴチやヒラメは口が硬いため、しっかりハリが掛かっていれば、40cmぐらいまでならタモを使わなくても抜き上げが可能です。無理にためらって水面で魚を暴れさせる方が、かえってバラシのリスクが高まります。
- 足場が高いときや大型の魚の場合はタモを使います。この場合、海面に浮かせたら一気にすくわないと、魚が体をねじるように反転してバレやすくなるので注意が必要です。理想的には、海面直下で静かに魚をタモまで誘導し、確実にすくうようにしましょう。
釣り上げたマゴチの活かし方
釣り上げたマゴチは、ストリンガーにつないで帰るまで活かしておく方が美味しく食べられますが、市販のストリンガーではロープの抵抗で魚が振り回されて弱ってしまうことがあります。水深や流れの強さにもよりますが、ロープの先端に30〜40号のオモリをつないでおくと、これを防止できます。釣り終了時にはマゴチを活き締めにして、海水で濡らした新聞紙に包んでおけば、1時間ほど鮮度をキープできます。この方法で保存すると、マゴチを洗いにしたときの食味がより良くなるので、ぜひ覚えておきましょう。
マゴチの捌き方と料理
参考元:日本の魚釣り、さかな・釣り検索、防波堤釣り入門
まとめ
堤防からの泳がせ釣りでは、繊細なアタリを捉える感度の高いタックルと、ポイントを丹念に探ることが重要です。マゴチやヒラメを狙うには、適切な誘いとエサの動きを見極め、微妙なアタリを逃さない技術が求められます。また、釣り上げた魚の活かし方にも工夫を凝らし、鮮度を保つことで食味を向上させることができます。